調査観測計画部会報告書「地震に関する基盤的調査観測等の計画について」(案)

の意見募集と修正について


平成9年6月16日

地震調査研究推進本部

政策委員会

調査観測計画部会


1.調査観測計画部会は、別紙1の実施要領により、調査観測計画部会報告書案を公開して、4月22日から5月18日までの27日間に74の御意見を頂きました。頂きました御意見は別紙2のとおりです。

2.調査観測計画部会は、頂いた御意見を検討し、報告書の修正を行うとともに、御意見についての調査観測計画部会の考え方を別紙3のとおりとりまとめました。なお、頂いた御意見の他にも、調査観測の現状を、平成8年度末のものに改める等の報告書の修正をしています。

3.頂いた全ての御意見は、報告書の作成のみならず、地震調査研究推進本部の今後の全般の活動に反映されるよう、各委員会に送付します。また、関係する行政機関等にも、参考のため送付することとします。

別紙1:調査観測計画部会報告書案の公開と意見募集について

別紙2:頂いた御意見

別紙3:頂いた御意見についての調査観測計画部会の考え方



別紙3

頂いた御意見についての調査観測計画部会の考え方




「はじめに」についての御意見(意見数6)


〇基盤的調査観測という表題は地下の基盤についての観測調査と紛らわしい。(67)


本部会は、昨年1月の中間報告で、当面推進すべき調査観測を、地震活動を把握・評価していく上での基礎となるものとして「基盤的調査観測」と名付けて、その推進を図ることとしました。本部会はさらに審議を継続し、地震動等についての調査観測も重要であると考え、最終報告書においては、「地下の基盤」における地震動の観測等も推進することとしています。
このように「基盤的」と「基盤」は違う意味ですが、混同は避けられると考えられること、「基盤的調査観測」という名称は既に広く認識されていると考えられることから、本報告書では「基盤的調査観測」という名称を継続して使うことにしました。


〇「はじめに」の最後の文章で、「必要に応じて見直しを行う」とあるのは「5年後を目途に外部評価等を行い必要な見直しを行う」とすべきである。(49)
〇数年後には目標が達成されたか必ず評価を行うと明記すべきである。(8)
〇本計画については、必要に応じて見通しをするということは、非常に重要である。本計画の実施結果の評価の方法については、外部からの評価者を選任し、事前の評価も是非実施すべきである。この報告書(案)についても、決定前に外部評価にかけるべきである。(51)
〇従来の諸観測との連携をとるために、ピアレビューシステムをきちんと取り入れること、計画策定委員会は常置し(必要に応じとあるが、常に必要である)、強いリーダーシップを発揮してピアレビューに答えられる体制をつくらねばならない。計画策定委員長は、フルタイムで任務にあたるくらいコミットすることが望ましい。(48)
〇地震防災というものが、技術として、科学として、確立していない現状を認識すると、「防災」という観点からみても研究的要素が多く、基盤的調査観測を推進する組織は研究者中心の組織である必要がある。組織の運営については、第3者による定期的なレビュー
を受ける必要がある。(46)


本部会では、地震による被害の軽減と地震現象の理解を目指して、本計画を着実に実施するとともに、その結果を地震調査委員会の総合的な評価等により適切に評価して、さらなる調査観測の充実を図っていく必要があると考えています。
このため、「はじめに」にあるように、最新の科学技術の成果、基盤的調査観測等の実施状況、実施結果の評価等を踏まえながら、時期と方法を適切に定めて本計画の見直しを行うこととしています。
評価の方法等について頂いた御意見は、推進本部が評価、見直しを実施する際の参考といたします。

「1.地震に関する調査観測の推進についての基本的な考え方」についての御意見
(意見数 29)


〇果たしてこの計画が実施された暁に、その目的である被害の軽減が確実に達成できると考えられるのであろうか。(33)

〇現時点での、地震現象に対する理解の程度から考えて、長期的な地震発生の可能性や地殻活動の現状把握と評価を、被害の軽減に役立つ意味のあるものにするには、研究が不可欠であると思われる。地震調査研究において被害の軽減と研究は表裏一体のものであり、それを分けようとすることは無理がある。(52)
〇「国民が地震現象を正しく理解する」ために公表するのか、”調査観測を推進するのか”意味がとれない。また、”把握”するのは誰なのかも不明である。「評価・理解」とは、何に関するものか不明確である。また、最も重要なことは、”地震現象の研究にも活用できる”としていることである。この研究面への活用をもっと前面に出すべきであろう。(34)
〇「調査観測の成果は、地震現象についての研究にも活用することができる。」とあるが、「にも活用できる」という表現はおかしい。研究に必要なデータの取得提供が、現在の知識に基づく地震災害の軽減とともに基盤的調査観測の主たる目的であることがわかる表現が望ましい。(68)
〇「多種多様なニーズ」のような曖昧なもののために、このような大計画が立てられるのであろうか。(37)



本部会では、地震被害の軽減を図っていくために、現在の科学技術により、全国を対象にして、長期的、安定的に実施できる調査観測はどのようなものかについて、経費も加味しながら基盤的調査観測等の項目を検討しました。具体的には、

1.長期的な地震発生の可能性を活断層調査、地震観測等により評価して、防災都市計画等に反映させること
2.地殻活動を地震観測、GPS連続観測等により常時把握して、発生した地震やその後の余震の評価を行い、防災活動や国民の防災意識の向上に資すること
3.特に、上記の地震に関する情報を早期伝達し、応急活動等に資すること
4.地震動や津波を、強震観測、津波観測、地殻構造調査等により把握して、予測の高度化に資すること等の目的を設定しています。


基盤的調査観測等は、地震はいつどのようなところで発生しているのか、活断層のこれまでの運動はどのようなものか等、地震現象について非常に基礎的な調査観測を全国的に行うものであることから、様々な地震調査研究の推進のためにも大いに役立つものと考えています。地震調査研究を実施するに当たっては、基盤的調査観測を念頭において、その十分な活用のもとに新たな研究を展開することが望まれます。
基盤的調査観測等のデータは、地震による被害の軽減と地震現象の理解のため、公開することを原則として、3.(1)にあるように、推進本部、地震防災関係機関、一般国民、研究者への円滑な流通を図ることとしています。


〇東海地域のような観測が充実されつつある地域に対してもより先駆的な観測研究の強化
が必要であることを言及すべきである。(11)
〇地震に関する研究には、基盤的調査観測によっては覆い切れない「時間的にも空間的にも集中して実施することが重要である研究分野・対象」(集中的調査研究)があることを前提として実施計画をたてるべきである。「集中的調査研究」は、研究的要素がつよいの
で、研究機関の独自性が十分に保証された方式が重要である。(56)


基盤的調査観測等の計画は、総合的な調査観測計画の中核となるものと考えていますが、これをもって実施されるべき調査観測を尽くしているものではなく、この他にも

1.基盤的調査観測が、業務的に行うものであるのに対し、大学等が研究的に行う調査観

2.基盤的調査観測が、全国的に偏りなく行うのに対し、地震防災対策強化地域等で地域的に強化して行う調査観測

3.基盤的調査観測は、今後推進していくものであるのに対し、験潮、水準測量等、従来から全国的に実施されている調査観測等があり、基盤的調査観測等はこれらの調査観測と連携を図りながら実施していきます。

推進本部は、今後とも総合的な調査観測計画について検討することとしています。

「1.(1)地震調査観測の必要性」についての御意見


〇被害軽減、特に人的被害の軽減には直前の的確な地震予知が必要であり、このための観測研究の強化も必要である。(12)
〇「目標」に照らして「長期的評価」の手法が、他の中・短期的地震発生の可能性の評価の手法に較べ、優れて確立されたものであると云えるか?(29)
〇この計画では「長期的な評価」に絞った点が問題ではないか。長期とはどの程度の時間の長さを指すのか。(28)


短期的な地震予知については、その重要性に鑑み、7次にわたる測地学審議会の地震予知計画に基づき積極的に推進が図られ、東海地震について短期的な地震予知を前提とした調査観測とそれに基づく地震防災体制がとられるまでに至っていますが、その他の地震についてこのような体制をとることは現在のところ困難です。
基盤的調査観測の検討に当たっては、地震被害の軽減を図るため、現在、全国を対象に実施すべきものは何かという観点を踏まえ、活断層調査や地震観測等による長期的な地震発生の可能性の評価が重要であると考えました。例えば、1.(1)、2.(4)にあるように、我が国に多数分布する活断層の調査等に基づき、数十年から数百年間の長期的な地震発生の可能性の評価等を行うことにより、地震防災に資することができるものと考えています。
なお、地震現象を把握・評価するための基礎となる基盤的調査観測のデータが、地震予知研究等にも役立てられることが期待されます。


〇「地震」に関する調査研究の計画を立案するにあたっては、地震を狭い意味での地震(Earthquakeseismology)と解するべきではなく、地震発生に関わる多分野を含む幅広いアプローチからなる地震(Seismology)研究と理解すべきでないか。(31)
〇「広域的な変動の場における地震発生の位置づけ」とでもすべき 広域テクトニクスの中での地震現象の意味付けが長期予測に限らず地震の発生予測に関してはもっとも重要と考える。

本報告にあげられた課題は近視眼的に地震現象を捉えようとする課題しか挙げられておらず.地震現象を活断層の相互作用等、非弾性・非線形システムとしてとらえる視点が必要である。(58)

〇被害の軽減と地震現象の理解のために、地殻活動の何を理解すべきなのか、どの程度震源に近づき、どのような地震のどのような発生過程をまず解明すべきなのかという、具体的、合目的的な肉付けが「調査観測の当面の課題○地殻活動について」に必要であり、「被害の軽減と地震現象の理解」のための、具体的なシナリオを提示すべきである。(53)


御意見のとおり、地震に関する研究には、幅広いアプローチ等が重要であると考えられます。御意見は、今後、研究的な調査観測を含む総合的な調査観測計画を検討する際の参考といたします。
なお、基盤的調査観測等では、地震観測だけでなく、地殻変動観測、活断層調査等も実施して、地震がどこで、どのように起きているのか、地殻はどのように変動しているのか、活断層の過去の運動はどのようなものであったのか等、地震現象を把握・評価するための基礎となる調査観測を行うこととしています。


〇当面の課題は、「・地殻活動の現状把握と理解」とあるが、(3)では「地殻活動の現状把握・評価」を目的とするとある。(1)でも「理解」にとどまらず「評価」とすべきである。(69)


御意見を踏まえ報告書を修正します。

1.(1)〇地殻活動について
修正前:地殻活動の現状把握と理解
修正後:地殻活動の現状把握と評価



〇津波に関しては、何も提言がなされていない。(14)


地震により発生する津波について評価、把握することは重要であると考え、基盤的調査観測等に取り上げています。すなわち、1.(1)にあるように、地震発生時における津波の即時的な把握や、津波地震の発生の可能性の評価を推進する必要があると考え、従来から全国的に行われている験潮に加えて、基盤的調査観測等として、2.(1)にあるように広帯域地震計の整備、2.(5)にあるように海底ケーブルへの津波計の設置を行うこととしています。

「1.(2)地震調査観測の現状と問題点」についての御意見


〇「地震予知研究」という名目で行われた地震調査研究事業についての十分なる評価を踏まえ、大部分の関係者が納得する形での計画策定が行われるべき。(28)

〇これまでの地震予知計画における観測計画の系統性のなさ、データ解析及び評価の不徹底、及びそれらの事業を中心的に行うための責任ある組織・機関がなかったこと等を、中心とした問題点の分析であるべきではなかったのか。(36)

〇「これまでの調査観測が直前の前兆現象を観測するのに重点がおかれている」というのは、本当であろうか。むしろ7次にわたる地震予知観測計画では、長期から地震発生直前まで地震サイクル全体を対象にしてきたのではないであろうか。

又”しかし・・・・・なかった”の文章が、やや不備で、何を言おうとしているのかよくわからない。(35)



本部会の審議においては、地震予知計画等に基づいてこれまで実施されてきた調査観測の現状を検討して、地震現象を把握・評価するためには、高感度地震計による観測や地殻変動連続観測の全国展開は十分ではない、全国に分布する活断層調査の実施が現在のところ限られている等、調査観測に空間的な偏りがあるとの問題点が挙げられました。
また、時間的には、地震現象を全体として把握するという観点から、地震発生直前の時期だけでなく、地震発生の繰り返し、地震発生につながるエネルギー蓄積期間、地震発生後の緩慢な地殻変動、及び地震発生時の地震動観測等を対象とする調査観測の充実が必要であると考えました。
調査観測データが関係機関間に十分流通されていない点も指摘されました。
このため、地震調査研究を一元的に推進するため設置された地震調査研究推進本部は、時間的、空間的に出来るだけ広い範囲を対象として、地震現象についての基礎的なデータを取得し、広く活用していくために基盤的調査観測を強力に推進することとしています。
なお、これまでの地震予知計画の実施状況等については、測地学審議会によってレビューが進められているところです。

(3)基盤的調査観測等の基本的な考え方


〇第3節に主語がなく、少なくとも冒頭に「推進本部は」を入れるべきである。(59)


御意見を踏まえ報告書を修正します。

1.(3)の3段落目の冒頭
修正前:時間的・空間的に...
修正後:推進本部は、時間的・空間的に..



〇推進本部の施策の実施のための財政措置によって、「基盤的調査観測等」に含まれない研究が財政的に圧迫されることのないよう十分配慮すべきである。(56)
〇予算が計画の優先順位に従って配分されるシステムを確保すべきである。(48)


推進本部は、基盤的調査観測等とその他の調査研究の経費も含めた関係行政機関の地震に関する調査研究予算等の事務の調整を行っています。
頂いた御意見は調整の際の参考といたします。

「1.(4)基盤的調査観測等の推進」についての御意見


〇実施体制が明確になっていない。調査観測計画部会で十分に審議を尽くして結論を出してもらいたい。(7、10、30、44)

〇関連機関との”連携”を図るというが、その具体策が述べられていない。例えば、陸上における地震観測網が多くの関連機関でかなり整備されているが、それをどのように活用して、ここでの目標とする高密度な基盤観測網を作るのか明らかではない。(32)


今後の調査観測の実施、調査観測結果の流通の体制については、「はじめに」にあるように、本報告書で示した基本的な考え方を踏まえて、推進本部において引き続き検討をします。


〇「科学技術庁が...地震計の設置をすすめている。」とあるが、どのような目的でどこにどのような観測点が設置されつつあるのか、補足説明が必要である。(70)


御意見を踏まえ、報告書を修正します。

2.(1)1)Aの5段落目

2)Aの2段落目
(2)2)の3段落目
(3)2)の2段落目

修正前:現在、...
修正後:現在、基盤的調査観測として、...

2.(4)2)の2段落目
修正前:現在、以下のような...
修正前:現在、基盤的調査観測として、以下のような...



〇内陸に発生する地震は、数百年に一度程度しか発生しないと考えられており、一連の過程の解明のためには、長期間とは「少なくとも数十年間程度」でなく、「少なくとも数百年程度」とすべきである。(55)
〇第2節“少なくとも数十年間程度”とあるのは、あきらかに地震の1サイクルより短い期間であり、地震発生に関する十分な知見が蓄積できないのではないか。(60)



基盤的調査観測等については、地震に関する理論や観測技術の進歩等を考慮して、少なくとも数十年間程度は継続することが必要と考えています。

「2.地震に関する基盤的調査観測等の実施について」についての御意見(意見数27)

「2.(1)地震観測」についての御意見


〇「...また、地点選定、設置の順序決定等を計画的に行う」とあるが、抽象的すぎる。基本的な考え方を示すことはできないか。この内容では、当然のことで特記する意味もないように思える。(71)


観測網の整備についての具体的な各年度の設置場所や機器の仕様等については、地震調査委員会の評価結果等も踏まえ、推進本部で確認していきます。


〇高密度な地震調査の必要性と期待される成果の根拠がどこにあるかを、地震調査全体の観点から明らかにすべきではないか(33)。
〇サイスミシティから地震の最大マグニチュードを推定する方法が、それ程確実性のある
ものなのか。(42)


2.(1)にあるように、基盤的調査観測等の計画における稠密な高感度地震観測網により、内陸地震の震源決定精度が高まり、震源をより精確に知り、余震活動等の地震活動の現状の把握・評価に資することができます。これらの情報は、早期伝達により、防災活動にも役立てられます。また、内陸地震の深さの限界を把握して、断層面の最大の幅を推定すること等により、長期的な地震発生の可能性の評価に資することが出来ます。
なお、詳しい震源等の地震現象についての基礎的な情報は、地震調査研究の推進にも役立つものと考えています。


〇「周波数帯域」は、一般の人に理解されやすい「周期」にするべきである。(65)


「周波数」は、ラジオ等でも日常で使われている言葉ですが、御意見を踏まえてより分かりやすく報告書を修正します。

2.(1)2)@の1段落目
修正前:広い周波数帯域で地震波を検知する
修正後:広い範囲の周波数の地震波を検知する
2.(1)2)Aの1段落目
修正前:小地震から地球自由振動まで解析可能な周波数帯域をカバーする広帯域地震計
修正後:小地震から地球自由振動まで解析可能な広帯域地震計
「2.(2)地震動(強震)観測」についての御意見



〇地下の基盤とはいかなるもので、およそどれ位の深さになるのか。(64)


基盤についての一般的な定義は必ずしもありませんが、地震発生場の岩盤と力学的性質が大きくは異ならないような岩盤、具体的にはP波速度が5km/s程度以上の岩盤を考えています。しかし、地表近くにそのような岩盤がある地域は限られていることから、もう少し柔らかい岩盤まで基盤として扱い強震計を設置します。基盤の深さは露出している場合から、平野部でのように数1000mの堆積層で覆われている場合まで、様々です。

(3)地殻変動観測(GPS連続観測)


〇島嶼では単純な20km間隔に基ずく1点にとどめず、島内に活断層等が予想される場合は複数点にする等の考慮が必要。(24)


基盤的調査観測としての観測網の整備に当たっては、地震調査委員会における活断層等についての評価結果を踏まえ、観測点の整備位置等を定めるとともに、必要に応じてさらに観測施設を設置することとします。


〇GPS連続観測施設については、国土地理院が設置を進めているのではないのか?(17)

〇GPS連続観測は、すでに国土地理院で独自に大々的に展開されており、長期の地殻の歪蓄積をモニターするためならば、GPS連続観測は国土地理院のもので十分でなかろうか。

既存のGPS観測網整備の状況に鑑み、地震発生に伴ってどのような現象が生じるのかを明らかにするべく、より分解能の高い歪・傾斜の観測網の整備こそ急務であり、それによって大きな成果が期待されるのではないか。(39)

〇高分解能な地中センサー(歪、傾斜、水位、水温等)を全国に均質に展開し連続観測することはGPS観測データとのクロスチェック等の意味でも重要である。

海底下の観測は震源域に近いだけに貴重な観測結果が得られると予想され、実際にその観測手法もいくつか実験的に行われている。この分野の開発を強力に押し進めることは基盤的調査観測に不可欠である。(16)

〇地震発生にともなってどのような地学現象が起きるかを総合的に明らかにするのこそまず必要ではないか。その中には、GPS以外の地殻変動、地下水や電磁気現象に関する事項が当然含まれているべきではあろう。(40)

〇広帯域地震計とGPS観測による地殻変動観測の谷間の時空間変動をカバーするボアホールタイプの歪および傾斜観測が必要である。(45)
〇現在の案では、GPSの精度では捉えられず、広帯域地震計の帯域が届かない、最終破壊に至るところの時間スケールである数日から数分という時間スケールの観測が抜けている。(54)
〇GPS連続観測 しかも20〜25km程度の間隔の網では 「地震の発生過程についての基礎的な知見」は期待できない。現在進められている摩擦構成則を用いたシミュレーション研究では少なくとも内陸の活断層で発生するM7級の地震では 直前のすべりの領域もしくは破壊核は大きく見積もっても1〜2km程度であり期待される変位量もmmレベルかそれ以下である。ボアホール型の3成分歪・傾斜の観測以外には地震発生の物理を現実のフィールドで捕らえることは不可能である。(61)



基盤的調査観測等の観測項目については、1.(3)、1.(4)にあるように、空間的に出来るだけ偏りなく、業務的に長期間にわたり安定して行うことを踏まえて、2.にあるように、これまでの調査観測の実績を検討して、決定しています。
歪計、傾斜計等の観測については、全国的に偏りなく高密度に展開をする場合、どの程度の間隔の観測点配置が必要であるかの考え方が確立されていないこと、雨等の影響を取り除くためには500メートル程度あるいはそれ以深の縦孔に設置することが必要と考えられますが、全国的に高密度にこのような縦孔を掘削することが経費的に困難であること等の理由のため、地殻変動観測として、まずは稠密GPS連続観測網の構築から始めるべきと判断し、基盤的調査観測として取り上げていません。また、地下水や電磁気の観測については、地殻変動との物理的な関連が十分には確立されていないため、どの程度の間隔の観測点配置にすれば、どのような現象を検出することが可能であるのかが現時点で必ずしも判断できないことから、基盤的調査観測として取り上げていません。頂いた御意見は、今後、地域的に強化して行う調査観測についての検討や、本計画の見直しを行う際等の参考といたします。
なお、国土地理院のGPS観測施設は、本部会の中間報告に基づいて基盤的調査観測として設置を進めているものです。

「2.(4)陸域及び沿岸域における活断層調査」についての御意見


〇起震断層の推定に地形からわかる活断層だけに頼るのではなく、地震活動等を含めた各種地球物理データに基づく総合的判定を行うべきである。(18)
〇複数の活断層が隣接して分布している場合は 構成するすべての活断層について、位置、変位速度、過去の活動時期、1回の変位量と長さ、周辺の地下構造、を調査する、と解してよろしいか。そうであれば「活断層帯を構成するすべての活断層についてこれらの調査を推進する。」と記すべきである。(62)


断層帯の調査に当たっては、断層帯を構成するどの活断層の調査を行うかを事前に検討し、調査を進めるとともに、必要に応じて弾性波探査等による各種地球物理データを用いて調査を進めることとしています。

「2.(5)ケーブル式海底地震計による地震観測」についての御意見


〇「巨大地震を引き起こす可能性が高いことから、この海域における地震活動、地殻活動を把握することが重要である。」と書くのが適切。(9)


海域における広域的な地殻歪の観測については、離島以外での実施については現在研究段階であり、業務的に長期間にわたり安定して行うためには今後の研究成果を待たなければならないと考えています。そこで、現段階では、離島を有効に利用しながら観測を行うことが適切であると考えます。
海域における地震活動についての御意見を踏まえ、報告書を修正します。

修正前:この海域における地震活動を把握することも有益である。
修正後:この海域における地震活動を把握することが重要である。



〇遅れがちな海域における地震等の観測網の整備も重要であり、海域における地震観測網は一層の充実が必要である。(13)
〇「地震(earthquake)」観測の空白域の解消というならば、陸上の地震観測等は最も整備されているのであるから、むしろプライオリティを最も低くすべきであるという議論は成り立たないであろうか。地震(earthquake)に限るならば、観測点の整備状況の面では文字通り空白域であり、日本の被害地震の大部分が発生している海域における地震観測こそ、重点的にしかも早急に取り組まれるべきであろう。(41)
〇第(1)、(4)項が、なぜ別々に扱われているのであろうか?(38)
〇海域の地震観測についての計画が何故か「ケーブル式」だけに限られた案になっている。これは全く理解に苦しむものである。海底地震観測では、海溝軸周辺やその海洋側の地震活動の特性を解明することは海溝型巨大地震の発生過程を知る上で非常に重要。ポップアップ式海底地震計やアンカードブイ式海底地震観測システムの活用が不可欠である。(19)



2.(5)1)にあるように、巨大地震が発生する可能性があること等から、海域のプレート境界付近の地震活動を把握することは重要です。
海域の地震観測については、ケーブル式海底地震計が実用化されていますが、日本周辺の全海域に偏りなく高密度に展開するには、現時点では多額の経費を要するため、基盤的調査観測の実施状況を踏まえつつ実施に努め、安価で安定した海底地震観測システムが開発された後、全国的な展開を図ることを考えていきます。
ケーブルシステム以外の地震観測網を展開するには、ポップアップ式海底地震計やテレメータ係留ブイ式海底地震観測システムが考えられます。しかし、ポップアップ式海底地震計による地震観測網は、設置したポップアップ式海底地震計を回収するまで地震波形を得ることはできません。また、回収する必要があるため、長期間にわたって安定して観測を継続することができません。テレメータ係留ブイ式海底地震観測システムは、まだ研究要素が強く、開発途上の段階にあると考えています。このため、これらの海底地震計を、基盤的調査観測として取り上げていません。


〇なぜ、沖縄−グアム間の観測計画に言及しないのか?(20)


現在、沖縄−グアム間、二宮−グアム間の海底ケーブルを用いて海底地震計の接続と観測技術の開発が行われていますが、調査観測を目的としているものではないため、本報告書では取り上げていません。


〇T波を検出するために、海中音響聴音アレー地震モニタ装置の併設が望ましい。(6)


地震・津波現象を理解する上で、海中音響聴音アレー地震モニター装置に基づくデータは、研究的な調査観測に利用される段階にあると考えられる事等から、基盤的調査観測として取り上げていません。

「2.(6)海域における地形・活断層調査」についての御意見


〇海域の活断層調査は不十分で、全面的再調査の必要があり、本格的な計画を作成する必要がある。(21)


3.(6)1)にあるように、プレート境界を含む海域における活断層の調査は、巨大地震を含む海域で発生する地震の評価をする上で有効です。
海域の活断層調査の現状については、これまでのデータの解像度・分解能は十分でなく、さらに、活断層の活動性はほとんどわかっていません。
2.(6)にあるように、プレート境界付近では、活断層が海溝軸から数十km陸側までの範囲で数多く分布することが明らかになっており、調査は地震活動の活発な海域から順次実施することとしています。
また、3.(3)にあるように、過去に行われた資源調査を目的とした海域における物理探査データ等も活用して、日本周辺海域の地形・活断層を明らかにすることが期待されます。

「2.(7)地殻構造調査」についての御意見


〇地殻の構造調査を、seismicな方法のみに限定するのはいかがなものであろうか。(43)
〇現在、取り扱いが簡単で携帯用の高性能重力計があり、連続記録も可能で、その上、連続記録は長周期地震計にもなり得るので、重力の観測から地殻構造を推定することをとりあげるべきでないか。(66)


3.(7)2)等にあるように、弾性波探査に加えて、必要に応じて他の調査観測手法も検討しながら、地殻構造調査を行うこととしています。


〇活断層調査として実施する内容は、基本的には地表で評価できる項目に偏り過ぎている。上部地殻全体の調査がなければ、地表での調査を正しく理解することにはつながらない。活断層の調査は本来、地殻構造調査の一部として実施すべきであり、地殻構造調査こそ「基盤的調査観測」として取り組む必要性が高い。(57)
〇第(5)、(7)項が、なぜ別々に扱われているのであろうか?(38)


2.(7)1)にあるように、基盤的調査観測による地表変形の知識を、地震発生機構の解明に結びつけるために、実際に浅発地震が発生する深さまでの地殻構造や、地下の断層の形状についての知識を得ることが有益であると考えています。2.(7)にあるように、地殻構造調査については調査方法の有効性、実施の在り方等について検討を行っていくこととしています。

「3.地震に関する基盤的調査観測等の結果の流通について」についての御意見
(意見数 11)

「3.(2)調査観測結果の流通体制の基本的な考え方」についての御意見


〇「データ処理センター」の実体がよく分からない.データ処理についての主体がどこにあるのか不明である。現時点で組織の壁があるため どうしてもデータ流通のオーソライズに時間がかかり全体としての総合的な検討をするのが遅れがちであり、これを迅速・的確にできるようにするためには組織の壁を低くする必要がある。(63)
〇サブセンターとデータセンターの区分が不明確。既存組織との関係も整理する必要あり。データセンターは、地震調査研究のための既存資料、データを整理、提供、管理する総合的な機能を持つものを目指すべき。(22)
〇これまでに蓄積された各種資料やデータの活用についての活用方法の検討がなされなければならない。(26)
〇現案では、サブセンター化を行った場合、総合的な検討をいつも行うような体制ができないため、調査観測結果の流通体制の基本的な考え方の中の「・・・必要に応じてそれを補うサブセンター機能を整備していくことが望ましい。」の後に、以下の文章を入れることを提案する。「なお、サブセンター間は、専用の情報流通ネットワーク等を整備し、迅速な情報交換と相互情報利用を実現することが望ましい。」(50)
〇 観測網は、全体ビジョンが明確化し、処理、流通までの体系を確定して進めるべきであり、観測網の設置だけを先行すると今後の展開如何では無駄を生ずる恐れが高い。(15)


本報告書は、3.にあるように、基盤的調査観測の結果の流通についての基本的な考え方を示しています。「はじめに」にあるように、地震調査研究のための既存資料、データの整理、提供、管理機能についても含めて流通のために必要な具体的事項については推進本部において引き続き検討を行うこととしています。
また、3.(3)3)において、データ処理に強震計の波形が必要と思われる高感度地震計のデータ処理センターおよび広帯域地震計のデータ処理センターには、強震計の波形が伝送されるとする等、サブセンター間の情報流通ネットワークの整備の観点も踏まえています。
なお、3.(3)にあるように、基盤的調査観測以外の地震に関する様々な調査観測結果、過去の観測結果についても収集、蓄積及び流通を推進することとしています。データセンター機能についての具体的事項については今後検討を行い、財政事情を考慮しつつ、最適なシステムを構築すべきと考えています。
頂いた御意見は今後の検討の際の参考といたします。

「3.(3)調査観測結果の流通の推進」についての御意見


〇高感度地震計による観測について、具体的なデータ処理 (誰がどのような処理を行なうのか)が見えてこない。

震源決定については、ぜひ、全点のデータを用いた自動処理を実行するようにお願いしたい。(4)



高感度地震計のデータの処理については、3.(3)にあるように、験測処理、震源要素の決定、発震機構の決定を行うことを考えています。
具体的に、どのような手法により処理を行うかについては、実施体制の整備とともに、今後、検討を行うこととしています。
また、震源決定の方法については、防災の観点を重視するとともに、財政事情等を勘案した経費上の問題も十分に加味しつつ検討する予定です。
頂いた御意見は、今後の検討の際の参考といたします。


〇大地震が起きれば、回線網はずたずたになることが予想される。冗長度の高いネットワークを構成することが必要。非常用電源の確保が必要。(5)


震災時の情報伝達システムの健全性、冗長性の確保については配慮すべきであると考えています。どのようなネットワークを構成するかについては、今後、検討を行うこととしています。検討に当たっては、防災の観点を重視する必要があると考えています。今後、経費上の問題も十分に加味して考える必要があります。
頂いた御意見は、今後の検討の際の参考といたします。


〇「GPS連続観測のデータ流通センターに関しては、基盤的調査観測施設以外のGPS連続観測施設で観測されたデータについて、必要な地震防災関係機関、大学等による利用促進を図る方策について検討する。」とあるが、意味不明である。「基盤的調査観測施設以外のGPS連続観測施設で観測されたデータについてもGPS連続観測のデータ流通センターで公開する」ということか。必要な地震防災関係機関、大学等による利用促進を図る、とはどういうことか。また、必要な、という判断はどうするのか。(1)


基盤的調査観測以外のGPSデータについては、そのニーズを踏まえて流通について検討することとしています。
御意見を踏まえて、より精確に報告書を修正します。

3.(3)4)の3段落目
修正前:GPS連続観測のデータ流通センターに関しては、基盤的調査観測施設以外のGPS連続観測施設で観測されたデータについて、必要な地震防災関係機関、大学等による利用促進を図る方策について検討する。
修正後:基盤的調査観測以外のGPS連続観測のデータについても、利用のニーズに応じて、流通を推進する方策を検討する。



〇「推進本部の評価があった場合等には逐次データベースを更新していく。」とあるが、推進本部がどういう評価を下すのか。(2)


3.(3)5)にあるように、基盤的調査観測の活断層調査については、その調査結果が得られた段階でデータベースを作成します。
さらに、この調査結果等を基にして、地震調査委員会が、長期的な地震発生の可能性についての評価をとりまとめた時点で、その評価結果を基にデータベースを更新していくこととしています。
これまでに、地震調査委員会が評価を行った例として、平成8年9月に糸魚川−静岡構造線断層帯に対して行った評価があります。


〇周辺国との共同利用の観測点の設置を考えるべき。(25)


外国との観測データの相互利用は有効であると考えられるため、御意見を踏まえて、報告書を修正します。

3.(3)
修正前:他の地震に関する様々な調査観測結果、過去の調査観測結果...
修正後:他の地震に関する様々な調査観測結果、国外の調査観測結果、過去の調査観測結果...

なお、御意見は、推進本部政策委員会の「総合的かつ基本的な施策に関する小委員会」における地震調査研究についての国際協力の在り方の検討の際の参考といたします。

(4)リアルタイムでの地震に関する情報伝達の推進


〇基盤的調査観測に情報伝達までリアルタイム性が必要不可欠であるか疑問である。

1秒を争うような防災機関のシステムは独立したものが最善であり、地震調査研究のためのシステムは、防災機関の支援を行うようなデータの相互活用にとどめるべきである。 (23)



1.(1)にあるように、地震発生時に、震源情報と強い地震動を即時に把握して、速やかに被害を推定して応急活動を適切に展開する等、地震による被害の軽減を図る上で、リアルタイムでの地震に関する情報伝達は重要な役割を担うものと考えられます。3.(4)にあるように、リアルタイムでの地震に関する情報伝達システムについては、今後、整備と運営の在り方を含めて、地震防災関係機関とともに構築について検討することとしています。

4.その他:意見数 6


〇これまでに選出された委員の選出基準が不明瞭である。行政機関以外の専門家の選出にあたっては、学術専門機関の推薦等を受けた委員を含めて委員会の構成をするべきでないか。(27)


推進本部の各委員会については、十分な審議を行えるよう、関係行政機関の職員と各分野の第一線の学識経験者で構成することとしています。


〇ホームページによる、意見の募集というのは画期的なことである。形式だけでなく、実際に反映されることを望む。(3)
〇報告書案は、過去の地震予知研究体制の反省(1.(2))に基づくと考えられるが、「地震予知」という言葉を使わずに書かれている。そのような努力をしているにもかかわらず、地震予知総合研究振興会のホームページから、このような募集が発せられることは、推進本部の目的に対して、国民に誤った印象を与えないであろうか?推進本部が行なおうとしている他の行事についても、地震予知総合研究振興会との関係で、同様の心配を持つ。(47)



今回頂いた御意見は、本部会の活動のみならず、推進本部の活動の参考としていきます。
なお、ホームページの形式、内容については、一層の向上を図ります。


〇藤枝市の体積歪計(1979設置)は旧型、新しいものと交換してほしい。(72)
〇静岡県内に偏りない観測網を設置されたい。(73)
〇静岡県の震源域にも地下の基盤への強震計の設置をお願いしたい。(74)


藤枝市の体積歪計についての御意見は、管理を行っている気象庁にお伝えします。
なお、基盤的調査観測としての観測網は、1.(3)等にあるように、全国的に偏りなく整備することとしています。