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  3. 「全国地震動予測地図」2010年版を公表

(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)6月号)


 地震調査研究推進本部地震調査委員会は、それまでの「全国を概観した地震動予測地図」を大幅に改良した「全国地震動予測地図」を平成21年7月に公表しました。その後、新たに公表した活断層の長期評価(一部改訂を含む)の結果や、地震発生確率の算定基準日の更新などを反映した「全国地震動予測地図」(2010年版)をとりまとめ、平成22年5月に公表しましたので、その概要について紹介します。
 今回公表した「全国地震動予測地図」については、国民の皆さんの防災意識の向上や効果的な地震防災対策を検討する上での基礎資料として活用されることを期待しています。


 日本では全国どこでも地震が発生する可能性がありますが、この中で、特に地震が発生する可能性が高いとされる主要活断層帯として指定された全国110の活断層帯及び主要な海溝型地震を対象に、調査観測・研究が実施されています。地震調査委員会では、これらの調査観測・研究から得られた結果等に基づき、地震の発生場所、規模、将来的な発生確率についての評価(長期評価)を行うとともに、強震動予測手法の高度化の一環として震源断層を特定した強震動評価を行い、結果を公表しています。さらに、それらの評価等の結果をとりまとめた「全国地震動予測地図」を作成・公表しています。
 「全国地震動予測地図」は、「確率論的地震動予測地図」と「震源断層を特定した地震動予測地図」という、観点の異なる2種類の地図で構成されています。「確率論的地震動予測地図」は、さまざまな地震の発生場所・規模・発生確率を考慮して、地図上の各地点において、今後のある一定の期間内に強い揺れに見舞われる可能性を示したものです。それに対して、「震源断層を特定した地震動予測地図」は、ある特定の地震が発生した場合に、周辺に生じると予測される強い揺れの分布を示したものです。


 地震調査委員会では昨年(平成21年)、以下の活断層において、長期評価(一部改訂も含む)を行い、公表しました。
 ・高田平野断層帯(3月公表)
 ・六日町断層帯(6月公表)
 ・安芸灘断層群(6月公表)
 ・神縄・国府津−松田断層帯(一部改訂、6月公表)
 ・琵琶湖西岸断層帯(一部改訂、8月公表)
 ・庄内平野東縁断層帯(一部改訂、10月公表)
 ・福井平野東縁断層帯(一部改訂、12月公表)
 「震源断層を特定した地震動予測地図」においては、公表した長期評価に基づき、新たに評価された断層及び位置・形状が見直された断層について、予測される揺れの強さを地図で表現しました。
 「確率論的地震動予測地図」においては、計算条件を以下のとおり変更しました。
 ①主要活断層帯と海溝型地震の地震発生確率を算定するための計算基準日の変更
算定基準日を「平成21年(2009年)1月1日」から「平成22年(2010年)1月1日」に変更。
 ②公表した長期評価の評価結果(一部改訂も含む)の反映


 図1に今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率(平均ケース)の分布図を、図2に昨年7月に公表した2009年版の確率の値との差分(平均ケース)を示します。
 地震発生確率を算定するための計算基準日を変更し、前回の地震発生からの経過年数が1年間進んだために、発生間隔が比較的短い海溝型地震については、顕著に発生確率が上昇します。例えば、南海地震については、今後30年以内に発生する確率は2%程度上昇しており、その影響を強く受ける地域では、強い揺れに見舞われる確率が上昇しています。それに対して、活断層で発生する地震については、発生間隔が海溝型地震と比較して相対的に長いため、経過年数の更新の影響は少なく、主に新たな長期評価結果により地震の発生確率が変わったことが結果に反映されています。
その結果、海溝型地震の影響が大きい、関東地方南部から四国地方にかけての太平洋沿岸地域、北海道東部(図中a)や青森県東部(図中b)では、確率の上昇が見られます。
 その一方で、新潟県沿岸部(図中c)では確率の若干の下降が見られますが、それは、この地域の震源断層を予め特定しにくい地震の最大規模を見直し、7.2から6.9に変更したことによります。
 この他、以下の地域において、新たに公表した活断層の長期評価結果を反映したことにより確率が上下しています。
 ・新潟県中越地方(図中d)の下降 六日町断層帯の長期評価
 ・新潟県上越地方から長野県北部(図中e)の上下 高田平野断層帯の長期評価
 ・福井県北部(図中f)の下降 福井平野東縁断層帯の長期評価の一部改訂
 ・琵琶湖周辺(図中g)の下降 琵琶湖西岸断層帯の長期評価の一部改訂
 ・山口県南東部(図中h)の上昇 安芸灘断層群の長期評価


 今回更新した「全国地震動予測地図」は、現時点で利用できる最新の情報や適切と考えられる手法を用いて作成したものですが、震源断層や地下構造のモデル化等、今後も検討を進めていくべき課題は残っています。また、地震調査研究推進本部が平成21年4月にとりまとめた「新たな地震調査研究の推進について−地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」においても、地震動予測手法や活断層評価の高度化と、それらの実現による地震動予測地図の高度化が、今後取り組むべき目標として挙げられています。これらを受けて、地震調査研究推進本部では、今後も新たな知見による手法の改良等を進め、継続的に地震動予測地図の作成手法を見直していきます。


  図1 今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率        図2 昨年7月に公表した2009年版の確率の値との差分

(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)6月号)

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