前回は、地震断層モデルの設定についてご紹介しました。今回は、その中でも兵庫県が重要視すべき断層を抽出するにあたって、長期評価を参考にした点も含め紹介します。
(1)震度分布
地震本部の公表データ等を活用し、震度分布図を作成しましたが、1つ問題点として、県外断層の場合は、地震本部が公表しているデータでは、 図1のように県域全体を包括しないデータとなることもあります。
例えば、地震本部で解析した範囲外にも県内で震度5強が見込まれそうな上町断層については、再計算するなどして対応しました。
(2) 地震被害の類型化
県内に影響を及ぼす震度5強以上の断層について被害想定を行うこととし、65地震を対象としましたが、当然、各地震の発生確率や地震規模は異なり、また、被害の状況も都市部と中山間地では異なります。
そこで、対象とした65地震を図2のとおりマトリックスにより類型化し、特に注意を要する地震や発生確率の高い地震(東南海・南海地震、山崎断層帯地震、上町断層帯地震)、地域において注意すべき代表的な地震(中央構造線断層帯地震、養父断層帯地震)の主要5地震を選び出しました。
地震本部の長期評価を参考にしたのはもちろんですが、例えば養父断層など、地震本部の主要活断層に取り上げられていない断層であっても、県内の地域バランスを考慮し地震被害の空白域が出ないような配慮を行いました。
(3)地震被害シナリオ
主要5地震については、より詳細な地震被害想定項目を行うととともに、被害ボリュームを作成するだけでなく、被災時に何が起こるかのシナリオを作成することとし、災害のイメージを共有化できることを目指しました(図3)。
的被害及び建物被害、避難者数を算出しました。さらに、類型化した主要5地震については、交通施設、ライフライン施設、帰宅困難者、経済被害など定量的に評価できる項目だけでなく、被害シナリオを作成できるように、避難所の状況や病院等の状況など定性的な評価も行いました。
(4)被害想定項目
全65地震については、揺れ、液状化、火災による人的被害及び建物被害、避難者数を算出しました。さらに、類型化した主要5地震については、交通施設、ライフライン施設、帰宅困難者、経済被害など定量的に評価できる項目だけでなく、被害シナリオを作成できるように、避難所の状況や病院等の状況など定性的な評価も行いました。
現在、昨年度までの地震被害想定見直し作業を受けて、県地域防災計画の修正作業を行っています。
平成23年3月11日に発生した東日本大震災の時点で、ほぼ被害想定の成果が固まっていました。想定内容の再見直しも考えましたが、この度の東日本大震災を踏まえた新たなデータ等が揃うのはまだかなり先になることが予想されるため、現時点では大きな見直しは行わないこととしました。
ただし、特に被害の大きかった津波災害については、暫定的に既存想定の2倍の高さの津波を想定し、その津波高よりも標高が低い地域を「津波被害警戒区域」として津波からの避難を考えておく地域として示し、市町における避難対策を考えるうえでの資料として公表しています( 図4)。
地震本部のデータを活用した兵庫県の地震被害想定見直し作業についてご紹介しましたが、想定以上の災害が発生することもあります。
災害対策の上では、最悪のシナリオを想定しておくことが基本とされています。地震本部で公表された学術的に整理されたデータを基本に、兵庫県においては、各市町役場直下に断層を設定することや、発生確率は低いけれども、特定の地域には大きな被害が発生する場合などを複合的に考慮し、最悪のシナリオを考えました。
地震については、まだまだ判明していない点が多くありますが、今後、さらに地震本部などで新たな知見が蓄積され、それが防災対策に還元されていくことを期待しています。
(広報誌「地震本部ニュース」平成23年(2011年)9月号)