0 はじめに

日本は世界有数の地震多発国で、しばしば大地震に見舞われ、大きな被害を受けています。最近では、1995年の兵庫県南部地震が大都市を襲い、阪神・淡路大震災を引き起こしました。この地震災害をきっかけに地震への備えを強化することになり、同年7月に総理府に地震調査研究推進本部が設置されました(現在、文部科学省に設置)。同本部の地震調査委員会では地震に関するさまざまな観測データを集めて整理、分析し、起きた地震がどのような性質のもので、これからどうなるかなど、総合的な評価を行っています。

 さて、地震調査研究推進本部では、余震による災害の拡大を防ぐために、地震調査委員会において、大地震の後に数多く起きる余震について検討を進め、余震の起き方を予測する方法を述べた報告書「余震の確率評価手法について」をとりまとめました。そして、1998年4月から、大地震の後にその予測手法を用いて余震の起き方を評価することにしました。現在の科学技術では、「どれぐらいの規模の地震」が、「いつ」、「どこ」に起きるのかを、地震の発生前に知ることはむずかしいのですが、大地震に続く余震について、どれぐらいの規模のものが起きるか、人が感じるくらいの大きさの余震は数にしてどのくらい起きるか、また、いつごろまで続くかについては、ある程度のことが言えるようになっています。それで気象庁においても、地震調査研究推進本部がまとめた方法を利用して、余震に関する情報を充実することにしています。

 「余震とは何でしょうか」、「新しく提供される余震情報はどのように発表されるのでしょうか」、「余震の規模は予測できても、その余震による揺れの強さは予測できないのでしょうか」、こうした疑問に答えるために、この冊子では「これだけは知っておきたい地震の基礎知識」を紹介し、余震情報をどのように利用すればいいかなどについて、やさしく解説しました。地震の基礎知識を身につけ、大地震に見舞われたときには、余震の性質を知り、発表される余震情報を防災対策などに活用していただきたいと思います。

 なお、この冊子の作成に当たっては、気象庁と国土地理院から多くの協力をいただきました。ここに厚くお礼を申し上げます。