(参考 2)

平成11年度の地震調査研究関係予算要求に反映すべき事項について

 

平成10年6月25日
地震調査研究推進本部
政策委員会
予算小委員会


 予算小委員会は、関係行政機関の平成11年度の地震に関する調査研究予算等の事務の調整を効果的に実施するため、平成10年3月19日の第8回会合及び平成10年4月3日の第9回会合において、関係省庁より調査研究の実施状況と平成11年度以降の調査研究への取り組みについての基本構想をヒアリングした。(参考「地震調査研究推進本部政策委員会第8回及び第9回予算小委員会検討内容概要」参照。)

 この結果を踏まえ、5月11日の第10回会合において平成11年度予算要求に反映すべき事項について検討を行った。

 

 7〜8月の予算小委員会での予算等の事務の調整作業においては、特に以下の点について、ヒアリングを行うこととする。

 
 また、各省庁において行われる地震調査研究の成果については、地震による被害の軽減に活用されることが重要であり、このための広報活動への取り組みが強く求められている。平成11年度予算要求にあたっても、この点について十分に考慮することが必要であるとの認識に至った。 

 さらに、「平成11年度地震調査研究関係予算の概算要求にあたり考慮されるべき事項について」を別添のとおり、とりまとめた。

 関係省庁においては、平成11年度の予算要求にあたり、これらの事項を十分に反映されたい。


(参考)

 

地震調査研究推進本部政策委員会第8回及び第9回予算小委員会検討内容概要

 

 関係行政機関の地震調査研究予算は不必要な重複がないようにすることが重要であり、地震調査研究については、関係行政機関間で連携し、協力し合って進めていくことが望まれる。

 また、十分準備をして観測計画を練り、調査観測結果を社会に還元できるようにすることが望まれる。データに異常が認められた場合は、早急に防災担当者に伝えられるようにするべきであり、データの流通・公開について考慮しつつ、予算を組み立てることが望まれる。

 

 なお、各省庁の平成10年度以降の地震調査研究への取り組みについて、以下にまとめた。

 

 

[通商産業省の平成10年度以降の地震調査研究への取り組みについて]

 

  活断層の地震危険度調査は、地下構造調査と連携して行うことが重要。

  また、地下水観測の点数を増やし、地震発生に伴う地下水の挙動への物理化学的な影響を調べる。将来的には、地下水と電磁気現象の関係について調べる研究を行うことが重要。

 電磁波の常時観測を行ってデータを蓄積し、電磁気現象と地震発生の関係に注目した調査観測研究を行うことが重要。

 

 

[科学技術庁の平成10年度以降の地震調査研究への取り組みについて]

 

  設立が検討されているデータセンターには、科学技術庁のみならず、気象庁や大学のデータも集められることが重要。検討・協議を続けることが重要。

 GPS観測は、業務観測が主になってきたこともあり、研究機関から業務官庁にゆだねるか又は規模を縮小させる。一方、K-NETは、研究機関が研究に重点を置いて運用していくことが重要。

 

 

[建設省の平成10年度以降の地震調査研究への取り組みについて]

 

  強震観測施設の分布図は公開されるべきであり、強震計のデータ公開及び公開するデータの種類について、検討されることが重要。

 また、得られた調査観測結果を活用し、防災に役立てていくという姿勢が重要。

 

 

[運輸省の平成10年度以降の地震調査研究への取り組みについて]

 

  ナウキャスト地震情報については、想定される利用例を念頭に置きつつ、積極的に推進していく。

 また、 過去の地震の記録(記象)の整理をさらに進めていく。

 海域の地殻変動監視観測を推進するとともに、GPS観測と音響観測を組み合わせた手法の高度化を図ることが重要。

 

 

[郵政省の平成10年度以降の地震調査研究への取り組みについて]

 

 VLBI観測とGPS観測が共存する観測点では、両者の特長を生かした信頼性の高い結果を得ることが重要。

 

 

[文部省の平成10年度以降の地震調査研究への取り組みについて]

 

 地震災害の軽減に資する大学の個々の研究については、地震予知の研究だけでなく、その他の研究についても、互いに連携をとることが重要。


(別添)平成11年度地震調査研究関係予算の概算要求にあたり考慮されるべき事項

 

1.地震調査研究推進の目的

 地震調査研究推進本部(以下「推進本部」という。)は、平成11年度地震調査研究関係予算の概算要求に当たり、地震による被害の軽減と地震現象の理解を目指した、地殻活動、地震動及び津波を評価、理解する上で必要な地震調査研究を推進するものとする。

  

2.地震調査研究関係予算概算要求の基本方針

 平成11年度の地震調査研究関係予算の概算要求に当たっては、以下に示される基本方針を考慮する。また、総合的かつ基本的な施策に関する小委員会において検討が進められている施策の検討状況にも十分留意するものとする。

 

(1)地震に関する調査観測の推進

 総合的な調査観測計画の中核となる基盤的調査観測等については、「地震に関する基盤的調査観測」(平成9年8月29日:推進本部)を踏まえることとする。また、従来から全国的に行われている調査観測、地域的に強化して行う調査観測、及び研究的な調査観測については、地震に関する調査研究の推進への貢献、業績を踏まえ整備・維持運営に努めることとする。

 「地震に関する基盤的調査観測」の決定においては、

〇地震観測

 ・陸域における高感度地震計による地震観測(微小地震観測)

 ・陸域における広帯域地震計による地震観測

〇地震動(強震)観測

〇地殻変動観測(GPS連続観測)

〇陸域及び沿岸域における活断層調査

を、基盤的調査観測として、また、

〇ケーブル式海底地震計による地震観測

〇海域における地形・活断層調査

を、基盤的調査観測の実施状況を踏まえつつ実施に努める調査観測として、さらに、

〇地殻構造調査

 ・島弧地殻構造調査

 ・堆積平野の地下構造調査

 ・プレート境界付近の地殻構造調査

を、手法の有効性、実施の在り方等について検討する調査として、それぞれ位置づけ推進することとした。また、基盤的調査観測等の推進に当たっては、調査観測を総合的に推進する観点から、基盤的調査観測等と、従来から全国的に行われている調査観測、地域的に強化して行う調査観測、及び研究的な調査観測との連携を図ることとした。

 このうち、基盤的調査観測等の実施内容は次のとおりである。

 

 1)地震観測・地震動(強震)観測・津波観測

 稠密な高感度地震計による地震観測網を整備し、観測を行う。これにより、内陸地震の震源と発震機構(震源における、地震を引き起こした断層運動の様子)の決定精度を高めるとともに、破壊した断層の把握に資することができる。また、これらの総合的な評価は、プレートや地殻構造の解明、地震活動パターンの把握、地殻構造や地殻応力の変化についての知見の蓄積に資するものと期待される。

 広帯域地震計による観測網を整備し、観測を行う。これにより、小地震(マグニチュード3クラス)以上の地震の発震機構や震源過程(断層の破壊の様子)の解明に資することができる。これら調査観測結果の総合的な評価は、震源の複雑さや多様性の系統的な把握、プレートや地殻構造の解明等に資するものと期待される。また、地震の規模と断層の破壊方向を即時に把握して、被害のより大きな地域を特定し、防災活動を有効に展開するための情報を与えることが期待される。さらに、津波地震の検知と解明にも資することができる。

 強震計による観測網を整備し、観測を行う。これにより、地震動の強さ、強い地震動の周期及び継続時間と空間分布の把握、震源域の詳細な破壊過程の解明に資することができる。また、表層の構造が地震動に及ぼす影響を明らかにして、強い地震動の予測にも寄与するものと期待される。さらに、強い地震動を即時に把握して、被害の大きな地域を特定し、防災活動を有効に展開するための情報を与えることが期待される。

 海底地震計の整備を行い、観測を行う。これにより、海域における地震活動を精度よく把握するだけでなく、沿岸域に発生した地震の震源決定精度の向上等が期待できる。

 また、津波計、検潮儀を整備し、観測を行う。これにより、地震時の津波発生規模の評価研究に資することができる。

 

 2)地殻変動等の観測

 GPS連続観測網を整備し、観測を行う。これにより、地殻歪の時間的・空間的変化の即時的、定常的かつ広範囲な把握に資することができる。また、地震の発生に至るまでの歪の蓄積についての知見の蓄積が期待される。さらに、地震発生時及びその後の地殻変動についても即時的に捕捉することができるため、地震の発生過程についての基礎的な知見が得られることが期待される。

 VLBI(超長基線電波干渉計)観測及びSLR(人工衛星レーザー測距)観測を行う。これにより、基盤的調査観測であるGPS連続観測を補完し、プレート運動等の広域地殻変動を捉える。

 また、GPS連続観測と併せて全国の三次元的な地殻変動を面的かつ詳細に捉えるため、高精度三次元測量、高度基準点測量、水準測量、天文測量、重力測量、辺長測量、験潮を行うとともに、よりローカルな地殻変動を捉えるために、歪計、傾斜計、伸縮計等による観測を行う。

 その他、地磁気・地電流の観測、地下水等の地球化学・水位変動観測を行う。

 

 3)地殻構造の調査

 活断層の位置を調査することは、地震が発生する可能性のある場所を評価する上で有効である。また、活断層の過去の活動時期の調査は、地震が発生する時期を長期的に評価する上で有効である。さらに、活断層の運動にともなう地震の規模は活動した活断層の長さ及び変位量に関係することから、それらを把握することは、地震の規模を評価する上で有効である。このため、活断層調査を行う。

 また、人工地震探査等弾性波探査、電磁気探査、重力探査等により、地下深部構造の把握に努め、発生する地震の場所・規模の推定、地震動評価に必要となる地盤構造の把握を目指す。

 

(2)観測結果等の収集、流通及び総合的評価とその国民への広報

 推進本部政策委員会は、「地震に関する基盤的調査観測等の計画について」の中で、調査観測結果の収集、処理、提供等の流通については、データセンター機能を整備して、円滑に実施していくことが望ましいとした。地震に関する調査観測結果等については、地震防災対策特別措置法に基づき、気象庁(地域地震情報センター)における収集を促進するとともに、推進本部において、これら調査観測結果の分析及び総合的な評価を有効に行えるよう、体制の整備を行うことが必要である。さらに、地震による被害の軽減と地震現象の理解に資するためには、国、地方公共団体の地震防災関係機関、一般国民、研究者が、調査観測結果、研究成果等を得ることを可能とする流通体制の整備が不可欠である。

 推進本部政策委員会は、「地震調査研究推進本部における広報の在り方について」(平成9年6月16日:地震調査研究推進本部政策委員会)を決定した。この中で、推進本部は、「地震との共存」意識の国民への定着を基本目標とし、地震についての基礎知識の普及、長期的な地震発生の可能性の評価についての広報、発生した地震についての情報の迅速な広報を、地震による被害の軽減に資するために効果的に行う必要があるとした。

 

(3)基礎・基盤研究等の推進

 地震調査研究の進展に資するため、地殻活動、強い地震動及び津波等についての理論研究、実験研究、シミュレーション等を行うことが重要である。学際的な研究領域については、各専門分野の有機的な連携を図り、多分野の国内外の研究者を結集した研究体制を整備することが重要である。また、幅広い視点から地震に関する先端的な研究及び観測成果の即時的な利用についての調査等応用的な調査を推進することが重要である。

 

(4)地方公共団体における地震調査研究等の推進

 上記の地震調査研究及び国民への広報は、国のみならず、地方公共団体の協力も得つつ、地域に密着して行うことが効果的である。このため、平成7年度及び平成8年度に創設された各地方公共団体への交付金制度及び補助金制度に基づく事業を、平成11年度においても引き続き実施する必要がある。

 

(5)必要な組織、人員の拡充及び人材の育成

 これらの施策を円滑かつ効果的に推進するため、地震調査研究に携わる組織、人員の拡充を図ることが不可欠である。また、国・地方公共団体における地震防災担当者を対象に、地震調査研究に関する研修を行う必要がある。

 

(6)地震調査研究の実施状況の説明

 地震調査研究の実施状況については、ヒアリングにおいて予算小委員会に説明することが重要である。


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