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  1. 地震・津波の知識
  2. コラム
  3. 長周期地震動対策に役立つ情報発表を目指して
地震調査研究推進本部2017年春

調査研究レポート 南海トラフでの海底・孔内観測網による海底地殻変動モニタリング ー国立研究開発法人海洋研究開発機構ー

1. はじめに

 地震の発生を検知次第、直ちに発表される緊急地震速報、そして震度の情報。これらは揺れに備える緊急行動のほか、事態の把握、応急対策の初動判断や被害推定のための基盤的な防災情報として、テレビ・ラジオ、スマホやJアラート、防災行政無線など多様な手段で広く国民へ伝達され利用されています。震度と対応する揺れや被害の目安がよく理解されていること、また震度から災害の様相や程度がおおよそ推測できること、そして迅速かつ的確な震度観測体制が整っていることが、震度を利用した防災情報の価値を決定付けています。
 しかしながら、明治以来大多数を占める低中層の建築物での揺れや被害の様相などを基にした人による体感観測から、27年前に世界に先駆けて開発した震度計による機械計測へ移行した震度は、近年大都市圏などで多くの住民や就業者が利用する長い固有周期を持つ高層ビルなどを揺らす長周期地震動の大きさや揺れの様相を必ずしも適切に示すものではないことを留意しなければなりません。震源地から離れ震度がさほど大きくない場所でも、高層ビルの上層階では重い家具やオフィス機器が人に衝突してくるような大きな揺れを何分間も引き起こす長周期地震動に襲われることがあり、震度ではそのような地震動の大きさや揺れの様相を伝えることができません(図1)。

図1 震度の算出に用いるフィルター特性と固有周期の長い高層と短い低層の建物の対応イメージ
(震度は青帯部分、周期が2秒あたりより短い地震動の観測に適しています)


2. 気象庁の取り組み

 国においては、地震調査研究推進本部による相模トラフ巨大地震などを対象とした長周期地震動予測地図試作版の公表、内閣府による南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動の推計の公表やそれを踏まえた国土交通省による超高層建築物等における長周期地震動対策に関する通知など、長周期地震動に関する調査研究や対策の検討が進められています。東京消防庁や高層住宅を抱える自治体では、家具などの転倒対策の徹底を目指した取組などが進められています。また、民間においては、ビルの揺れを抑える制振ダンパーなど高性能な制振技術やエレベーターの地震対策として長周期地震動を感知し管制運転する技術の開発や導入などが取り組まれています。
 気象庁では、地震活動を24時間監視し、国民や防災関係機関等へ適時適切な防災情報の提供を担う行政機関として、高層ビルなどにおける長周期地震動対策に役立つ新たな情報の実用化に向けた取組を進めています。
 東日本大震災後、有識者等による検討会を設置し、高層ビルの急激な増加など都市化の進展や南海トラフ沿いの巨大地震などで発生する長周期地震動の大きさを踏まえ、長周期地震動に関する情報の基本的なあり方を平成24年3月にとりまとめました。
 平成25年3月、震度に続く第2の地震動の指標として、高層ビル内での揺れの状況の目安となるよう長周期地震動の強さを4階級で表す「長周期地震動階級」を策定し、新しい指標に対する利用者のご意見等を伺うため、気象庁ホームページでこの観測情報の提供を試行として開始しました。震度1以上を観測した気象庁の震度観測点の長周期地震動階級を、地域内の最大階級値を示す分布図と合わせ、地震発生後20分程度で公表します。試行開始以来、長周期地震動階級3以上を観測した地震は6個、そのうち階級4を平成28年(2016年)熊本地震により熊本県熊本地方で観測しました(2018年3月28日現在)。気象庁ホームページでは、これら過去地震のデータ閲覧も可能です(図2、図3)。

図2 長周期地震動階級と高層ビルにおける人の体感・行動、室内の状況等との関連


図3 ( 左)平成28年(2016年)熊本地震(4月16日、M7.3)で観測した長周期地震動階級の分布図
(右)階級4を観測した熊本西区春日の観測点(熊本地方気象台)における絶対速度応答スペクトル(Sva)プロット図
(赤、橙、黄、青の横線は、それぞれ階級4,3,2,1以上となるSvaの閾値、黒の水平2成分合成Svaが周期2秒台を中心に赤線100cm/sを越えて観測)


 観測情報については、ホームページでの公表がより使いやすく安定的に運用できるよう改善を行いつつ、高層ビルなどで感じた揺れの理解や長周期地震動の発生状況を把握したい人々が様々なメディアから即時に入手できるよう電文形式での配信を検討しています。
 続いて、平成29年3月、有識者等による検討会は、任意の地点の長周期地震動階級を即時的に予測する式を使って長周期地震動階級3以上を予測した地域を緊急地震速報(警報)として発表すること、高層ビルなどが立地する地点毎の長周期地震動階級などの予測やビルの構造特性などを考慮した揺れの予測など多様なニーズに対応する予測情報が必要であることをとりまとめました(図4)。多様なニーズに対応する予測情報の実現には民間の情報提供サービスの役割が期待されます。現在、有識者、建設事業者、ビル管理者、研究機関等からなるワーキンググループを設置し、予測情報の提供と利活用における課題の検討を進めています。

図4 長周期地震動に関する予測情報の概念図


3. 今後にむけて

 東京などの高層ビルが大きく長い揺れに襲われた東日本大震災や南海トラフ沿いの巨大地震により大震災を上回る長周期地震動が想定された三大都市圏など、高層化が進む都市では長周期地震動の脅威は益々大きくなっています。長周期地震動階級やその情報が、今後、震度のように基盤的な防災情報として認知・利用されるには、高層ビルなどで大きく長い揺れに遭遇してしまった体験やその共有の蓄積が特に有用であり、気象庁では国民各層への長周期地震動に関する普及啓発を進めると共に、多くの国民が利用する高層ビルなどでの被害の防止・軽減に役立つ長周期地震動に関する情報の適時適切な発表を目指していきます。

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