平成10年9月4日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

1998年9月3日の岩手県内陸北部の地震について


9月3日に岩手県内陸北部でマグニチュード(M)6.1の被害地震が発生し、震源域に近い岩手県雫石町長山で震度6弱を観測した。

 岩手山の周辺では、4月下旬より火山活動に関係すると考えられる地震活動が活発化しており、M3クラス数回を含む地震が発生していた。その多くの発震機構は横ずれ型であった。

 今回の地震は岩手山の南西約10kmの深さ約7kmで発生した。この地震に伴う活動域は、M6.1の地震を中心に東西約10km、南北約10kmに分布している。この地震および主な余震の発震機構は東西方向に圧縮軸をもつ逆断層型であった。今回の活動は、概ね本震−余震型の経過をたどって次第に減衰しており、その程度は平均的な本震−余震型とほぼ同じである。周辺のGPS観測および光波測量の結果には、地震に伴う変化が見られ、その変化方向とこの地震の発震機構とは調和的である。

 今回の地震の圧縮軸の方向は、この付近にある雫石盆地西縁の西根断層群が南北方向にのびる逆断層であること、岩手山火口列が東西方向に配置していることからこの地域に推定される力の場と調和的である。この地震は、雫石盆地西縁の西根断層群の活動に関連して発生したと考えられる。

 東北地方の火山付近で発生したM6クラスの地震としては、1996年8月の秋田・宮城県境の栗駒山付近で発生したM5.9の地震活動がある。この地震活動は、本震−余震型の活動であった。

 これまでの活動経過からすると、余震の発生数は次第に減少していくと考えられる。しかし、この地域は第四紀火山に近く、M5以上の余震が発生する可能性も否定できない。また、最近活動が活発化している火山(岩手山)と隣接したところに余震域があることから、今後の地震活動の変化には注目していく必要があると考える。