資料 成4−(3)
兵庫県における地震調査研究成果の防災対策への活用状況について
平成12年5月30日
兵 庫 県
1 はじめに
本年1月17日をもって、兵庫県に甚大な被害をもたらした阪神・淡路大震災から5年を迎えることとなった。この間、県民の懸命な努力により、復興は着実に進みつつある。
私達は、あの震災で人知を超える大自然の力を再認識するとともに、あらゆる災害に対して十分な備えを行い、安全で安心して暮らせるまちづくりをすすめることの重要性を痛感した。
こうした教訓を踏まえ、兵庫県では、災害時の初動体制を強化するとともに、広域的な防災拠点の整備を推進するなど、総合的な防災体制の確立を目指しているところである。
これらの防災対策を検討するにあたっては、参考となる学術上の知見を最大限活用するよう努めている。このうち、地震調査研究成果の防災対策への活用に関し、兵庫県における取組状況について以下に紹介する。
2 兵庫県における地震調査研究成果の防災対策への活用事例
(1)兵庫県災害対応総合情報ネットワークシステム(フェニックス防災システム)
兵庫県では、市町、消防本部、警察本部・警察署、関係公共機関を結ぶ「災害対応総合情報ネットワークシステム(フェニックス防災システム)」を構築している。
このシステムは、「震度情報ネットワークシステム」等の8つのサブシステムから構成され、平時及び災害時の行政事務を支援している。
このシステムでは、県内全市町に設置している計測震度計から地震情報を収集する「震度情報ネットワークシステム」によって、県内で震度4以上の地震が観測された場合に、「被害予測システム」により自動的に地震被害予測を行い、初動対応に活用されることになっている。
(2) 地震被害想定調査
兵庫県内に大きな影響が予想される地震のうち、現時点での発生可能性を考慮して、山崎断層地震、南海道地震など5つの地震を想定し、地震動、建物被害、火災、人的被害、避難者数を想定した。
県内を500mメッシュ(兵庫県全体で約4万メッシュ)に分割し、季節及び時刻毎の被害を想定しており、想定にあたっては、阪神・淡路大震災の被害状況及びその後の研究成果を全面的に取り入れている。
兵庫県では、被害想定結果を、県地域防災計画に反映させるとともに、兵庫県のインターネットのホームページに掲載するなど、県民に広く広報している。
(3) 地震に関する調査研究
上記のほか、兵庫県では、以下に掲げるような地震に関する調査研究を実施している。
調査の成果は、県の防災対策等の参考とするとともに、県民に広く広報している。
@ 阪神地域活断層調査
神戸・阪神地域の市街地の地盤構造を把握するため、反射法地震探査、ボーリング調査等を実施した。
A 活断層調査研究事業
科学技術庁の交付金を活用して、山崎断層帯及び六甲断層帯を対象に、活動性等についての調査研究を行った。
B「兵庫の地質」の発行
阪神地域活断層調査の結果も踏まえ、兵庫県全域の地質図(1/100,000)並びに解説書(地質編・土木地質編)を発行し、地質専門分野、土木分野に限らず、治山、防災、環境など広い分野に活用されている。
C 津波対策に関する調査
兵庫県に対する津波被害の想定と、その対策について検討している。
※ 県民の防災意識の高揚について
山崎断層帯に関する調査について、その結果を説明会の開催等により広報したところ、山崎断層帯が存在する地域における自主防災組織の組織率が大幅に向上した事例(平成8年度34.3%→平成9年度73.1%)があり、地震調査研究の成果の普及が防災意識の高揚に大きく貢献していると考えられる。
3 地震調査研究成果の活用に係る課題及び提案
(1) 地震調査研究の成果は、県民の防災意識の高揚等に大きく貢献しているものの、具体的な防災対策には結びついていないものも多い。これは、地震調査研究の成果が、専門的或いは概括的で、そのままでは地方自治体が実施している災害対策に活用することが難しい性質のものであること等が原因であると考える。地震調査研究
の成果を実際の防災対策に活かすためには、選択肢を示すところまで調査研究を行うべきと考える。
(2) 地震調査研究の成果は、専門的な内容となっていることが多いが、地方自治体は、必ずしも専門家を抱えているわけではない。このため、地震調査研究の成果自体を理解する段階から、多大な時間・労力を要しているのが現状である。
地震調査研究の成果を防災対策へ反映させるためには、地方自治体の職員に対する研修や、専門的な見地から支援を行う仕組みが必要であると考える。
(3)地震に関する調査研究は、各省庁の研究所、大学等の各主体で行われており、それらの研究内容、成果等への地方自治体からのアクセスは容易でない。
阪神・淡路大震災後、以前から地震発生の危険性が指摘されていたとの論調の報道等が見受けられたが、現在のように、行政に対して地震調査研究の成果が提供される仕組みが構築されていなかったことも、行政が地震調査研究の成果を十分に活用できなかった原因の一つであったと考える。
地震調査研究成果のデータベースの構築等、情報の一元化を図る必要があると考える。この場合、例えば、「兵庫県」のキーワードで、兵庫県を対象とした研究内容及び成果の検索や、一つの活断層の活動度等に関する複数の研究成果の検索等が容易にできる環境が望まれる。
(4) 県民の防災意識の高揚により一層資するためには、地震調査研究成果のさらに広範な広報が必要であると考える。例えば、現在、主に東京都内で行われている説明会、発表会等を各地域毎に開催するなど、県民がより身近に地震調査研究成果に触れられるような環境づくりが必要であると考える。
4 「成果を社会に活かす部会」への期待
地震調査研究の成果の活用にあたっては、兵庫県としても、地方自治体が行うべき最大限の努力を払っているところであるが、なお前述のような課題がある。
科学的な知見を防災対策に活用することは、防災対策の実効性を確保する上で有用であることは間違いないと考えるが、当部会の検討により、地震調査研究成果が防災対策に活用される有用な方策が導き出されることを期待したい。
以 上
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