【森本・富樫断層帯に関する調査】
1)調査地域及び、断層位置
森本・富樫断層帯は、金沢市の直下にあり、また、今からちょうど200年前(1799年)に江戸時代を代表する大都市直下型地震「金沢地震」も発生していることから、従来から危険度評価の必要性を指摘されていました。
2)調査結果
<森本断層>
平成8年度に梅田地区(金沢市)でトレンチ調査を行ったところ、約2,000年前に断層が活動した証拠を発見し、森本断層が間違いなく活断層であることが判明しました。
平野側の地層が1m程隆起している逆断層。弥生時代後期後半以降の地層には変形が認められないことから、約2,000年前に形成されたものであると考えられました
平成10年度に再び梅田地区(金沢市)でトレンチ調査を行ったところ、約6,000年前にも一度活動した可能性が高いことが判明しました。
全ての地層が、鉛直方向に2.5m以上ずれている丘陵側隆起の逆断層。約6,000年前に一度活動した可能性が高いことが判明しましたが、断層面が複数あることや変位量が大きいことから、それ以外の時期にも間違いなく活動を行っており、主断層の一部を発見したと考えられます。
<富樫断層>
平成9年度に四十万地区(金沢市)でトレンチ調査を行ったところ、約30,000年前から約9,000年前の間に形成された地層が、不規則に変形している構造を発見しました。
約30,000年前から約9,000年前の地層に大きく乱れた構造があり、地震による強い揺れのために地盤が液状化したことによると考えられます。また、この近くでは、同じ時期に堆積した地層が平野側に緩く傾いている構造も確認されており、断層活動が最近まで断続的に発生していると推定されます。
<古文書解析調査>
江戸時代を代表する大都市直下型地震「金沢地震」の被害分布状況を解析し、地震被害の特性及び特徴を明らかにすることを目的として行いました。
1799年6月29日の夕刻、金沢城下を被害の中心とするマグニチュード6.0の金沢地震が発生しました。当時の日記などには、被害を受けた町名や屋敷名とその被害状況が克明に記録されています。
それらの記録を解析することによって、「旧城下町と現在の町割りに大きな変化がない」という金沢の地域特性から、当時の被害状況が詳細に復元できました。
金沢城内では石垣の崩れ、はらみだし、塀の倒壊など、大きな被害がでました。
石川、富山県境の倶利伽羅峠付近から金沢にかけての揺れが特に大きく、京都や高山、甲府でも揺れを感じたとの記録がありました。
「政鄰記」の、「帰路往還大樋町端より一町計之所に而地震に合ひ、倒れ候處暫起上り不得。田毎之水東西に五、七尺計程宛傾く内に、田水板の如く成て空に三、四尺計上り、並松五、六尺震れ候を見受候旨。」との記載から、激しい地震動と液状化現象の発生、また、現金沢市大樋町付近で田圃が5〜7尺(1尺=約30cm)東西に傾いた可能性があることがわかりました。
3)解析、評価等
3ヶ年にわたる調査によって確認された事実から、森本・富樫断層帯については、以下のような評価ができます。
分 布
森本断層:13km
津幡町中津幡〜金沢市小坂町付近
富樫断層:8.5km
金沢市窪〜鶴来町日御子付近
(両断層が野町撓曲を含む一連のもの と考えると、断層帯の総延長は、約 25kmとなります。)
形 状
地表部では丘陵・平野の地形境界から平野側へ数百mの間に複数伏在
構 造
地表部では丘陵側隆起の低角逆断層
確 実 度 確実度T
単位変位量
活動1回あたりのずれの量は、鉛直方向に1.0m以上
活 動 度 B級
(0.1m〜1.0mm/1000年)
明らかになった活動年代
約2,000年前
約6,000年前(可能性が高い)
最終活動時期 約2,000年前
ただし、断層が地表まで現れる規模の大きな活動
長期的な予測
4,000年以下の活動間隔で繰り返し発生する可能性が高い(M7級)
発生する地震の規模
断層の長さからM6.7〜M7.2程度の地震が発生する可能性がある
(松田式:LogL=0.6M-2.9による)
○ただし、この解析及び評価は、石川県の見解です。
5)問い合わせ先
石川県環境安全部消防防災課
tel:076-223-9061
fax:076-261-2660