資料 政17−(4)
 
政策委員会成果を社会に活かす部会の検討状況報告
−地震調査研究における長期評価を社会に活かしていくために−
 
平成12年8月23日
成果を社会に活かす部会

1.検討の経緯
 政策委員会成果を社会に活かす部会(以下「部会」という。)は、平成11年11月より「地震調査研究の推進について−地震に関する調査、観測及び研究に関する総合的かつ基本な施策−」(平成11年4月本部決定)に基づき、地震調査研究の成果を国民や防災関係機関等の具体的な対策や行動に結びつく情報として提示するための方策を検討している。
 部会では、地震調査委員会の現状評価及び長期評価の現状、地震調査研究推進本部等の広報の現状、防災関係機関の地震防災対策の現状等を踏まえ、特に地震調査委員会が行う地震活動の長期評価の結果を有効に社会に活かしていくため、その提示のあり方について、受け手の立場に留意しつつ議論を深めた。
 現在までの検討状況は、以下の通りである。
 
2.地震調査委員会における長期評価の現状と課題
 地震調査委員会では、地震に関する総合的な評価の一環として、活断層や海溝型地震の評価等地震活動の長期評価を実施している。
 長期評価により将来地震が起こる大まかな時期、場所、規模が明確になれば、建築物、構造物等の耐震性能の向上をはじめとする地震に強いまちづくり、地域づくりに向けた防災関係機関を中心とする中長期的な取り組みが前進するとともに、住居の耐震化措置、居住地の選択等の個人レベルの防災対策が推進されるものと期待される。
 一方、現在の科学技術の水準では、場所、規模についてはある程度の予測が可能であるが、時期については元々ばらつきのある現象であること等から予測が難しく、特に陸域の活断層は活発なものでも千年あるいはそれ以上の間隔で活動するため、数百年(海溝型地震の場合で数十年)の幅を持つ大づかみな予測となっている。
 地震調査委員会では、糸魚川−静岡構造線断層系(平成8年)、神縄・国府津−松田断層帯(平成9年)、富士川河口断層帯(平成10年)の評価結果の中で、「現在を含む今後数百年以内」を評価期間とし、「可能性が高い」というような表現を用いている。このことについては、以下のような点に留意して表現上の改善・工夫が求められる。
@数百年という幅は、情報の受け手である住民にとっても防災関係機関にとっても余りに長すぎ、切迫感を与えず情報の受け手側が身近な情報と受け止めにくいため、具体的な行動に結びつきにくい。受け手側が身近な情報として受け取ることができるような表現、評価期間を用いることが必要である。
A「高い」、「低い」という定性的な表現だけでは、住民や防災関係機関における防災対策を誘引するには不十分であり、定量的な表現と併せて提示することが必要である。 
B住民と防災関係機関では必要とする情報が異なり、受け手側のニーズの特性を踏まえたわかりやすい内容・表現で情報を出していくことが求められる。
C地震発生に関する評価と、自分の居住地がどの程度揺れるかをつなぐ情報が必要である。
 
3.確率評価の導入と課題
 地震調査委員会では現在、概ね5年後を目標に強い地震動の発生の確率的な予測情報を含む全国を概観した地震動予測地図を作成するため、具体的な検討を行っている。地震動予測地図は上記の表現上の問題を解決する有力な手段であるが、地震動予測地図の作成にはまだ時間がかかるという問題がある。
 確率評価に関しては、平成11年1月に地震調査委員会長期評価部会が「(改訂試案)長期的な地震発生確率の評価手法について」(以下「改訂試案」という。)を公表しているが、確率評価手法に係る技術的な問題点のさらなる検討が必要として、未だその導入に至っていない。現在、同部会において、これらの問題点を解決するための検討が行われているところである。
 
(1)確率評価の解説及び補足的情報の必要性
 長期評価部会は、確率評価手法の試案に寄せられた意見に対する回答の中で、「確率評価の結果を公表できるようになった場合には、計算結果と併せて、その確率が意味するところをわかりやすく解説し、それぞれの立場にある者が取るべき行動を判断する手助けをすることが必要である」との考え方を示し、改訂試案の参考資料として確率についての解説を示している。
 確率評価は、数値が一人歩きして誤解が生じること、「安心情報」となりかねないこと、必ずしも簡単には理解できない内容を含み受け手により解釈が大きく異なることなどの様々な問題があり、確率の形で表現された地震に関する情報を、防災対策に結びつくよう加工・補足することが重要である。
 部会としては、確率の解説に加えて、評価結果を補足する情報(以下「補足的情報」という。)を提供することにより、受け手の理解をより一層深め防災対策が促進されると考える。このような補足的情報の具体的な例には、@注意喚起のための指標(集積確率の活用、複合的な指標等)、A他の地震、歴史地震の発生確率の分析と比較、B自動車事故、火災、がん等の他のリスクとの比較が考えられる。
 
(2)確率評価のインデックス化
 地震発生確率はある程度の推定の幅や誤差を含んだものであることから、その確率は有効数字が二桁を超える精度を持つ決定的な情報として捉えるべきではない。このため、確率評価を順位付け、ランク分け等インデックス化することにより、推定の幅を含んだ情報に関して専門家でない者の誤解を避け、評価結果の理解を深めることが可能になると考える。
 例えば、主要活断層ごとにその活動の切迫度等をもとに、順位付け(例:X断層は第1位、Y断層は第2位・・・)やランク分け(例:超Aクラス、Aクラス、Bクラス、Cクラス・・・)を行うことが考えられる。
 
(3)確率評価の対象期間
 確率評価の対象期間は、身近な情報として受け取られるようにするため、一般国民が人生設計を検討するに対象とするであろう期間を考慮して、30年間における確率評価を基本とすることが適当である。
 また、建築物の耐用年数は50年間あるいはそれ以上の長期のものが出てきていることや、地方自治体や国などでは防災対策、都市計画等の相当な長期間にわたる取り組みを必要とするものがあるため、50年間及び100年間にわたる確率評価も併せて行うことが適当である。
 海溝型地震では30年間よりも短い期間で高い確率が表示される場合もあるため、このような場合には10年間における確率評価を行うことが適当である。
 
4.今後の検討の進め方
(1)地震調査委員会における確率評価の導入
 地震調査委員会では長期評価を加速化しており、今後活断層や海溝型地震の評価結果が順次公表されていく見込みである。今後、地震調査委員会が確率評価を行う場合には、評価の対象期間は上記3(3)を踏まえることを期待する。
 なお、長期評価部会が確率評価手法について結論を出すに際して、一般国民からの意見募集を行う場合には、確率についての解説の内容についても併せて意見募集をすることが適当である。
 
(2)部会における補足的情報及びインデックス化の検討
 部会では、今後、地震調査委員会の長期評価結果に関する補足的情報の具体策及びインデックス化について検討することとし、中央防災会議等の防災関係機関との意見交換や一般国民からの意見募集を経るなどした上で、とりまとめることとする。
 また、地方自治体などには、評価結果と対策(行動指針)を一体として出すことを求める声もある。評価結果に基づき実施すべき対策は個々の状況により異なり一律には決められないこと、対策は発生確率よりも到来するであろう震動の強さ、規模に基づくことなどの問題があるため、評価結果と対策を一体として出すことには難しい点がある。しかし、今後部会で補足的情報等を検討する際には、地震動予測地図の作成を念頭におきつつ、住民や防災関係機関が行う防災対策に直結する情報のあり方についても併せて検討する。
 
(3)その他
 地震調査委員会等が発する情報が有効に活用されるためには、広報の方法の改善・工夫にも十分配慮する必要がある。そのため、地震調査研究推進本部や関係機関においては、自らの行う広報が世の中のニーズに応えた方法で行われているかを常に見直す姿勢を持つことが必要と考える。
 なお、部会では、今後、長期評価に関する上記の課題の検討を進めるとともに、毎月あるいは臨時に行う地震活動の現状評価について検討を進めることとしている。

議事次第へ戻る
地震調査研究推進本部のホームページへ戻る