活断層研究の成果を防災に

伊藤 和明


 兵庫県南部地震を契機に、活断層に対する社会的関心が高まるとともに、一方では“活断層”という言葉がひとり歩きして、活断層に関する誤解も広まっている。それを正すことが、今後の委員会の役割の一つであろう。

 また、兵庫県南部地震以降、全国の主要な活断層について、発掘調査が精力的に行われ、活動履歴や活動度の推定をもとに、将来の危険度についての識別も可能になってきた。さらに一部の活断層については、長期的な地震発生確率の評価も下されている。

 しかしその一方で、自治体の防災担当者などからは、「『現在を含む数百年以内に活動する可能性が高い』と指摘されても、具体的な防災対策を立てにくい」とする意見が寄せられているのも事実である。

 活断層研究の現状では、±200300年程度まで絞りこめるのなら、かなり精度の高い予測であるということが、あまり認識されていないからであろう。(要は、自然次元と人間次元との、時間の目盛りの違い、いわば分解能の違いに起因するといってもいい)

 したがって、要注意活断層を有する自治体に対しては、まずは地震が発生した場合の“被害想定”を実施しておくこと、さらには、活断層や地震被害予測に関する情報を、行政と住民とがつねに共有し、関心を持続させていくことなど、研究の成果を災害軽減に生かすための広報活動が、きわめて重要と思われる。


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