昨年4月6日にイタリアのラクイラで起きたマグニチュード6.3の地震により308名が亡くなった。ラクイラ地域ではこの地震の前に群発地震が活発化しており、その活動の評価のためイタリア市民保護局の諮問機関である重大リスク委員会がこの地震の6日前に開かれ、委員会の委員長代理は「大地震の危険はない」と発表していた。地元の検察は、委員会が市民に地震危険の警告を出さなかったことは過失致死罪にあたるとして、地震学の専門家を含む委員会のメンバーを過失致死罪で告訴した。
このニュースは世界の地震学や関連する分野の研究者に衝撃を与えるとともに、日本の地震調査研究の在り方に問題を投げかけた。イタリアの地震学の専門家8名が今回事前に観測された現象では、地震発生の予測は科学的に不可能であるとして、イタリアの大統領に「起訴不当」とする手紙を送るとともに、支持の署名を国内外の関係者に呼びかけた。米国地震学会や科学振興協会などがこの手紙への支持を表明し、日本地震学会の会長からも署名の呼びかけがなされている。
地震の起こる時期を、警報を出せるほどの確かさで予知することは、現在の科学技術の水準では一般的に困難であり、検察当局による起訴は明らかに不当である。一方で、この事件は、事前に観測された現象で、地震発生の予測が可能であったかの科学的検証だけでなく、不確かさを考慮して住民にどのような警告がなされるべきであったか、について専門家の責任を問うている。
上記の委員会の議事録には、「大地震の危険はない」との専門家の発言はないが、「群発地震の活動が大地震になるとは限らない」「ラクイラは地震危険度が高い地域なので、大地震が発生する可能性は否定できない」などさまざまな専門家の意見が記されている。
観測された現象から、その将来の予測について、科学的に明確な結論が出せないが、もし起これば大きな災害発生の可能性が高いとき、不確かさを考慮してリスクを評価し、災害予測情報を社会に発信することは、災害を軽減するうえできわめて重要である。しかしながら、これほど多くの犠牲者が出た原因は、地震が予測できなかったことにあるのではなく、むしろビルが十分な耐震性能をもっていなかったことにあったということを明確にする必要がある。
今回のケースでは、大地震がいつ起こるかよりも、大地震が起こったら、どのような揺れが生じ、どのような建物が危険かなどの防災情報の発信がより重要だった、と考える。
このニュースは世界の地震学や関連する分野の研究者に衝撃を与えるとともに、日本の地震調査研究の在り方に問題を投げかけた。イタリアの地震学の専門家8名が今回事前に観測された現象では、地震発生の予測は科学的に不可能であるとして、イタリアの大統領に「起訴不当」とする手紙を送るとともに、支持の署名を国内外の関係者に呼びかけた。米国地震学会や科学振興協会などがこの手紙への支持を表明し、日本地震学会の会長からも署名の呼びかけがなされている。
地震の起こる時期を、警報を出せるほどの確かさで予知することは、現在の科学技術の水準では一般的に困難であり、検察当局による起訴は明らかに不当である。一方で、この事件は、事前に観測された現象で、地震発生の予測が可能であったかの科学的検証だけでなく、不確かさを考慮して住民にどのような警告がなされるべきであったか、について専門家の責任を問うている。
上記の委員会の議事録には、「大地震の危険はない」との専門家の発言はないが、「群発地震の活動が大地震になるとは限らない」「ラクイラは地震危険度が高い地域なので、大地震が発生する可能性は否定できない」などさまざまな専門家の意見が記されている。
観測された現象から、その将来の予測について、科学的に明確な結論が出せないが、もし起これば大きな災害発生の可能性が高いとき、不確かさを考慮してリスクを評価し、災害予測情報を社会に発信することは、災害を軽減するうえできわめて重要である。しかしながら、これほど多くの犠牲者が出た原因は、地震が予測できなかったことにあるのではなく、むしろビルが十分な耐震性能をもっていなかったことにあったということを明確にする必要がある。
今回のケースでは、大地震がいつ起こるかよりも、大地震が起こったら、どのような揺れが生じ、どのような建物が危険かなどの防災情報の発信がより重要だった、と考える。
(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)9月号)