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  3. 「南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価」

(広報誌「地震本部ニュース」令和2年(2020年)春号)

地震本部 「南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価」

1)はじめに

 地震調査委員会では、将来発生する地震について地震発生可能性の長期評価(以下、「長期評価」という。)を取りまとめており、この長期評価に基づいて、将来発生する可能性のある津波の評価(以下、「津波評価」という。)を進めています。地震調査委員会が平成25 年5月に公表した「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)」(以下、「南海トラフの長期評価」という。)に基づいて、令和2年1月に「南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価」を公表しました。
 本津波評価は、南海トラフの長期評価において将来発生する可能性が高いとされているマグニチュード(M)8~9クラスの多様な大地震によって発生する津波を評価の対象としました。南海トラフ沿いの「最大クラスの地震」による津波は、その発生頻度を定量的に評価することが困難な稀な現象であることなどから、本津波評価の対象としていません。
 本津波評価では、平成29 年1月に地震調査委員会が公表した「波源断層を特性化した津波の予測手法(津波レシピ)」(以下、「津波レシピ」という。)を適用しました。将来発生する可能性がある多様な地震を考慮するため、確率論的な津波評価を行いました。

2)評価の流れ

 本津波評価の流れを図1に示します。
まず、南海トラフの長期評価で示されている次の大地震の震源域となる可能性のある震源域の組み合わせを基本として、震源域を組み合わせたパターンを多数設定し、その起こりやすさを考慮して重み付けを行いました。
 次に、津波レシピを適用し、各パターンを構成する波源断層に対して、すべり量分布の不均質性を考慮して最大水位上昇量(沿岸の津波高)を推計しました。津波計算結果に対しては、過去に南海トラフ沿いで発生した大地震による津波と比較し、妥当性を確認しました。
 震源域の組み合わせのパターンは膨大であり、その全てのパターンによる計算結果を個別に評価するのではなく、各パターンの重みに基づき、不確実性も考慮しながら、まとめて確率論的に津波評価を行いました。
 以下に詳しく説明します。

図1 南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価の流れ

図1 南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価の流れ

3)震源域の組み合わせのパターンの設定と重み付けについて

 本津波評価を行うために、まず南海トラフの長期評価に基づいて多様な震源域の組み合わせのパターンを設定しました。
 南海トラフの長期評価では、南海トラフの評価対象領域を図2のように分割し、その組み合わせとして次に起きる大地震の震源域となる可能性のある候補を示すことができるとしています。南海トラフの走向に沿った方向(概ね東西方向)には、Z・A・B・C・D・Eの6領域、プレートの沈み込む方向(概ね南北方向)には、浅部・中部・深部の3領域に分けています。
 本津波評価では、これら18 の領域の組み合わせから、今後震源域となり得る組み合わせを全て抽出し、176 の組み合わせのパターンを設定しました。
 次に、設定したパターンのそれぞれに対して、過去に発生したことのあるパターンを参照し、起こりやすさを重みで表しました。

図2 南海トラフの評価対象領域とその区分け(南海トラフの長期評価の図に加筆)

  図2 南海トラフの評価対象領域とその区分け(南海トラフの長期評価の図に加筆)

4)波源断層を想定した津波高の計算

 津波高を計算するための波源断層モデルを設定するにあたり、断層のすべり量分布の不均質が津波の発生に与える影響を考慮する必要があります。津波レシピに従って背景領域に比べてすべり量の大きな領域として大すべり域を設定しました。なお、津波レシピで設定できるとしている超大すべり域は、本津波評価では設定していません。
 大すべり域を設定した全ての波源断層モデルに対して、津波レシピに従って津波高の計算を実施しました。また、津波計算の妥当性は、昭和東南海地震、昭和南海地震、宝永地震の3事例について、史料や観測資料から知られている津波高の分布と津波計算値を比較して確認しました。
 なお、各パターンに含まれる大すべり域の位置・個数が異なる各ケースの重みは均等に扱いました。

5)確率論的津波評価結果

 各津波計算結果に、対数正規分布からなるばらつきを与えて、各パターンの重みをかけて重ね合わせると、津波計算が持つ計算誤差と、波源断層を特性化する影響を織り込んだ津波ハザードカーブ(海岸線に沿って配置したあるハザード評価点における、津波高とそれ以上の高さの津波が発生する確率〔超過確率〕との関係)が算出できます。
 津波ハザードは、津波高(最大水位上昇量)、超過確率、評価期間の3つの値の関係で決まるものであり、うち2つを固定すると残りの値が決まります。本津波評価では、評価期間を30 年、津波高を3m以上・5m以上・10m以上として確率論的に津波評価を行いました。超過確率は、この評価結果の精度を考慮して、6%未満、6%以上26%未満、26%以上の3段階のいずれかで分布図(図3~5)と市区町村ごと(場合によっては同一市区町村内でも複数に分割)の沿岸の確率を示しました。なお、これらの確率は2020 年1月1日を起点としています。

図3 今後30年以内に南海トラフ沿いで大地震が発生し、海岸の津波高が3m以上になる超過確率(2020年1月1日時点)
図3 今後30年以内に南海トラフ沿いで大地震が発生し、海岸の津波高が3m以上になる超過確率(2020年1月1日時点)
着色していない海岸線は津波高を評価していない。
図4 今後30年以内に南海トラフ沿いで大地震が発生し、海岸の津波高が5m以上になる超過確率(2020年1月1日時点)
図4 今後30年以内に南海トラフ沿いで大地震が発生し、海岸の津波高が5m以上になる超過確率(2020年1月1日時点)
着色していない海岸線は津波高を評価していない。
図5 今後30年以内に南海トラフ沿いで大地震が発生し、海岸の津波高が10m以上になる超過確率(2020年1月1日時点)
図5 今後30年以内に南海トラフ沿いで大地震が発生し、海岸の津波高が10m以上になる超過確率(2020年1月1日時点)
着色していない海岸線は津波高を評価していない。

(広報誌「地震本部ニュース」令和2年(2020年)春号)

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