「全国を概観した地震動予測地図」 2008年版

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付録1.用語集

【距離減衰式に基づく方法とハイブリッド合成法】
 距離減衰式に基づく方法(下左図)は主に地震の規模と断層面からの距離を考慮して計算を行います。この方法による予測震度は、微細な様子を示すものではなく、震度分布の大要を表したものと言えます。「確率論的地震動予測地図」ではこの方法を用いています。一方、ハイブリッド合成法(下右3枚の図)では、破壊が始まる場所や、強い地震波を出す領域(アスペリティ)の位置を仮定して、複雑な地盤構造を考慮した計算を行います。この方法は、距離減衰式に基づく方法に比べて、より実際の地震の起こり方を想定した震度分布を予測することが出来ます。「震源断層を特定した地震動予測地図」はこの方法を用いています。

簡便法と詳細法


【揺れの違いの主な原因】
 揺れの大きさは、地震の規模、断層からの距離によっても変わりますが、地盤の軟らかさやその厚さなどによって大きく変わります。

揺れの違いの主な原因


【平均ケースと最大ケース】
 主要活断層帯の平均活動間隔、最新活動時期の評価に幅がある場合が多いため、それぞれの中央値を用いて発生確率値を計算する場合(平均ケース)と確率の幅のうち最大値をとった場合(最大ケース)の確率論的地震動予測地図を作成しています。確率論的地震動予測地図は特に断り書きがない場合は、平均ケースのことを示しています。一方、長期評価で「我が国の主な活断層の中では高いグループに属する」といった評価は、最大ケースに基づいて行われており、そのため、高いグループに属する活断層付近においても確率論的地震動予測地図(平均ケース)では低く示されている場合があります。平均ケースと最大ケースの差は、発生確率が高いと評価された活断層のうち平均ケースと最大ケースとで発生確率に差が大きく出ているものによってもたらされており、以下の地域(周辺の活断層)が主に挙げられます。
 北海道北部(サロベツ断層帯)、
 石狩平野〜馬追丘陵〜勇払平野(石狩低地東縁断層帯)、
 庄内平野(庄内平野東縁断層帯)、山形盆地(山形盆地断層帯)、
 越後平野(櫛形山脈断層帯)、
 砺波平野〜金沢平野(砺波平野断層帯・呉羽山断層帯、森本・富樫断層帯)、
 長野県西部(境峠・神谷断層帯)、琵琶湖西岸(琵琶湖西岸断層帯)、
 熊本平野〜八代平野(布田川・日奈久断層帯)

今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図(最大ケース)
今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図(最大ケース)

点線で囲んでいる領域が平均ケース(図1−1.1)と比べて、主に違っている地域です。
※図をクリックすると大きな図が表示されます。


【ポアソン過程とBPT分布】
 活断層や海域で起こる地震は繰り返し発生すると考えられており、その間隔はBPT分布(Brownian Passage Time 分布)に従うと考えられています。BPT分布は、左下図の黒線のグラフ(これを、確率密度関数といいます)で表されるもので、例えば、最新の活動から2500年後〜2530年後に再び地震が起こる確率は、左下図の水色の部分の面積で求めることが出来ます。
 「現在、最新活動から2500年経過している」とき、「現在から30年以内に地震が発生する確率」は、「水色の面積÷(水色の面積+黄色の面積)」で求めることが出来ます。最新活動からの経過年数と、30年以内に地震が発生する確率は右下図のようになります。

30年以内に地震が発生する確率の計算方法(最新活動時期が分かっている場合) 30年以内に地震が発生する確率(最新活動時期が分かっている場合)

 一方、活断層や海域によっては、最新の活動時期が分からない場合があります。そのような場合は、「平均で何年の間隔で地震が発生するか」だけを用いて確率を計算しています。このときの計算には、地震の発生が「ポアソン過程」であると仮定します。
 「現在から30年以内に地震が発生する確率」は、左下図の「水色の面積÷(水色の面積+黄色の面積)」で求めることが出来ます。現在からの年数と、その時点から30年以内に地震が発生する確率は右下図のようになります。この場合、30年以内に地震が発生する確率は、基準日によらず一定です。

30年以内に地震が発生する確率(最新活動時期が分からない場合) 30年以内に地震が発生する確率(最新活動時期が分からない場合)



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地震調査研究推進本部 地震調査委員会