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調査研究レポート 地域評価のための活断層調査(九州地域)の成果

はじめに

 産業技術総合研究所では、文部科学省からの委託を受け、平成25〜26年度の2カ年で、「地域評価のための活断層調査(九州地域)」を実施しました。この調査は、地震調査研究推進本部地震調査委員会が平成25年2月に公表した「九州地域の活断層の長期評価」で新たに評価対象となった活断層で、これまでに断層の位置・形状や活動履歴等に関する情報が十分でないとされた活断層について、調査を実施するというものです。調査対象は図1で楕円で囲んだ小倉東断層、福智山断層帯、西山断層帯/嘉麻峠区間、佐賀平野北縁断層帯の4 断層帯です。以下、それぞれの断層帯ごとに調査結果の概要を紹介します。


図1 調査対象断層の位置(「九州地域の活断層の長期評価」の
図に一部加筆) 1:小倉東断層、2:福智山断層帯、3:西山断層帯/嘉麻峠区間、4:佐賀平野北縁断層帯

小倉東断層

 福岡県北部に位置する小倉東断層は、北九州市の市街地を通過することから、防災上重要な活断層の一つです。この断層について「九州地域の活断層の長期評価」では、最新活動時期はほぼ特定できたものの、平均活動間隔が不明とされたため、将来の地震発生確率は不明とされました。また、地下の震源断層は、地表で推定される範囲よりさらに北方に延びる可能性が指摘されました。したがって、今回の調査では、過去複数回の活動時期を明らかにするためのトレンチ調査、断層の北方延長の分布を明らかにするための海上音波探査を実施しました。小倉南区で実施したトレンチ調査では、トレンチ壁面に明瞭な断層が露出し、過去2回の断層活動時期が明らかになりました(図2)。また、山口県下関市の沖合で実施した海上音波探査の結果、約2kmにわたって海底面に明瞭な段差が確認され、活断層がこの範囲まで分布している可能性が高くなりました。


図2 小倉東断層におけるトレンチ調査(北九州市小倉南区)

福智山断層帯

 福智山断層帯は、福岡県北九州市の西部から、直方市、福智町を経て、田川市北部に至る活断層です。この断層帯について「九州地域の活断層の長期評価」では、断層帯の最新活動時期、平均活動間隔ともに幅広い評価となったため、将来の地震発生確率は十分に絞り込めませんでした。したがって、今回の調査では、断層の過去の活動性および活動時期を明らかにするための群列ボーリング調査、トレンチ調査を実施しました。そのうち直方市で実施したトレンチ調査では、断層が堆積物を変位させている状況から、断層が左横ずれ変位を有していることが推定されました。


西山断層帯/嘉麻峠区間

 福岡県北部から玄界灘にかけて分布する西山断層帯では、「九州地域の活断層の長期評価」で、南部の嘉麻峠区間が新たな評価対象となりました。この区間ではこれまでに詳細な調査が行われていなかったため、断層の活動性や過去の活動時期については不明のままです。したがって、今回の調査では、断層の分布を明らかにするための地質踏査、過去の活動を明らかにするための群列ボーリング調査、反射法地震探査、ピットおよびトレンチ調査等の総合的な調査を実施しました。断層帯南端の朝倉市杷木町で実施した群列ボーリング調査および反射法地震探査では、断層が約5,500 年前に活動したことが明らかになりました。


佐賀平野北縁断層帯

 有明海の北岸にあたる佐賀平野周辺には、従来からいくつかの短い活断層が知られていましたが、「九州地域の活断層の長期評価」で、平野部に重力の値が急激に変化する境界線が存在することなどから、地下に活断層が存在することが推定され、新たに佐賀平野北縁断層帯と名付けられました。したがって、今回の調査では、断層帯の位置・形状を明らかにするための反射法地震探査およびボーリング調査、過去の活動時期を明らかにするためのトレンチ調査等を実施しました。そのうち反射法地震探査は、平野部を南北方向に横切るように測線長約7km の範囲で実施し(図3)、地下の基盤岩の形状と堆積物の構造を明らかにしました。またトレンチおよびボーリング調査では、過去少なくとも2回の断層活動があったことが推定されました。


図3 佐賀平野北縁断層帯における反射法地震探査の作業状況(丸山正氏撮影)

 おわりに

 今回の調査は2年計画での実施であったため、反射法地震探査の結果を翌年の調査計画に反映させたり、トレンチ調査地点の選定に十分な時間をかけることができ、その結果、多くの成果を挙げることができました。調査に協力いただいた地元関係者の皆様に心から御礼申し上げます。



吉岡 敏和(よしおか・としかず)

著者の写真

産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門
活断層評価研究グループ上級主任研究員
1986年東京都立大学大学院理学研究科修士課程修了。博士(理学)。通商産業省工業技術院地質調査所に入所後、独法化を経て現在に至る。専門 は変動地形学、古地震学。地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会、同地震動予測地図高度化ワーキンググループ委員を務める。

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