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  3. 熊本県日奈久断層帯(海域部)における海底活断層調査

(広報誌「地震本部ニュース」平成30年(2018年)夏号)

地震調査研究推進本部 熊本県日奈久断層帯(海域部)における海底活断層調査

1.はじめに

 平成28年熊本地震(以下、「熊本地震」という。)では、2つの活断層帯(布田川断層帯・日奈久断層帯)の一部が破壊されました(図1)。熊本地震の際には、布田川断層帯では主に布田川区間が、日奈久断層帯では最北部の区間(高野−白旗区間)だけが活動して、それ以外の区間(宇土区間、宇土半島北岸区間、日奈久区間、八代海区間)は活動しませんでした。熊本地震で活動しなかった区間でも、近い将来に活断層が活動しないとは限りません。活断層の「次の活動」が差し迫っているかどうかを評価するためには、活断層の過去の活動を記録した地質構造を精度良く把握して、過去の活動履歴について信頼性の高いデータを取得することが必要です。産業技術総合研究所では、文部科学省から委託された「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」(研究代表者:九州大学 清水 洋)の一環として、布田川断層帯および日奈久断層帯の活断層調査を実施しています。ここでは、そのうち八代海における海底活断層調査について紹介します。

図1 布田川断層帯・日奈久断層帯および調査海域の位置図地震調査研究推進本部の評価にもとづく活断層の位置を赤線で示しました(破線は重力異常等によって推定された断層)。右下図の破線で囲まれた黄色で示した海域で調査を実施しました。

図1 布田川断層帯・日奈久断層帯および調査海域の位置図
地震調査研究推進本部の評価にもとづく活断層の位置を赤線で示しました(破線は重力異常等によって推定された断層)。右下図の破線で囲まれた黄色で示した海域で調査を実施しました。

2.八代海(津奈木沖)における海底活断層調査

 海域における活断層調査では、陸域における活断層調査と同じ手法による地形・地質の調査は困難です。そのため、反射法音波探査による海底面下のイメージングによって地質構造を把握します。海域における反射法音波探査は、水中(通常は海面直下)で発した音波が海底面およびその下の地層面で反射される性質を利用した探査方法です。また、海底面下の地層を貫いて採取した円柱状の堆積物コア試料を直接観察・分析することによって、地層が形成された年代や環境を調べます。今回の八代海における調査では、海上からボーリング調査を実施して、2地点において堆積物コア試料を採取しました。これらの調査に適したフィールドとして、海底活断層の分布域の中でも、最も新しい時代の地層(「沖積層」)が厚く分布する津奈木沖の海域を選定しました。

3.海底活断層の活動履歴

 反射法音波探査によって得られた垂直断面によって、海底活断層が形成する地質構造を把握することができます(図2)。「沖積層」の反射面(ほぼ水平な縞々模様)が、海底活断層を挟んで上下方向にずれている様子が認識できます。反射面の「上下方向のずれ」は、深い(古い)地層ほど、浅い(新しい)地層よりも大きくなっています。反射法音波探査によって得られた垂直断面と海上ボーリング調査の結果にもとづいて、最近11,000年間に少なくとも4回の「上下方向のずれ」を伴う地震が繰り返されたと推定されました。

図2 反射法音波探査と海上ボーリングで捉えた海底活断層による「上下方向のずれ」垂直断面を見ると、約11,000 年前よりも新しい時代の「沖積層」(オレンジ色の線で示した面よりも浅部)には、ほぼ水平の反射面が発達しています。これらの反射面は、海底活断層によって上下方向にずれています。

図2 反射法音波探査と海上ボーリングで捉えた海底活断層による「上下方向のずれ」
垂直断面を見ると、約11,000 年前よりも新しい時代の「沖積層」(オレンジ色の線で示した面よりも浅部)には、ほぼ水平の反射面が発達しています。これらの反射面は、海底活断層によって上下方向にずれています。

4.詳細な海底活断層の形状が示す右横ずれ運動

 反射法音波探査によって得られた探査データから、海底活断層の三次元的な形状についての検討も進めています(図3)。図2に示したような垂直断面に、水平方向にスライスした断面を組み合わせることによって、海底活断層の詳細な形状が明らかになりました(図4)。海底活断層は、海上ボーリングを掘削した海域付近で、鍵線状に折れ曲がっています(「右ステップ」と呼ばれます)。このように「右ステップ」した海底活断層の「水平方向のずれ(右横ずれ)」によって、断層付近に「凹み(沈降域)」ができていると推定されました。日奈久断層帯の陸上部分と同様に、海域においても「水平方向のずれ」があることが示唆されます。

図3 調査海域で得られた反射法音波探査の三次元的データ検討対象の海底活断層は図中のFault Aに対応します。また、図中のTNK-1およびTNK-2は、他の図におけるボーリング1およびボーリング2に対応します。

図3 調査海域で得られた反射法音波探査の三次元的データ
検討対象の海底活断層は図中のFault Aに対応します。また、図中のTNK-1およびTNK-2は、他の図におけるボーリング1およびボーリング2に対応します。

図4 水平方向にスライスした断面と海底活断層の形状海底活断層(ケバがついている側が相対的に低下)の詳細な形状が明らかになりました。海底活断層が「右ステップ」する場所にできた「凹み」は、白い矢印で示した「水平方向のずれ」によってできたと推定されます。

図4 水平方向にスライスした断面と海底活断層の形状
海底活断層(ケバがついている側が相対的に低下)の詳細な形状が明らかになりました。海底活断層が「右ステップ」する場所にできた「凹み」は、白い矢印で示した「水平方向のずれ」によってできたと推定されます。

5.まとめ

 八代海における海底活断層調査の結果、この地域では過去11,000年間に少なくとも4回の「上下方向のずれ」を伴う地震が繰り返されたことがわかりました。また、その動きは、日奈久断層帯の陸上部分と同様に、「水平方向のずれ」も伴っているようです。
 ここで紹介したように、海域における活断層調査では地球物理学的な手法と地質学的な手法を組み合わせることで、「沖積層」に代表される新しい時代の地層の構造を精度良く検討できる強みがあります。我々は今後も陸域および海域における活断層調査のそれぞれの長所を生かした調査・研究を引き続き推進し、活断層や古地震に関する信頼性の高い情報を提供していきます。

(広報誌「地震本部ニュース」平成30年(2018年)夏号)

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