資料成3−(4)
 
 
海外での情報発表事例
 
1.米国の事例
(1)余震確率の情報
(2)ハザードマップ

2.トルコの事例

以下の雑誌を参照

O.エムレ、T.Y.ドゥマン、A.ドアン、S.アテシュ、M.ケチェル、T.エルカル、S.オザルプ、N.ユルドゥルム、N.ギュネル、訳 平野英雄・吉岡敏和:
MTA(トルコ鉱物資源調査開発総局)による1999年11月12日デュズジェ地震に関する野外調査とプレ評価報告(1999年11月16日)

地質ニュース545号、27−33頁、2000年1月

Q.アメリカでの余震確率にかんする情報は、どのように出され、利用されているか。

1) アメリカにおける余震確率の情報がどのような経緯で導入されたか。

地震の事前予報はいまだ研究途中ではあるがオフィシャルな地震警告を行うのには十分なレベルには達している。警告は政府や産業や一般住民が大地震への備えを行い、地震による被害からの復興の実施に役立つ。

2) その情報はどのような手順で発表されているか。

The U.S.Geological Survey (USGS) が日数別に余震発生確率を計算し、California Office of Emergency Services (OES) や公共機関に伝達する。被害が甚大であると判断されたら、OESから一般への警告を行う。広報は新聞などマスコミによる。(WEB も使用しているらしい・未確認)

3) 現在までに発表された事例及び市民と行政がどのように受けとめ 、対応をしたか。

【1989/10/17 M7.2 Loma Prieta地震の場合】

・余震確率の公開は2ヶ月にわたっておこなわれた。(USGSのHPに掲載した)

・行政の受けとめかた

消防署(Fire department)やその他緊急事態に対応する機関が、地震後どれくらいの人員を確保しておくかを決める一つの重要なファクターとなった。(Greg Abell サンフランシスコ消防署長談) また政府・産業経営者(industry)・緊急事態に対応するチーム(emergency response teams)が、被害を被った構造物の取り壊し・修理・一般市民の利用などの、安全時期を決めることにも役立った。

・確率の発表例「USA TODAY」記事より抜粋

1989/10/25

 10/24 に USGS が地震後初めての余震の長期予測を発表した。

今後2ヶ月で M5 以上の余震発生確率は 50 %、M6 以上で 10%

1989/10/28

今後30年で M7 クラスの地震の発生確率は 50-50。

今後2ヶ月で M6 以上の発生確率は 9%。

・余震警告(Aftershock Warning)に対する市民の反応の調査

Dennis Mileti & Paul O'Brien (Colorado State Univ.) が SanFranciscoとSantaCruzの住民の反応を調査して、1992 のシンポジウムで結果を発表し、1993 年に USGS Professional Paper を作成した。

ほとんどの住民は余震警告のことを知っていた

  1. ほとんどの住民は余震警告のことを知っていた
  2. 多くの住民が被害をもたらすような余震の発生を信じていた。
       (SF: 66% , SC: 75%)
  3. 地震から2ヶ月後には、大方の住民は地震に対する備えをおこなっていた。
       (例えば家を被害から守るような準備など)この傾向はサンタクルズで顕著であった。
  4. しかし余震警告に注意を払っているのは、本震で被害を被り後に公共の緊急事態に係わっているような人々がほとんどであった。本震で被害を受けなかった人々には余震警告に注意を払わない傾向がある。

※「初めの衝撃が自分にネガティブな影響を与えなければ、続く衝撃も同様に自分を避けるはず」
                                          Mileti and O'Brien(1992) より

     

・地震の発生確率を出した例(余震確率ではない)

1988/6 M5.1 発生→[USGS] 今後5日間のうちに大地震の発生する確率は 1/20

[COES] 一般市民へ勧告を出す

1989/8 同様の警告を USGS が出し、COES が勧告発布

1989/10/17 Loma Prieta Eq. M7.1 発生 

1989/8 の警告に対する意見(余震確率に対するものではない)

Henry Renteria : Emergency Services Maneger,Oakland 談

「(警告を受けて)全ての部署が切迫している地震に対する準備をおこなった。LomaPrieta地震が実際に発生したときに大変な違いがあった。」

 

【1992/6/28 M7.3 Landers地震の場合】

・確率の発表例「USA TODAY」記事より抜粋

1992/12/1

11/30に USGS が今後5年間の地震の発生確率予測を発表。(余震確率ではない)
M7 以上の地震の発生確率は、来年が 12%、今後5年間では 47%。(余震確率ではない)
10 月末に COES が USGS のデータを用いて「Parkfield で 10/19 の地震の後72 時間以内に M7 以上の地震が発生する確率は 37%」と発表したが、これは起こらなかった。
今回COESが発表したリポートによると、Landers 地震の M6 以上の余震が次の秋までに発生する確率は 23%で1995 年の秋までなら 34%。 
※これ以外の余震確率そのものに対する反響等の情報見当たらず

<参考文献>

Mileti,D.S., and P.W.O'Brien(1993): Public Response to Aftershock Warnings, Pb.B31-B41 in The Loma Prieta,California,Earthquake of October 17,1989-Public Response,P.Bolton ed. U.S.Geological Survey Professional Paper 1553-B. Washington,D.C.:U.S.Government printing Office.

O'Brien,P.W., and D.S.Mileti(1993): Citizen Participation in Emergency Response. Pb.B23-B30 in The Loma Prieta,California,Earthquake of October 17,1989-Public Response,P.Bolton ed. U.S.Geological Survey Professional Paper 1553-B. Washington,D.C.:U.S.Government printing Office.

(BOOK)

“Practical Lessons from the LOMA PRIETA EARTHQUAKE”
Report from a Symposium Sponsored by the Geotechnical Board and the Board on Natural Disasters of the National Research Council

Published by NATIONAL ACADEMY PRESS (1994)

4) 用いられている手法に関する文献の収集

Reasenberg,P.A., and L.M.Jones(1989): Earthquake hazard after a mainshock in California,Sciene,243,1173-1176

Reasenberg,P.A., and L.M.Jones(1994): Earthquake hazard :update,Sciene,265,1251-1252

Reasenberg,P.A.(1990): Applications of the USGS aftershock sequence model and guidelines for drafting aftershock forecasts,OF90-0341,p92

 

※参考資料  日本での研究事例

東京大学新聞研究所「地震と情報」研究班(1978): 地震情報の伝達と住民の反応−いわゆる「余震情報パニック」(静岡県)に関する事例研究−, p129

東京大学新聞研究所「地震と情報」研究班(1982): 誤報「警戒宣言」と平塚市民, p189


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      米国の確率論的地震ハザードマップの概要とその公表方法について

1.地震ハザードマップの概要

 USGS(米国地質調査所)ではNational Seismic Hazard Mapping Projectを

推進しており,米国全土にわたっての“確率論的地震ハザードマップ(以下,地震ハザードマップ)”が作成されている.

この地震ハザードマップでは50年間の超過確率(10%,5%,2%)に応じた地震動強度(最大加速度,応答スペクトル値)が地図上に示される.最新版は1996年に作成されている.

  

表 USGSが提供する全国を概観する地震ハザードマップの種類
(超過確率と地震動パラメータの組み合わせによる12種類が用意されている)

50年間の超過確率

地震動パラメータ

10%
5%
2%

最大加速度
最大加速度
最大加速度

10%
5%
2%

0.2秒の応答スペクトル値
0.2秒の応答スペクトル値
0.2秒の応答スペクトル値

10%
5%
2%

0.3秒の応答スペクトル値
0.3秒の応答スペクトル値
0.3秒の応答スペクトル値

10%
5%
2%

1.0秒の応答スペクトル値
1.0秒の応答スペクトル値
1.0秒の応答スペクトル値

2.結果の公表方法

(1)地震ハザードマップ

 地震ハザードマップは,インターネットおよび刊行された印刷物(有償)として公表されている.インターネットでは,地図の表示およびダウンロードの他,緯度・経度0.1度刻みのグリッド上の点における値,緯度・経度や郵便番号を入力して,その地点での値(50年間の超過確率に応じた地震動強度)を得ることができる.

(2)地震ハザードマップ作成情報

 地震ハザードマップ作成の手法,用いたデータはインターネット上で公開されている.全体的な概要は USGS の Open-file Report "National Seismic−Hazard  Maps:Documentation" として閲覧,ダウンロードができる.また,地震ハザードマップの作成に際して使用した地震カタログ,地震活動度,断層パラメータ等のデータも閲覧,ダウンロードできるようになっている.

3.その他の情報

 地震ハザードマップの目的,用語の説明については,インターネット上で,"FAQ(Frequently Asked Questions)" や"Info for the Layman" の項目を設けて,質問に対する回答や解説を参照できるようになっている.


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