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  3. 情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-E プロジェクト)(その2) データ同化断層すべりモニタリングに向けた測地データ解析の革新

(広報誌「地震本部ニュース」令和3年(2021年)冬号)

 「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト」(STAR-Eプロジェクト)の一課題として、東北大学を代表とする「データ同化断層すべりモニタリングに向けた測地データ解析の革新」が開始しました。本課題は、プレート沈み込み帯で繰り返し発生するプレート間巨大地震の発生予測に関連して、プレート境界が現在どのようなすべり状態にあるのか、また今後どのように推移していくのか、さらには将来の巨大地震の発生にどのような影響を与えるか、を評価する“断層すべりモニタリングシステム”の確立を目指すものです。本課題では、日々の地面の動き、すなわち地殻変動を捉える測地データと、断層すべりの時間発展を物理方程式に基づき計算する数値シミュレーションを、情報科学を用いた計算技術であるデータ同化により統融合することで、このシステムの実現を目指します。このような計算技術は天気予報という形で我々の日常で既に用いられており、本課題で構築を目指す断層すべりモニタリングシステムは、いわば天気予報の断層すべり版の基礎となるものと言えます。一方で、このシステムの入力となる測地データには、様々な要因をもつ観測ノイズが内在されており、そのノイズ特性の理解や、観測ノイズと同程度の信号を持つ日~週スケールの断層すべりに伴う地殻変動現象の把握が必ずしも十分ではありません。そこで本課題では、情報科学と地震学の専門家の協働の下、統計学・機械学習に基づく革新的な測地データ解析手法を開発します。これにより地殻変動検知能力の向上を図ることでデータを余すところなく有効活用し、観測ノイズの特性を考慮した断層すべり把握手法を構築します。以上を通して断層すべりモニタリングシステムを確立することを目指します。このモニタリングシステムは、将来的な測地データ解析・システムの自動化により、リアルタイムに断層すべりの現状把握や短期的な推移予測を可能とし、測地データをベースにした短期的な地震発生確率評価手法の確立に繋がると期待されます。

 上述した目標の実現に向け、本課題では以下のような3つの研究項目を設定しました(図)。

 研究項目(A)「統計学・機械学習による地殻変動検知能力の向上」では、観測ノイズと同レベルの地殻変動を生じる短期的スロースリップイベントのような断層すべりに伴う地殻変動現象の正確な検知に向けた、統計学・機械学習による手法開発を行います。具体的には、成分分解を用いた地殻変動現象とノイズの自動分離や、スパース推定・深層学習による客観的な地殻変動検出、を通して地殻変動現象の検出事例数の飛躍的な増加を目指します。

 研究項目(B)「観測ノイズの特性を考慮した状態空間モデルの改良」では、現実の測地データに含まれる観測ノイズの時空間的特性を調べ、断層すべりの推定を行う手法である状態空間モデルに実装します。この際、ノイズモデルの精緻化に加え、機械学習を用いた複数の手法を検討・比較することで、より正確な断層すべりの推定を目指します。研究項目(A)(B)は関連しており、各々で得られるノイズの特性を相互にフィードバックすることで、ノイズ特性の理解の深化とその特性を活かした地殻変動検出手法の開発・断層すべり推定方法の高度化を行います。

 研究項目(C)「データ同化断層すべりモニタリングシステムの確立」においては、研究項目(A)(B)の成果を融合しつつ、断層面の摩擦の物理法則を考慮したデータ同化手法も導入することで、日~週スケールの断層すべりの短期予測手法を検討します。これにより完成するモニタリングシステムの性能を、南海トラフ全域の既存の測地データを用いて検証します。

 本課題で開発した測地データ解析手法を、測地データを用いた様々な研究に幅広く活用していただくことで、測地データに基づく地震・火山関連現象の理解に新たな展開をもたらすことができるよう、課題を推進していきたいと考えております。

 本課題では、情報科学を活用した測地データ解析の革新が、断層すべりモニタリングシステム確立に向けた重要な要素となります。そこで、情報科学・測地データ・断層すべり解析手法にそれぞれ精通している研究者9名による研究実施体制を実現しました(図)。また、ポスドク1名を雇用すると共に、参画メンバーが所属する研究室の大学院生も加えて課題を遂行していきます。

 本課題は本年度採択された5課題のうち唯一測地データを主として扱う課題です。測地データを扱う若手研究者や大学院生は全国的に見ても少なく、将来の測地データ解析を数理的な観点から支える人材の育成は急務と言えます。そこで本課題では月に1回程度の頻度で測地データ解析を中心とした関連分野の勉強会を実施しています。2021年11月までに開催した3回の勉強会ではGNSSや合成開口レーダー(InSAR)といった測地データの基礎的な内容やその地殻変動研究への応用事例について、研究協力者による紹介が行われ、課題内外問わず若手研究者や大学院生に参加していただきました。このような勉強会を今後も継続していきたいと思いますので、本課題あるいは勉強会に興味のある若手研究者・大学院生の皆さんの積極的な参画をお待ちしております。

(広報誌「地震本部ニュース」令和3年(2021年)冬号)

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