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関東地方の浅部・深部統合地盤構造モデルの構築

 地震時の揺れ(強震動)による被害の大きさを左右する一つの要因に、地盤の影響が挙げられます。特に、建物にはその大きさ高さによってそれぞれ揺れやすい固有周期があり、地盤の卓越周期と共振することで、被害が大きくなると考えられています。地盤の違いによる揺れやすさを精度高く予測するには、この地震時の地盤による揺れ方の違い(周期特性・増幅特性)を説明できるような地盤モデルを構築することが重要な課題の1つです。現在、私たちは、関東地域全域(1都6県)において強震動予測をより高度化するための「浅部・深部統合地盤構造モデル」を構築しています。全国地震動予測地図2017 年度版(P.2 ~ 3)ではこのモデルが活用されており、理論波形計算に用いた深部部分の構造モデルが公開されています。
 「浅部・深部統合地盤構造モデル」は、地震が発生する深さ(関東平野部では深さ1 ~ 3km)にある硬い岩盤から地表付近の沖積層等の軟弱層までの地盤構造モデルで、活断層などの震源から地表に伝わるまでに、地震動がどのように増幅するのかを再現できるように作成手法を検討しています。これまで、地震本部で強震動予測のために作成・公開されてきた地盤構造モデルは、建物を建てる際に支持基盤(工学的基盤)となる深さ数十メートル程度から地震が発生する硬い岩盤までの三次元で作成された「深部地盤構造モデル」で、工学的基盤よりも浅い地表付近までの「浅部地盤構造モデル」は微地形区分と呼ばれる全国を約20 種類程度の地形・地質分類によって検討された「地盤増幅率」を活用しています。しかし、この増幅率では周期ごとの増幅特性は分かりません。地震による揺れを再現するためには、地表付近の地盤を詳細に調べ、工学的基盤の深さと地表付近までの構造を設定した浅部地盤構造モデルを作成して深部構造モデルと結合し、全体を再構築する必要があります。

関東地域全域で作成した「浅部・深部統合地盤モデル」に基づく工学的基盤(Vs=400m/s) からの周期1秒の応答増幅倍率(一次元重複反射法による暫定結果)

関東地域全域で作成した「浅部・深部統合地盤モデル」に基づく工学的基盤(Vs=400m/s)
からの周期1秒の応答増幅倍率(一次元重複反射法による暫定結果)

 関東地方の浅部・深部統合地盤構造モデルを構築するため、最初に関東地域全域において自治体や民間等からボーリングデータ( 約28 万本) を収集し、地表から工学的基盤までの浅部地盤構造モデル(地質モデル)を作成しました。 次に、既往の深部地盤構造モデル(J-SHIS 深部モデル) と結合し、初期モデルを作成しました。最後にこの初期モデルを基に、K-NET、KiK-net、気象庁および自治体等の地震観測点における地震記録と、関東地域全域にて約1 ~ 2km 間隔、約11,000 カ所で実施した微動アレイ観測結果を利用して、浅部地盤と深部地盤の接続部分を修正し、地震動の計算に最も重要な地盤の硬軟を表すS 波速度や層厚の設定等を行いました。 これらの計算結果に基づいて、約250mメッシュ単位の地盤構造モデル及びモデルから計算される各種増幅指標(最大速度増幅率、震度増分、周期毎の応答増幅倍率等)のマップを作成しました。現在もモデルの精度向上の検討を続けており、徐々に関東地域の地盤の揺れやすさの詳細が明らかになっています。
 最後に、本モデル化作業は,総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施されました。  また、微動アレイ観測・ボーリングデータの収集にあたっては、関係自治体に多大なご協力をいただきました。記して感謝の意を表します。


地下構造モデル公表ページ:
(https://www.jishin.go.jp/evaluation/seismic_hazard_map/underground_model/)

先名 重樹(せんな・しげき)

先名 重樹(せんな・しげき) 国立研究開発法人防災科学技術研究所 社会防災システム研究部門 主幹研究員
東京工業大学大学院博士課程修了。博士(工学)。専門は地盤地震工学。強震動予測のための地盤構造モデルの作成や地盤調査・解析手法の研究開発を行っている。


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