資料 成5−(3)
 
政策委員会成果を社会に活かす部会への検討状況報告
−地震調査研究における長期評価を社会に活かしていくために−
(たたき台)
平成12年7月12日
事務局

1.検討の経緯
 
 政策委員会成果を社会に活かす部会(以下「部会」という。)は、総合基本施策(平成10年4月)に基づき、地震調査研究の成果を国民一般や防災関係機関等の具体的な対策や行動に結びつく情報として提示するための方策を検討するため、平成11年11月に第1回部会を開催して以降、これまでに計5回開催した。
 この間、部会では、地震調査委員会の現状評価及び長期評価の現状、地震調査研究推進本部等の広報の現状、防災関係機関の地震防災対策の現状等を把握しつつ、地震調査研究の成果の活用に向けて検討を行ってきたところであるが、特に地震活動の長期評価に関し、その評価結果を有効に社会に活かしていく上での提示のあり方について、受け手の立場に留意しつつ、議論を深めた。
 以下は、これまでの検討状況について取りまとめたものであり、部会としては、この取りまとめを踏まえ、引き続き検討を進めるとともに、長期評価以外の地震調査研究の成果の効果的な普及方策について、今後検討を行うこととしている。
 
2.長期評価への期待と現在の科学技術の水準
 
 地震調査委員会では、地震に関する総合的な評価の一環として、活断層調査結果の評価等、地震活動の長期評価を実施している。
 長期評価により、将来地震が起こる大まかな時期、場所、規模が明確になれば、建築物、構造物等の耐震性能の向上をはじめとする地震に強いまちづくり、国土作りのための中・長期的な取り組みに大きく貢献するものと期待される。また、一般国民からは、例えば、居住地の選択、住居の耐震化という措置を講じる等の個人の行動選択に活用されることが考えられる。
 一方、現在の科学技術の水準では、場所、規模についてはある程度の予測が可能になっているが、時期については、内陸の活断層では活発なものでも千年あるいはそれ以上の間隔で活動し、また元々ばらつきのある現象であることから、その予測は数百年の幅をもつ極めて大づかみなものとなっているのが現状である。
 しかしながら、地震という、稀にしか起こらないと一般的には認識されている大災害に対処していく上では、不確実性の高い情報であっても唯一の科学的根拠を有するな情報であり、今後の防災対策にその活用を図っていく必要がある。例えば、限られた人材、資金などの資源の制約の下で地震被害軽減のための対策を考える場合、対策を考慮すべき地震、対策を施すべき地域などについて、何らかの優先順位付けがわかるだけでも大いに役立つものと考えられ、現在の科学技術の水準をもとにしても、その情報の出し方を工夫することにより、長期評価の有効活用は可能と考える。
3.長期評価の表現の現状
 
 これまで、地震調査委員会では、神縄・国府津−松田断層帯、糸魚川−静岡構造線断層系、富士川河口断層帯の評価を公表している。これらの評価文は、「現在を含む今後数百年以内」を評価期間とし、「可能性が高い」というような表現を用いている。
 この点については,以下のような意見があった。
@ 数百年という幅は、個人にとっても行政にとっても余りに長すぎ、切迫感を与えず具体的な対策に結びつきにくい。生活尺度にあった期間、表現が必要である。
A「高い」、「低い」という定性的な表現だけでは、一般国民や防災関係機関における防災対策を誘引するには不十分であり、定量的な表現と併せて提示することが必要である。
B一般住民と自治体等防災機関では、必要とする情報が異なり、受け手側のニーズに合わせてわかりやすい情報を出していくことが求められる。
C地震発生の評価と、自分の住んでいるところがどう揺れるかをつなぐ情報が必要である。
 
4.確率評価の早期導入
 
 地震調査委員会においては、危険性の大小を客観的に表現するために、長期評価結果を確率によって示そうと準備しているが、3の意見のうち、@からBの意見に関しては、この確率評価を導入・定着させ、評価結果に盛り込むという方法がその有力な解決手段となると考える。
 確率評価に関しては、既に地震調査委員会長期評価部会での確率評価手法の検討(平成11年1月「(改訂試案)長期的な地震発生確率の評価手法及びその適用例について」。以下「改訂試案」という。)や、平成11年4月に本部決定した総合的かつ基本的な施策等において議論がなされており、確率評価の有効性は共通的な認識となっているが、確率評価手法に係る技術的な問題点のさらなる検討が必要として、未だその導入に至っていない。
 部会としては、地震調査委員会における活断層調査の評価が加速化され、今後その評価結果が順次公表されていくことを考えると、確率評価を評価結果に盛り込み有効活用される表現に改善していくことが急務であると考える。したがって、地震調査委員会における改訂試案の検討作業が終了し次第、確率評価を速やかに導入すべきと考える。
 なお、3のCの意見に関しては、地震調査委員会において、概ね5年後を目標に全国を概観した地震動予測地図の作成に向けて具体的な検討がなされているところであり、その成果が待たれるところである。
 
5.確率評価の導入に際し留意すべき事項
 
 住民や防災機関が地震に関する情報を自らの問題として認識し、具体的な震災対策を講じようとの動機付けを与えるためには、受け手が興味を抱き、理解でき、かつ行動に結びつく内容・表現であることが必要である。
 確率評価の手法は、学問的に客観的かつ正確な評価であるが、このような「人を動かす」観点からは、必ずしも簡単に理解できない内容を含み、また、受け手により解釈が大きく異なるなど様々な問題があり、確率評価の形で表現された地震に関する情報を、防災対策に結びつくよう如何に加工・補完するかが重要である。
 このため、確率評価の導入に際しては、以下の点に留意する必要があると考える。
(1)地震発生可能性の確率評価の対象期間
 地震発生可能性の確率評価(地震発生確率)の対象期間については、生活尺度にあった期間で表すことが重要であることから、一般国民が人生設計を検討するに対象とするであろう期間を考慮して、30年間における確率評価を基本とすることが適当と考える。また、建築物の耐用年数は50年間あるいはそれ以上の長期のものが出てきていることや、地方自治体や国などでは防災対策、都市計画等の相当な長期間にわたる取り組みを必要とするものがあるため、50年間及び100年間にわたる確率評価も併せて行うこととが適当である。
(2)注意喚起のための指標(※7/12第5回部会において、改訂試案表4.2「断層の活動を注意喚起するための指標」(1)〜(5)についての説明及び議論が必要)
 地震発生確率だけの単独の指標とすれば、単純かつ象徴性も帯び、国民等に浸透しやすいというメリットが考えられるが、反面、数値が一人歩きをし始め、誤解を生じる可能性があり、また「安心情報」となりかねないなどの問題点を抱えており、確率の性質を踏まえた工夫が必要である。また、地域における地震発生の危険性・切迫性を実感できる情報内容とするためにも、発生確率だけでなく、注意喚起のための指標を同時に提示することが不可欠である。
 具体的には、国民の危機意識を刺激し、比較的分かり易いという観点から、注意喚起の指標として集積確率を採用することが適当と考えられる。なお、平時との比較と言う観点から、評価時点の発生確率とPoisson過程の発生確率との比についても併せて出すことが適当と考える。
(3)確率評価の解説及び補足
 長期評価部会は、改訂試案に寄せられた意見に対する回答の中で、「確率評価の結果を公表できるようになった場合には、計算結果と併せて、その確率が意味するところをわかりやすく解説し、それぞれの立場にある者が取るべき行動を判断する手助けをすることが必要である」との考え方を示し、改訂試案の参考資料として確率についての事務局の解説資料を添付している。
 部会としても、このような考え方は至当であると考えるが、受け手のより一層の理解を深め活用を促進するという観点で、確率評価の解説に加えて、評価結果を補足する情報(以下「補足的情報」という。)を検討すべきと考える。
 検討すべき補足的情報の具体的な例は以下の通り。
 ・他の地震、歴史地震の発生確率の分析と比較
 ・自動車事故、火災、がん等の他のリスクとの比較
(4)一般向けの情報と専門家向けの情報
 一般国民に対し防災意識、危機意識の向上を促すための情報と、行政が対策の基準等を決定する上で根拠となる情報は自ずと異なり、各々のユーザーに対応した情報を提供することが重要である。しかしながら、情報を提供するに際し一般向けと専門家向けで分けることは、受け手に対し、本質的に異なる情報を与えるような印象があるので、受け手である一般の方々の情報に対する信頼度に影響を及ぼす可能性がある。したがって、一般向けと専門家向けでは表現方法を変える必要があるが、情報の内容は基本的に同じとすべきである。
 防災関係機関への情報提供では、「地域作り」「まちづくり」に直結する情報になるため、施策の優先順位を判断できる情報として提供することが必要である。そのような「プロ」への情報内容は、一般国民に対しては、防災意識の向上を図るという観点から「表現方法」や「伝え方」を変え、分かりやすく「翻訳」して説明するような情報であるとの立場をとることが適当と考える。
 この際、一般の方々のうちで特に興味がある方がいれば、情報の「翻訳」の過程が逆にたどれ、専門家向けの情報にたどり着けるようにしておくことも、情報の信頼性を確保するために重要であると考える。
 なお、数字が低いと安心情報となってしまうとの指摘があるが、そうであるからといって低い数字を隠すことは適当ではなく、地震については低い数字でも危険であることを広報し理解を求めていくことが必要である。あるいは大きな数字が必要なら単位の換算を行って%(百分の1)でなくPPM(百万分の1)で表示すれば大きな数値になる(5%が5万PPMに)、あるいは30年確率5%(例えば)を基準に、これを指数100として、%の数値を指数に換算して表すことも一案であろう。
(5)確率評価のインデックス化
 住民等が「興味を持ち」「理解でき」かつ「防災活動の動機付け」となるような「人を動かす」情報としていくためには、(1)から(4)の取り組みに加えて、確率評価をもととしたランク分け等のインデックス化が図られることが望ましいと考えられる。
 現在の地震調査研究の水準では、地震発生確率を正確に与えることには困難があり、ある程度の推定の幅や誤差を含んだものとならざるを得ないことから、その発生確率を有効数字が二桁を超える精度を持つ決定的な情報として捉えるべきではない。確率評価をインデックス化することは、推定の幅を含んだ情報について、専門家でない者の誤解を避け、また、その意味するところの理解を促す意味で重要と考える。
 具体的には、これまでの議論でも出ているが、主要活断層ごとに、その活動の切迫度で順位付けをする(断層は第位、断層は第位・・とか。)、あるいは、超クラス、クラス、クラス、クラスといったランクに分ける(たどえば、クラスは、阪神・淡路大震災を起こした野島断層の1995年1月時点における発生確率と同程度、超クラスはこれを既に相当程度超えている、クラスはこれを相当程度下回るなど)が考えられる。
 
6.確率評価導入に向けた今後の検討の進め方
 
(1)地震調査委員会における確率評価の導入と解説
 部会としては、地震調査委員会での改訂試案の検討が済み次第、長期評価に確率評価が盛り込まれることを期待する。
 なお、地震調査委員会で確率評価手法について結論を出すに際して、一般からの意見募集を再度求めることが考えられるが、その場合には、解説及び補足的情報の考え方についても併せて意見募集をすることが適当である。
(2)部会における補足的情報の検討
 部会では、今後、地震調査委員会の長期評価結果に関する補足的情報の具体策を検討する。
 補足的情報の考え方については、一般からの意見募集を経て、補足的情報の具体的内容を政策委員会として決定し、地震調査委員会における確率評価の公表の際には、補足的情報をあわせて提供することができるようにすることが望ましい。 なお、補足的情報は、今回決定されるものに限られるものではなく、その後も引き続き各界の意見を聞きながら改良、追加していくべきものと考える。
(3)部会におけるインデックス化の検討
 インデックス化は、まちづくりや防災対策、生活実態に直結する指標として意味をなすことが目的であることから、その検討には、受け手の意向の十分な把握、合意形成が不可欠である。今後部会としては、専門家の意見を踏まえ検討する。わかりやすい意味では統合化した一つの指標がベストだが、それが難しいならば、いろいろ組み合わせた複合的な指標の検討も必要と考える。
(4)防災関係機関との連携
 地方自治体などからは、評価結果と対策(行動指針)をセットにして出すことを求める声もある(アンケート結果参照)が、受け手により対策は異なること、対策は発生確率よりも到来するであろう強震動に由来することなどの問題があり、技術的に困難である。
 今後、地震調査研究推進本部における補足的情報の検討結果を、中央防災会議等の防災関係機関とに速やかに意見交換をするなどの連携を強化することが適切であると考える。
 そして、防災関係機関や防災関係者が、地震調査委員会の評価結果や補足的情報、あるいは確率の数字の意味を理解し、地震調査委員会が発するこれらの情報に応じた、事例毎に最も適切な対策が鋭意検討されることを期待するものである。
 環境規制などでは国の基準に上乗せした自治体独自の規制を実施しているところも見られるように、住民の安全に最も身近な存在である地方自治体は、住民の理解と支持を得て、国の指示待ちではなく、自ら考え、必要があれば行動する姿勢を持つべきではないかと考える。
(5)広報の推進
 地震調査委員会等が発する情報を、一般国民や防災関係機関が有効に活用するためには、広報の方法にも気を配る必要があり、地震調査研究推進本部をはじめとする関係機関においては、自らの行う広報が世の中のニーズに応えた方法で行われているかを常に見直す姿勢を持つことが必要である。

参 考

下田隆二                  

(一橋大学イノベーション研究センター)

○地震発生可能性に確率を加えることについて

 確率を加えることには、基本的に賛成である。

 限られた人材、資金などの資源の制約の下で地震被害軽減のための対策を考えるには、対策を考慮すべき地震、対策を施すべき地域などについて、何らかの優先順位付けが必要である。

 このため、基本的には;

 「地震が起こった場合の被害の甚大性(注)」x「地震の発生確率」

の大きい順に優先的に対策を考えるべきであり、このための基礎データとして、地震の発生可能性の確率的情報が必要であると考える。

 なお、この上記「被害の甚大性」についても、人的被害と物的被害、人的被害でも死亡と負傷など、相互には単純に比較できないものを比較して、全体としての被害を積み上げざるを得ないという、倫理的な問題を含んでいる点には十分に留意することが必要となる。

 また、ここでは単純に「地震」といっているが、厳密には、当該地域における地震動というべきであり、「地震の発生確率」も、そのような地震動を生ずる地震の発生の確率と理解すべきである。この観点で、地震調査研究推進本部がその総合的かつ基本的な施策で地震動に注目していることは妥当と考える。

 

○インデックス化

 現在の地震調査研究の水準で、地震発生確率を正確に与えることには困難があり、ある程度の推定の幅や誤差を含んだものとならざるを得ないと考えられる。従って、その発生確率を有効数字が二桁を超える精度を持つ決定的な情報として捉えるべきではない。従って、発生の可能性をインデックス化することは、推定の幅を含んだ情報について、専門家でない方々の誤解を避け、また、その意味するところの理解を促す意味で適当と考える。

 具体的には、これまでの議論でも出ていたが、主要活断層ごとに、その活動の切迫度で順位付けをする(X断層は第1位、Y断層は第2位・・とか。)、あるいは、超Aクラス、Aクラス、Bクラス、Cクラスといったランクに分ける(たどえば、Aクラスは、阪神・淡路大震災を起こした野島断層の1995年1月時点における発生確率と同程度、超Aクラスはこれを既に相当程度超えている、Bクラスはこれを相当程度下回るなど)が考えられる。

 

○専門家と一般について情報を分けることについて

 情報をことさらに「分ける」という言い方は、専門家向けの情報と一般向けの情報で本質的に異なる情報を与えるような印象があるので、受け手である一般の方々の情報に対する信頼度に影響を与える恐れがあり、適当でないと考える。むしろ、一般向けの情報は、専門家向けと本質的には同じ情報であるが、これを一般向けに判りやすく「翻訳」して説明する情報であるとの立場をとることが適当ではないか。

 この際、一般の方々のうちで特に興味がある方がいれば、情報の「翻訳」の過程が逆にたどれ、専門家向けの情報にたどり着けるようにしておくことも、情報の信頼性を確保するために重要であると考える。

 なお、数字が低いと安心情報となってしまうとの指摘があるが、そうであるからといって低い数字を隠すことは適当ではなく、地震については低い数字でも危険であることを広報し理解を求めていくことが必要ではないか。あるいは大きな数字が必要なら単位の換算を行って%(百分の1)でなくPPM(百万分の1)で表示すれば大きな数値になる(5%が5万PPMに)、あるいは30年確率5%(例えば)を基準に、これを指数100として、%の数値を指数に換算して表すことも一案であろう。

 

○対策と地震発生可能性をセットで公表することについて

 地震発生可能性(厳密には地震動発生可能性)と防災対策をセットで公表することについては、次に示す理由で、一対一に対応する対策の提示は困難と考える。

 強制的な対策は、個人の財産権等を制約することとなろうが、そのような強制的な措置について、関係者の合意を得ることは容易ではない。他方、地震調査研究の成果は、可能な限り防災対策に活かし被害の軽減に結びつけていくべきである。このため、強制的な対策について関係者すべてが合意するまで、なんら他の対策行動をとらないというのではなく、危険性の認識に応じた個々の自治体の判断、個々の住民の判断に則して、対策を実施していくことが望ましい。従って、防災対策については、自治体、住民の地震の危険性に関する認識の程度、防災意識の程度に依存せざるを得ない面が多いと考える。

 従って、住民に対する積極的な広報の実施は当然のこととして、当面は、個々の自治体による国の基準に上乗せした対策や、住民の自由な意思に基づいた対策が重要となる。また、この際、住民の対策を促す意味からは、補助金の交付、税の減免等のインセンティブをもたらす措置をとることが望ましい。

 なお、自治体関係者からは、国から統一的な対策の基準、行動の指針を示して欲しいとの意向も聞かれるが、環境規制などでは国の基準に上乗せした自治体独自の規制を実施しているところも見られるように、住民の安全に最も身近な存在である地方自治体は、住民の理解と支持を得て、国の指示待ちではなく、自ら考え、必要があれば行動する姿勢を持つべきではないかと考える。

 


地震調査研究における長期評価を社会に活かしていくために

主婦連合会 佐野真理子

◎成果を活かしていくための前提

 日本は「地震国」です。それだけに消費者は地震の研究に重大な関心を寄せています。日常生活に役立つ情報を与えてくれるものとして、その発展に期待しています。しかし、現状は、難解な用語の分野であり、その情報がインターネットで提供されているものの、専門家の説明なしには一般消費者には分かり難い実態となっています。インターネット上の情報の存在さえ、知らないのが現状です。地震大国でありながら、きちんとした情報が提供されるシステムになっていないのです。これは大きな問題です。敢えて申し上げるなら、これまで地震問題に関連する研究者の方々が果たしてどれほど「一般国民への情報提供」へ向けての努力を費やされてきたのか、研究の段階で立ち止まっていたのではないか、と疑問にさえ思える現状です。

 もう一つ敢えて申し上げるなら、地震に関連する関連省庁が分かり難く、極めて縦割りになっているような気がします。研究・実証・実施分野との連携が緊密さを欠くような現状になっているように思えます。例えば、「町づくり」を地震対策の面から進めようとすると、多くの省庁が関わることになります。このような状態も一般国民への適切な情報提供を妨げてきた要因ではないか、と思います。

 従って、研究成果を社会に活かしていくためにはまずもって、研究者のこれまで以上の邁進を求めたいと思います。同時に、縦割り行政を除去する方向で、検討していくことを望みます。

 

確率情報の表し方

◎基本的視点

情報の提供は「知り得た情報はすべて公開する」という立場で実施すべき。

「情報公開法」の時代であることを前提に、積極的に公開していく姿勢が必要。それは地震調査研究の成果を情報として社会的に提供・活かしていくときも同様でときどき噂に出るような「特定の部署で秘匿され、世論操作に利用されている」との疑いを少しでももたれないよう、全面的かつ判明する範囲で具体的に提供することが必要と思う。

◎論点1

 長期評価及び現状評価に基づく広報に関し、防災機関向けと一般国民向けで分けるべきか? また分ける場合にはそれぞれどのような表し方が求められるか?

 一般国民向けと防災機関向けでは表現方法を変える必要があるが、情報の内容は基本的に同じとすべき。

 防災関係機関への情報提供では、「地域作り」「まちづくり」に直結する情報になるため、施策の優先順位を判断できる情報として提供する。

 そのような「プロ」への情報内容を一般国民に対しては、「表現方法」や「伝え方」を変え、分かりやすく提供する。(一般国民には国や自治体が何をしようとしているか、施策情報を知る権利がある。)

◎論点2

 確率的評価における指標としては、どのようなものにするべきか?

 わかりやすい意味では統合化した一つの指標がベストだが、それが難しいならば、いろいろ組み合わせた複合的な指標も必要に思う。この指標については専門家の方の意見を尊重し、案を提示してもらって、それを検討するのが良いと思う。

 確率を表現する対象期間は、できる限り少ない年数を基準として欲しい。

 問題はこれらの確率的情報が、まちづくりや防災対策、生活実態に直結する指標として意味をなすことである。「地震の頻度」と「人間の寿命」を組み合わせた「地震暦」の作成にも着手して欲しい。

 気象庁の「雨の降る確率」は、導入された時点では奇妙な感じがしたが、現在では目安として浸透している。「指標」を提示する以上はそれに対応した行動指針が伴う必要がある。その内容にはセットとして防災情報が第一に置かれるべきと思う。

 ◎「広報」について

 インターネットの活用、学校教育などの充実はもちろん必要だが、「地震大国」でありながら、総合的な広報体制が整備されていないことが気になる。現在、地震が発生したときはテレビのテロップですぐに流されるが、発生したときだけではなく、もっと日常的な広報が必要。

 そのためには、ガス、水道、電気などの生活インフラ部門で実施している情報提供を、一般の人からの相談も受け付ける「地震センター」などを設置して、そこで統合して流していくことが必要になってくるのではないか。

 消費者が最も知りたいのは、地震は予知できるのか、できないのか。できるとしたら時間的にどの範囲までか、それに対し「まちづくり」を含めてどのような対策が必要か、などではないかと思う。予知できる範囲があまりにも望遠な時であるとしても、広報体制は常に今起こったらどうするかという防災対策を含めたものであるべきと思う。

                        以上


 平成12年6月2日

 先日(5月30日)開催されました「成果を社会に活かす部会」で、論点整理メモに関連して意見がある場合には提出してほしいとのことでしたのでお送りさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 なお、30日に発言した内容と一部重複しますとともに、多少狭い論議になりますことをご了承下さい。

(補足)

 30日の部会で、阿部先生が論点整理メモの中の5.確率情報の活用のためにの一部分「一般的には地震の発生確率は、火災や自動車事故の卑近な災害の発生確率よりも低いという問題がある。」という点について、地震の方が高いとの発言があり、廣井部会長も小生から資料をいただいているとの発言がありましたが、ご存じだと思いますが念のため補足させていただきます。

 被害を伴う地震の発生確率は火災や自動車事故等に比べ明らかに低いです。

この発生確率に1回の被害量を加味した(掛け合わせた)『危険度』で見た場合、つまり地震危険度は火災危険度や交通事故危険度に比べ高くなるということです。これらは日本全国を平均してみた場合です。

損害保険料率算定会

大門文男


成果部会中間報告の取り纏めに当たっての考え方

国土庁防災局震災対策課

1.一般的考え方

(1)中間報告の内容は、確率評価が確率統計の考え方に立ち、学問的に客観性かつ正確性を有する一方で、解り易さ等の観点からは様々な問題があること(平成11年4月「地震調査研究の推進について」指摘等)を前提とした上で、国民の防災意識の向上や防災機関による対策への反映等その成果を社会に活かすために有効と考えられる情報の出し方や加工・補完の仕方等について、部会において実際に議論された事項について、情報の出し手としての立場から(地震調査委員会への提言として)、取り纏めたものとすべきである。

(2)確率評価について、国民や防災機関がこれを如何に自らの防災対策において活用するかについては、未だ議論が本格化しているとは言えず、最終報告に向けた今後の部会又は政策委員会や中央防災会議の場において更に議論を深めるべきと考える。

2.個別論点

(1)確率評価の是非(メリット・デメリット)

 現在試案として示されている確率評価の手法は、推本でのこれまでの議論の貴重な成果であり、また、学問的に客観的かつ正確な評価であることから、これを利用・公表することに異論はない。しかしながら、問題となるのは確率評価の形で表現された地震に関する情報を如何に加工・補完するかであり、これに当たっては、「興味を引き」「理解でき」かつ「防災活動への動機付けとなる」ような「人を動かす」情報の提供が必要という認識が重要。確率評価のデメリットとして、「興味を引き」「理解でき」「防災活動の動機付けとなる」情報となっていない点を明記する必要がある。

 なお、本部会において検討してきた確率評価の出し方、加工・補完の仕方についての成案が得られるまでは、確率評価手法は試案に止めるべきと考える。

(2)確率評価の試案

 指標については、単独とすれば単純かつ象徴性も帯び、国民等に浸透しやすいというメリットが考えられるが、反面、数値が一人歩きを始め、誤解を生じる可能性が高いと考えられる。確率評価の公表に際しては、定性的な解説等により補完することが適当という立場からは、複数の指標を用いるべきと考える。この場合、指標に関しては国民の危機意識を刺激するのに適しているという観点から集積確率を採用すべきである。

(3)ユーザーに応じて評価情報の出し方を変えるべきか

 防災意識、危機意識の向上を促すための情報と行政が対策の基準等を決定する上での根拠となる情報は自ずと異なり、各々のユーザーに対応した情報を提供することが重要である。具体的には前者情報は科学的客観性・正確性を多少犠牲にしても「人を動かす」分かり易さが必要である一方、後者情報については客観性を重視した定量的情報が相応しいと考えられる。

(4)指標に対応した行動指針は必要か

地震発生の可能性についての情報が得られた場合、防災機関が何をすべきかは当該防災機関が地域の事情等を踏まえて自ら決すべき事項であると考える。推本としては防災機関等の声を踏まえ、情報の出し手として、如何なる確立情報を提供すべきかに議論を特化することが重要な課題と考える。


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