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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 兵庫県地震被害層における地震本部成果の活用1

(広報誌「地震本部ニュース」平成23年(2011年)8月号)




 兵庫県に大きな被害をもたらした阪神・淡路大震災発生から16年が過ぎました。この震災を契機に成立した地震災害対策特別措置法による「地震に関する調査研究の推進のための体制の整備」のため、地震調査研究推進本部(以下「地震本部」)が設置されました。
 これまで、地震本部では、主要な活断層や海溝型地震について、断層の活動間隔や次の地震の発生可能性を評価する長期評価結果を公表してきました。あわせて、震源断層モデルを作成したうえ「地震動予測地図」などにより地域の危険を目に見える形で公表してきま
した(図1)。
 それら公表された震源断層は、全国約2,000もあると言われている活断層の中のほんの一部ともいえますが、災害対応を考える行政機関にとって、対象とすべき地震を明確にするうえで大変参考となる資料です。
 兵庫県では、平成21〜22年度において地震被害想定の見直し作業を実施し、その基礎データとして地震本部から公表されているデータを活用しました。
 今回と次回で、どのように地震本部のデータを活用してきたかも含めて、本県の地震被害想定の作成手法についてご紹介します。今回は地震動予測地図を活用した震度分布図作成までの前提条件の整理についてご紹介します。


(1)阪神・淡路大震災前
 阪神・淡路大震災が起こるまで、兵庫県地域防災計画では過去における地震の発生状況をもとに、以下の4つの地震を想定してきました。
①紀伊半島沖で発生する海洋性巨大地震(M8.4)
  過去の事例:1946年南海地震
②日本海沿岸で発生する内陸部地震(M7.0)
  過去の事例:1925年北但馬地震
③県南西部で発生する内陸部地震(M7.0)
  過去の事例:868年播磨国地震(山崎断層地震と思われる)
④枚方周辺で発生する内陸部地震(M7.0)
  過去の事例:1596年慶長伏見地震(有馬−高槻断層帯の地震と思われる)

(2) 阪神・淡路大震災後
 平成10年度に阪神・淡路大震災を踏まえて実施した地震被害想定においては、地震の規模は「新編日本の活断層(東京大学出版会)」などを参考に、当時の最新研究成果から想定される最大のものを設定し、5つの断層等を設定しました(図2)。
 また、特徴的なものとして、当時日本海側に明確な断層が見つかっていなかったことから、円山川河口付近に「日本海沿岸地震」と位置付けて仮想断層を設定し、もしもの時に備えることとしていました。


 前回の地震被害想定から10年以上が経過し、その間、地震本部により全国各地の震源断層の調査・評価が行われ、「地震動予測地図」において断層モデルが公表されてきました。
 また、中央防災会議の専門調査会において「中部圏・近畿圏の内陸地震に関する報告(平成20年12月)」が行われ、兵庫県では、山崎断層帯地震がこれまで想定していた北西部だけでなく、南東部と連動して発生するケースについての被害軽減対策を考える必要があ
るとされました。そのことから、最新の知見を踏まえて、平成21年度より地震被害想定の見直しを行うこととしました(図3)。

                            図3 地震被害想定調査実施フロー

(1)想定地震、想定断層
 これまでの地震被害想定では、県内の内陸型断層のみ設定していましたが、県外断層も含め兵庫県に震度5強以上を生じさせる断層についても、地震本部が地震動予測地図を作成した際に検討対象としていた主要断層を基本に、想定地震とすることとしました(図4)。
 また、今回の被害想定では、断層の全てが判明しているわけではないことも考慮し、各市町役場直下(41 市町)にM6.9の伏在断層を設定し、各市町における伏在断層における最大級の被害想定も行うこととしました。
 こうした想定を行うことで、いつ、どこで大地震が発生しても市町レベルでの効果的な地震予防対策や迅速かつ適切な災害対応策の実施を目指しました。最終的に、海溝地震をあわせ全部で65地震を対象としました。

(2)断層モデル、地盤モデル
 断層モデルは、地震本部が地震動予測地図を作成したモデルをそのまま使用することとし、地震本部が公表したそれぞれのモデルによる各地点の計測震度から震度分布図を作成しました。いくつかは、オリジナルの断層モデルを作成しましたが、65 の地震について被害
想定を行う断層モデルを一から作成することと比べて、期間及び費用をかなり圧縮できました。
 一方、地盤の増幅率を計算するうえでの地盤モデルは、地震本部が使用しているAVS30のデータを兵庫県内の入手可能なボーリングデータで補正しました。ボーリングデータの多い地域(神戸・阪神間)では、現状に則した補正が可能でしたが、ボーリングデータの少ない
中山間地では補正には限界がありました。
 なお、使用した断層モデルと地盤モデルのデータは、250mメッシュで作成されており、今では(独)防災科学技術研究所が運営するJ-SHIS(地震ハザードステーション)のホームページでダウンロードすることが可能で、広く一般に公開されています(図5)。

 次回は、兵庫県が重要視すべき地震について、被害シナリオを作成していく際に、地震本部の長期評価等を参考に地震被害の類型化を行ったことについてご紹介します。

図4 兵庫県に震度5強以上を生じさせる断層

(広報誌「地震本部ニュース」平成23年(2011年)8月号)

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