地震調査研究の推進について
 
 
地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての
総合的かつ基本的な施策
 
 
(案)
 
 
 
平成11年1月
  
 
地震調査研究推進本部
 
政策委員会
 
総合的かつ基本的な施策に関する小委員会
 




総合的かつ基本的な施策に関する小委員会報告について

 

はじめに
 

第1章 総合的かつ基本的な施策の策定にあたって

1.基本的目標及び性格

2.策定にあたっての基本的認識
 

第2章 地震調査研究の推進方策 1.地震調査研究の推進とその基盤整備

(1)地震に関する基盤的調査観測の推進

(2)地震に関する調査観測研究データの蓄積・流通の推進

(3)基礎的、基盤的研究の振興

(4)地震調査研究推進における国の関係行政機関、調査観測研究機関、大学等の役割分担及び連携

(5)地震防災対策側からの要請の地震調査研究推進への反映
 

2.広範なレベルにおける連携・協力の推進

(1)地震防災工学研究の推進と地震調査研究との連携促進等

(2)地震調査研究の成果の活用にあたって必要とされる国民の理解のための広報の実施

(3)地震調査研究の成果の活用にあたっての国の役割と地方公共団体の役割への期待

(4)推進本部と地震調査研究に関連する審議会等との連携

(5)国際協力
 

3.予算の確保、人材の育成等

(1)予算の確保及び効率的使用等

(2)人材の育成及び確保
 

4.地震調査研究の評価のあり方
 

第3章 当面推進すべき地震調査研究
    1.活断層調査、地震の発生可能性の長期評価、強震動予測等を統合した地震動予測地図の作成
(1)陸域及び沿岸域の地震の特性の解明と情報の体系化

(2)海溝型地震の特性の解明と情報の体系化

(3)地震発生可能性の長期確率評価

(4)強震動予測手法の高度化

(5)地下構造調査の推進
 

2.リアルタイムによる地震情報の伝達の推進

3.大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域及びその周辺における観測等の充実

4.地震予知のための観測研究の推進

 

むすび
 
参考



 
政策委員会委員長宛て
 
 
総合的かつ基本的な施策に関する小委員会報告について
 

総合的かつ基本的な施策に関する小委員会は、地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策について、平成9年10月以来、議論を進めてきたところであり、今般、これまでの議論を踏まえ、小委員会としての案をとりまとめたので、別添のとおり報告する。
 

 地震調査研究に関する総合的かつ基本的な施策は、多くの関係機関、関係者、さらには一般国民に関係するものであり、今後、これら関係各方面の意見を求め、さらに、地震防災対策特別措置法の規定に基づき中央防災会議の意見を聞いて、最終的な施策とすることが必要である。

 

総合的かつ基本的な施策に関する小委員会
主査 片山 恒雄
 
 文書の先頭へ戻る


 
(別添)
はじめに

 

 

 阪神・淡路大震災を契機として地震防災対策特別措置法(平成7年6月16日 法律第111号)が議員立法により成立し、同法に基づき総理府に地震調査研究推進本部(以下、「推進本部」という。)が発足した。推進本部は、その主要な任務のひとつとして、地震に関する観測、測量、調査及び研究(以下、「地震調査研究」という。)の推進について総合的かつ基本的な施策を立案することとされている。
 

この総合的かつ基本的な施策は、推進本部の活動の指針となるべき重要な施策であるので、慎重かつ十分な検討を経て、今般、その策定に取り組むこととした。
 

 文書の先頭へ戻る

第1章 総合的かつ基本的な施策の策定にあたって

 

地震調査研究の推進についての総合的かつ基本的な施策の策定にあたっての基本的な考え方は以下のとおりである。
 
 
1.基本的目標及び性格

 

推進本部の設置の根拠となっている地震防災対策特別措置法は、「地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進について総合的かつ基本的な施策」を立案するとしている。
 

この総合的かつ基本的な施策により推進すべき地震調査研究の基本的目標は、地震防災対策特別措置法の趣旨に則して、地震防災対策の強化、とくに地震による被害の軽減に資することである。
 

本施策は、単に、地震調査研究の基本的な方向性を示すのみならず、地震調査研究の効果的な推進及びその成果の活用のために必要な施策をも含むものとする。また、本施策は、その性格上、今後、10年程度にわたる地震調査研究推進の基本となると同時に、推進本部が行う予算等の事務の調整、総合的な調査観測計画の策定、広報等の指針となるべきものとする。地震防災対策特別措置法において、本施策の立案に当たっては中央防災会議の意見を聴かなければならないとあることを踏まえると、本施策は、地震調査研究の成果を地震防災対策に活かす方策を示すとともに、地震防災対策に関係する者からの要請を地震調査研究の推進に反映させる方策を示すものでなければならない。
 

 文書の先頭へ戻る
2.策定にあたっての基本的認識

 

 我が国の防災対策は、中央防災会議の定める防災基本計画に示される方針の下に進められており、地震防災対策もこの枠組に含まれている。中央防災会議の「防災基本計画(震災対策編)」(平成9年6月)は、災害予防、災害応急対策、災害復旧・復興、津波対策と、広範な震災対策を提示しており、地震調査研究もその中に位置づけられる。即ち、本報告書で述べる地震調査研究の推進施策は、地震防災対策全般の一部であり、地震による被害の軽減を図るためには、さらに広範な地震防災対策の推進が必要であり、地震調査研究の成果を地震防災対策に活かすことが求められる。
 

地震防災対策と地震調査研究は、相互に連携を図りながら推進されなければならない。具体的には、地震防災対策に関係する者からの地震調査研究に対する要請が地震調査研究の推進に係る施策に適切に反映されるとともに、地震調査研究の成果を国の地震防災対策等に反映させるように努めなければならない。これらの観点から、地震調査研究の成果として、どのような情報を出していけば地震防災に活かせるかを常に念頭に置き、地震調査研究の方向を考えるべきである。地震防災対策は、国民の対応によるところも大きく、具体的な地震調査研究に関する施策の策定に際しては、国民による地震調査研究の成果の活用を常に意識する必要がある。このため、国民の身近で行政を行う地方公共団体や、防災対策で重要な役割を果たす官民の防災関係機関による地震防災につながる調査研究の実施及びその成果の活用を重視すべきである。
 

また、地震発生の予測は重要であり、地震による被害の軽減にあたって地震予知に対する期待は高い。過去に繰り返し活動している活断層による地震や海溝型の地震について、その活動履歴などに関する調査研究の進んでいる場合には、過去の活動の知見等を踏まえて、将来起こる地震の場所や最大規模のある程度の予測が可能となっている。しかし、時期、場所、規模という地震予知の3要素のうち、地震の起こる時期を、警報を出せるほどの確かさで予知することは、異常な地殻の変動等の現象が現れた場合に予知できるとされている「東海地震」を除き、現在の科学技術の水準では一般的に困難である。このため、重要な構造物や施設等の地震被害の軽減対策に地震調査研究の成果が積極的に活用できるよう、その推進及び成果の普及に努めなければならない。

 他方、警報を出せる程度での地震の直前予知が可能となれば、適切な予防措置をとることによって、地震による人的被害や火災等の二次災害の発生を大幅に軽減できる。このため、地震予知に関する努力は着実に継続することが適切である。
 

地震発生の長期的な予測の精度向上によって、ある地域において、大きな被害をもたらすと予想される地震発生までの期間がある程度明確になれば、それに応じた地震防災対策が可能となる。仮にそれが明確に示せない場合においても、起こりうべき地震の規模及びその可能性の程度が予測できれば各種の地震防災対策をとりうる。
 

地震防災対策は、発信側が意図した地震に関する情報が受信側に正確に伝達され理解されることによって、はじめて可能となる。地震に関するあらゆる広報活動を通じて、地震現象の基礎的知識の普及や新たな知見の周知に努めていくことが必要である。この際、特定の地域における地震に関する調査観測の強化や、地震の切迫性の指摘などは、ともすれば、それ以外の地域には大きな地震は来ないとの誤解を招く恐れがある点にも留意する必要がある。
 

本施策は、地震に関する科学技術の進展、関係省庁・関係機関の役割、国民の地震調査研究への期待等の各般の状況に大きな変化が生じた場合には、その状況に応じて、見直すものとする。

 

 文書の先頭へ戻る

第2章 地震調査研究の推進方策

 

推進すべき地震調査研究の主要課題は、その時点における最新の状況を踏まえて検討し、実施すべきである。本章では、まず、地震調査研究の推進及びその成果の活用にあたっての基本的な方策について述べる。
 
 
1.地震調査研究の推進とその基盤整備

 

(1)地震に関する基盤的調査観測の推進

地震による被害軽減を目的とする地震防災対策は、地震現象に関する正確な認識、知見の増大によって、より強化される。このため、総合的な調査観測計画の中核をなすものとして策定された「地震に関する基盤的調査観測計画」(平成9年8月29日推進本部決定)に基づき、陸域における高感度地震計による地震観測(微小地震観測)、陸域における広帯域地震計による地震観測、地震動(強震)観測、地殻変動観測(GPS連続観測)、陸域及び沿岸域における活断層調査を推進する。また、同計画において、手法の有効性、実施の在り方等について検討するとされているその他の調査観測についても、その着実な実施に努める。
 

これらの調査観測の実施に際しては、従来から全国的に行われている調査観測、地域的に強化して行う調査観測、及び研究的な調査観測との連携を図る。
 

地震観測、地殻変動観測(GPS連続観測)などの基盤的調査観測は、地殻活動の現状を評価する上で最も基本的な情報の一つである。また、基盤的調査観測は、大規模地震の発生メカニズムや余震活動の正確な把握を可能とするとともに、地殻に歪が蓄積され、それが解放された後、再び歪が蓄積されていく長い期間の一連の過程の解明など、地震予知のための研究にも貢献する。
 
 

(2)地震に関する調査観測研究データの蓄積・流通の推進  国により集められた地震に関する観測、測量、調査、研究に関するデータは、国民が共有する財産である。このような認識のもと、これらデータが広く関連する研究者に活用され、地震調査研究の進展に有効に活用されるとともに、国民一般にも提供され、国民が地震現象に関する正しい理解を深めることができるようにすることが重要である。このため、地震に関する調査観測結果の収集、処理、提供等の流通については、関係者の協力を得て、データセンター機能を整備して、円滑に実施していく。
 

また、過去になされた調査観測研究のデータを収集・整理し、提供する機能を充実することも重要である。
 
 

(3)基礎的、基盤的研究の振興 地震を発生させる地殻の歪みは、地球的な規模でのプレートの移動に起因していることが知られている。最近では、GPSなどの宇宙技術を活用した観測技術の進展が、プレートの動きを解明し、地殻変動の連続観測に新たな手段を提供している。他方で、地震現象に関して理解が深まるにつれ、新たな発見も積み重ねられ、これによってかえって地震発生の複雑さが浮き彫りとなり、より一層基礎に立ち返った研究が求められてもいる。さらに、地震調査研究の進展は、地球科学はもとより、調査・観測技術の進展、情報処理技術、シミュレーション技術など、広く関連する科学技術各分野の発展に依存する面が大きい。このため、地震調査研究及びこれに関連する研究分野における基礎的、基盤的研究を推進する。
 

 とくに、研究者の創意・発意に基づく研究は重要である。観測データがこれを必要とする研究者に広く公開されていることを前提として、研究者の創意・発意を活かすための競争的な研究資金の活用等を検討する。
 
 

(4)地震調査研究推進における国の関係行政機関、調査観測研究機関、大学等の役割分担及び連携  地震調査研究はその範囲が広範にわたるため、単独の省庁の枠に収まらない。また、大学、国立試験研究機関等による研究、研究的な調査観測から、いわゆる業務官庁による業務的な調査観測まで、多様な形態にわたっている。従って、情報・データの流通・公開を促進することにより、推進本部の方針の下に各関係省庁が協力・連携して、地震調査研究を進めることが重要である。この際、大学等における研究者の自由な発想に基づく研究の円滑な実施に配慮する必要がある。
 

大学は、研究及び研究的な調査観測をより一層主体として行い、その研究成果はもとより、観測の成果も可能な限り広く公表し、地震調査研究の進展に貢献することが期待される。また、防災関係者に指導、助言を与えるなど、地震調査研究の成果の防災への活用に積極的に貢献することが期待される。さらに、基盤的な調査観測に関し、大学は、観測施設の整備が進み観測の空白域が解消されるまでの当面の間、基盤的な調査観測の実施に協力することが期待されているが、時々の財政事情等を踏まえつつ可能な限り早期の観測施設の整備が望まれている。

さらに、国は、地方公共団体が地域における地震防災対策の推進を図るために行う活断層調査等の地震調査研究、研究者等の養成を支援していく必要がある。
 
 

(5)地震防災対策側からの要請の地震調査研究推進への反映 地震防災対策に地震調査研究の成果を有効に活用するためには、地震防災対策に関係する者からの要請を踏まえて、地震調査研究が企画、立案され、実際に調査研究が行われることが必要である。このため、推進本部と中央防災会議をはじめとする地震防災関係機関、地震防災関係者等との一層の連携を図るなど、地震調査研究を行う者と地震防災に関係する者との対話、協力、連携を推進する必要がある。

 

特に、推進本部と中央防災会議は、地震による被害の軽減という共通の目標に向かって、より一層の連携を図る必要がある。このため、中央防災会議と推進本部の政策委員会及び地震調査委員会の間で情報交換を行うための場を設けるなど、地震防災対策を行う側からの要請を地震調査研究に反映させるように、地震防災対策と地震調査研究のより一層緊密な連携の具体的なあり方を検討する。

 

また、防災関係機関が実施する地震防災対策に地震調査研究の成果が活用できるよう、成果の所在等の必要な情報の防災関係機関への提供に努める。
 
 

 文書の先頭へ戻る
2.広範なレベルにおける連携・協力の推進

 

(1)地震防災工学研究の推進と地震調査研究との連携促進等

地震調査研究の成果は地震防災対策に直接活用できる場合もあるが、その成果が工学的な応用を経て、はじめて地震防災対策に結びつく場合も多い。このように、地震調査研究の成果を具体的な地震防災対策に役立てていくためには、地震防災工学の果たす役割が極めて重要であり、地震調査研究と連携した地震防災工学研究の推進が必要である。このため、地震調査研究と地震防災工学に関する研究の連携を促進し、共通の課題についてのワークショップの開催、共同研究等を積極的に推進する。
 

具体的には、強震動予測の手法の高度化に関連して、その最終成果が構造物や施設の耐震性の向上等に活用されるよう、地震防災工学分野における活用を十分に念頭においた強震動予測手法の高度化や、このために必要な断層パラメータの提供など、地震防災工学と地震調査研究の連携を促進する。
 

また、地震の被害は国民の生命やその財産に及ぶことから、地震防災対策に地震調査研究の成果を活用していくためには、人間の心理、行動や経済活動などに関する知見などの社会科学的な知見が重要である。このため、社会科学の関連する分野と地震調査研究との連携・協力を推進する。
 
 

(2)地震調査研究の成果の活用にあたって必要とされる国民の理解のための広報の実施  地震調査研究の成果は、国民及び防災関係者に正しく理解されて初めて、地震による被害の軽減へ貢献できる。また、地域の住民自らが、その地域においてどのような地震が起こり易いか、過去に被害を及ぼした地震にはどのようなものがあるか、また、将来被害を及ぼす可能性がある地震としてどのようなものが予想されるかなど、その地域の「地震像」ともいうべきものをイメージし、適切な予防対策や、地震後の対応ができるよう、不断に準備することも重要である。
 

国民各個人が地震に対して適切な対応をとるためには、地震現象に関する最新の知識の適切な普及・徹底が前提であり、我が国の地震活動、地殻変動、地震動等に関する情報を、多様な手段で国民にわかりやすく提供することが重要である。
 

このため、現在得られている各種の地震に関する情報を地域別に集大成して地震調査委員会がとりまとめた「日本の地震活動―被害地震から見た地域別の特徴―」を適宜改訂し、これを広く頒布する。また、「週間地震火山概況」など定期的な刊行物が気象庁から発表され、報道機関等に提供されているが、この種の情報が直接、国民の目に触れる機会が増えるよう、報道機関等の関係者の理解の促進に努める。さらに、整備が進みつつある基盤的な調査観測網による観測データも含めた地震に関する調査観測結果の提供や、調査観測結果等に基づく地震に関する総合的な評価結果、余震の確率的な評価結果などに基づく広報を行い、地震被害の軽減に活かしていく。
 

 地震調査研究の成果が国民一般にとって分かり易く、防災意識の高揚や具体的な防災行動に結びつき、国や地方公共団体等の防災関係機関の具体的な防災対策に結びつくよう、地震活動の総合的な評価に基づく広報及び地震調査研究の成果の効果的な普及方策を、政策委員会と地震調査委員会が協力して検討する場を推進本部に設ける。さらに、この検討結果を踏まえた説明性の高い広報を実施する。その際、気象庁から発表された情報の内容を踏まえる等により、気象業務法に基づく業務の円滑な実施に配慮する。
 

地震についての基礎知識の普及のため、防災関係者をはじめとする国民各層を対象としたセミナー、シンポジウムの開催や、地震及び地震防災に関する教育、研修などを充実する。
 

 さらに、国民一般が地震調査観測データを利用し地震防災に活用する場合、その支援に努める。

 

(3)地震調査研究の成果の活用にあたっての国の役割と地方公共団体の役割への期待 「災害の軽減には、恒久的な災害対策と災害時の効果的対応が重要であるが、これらは一朝一夕に成せるものではなく、国、公共機関、地方公共団体、事業者、住民それぞれの、防災に向けての積極的かつ計画的な行動と相互協力の地道な積み重ねにより達成してゆけるものである」と防災基本計画で指摘されている。
 

地震による被害軽減のための地震調査研究の成果の活用においては、国、公共機関、地方公共団体、事業者、住民それぞれの、地震防災に対する積極的かつ計画的な行動と相互協力の地道な積み重ねが必須であり、国と地方公共団体との連携・協力、さらに地方公共団体相互の連携・協力が重要である。
 

地震調査研究の成果を国が自らの地震防災対策に積極的に活用していくことは当然であるが、地域における地震防災対策の中核的な役割を担う地方公共団体においても、地震調査研究の成果を積極的にその地震防災対策に取り込み、住民の被害軽減につなげていくことが望まれる。このため、国は地方公共団体に対して、地震調査研究の進捗状況及び成果を十分に説明する機会を設けるとともに、必要に応じて専門的見地から指導・助言を行うなど、地方公共団体の活動を支援する。

 

(4)推進本部と地震調査研究に関連する審議会等との連携 推進本部と地震調査研究に関連する審議会等との連携、役割分担の明確化を積極的に進める必要がある。
 

推進本部は、地震予知研究を含む地震調査研究に関する総合的かつ基本的な施策の立案、総合的な調査観測計画の立案にあたり、測地学審議会の建議を踏まえつつ検討していく。なお、「推進本部において政府自らが地震に関する総合的な調査観測計画を策定することとなった現状において、地震予知計画については、従来この点で果たしてきた役割は終えており、計画内容の見直しが必要となっている」(平成10年1月「震災対策に関する行政監察結果に基づく勧告」)という指摘もあり、推進本部としては、今後の、測地学審議会の動向を見守っていく。
 

推進本部の発足により、地震調査委員会が地震に関する調査結果等の収集、整理、分析、並びにこれに基づく総合的な評価を行うようになったため、現在地震予知連絡会は、これと類似した地震予知に関する総合的な判断を行っていない。しかし、地震予知に関する学術的情報及び意見交換の場としての地震予知連絡会の重要性は、現時点でも失われていないと考えられる。今後のあり方については、地震予知連絡会自身が検討を進めているところであり、その進捗状況も踏まえつつ、推進本部として、地震調査研究に関する情報交換及び意見交換の望ましい姿に関し、地震予知連絡会との連携の強化も含めて検討する。
 
 

大規模地震対策特別措置法(大震法)に基づき、地震防災対策を強化する必要がある地域が地震防災対策強化地域として、中央防災会議の審議を経て指定されることとなっており、現在、「東海地震」に係る地域が指定されている。気象庁長官は、気象業務法に基づき、いわゆる東海地震が発生するおそれがあると認めた時には、内閣総理大臣に「地震予知情報」を報告する義務を負っている。地震防災対策強化地域判定会は、この気象庁長官の責務遂行のために気象庁に設けられているものである。推進本部はこの業務の円滑な実施に配慮して、地震に関する調査研究の推進に努める。
 
 

(5)国際協力 地震の発生は、地球内部の動きに伴う地殻の変動というスケールの大きな現象に起因していることから、二国間の協力、多国間による協力等を通じて、国際共同観測・研究、研究者等の交流、専門家会合の開催、情報交換等を積極的に推進する。日米地震被害軽減パートナーシップに基づく日米協力や近隣諸国との協力などの二国間の協力、APECなどの枠組による多国間の協力を進める。また、我が国の地震調査研究の成果やその他の国際的に有用なデータを広く世界に提供することにより、世界の地震及び津波による被害の軽減に貢献する。
 
 文書の先頭へ戻る

3.予算の確保、人材の育成等
 

(1)予算の確保及び効率的使用等

地震調査研究を効率的、効果的に推進するため、推進本部が定める地震調査研究に関する総合的かつ基本的な施策を踏まえ、各省庁が緊密に連携し、推進本部による予算等の事務の調整の下に、必要な予算の確保、調査研究の実施に努めなければならない。
 
(2)人材の育成及び確保 地震調査研究は、自然科学及び社会科学の非常に広い領域にわたる研究者、技術者等の努力の結集により成果を挙げうるものであり、学際領域の研究開発課題も多い。それぞれの分野において優れた人材が必要なことは言うまでもないが、理学と工学にまたがる分野など、複数分野にわたる研究の連携を促進できる人材が必要である。このため、大学、国立試験研究機関等において、地震調査研究に関する教育、研修等を充実する。
 

地震調査研究の成果を地震防災対策に反映するためには、地震調査研究に対する深い理解を持った防災関係者の存在が必須である。この観点から国は、地方公共団体等の防災関係者が、地震調査研究の成果を理解するために役立つ基礎知識に関する研修を行うなど、所要の教育、研修等の機会を設ける。
 

国民一般に対して、地震調査研究の成果を正しく伝えていくためには、必要な情報をできるだけ多様なメディアを通じて伝達することが大切である。したがって報道関係者の役割は極めて大きく、報道関係者に対する地震調査研究に関する研修等の機会を設けることを検討すべきである。

 
また、国民一般が地震調査研究の成果を正しく理解し、自らの防災対応に反映できるよう、その理解力、対応力を醸成するための、教育、研修等の機会を設けることを検討する。
 
 

 文書の先頭へ戻る

4.地震調査研究の評価のあり方

 

 研究に関しては、科学技術会議の検討に基づき内閣総理大臣が定めた「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成9年8月)に則して、各省庁等が評価を進める。
 

調査観測に関しては、基盤的な調査観測計画に基づく調査観測の実施状況等を、推進本部として評価し、基盤的調査観測計画の改訂、総合的な調査観測計画の策定等を進める。
 

なお、推進本部による予算等の事務の調整は、これらの評価を受けたものはその結果も踏まえて行う。
 

 推進本部は、地震調査研究の推進方策全般について所要の評価を行い、必要があれば、総合的かつ基本的な施策を見直すものとする。

 

 文書の先頭へ戻る

第3章 当面推進すべき地震調査研究

 地震調査研究の成果は、国民一般や防災関係機関等による地震被害軽減に資する行動に影響を与えるものでなければならない。このため、地震調査研究の成果は、国民一般や防災関係機関等の具体的な対策や行動に結び付く情報として提示されねばならない。
 

このような観点から、国として当面推進すべき地震調査研究の主要な課題は以下のとおりである。なお、これらの地震調査研究については、地震防災対策に活用可能なものとなるよう、防災関係機関の意見等を十分踏まえるとともに、その成果は、順次、地震防災対策に活用していくことが求められる。
 
 

1.活断層調査、地震の発生可能性の長期評価、強震動予測等を統合した地震動予測地図の作成  
 
地震調査委員会による地震活動の総合的な評価の一環として、主要活断層の活動間隔等の調査結果、地下構造に関する調査のデータ、地震発生可能性の長期確率評価と強震動予測手法を統合し、強い地震動の発生の確率的な予測情報を含む全国を概観した地震動予測地図を、関係機関の協力を得て作成する。このため、調査観測研究機関等において、関連する調査研究を進める。とくに、(1)陸域及び沿岸域の地震の特性の解明と情報の体系化、(2)海溝型地震の特性の解明と情報の体系化、(3)地震発生可能性の長期確率評価、(4)強震動予測手法の高度化、(5)地下構造調査を推進する。これらの地震調査研究については、それぞれの項目についての成果が部分的にでも明らかになった時点で、可能な範囲内で地震防災対策に活用していくことが望まれる。
 

確率的地震動予測は、地震の発生自体の確率的な予測と強震動予測を有機的に統合することにより、対象地域に影響を与える可能性のあるすべての地震を考慮に入れたものである。これは、すべての地震とその発生確率、及びそれぞれの地震による地震動分布の予測を集積して求められるものであり、地震調査研究と地震防災工学の接点を与えるものといえる。
 

地震動予測地図の一例は、全国を概観し、ある一定の期間内に、ある地域が強い地震動に見舞われる可能性を、確率を用いて予測した情報を示したものである。一般には、期間、地震動レベル、及び確率のうちの2つを固定し、残りの1つの分布を、地図の上に等値線図として示したものである。このような地図により、異なる地域の地震危険度を相対的に比較することが可能となり、国土計画や自治体の防災計画立案に対しても、有用な情報を分かりやすい形で与えることが期待される。
 

しかしながら、確率を含んだ地震の発生可能性等に関する情報は、必ずしも簡単に理解できない内容を含んでおり、国民の地震防災意識の高揚に結びつき、地震防災対策に活用されるためには、その情報が意味することの丁寧な説明と、社会科学的な視点も含めた検討が必要である。情報をとりまとめる形式については、防災関係機関、その他関係者、住民等の意向を踏まえて十分な検討を行うものとする。この際、国民にとって身近な情報として受け取られるためには数十年程度の期間に関する情報が必要だが、陸域の活断層による地震については、数十年程度の短い期間における地震の発生確率は高い数値にはならないので、これが単なる安心情報として誤って理解されることの無いように十分注意すべきである。
 

地震動予測地図は、その作成当初においては、全国を大まかに概観したものとなると考えられ、その活用は主として国民の地震防災意識の高揚のために用いられるものとなろう。また、将来的に地震動予測地図が、その予測の精度を向上させ、地域的にも細かなものが作成されることとなった場合には、地震に強いまちづくり、地域づくりの根拠としての活用(土地利用計画や、施設・構造物の耐震基準の前提条件として)など、地震防災対策への活用や、被害想定と組み合わせて、事前の地震防災対策の重点化を検討する際の参考資料とすることも考えられる。さらに、重要施設の立地、企業立地のリスク評価情報としての活用も期待される。
 

地震動予測地図の作成にあたって前提としたデータ、手法等は原則として公開し、その作成の経緯が関係者によって検証できるものとする。また、このような地図は、活断層調査等によってもたらされる新たな知見、地下構造調査の進展、強震動予測手法の高度化、地震発生の予測精度の向上等の地震調査研究の進展によって、その精度の向上に努めるものとする。
 

地震動予測地図の作成にあたって推進すべき地震調査研究の項目は以下の通りである。

 

(1)陸域及び沿岸域の地震の特性の解明と情報の体系化  全国的な活断層調査により、主要な活断層の場所、活動度等に関する情報を明らかにする。

 具体的には、陸域及び沿岸域の主要な活断層について、

@活断層の詳細な位置及び形状に関する情報、

A当該断層が活動した場合に想定される地震の規模等に関する情報

B当該断層の活動履歴及び平均活動間隔に関する情報、

を明らかにすることを目標として、「基盤的な調査観測計画」に基づき、調査を推進するとともに、歴史的な資料、情報の体系的な収集、整理、分析及び古い地震記象紙のデータベース化を進める。
 

この際、地震学の知見を活用しつつ、強震動予測に利用できる形での断層パラメータを提供することを目指す。
 

また、基盤的調査観測計画に基づいて地震観測を進め、得られるデータにより、活断層の現在の活動状況・形状の詳細な把握を目指し、これに基づいて活断層の潜在的な活動領域を評価し、強震動予測における基本資料とする。現在知られていない活断層による地震によっても、大きな被害が生ずる可能性もあるため、これらの未発見の活断層の調査のための手法等について検討する。

 
 

(2)海溝型地震の特性の解明と情報の体系化  日本に被害を与える可能性のある海溝型地震に関して、

@その詳細な発生位置に関する情報

A想定される地震の規模等に関する情報

B地震の発生履歴に関する情報

を明らかにすることを目標として、調査研究及び歴史的な資料、情報の体系的な収集、整理、分析を進める。
 

この際、地震学の知見を活用しつつ、強震動予測に利用できる形での断層パラメータを提供することを目指す。また、津波波高予測技術の高度化を図る調査研究を推進する。
 
 

(3)地震発生可能性の長期確率評価  全国的な活断層調査の成果、海溝型地震に関する情報の体系化、歴史地震に関するデータ等をもとに、現在、地震調査委員会において検討中の手法を用いて、陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う。地震の危険性、切迫性を住民が実感できるためには、できれば数十年単位の発生可能性を与える情報として提示することが望ましく、切迫性の指標となる期間をなるべく短くできるよう努める。
 

また、現在知られている活断層以外で発生する地震によっても、大きな被害が生ずる可能性もあるため、これらの地震の発生可能性も長期確率評価に含めるべく検討を進める。
 
 

(4)強震動予測手法の高度化  主要な活断層に起因する地震、海溝型地震によって生ずる特定の地域の強震動の予測のため、強震動予測手法を高度化する。また、活断層による強震動予測には当該断層で発生した地震の記録を必要とすることから、地震観測結果に基づいて、活断層ごとのデータベース化を図る。特に基盤的調査観測計画に基づき全国的に展開されている強震動観測施設等による観測データの有用性は高く、その維持及び観測データの収集、蓄積、公開に努める。
 

また、強震動予測の成果が建造物、構造物の耐震性の向上等にも活用されるよう、地震防災工学分野における活用も十分に念頭におき、地震調査研究と地震防災工学が密接に連携しつつ、強震動予測の手法の高度化を進める必要がある。
 
 

(5)地下構造調査の推進 強震動予測をより精緻にするためには、地下構造、とくに地下における地震の波の伝わり方に関する情報が極めて重要である。このため、人口稠密な平野部を中心として地下構造調査を推進する。この場合、弾性波探査等による調査を実施することが必要となるが、当面は、対象とする地域ごとに適切な手法や内容を検討しつつ、試行的に調査を進める。
 

 また、基盤的調査観測計画に基づき設置されている高感度地震計の設置の際、観測孔掘削で得られたデータなど、関連するデータを有効に活用することが極めて重要であり、このため、関連データの集積を図る。
 

 基盤的な調査は国が行うこととし、そのデータを必要とする関係者が広く活用できるよう、データベースを作成し、広く公開することが重要である。
 

 さらに、地下構造探査のより効率的、効果的な新手法の研究を進める。
 

 文書の先頭へ戻る

2.リアルタイムによる地震情報の伝達の推進

 

発生した地震に関する調査観測結果を、国、地方公共団体や公益ならびに民間企業等の地震防災関係機関に迅速に流通させ、適切な応急対策を実施すれば、地震による被害を軽減することができる。気象庁、国土庁、消防庁、地方公共団体、民間企業において、地震発生後、直ちに震度等の地域的な分布を的確に把握するためのシステムが整備されつつある。これらのシステムと連携をとりつつ、基盤的調査観測等の高感度地震計、広帯域地震計、強震計、ケーブル式海底地震計、津波計の各観測網のデータをリアルタイムで収集するとともに、地震についての詳細な情報を即時に決定し、それらをリアルタイムで地震防災関係機関をはじめとする情報を必要とする者に伝達する機能についてさらに高度化を推進するための検討を行う。
 

また、遠隔地で発生する地震による主要動をその到達前にとらえ、重要施設等における緊急な対応を可能とするリアルタイム地震防災システムの研究開発を進める。

 

これにより、関係機関の適切な対応による被害の軽減等が期待される。
 

3.大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域及びその周辺における観測等の充実
  大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域及びその周辺における観測、測量等を充実し、「東海地震」の前兆となるより小さな地殻変動をとらえるとともに、観測、測量等の成果を活用して想定される「東海地震」の予知の確度向上のための研究を推進する。 4.地震予知のための観測研究の推進 地震による人的被害や二次災害の発生を大幅に軽減できる可能性がある地震予知のため、測地学審議会による建議(平成108月「地震予知のための新たな観測研究計画」)に示されている@地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究、A地殻活動モニタリングシステム高度化のための観測研究、B地殻活動シミュレーション手法と観測技術の開発に取り組む。具体的な取り組みにあたっては、今後、推進本部としても検討を進める。また、これらの課題の推進にあたっては、基盤的調査観測として推進されているGPS地殻変動観測、高感度地震観測、広帯域地震観測が極めて重要な役割を担っており、観測網の着実な整備を進める。
 

 これらにより、地震発生に至る地殻活動の全容を把握し、理解することによって、地震発生に至る過程の最終段階にある地域の特定を目指す調査研究を推進する。
 

 文書の先頭へ戻る

むすび
 
 

地震に対する意識は,ややもすれば希薄になりがちである。しかし,我が国の位置する地理的条件から、今後とも、大きな地震の発生は避けられない。したがって、地震による被害を最小限にすることを常に目指して、地震調査研究及び地震防災研究に取り組むことが求められる。

 

このため、最新の地震調査研究の成果を地震防災対策に活かし、今後発生する大きな地震からひとりでも多くの人の生命を救い、その財産を守ることが求められている。地震調査研究の推進とその成果の活用によって、被害の防止・軽減を実現するよう、関係者一丸となった努力が必要である。

 
 文書の先頭へ戻る



 

(参考)地震調査研究推進本部の発足の経緯とこれまでの活動

 

1.地震調査研究推進本部の発足、その構成及び任務等

 

 平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災を契機に、地震による災害から国民の生命、身体そして財産を保護することを目的とした「地震防災対策特別措置法」が議員立法により制定され、平成7年7月18日に施行された。この法律に基づき、地震に関する調査研究を推進するため、総理府に地震調査研究推進本部(以下、「推進本部」と表記)が設置された。

 

 推進本部は、本部長(科学技術庁長官)と本部員(関係省庁の事務次官及び官房副長官)から構成され、そのもとに、関係省庁の職員及び学識経験者から構成される政策委員会及び地震調査委員会が設置されている。推進本部は、地震に関する以下の事務を行うこととされている。
 

  1. 地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進について総合的かつ基本的な施策を立案すること、
  2. 関係行政機関の地震に関する調査研究予算等の事務の調整を行うこと
  3. 地震に関する総合的な調査観測計画を策定すること、
  4. 関係行政機関、大学等の調査結果等を収集し、整理し、及び分析し、並びにこれに基づき総合的な評価を行うこと、
  5. 前号の規定による評価に基づき、広報を行うこと
   このうち、総合的かつ基本的な施策の策定は、法律により定められている推進本部の任務の第1号に掲げられており、推進本部発足当初から取組むべき課題であった。しかしながら、当面の推進本部の活動として、推進本部の発足に際して早期に活動を開始することが期待されていた地震活動の総合的な評価、総合的な調査観測計画の中核をなす基盤的な調査観測計画に関する検討、予算等の事務の調整、広報の在り方に関する検討などが先行し、総合的かつ基本的な施策の策定にかかる本格的な検討は、推進本部発足から約2年を経過した後に着手されることとなった。

 
この間、総合的かつ基本的な施策が策定されていなかったため、推進本部のより一層の効果的かつ円滑な活動に支障を生じている面があった。総合的かつ基本的な施策は推進本部の活動の指針となるべき重要な施策であるので、慎重かつ十分な検討を経て策定に取り組むこととしたものである。
 
 

2.政策委員会の活動
   政策委員会は、上記11.2.3.及び5.に関して調査審議することとなっている。
 

 現在、政策委員会には、総合的かつ基本的施策に関する小委員会、予算小委員会、調査観測計画部会の3つの部会・小委員会が設けられている。
 

 総合的かつ基本的施策に関する小委員会は、地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進について総合的かつ基本的な施策を検討してきており、今般、報告書をとりまとめたところである。
 

 予算小委員会は、関係行政機関の地震に関する調査研究予算の事務の調整に関して、関係行政機関からの概算要求構想の説明を聴取し、関係行政機関の予算のとりまとめ・調整方針の検討を行っている。
 

 調査観測計画部会は、地震に関する総合的な調査観測計画の策定のための調査審議を行うこととしている。このため、その中核となる基盤的調査観測等の計画について検討を行い、平成8年1月に中間報告(当面推進すべき地震に関する調査観測について)を、さらに平成9年6月に最終報告(地震に関する基盤的調査観測等の計画について)を取りまとめ、同年8月の推進本部第6回本部会議において「地震に関する基盤的調査観測」として決定した。同部会は現在、その計画の実施に当たっての具体的事項等について、引き続き検討を行っている。
 

 広報小委員会は、地震調査研究に関する的確かつ効果的な広報のあり方について検討し、平成9年6月に最終報告書(地震調査研究推進本部における広報の在り方について)をとりまとめた後、解散した。

 

3.地震調査委員会の活動
  地震調査委員会は、関係行政機関、大学等の調査結果等を収集し、整理し、及び分析し、並びにこれに基づき総合的な評価を行うこととされている。
 

 このため、地震調査委員会は、定例会議及び臨時会議を開催し、地震活動の現状評価を行っている。また、長期的な観点からの地震発生の可能性の評価等を行うため、長期評価部会を設置している。さらに余震の発生確率の評価手法を検討するため、余震確率評価手法検討小委員会(平成9年6月〜平成10年4月)を設置した。

 

()地震調査委員会(定例会議及び臨時会議)
   毎月開催する定例会議では、全国の地震活動について関係各機関の観測データを収集して地震活動の現状を評価し、取りまとめている。推進本部は、その結果を、記者発表により報道機関を通じて公表するとともに、毎月開催する推進本部定例説明会において地方公共団体、防災関係機関等に説明している。
 

 また、被害地震が発生した場合や顕著な地震活動が発生した場合等には、臨時会議を開催することとしており、これまでに秋田・宮城県境の地震、伊豆半島東方沖の群発地震、鹿児島県北西部の地震、長野県中部(上高地付近)の地震、岩手県内陸北部の地震の発生等に伴い、臨時会を開催し、地震活動の現状や推移について評価を行った。
 
 

()長期評価部会
   長期評価部会においては、「地殻変動、活断層、過去の地震等の資料に基づく地震活動の特徴の把握」と「長期的な観点からの地震発生可能性の評価手法の検討と評価の実施」及びその他必要な事項を審議している。
 

 地震活動の特徴把握では、国民一般に対して地震に関する正しい知識を普及することを目的として、これまでに得られている地震に関する知見をもとに地域ごとの地震活動の特徴について検討し報告をとりまとめた。地震調査委員会は、その報告をもとに、平成9年8月「日本の地震活動−被害地震から見た地域別の特徴−」を刊行した。
 

 また、長期的な観点からの地震発生可能性の評価に関しては、定量的な評価の可能性を含めて同部会で検討している。その一環として、全国の活断層の活動の評価を順次進めており、これまでに糸魚川・静岡構造線活断層系、神縄・国府津−松田断層帯及び富士川河口断層帯について評価を行い、評価結果をもとに地震調査委員会から以下の公表がなされた。

糸魚川・静岡構造線活断層系の調査結果と評価について(平成8年9月)

神縄・国府津−松田断層帯の調査結果と評価について(平成9年8月)

富士川河口断層帯の調査結果と評価について(平成1010月)
 

 さらに、長期的な地震発生の可能性を確率を用いて評価する手法を検討し、平成10年5月に「長期的な地震発生の確率的評価手法について」(試案)を公表した。
 

()余震確率評価手法の検討
   余震の発生確率を評価するための手法について検討を行い、その検討結果を踏まえ、地震調査委員会として、「余震確率評価手法について」をとりまとめた。今後、地震調査委員会は、震度5弱程度以上の地震が発生した場合、余震に関して確率的な評価を含めた地震に関する総合的な評価を行っていくこととしている。
 

また、気象庁においては、地震調査委員会が取りまとめた手法を活用し、必要に応じて、余震に関する情報に確率的な評価を含めることとしている。



 
 

 

 
地震調査研究推進本部政策委員会
総合的かつ基本的な施策に関する小委員会構成員

 

 

(主査)

  片 山 恒 雄  科学技術庁防災科学技術研究所所長

(委員)

  安 藤 雅 孝  京都大学防災研究所教授

  伊 藤 章 雄  東京都総務局災害対策部長 (第1回〜第7回)

  今 井 通 子  評論家

  内 池 浩 生  気象庁地震火山部管理課長(第1回〜第4回)

  岡 山 和 生  国土庁防災局震災対策課長

  春 日  信    気象庁地震火山部管理課長(第5回〜)

  木 内 喜美男 消防庁震災対策指導室長(第1回〜第6回)

  斉 藤 富 雄  兵庫県防災監

  佐 藤 兼 信  東京都総務局災害対策部長(第8回〜)

  島 崎 邦 彦  東京大学地震研究所教授(第4回〜)

  土 岐 憲 三  京都大学工学部長

  鳥 井 弘 之  日本経済新聞論説委員

  萩 原 幸 男  日本大学文理学部教授

  長谷川  昭   東北大学大学院理学研究科教授

  廣 井  脩   東京大学社会情報研究所教授

  深 尾 良 夫  東京大学地震研究所教授(第1回〜第3回)         

  福 山 嗣 朗  消防庁震災対策指導室長(第7回〜)

  星 埜 由 尚  建設省国土地理院企画部長

  室 崎 益 輝  神戸大学工学部教授

 

 



 
地震調査研究推進本部政策委員会
総合的かつ基本的な施策に関する小委員会審議経過

 

 
 
 
開催日
主な検討事項
第1回
平成9年10月3日
  • 本小委員会の設置経緯、地震調査研究推進本部のこれまでの活動、関連事項を確認した。
  • 測地学審議会の地震予知計画の実施状況等のレビューについて報告を受けた。
  • 中央防災会議、測地学審議会、地震予知連絡会、地震防災対策強化地域判定会の活動の概要等の説明を受け、本小委員会における検討事項について議論を行うとともに、地震調査研究の目的、地震調査研究の範囲について議論を行った。
第2回
平成9年11月18日
  • 防災基本計画(震災対策編)について説明を受けた。
  • 地震調査研究推進本部における地震調査研究の目標と目的について議論を行った。
第3回
平成10年1月20日
  • 地震防災の観点から地震調査研究に要請したい事項について、関係防災機関及び自治体の委員から意見を聴取し、出された意見に基づき議論を行った。
第4回
平成10年2月19日
  • 地震防災につながる施策と地震調査研究との関係について議論を行った。
  • 本小委員会報告書の骨子案について議論を行った。
第5回
平成10年4月13日
  • 余震の確率評価手法、長期的な地震発生確率の評価手法等、最近の地震調査委員会の動きについて説明を受け、議論を行った。
  • 本小委員会報告書の骨子案について議論を行った。
第6回
平成10年6月4日
  • 中央防災会議大都市震災対策専門委員会提言(案)についての報告を受けた。
  • 本小委員会報告書の骨子案について議論を行った。
第7回
平成10年7月3日
  • 測地学審議会の次期地震予知計画の検討状況について報告を受けた。
  • 本小委員会報告書案について議論を行った。
第8回
平成10年10月2日
  • 測地学審議会の建議について報告を受けた。
  • 本小委員会報告書案について議論を行った。
第9回
平成10年11月10日
  • 本小委員会報告書案について議論を行った。
10
平成10年12月16日
  • 本小委員会報告書案について議論を行った。
 
 文書の先頭へ戻る




議事次第に戻る
地震調査研究推進本部のホームページへ戻る