報道参考資料
平成8年9月5日
地震火山部


平成8年9月5日の津波について


1.経緯等

(1)平成8年9月5日03時15分頃、鳥島近海でマグニチュード6.2の 地震が発生した(北緯31.5度、東経140.9度、深さ約10km)。
 この地震の精密地震観測室(松代)でのモーメントマグニチュードは6.2 であった。

(2)津波予報はマグニチュード6.6以上を目安としており、今回の地震は マグニチュード6.2と小さかったことから津波注意報は発表しなかった。しか し、この海域では、過去マグニチュード6程度の地震でも20cm程度の小さな 津波が観測されたこともあることから、注意深く検潮記録による津波観測監視を 行うこととした。

(3)03時50分過ぎ頃から八丈島で異常な海面変動が観測され始め、津波 現象であることが確認されたことから、04時09分に茨城県から静岡県までの 太平洋沿岸と伊豆諸島に津波注意報を発表した。

2.今回の津波の特徴とその原因

(1)今回の津波は20cm程度が観測されたが、地震のマグニチュードから 予想される津波より大きなものが観測され、特に伊豆諸島付近で大きい。

(2)観測された地震波形には、いわゆる津波地震と呼ばれている低周波地震 の特徴である長い周期の地震波形は認められない。

(3)今回の津波の特徴は、ほぼ同じ場所で昭和59年(1984年)6月1 3日に発生したマグニチュード5.9の地震に伴う津波と類似している。これら の津波は通常の地震による津波とは異なり、マグマの貫入や海底の地滑り等に起 因するものであると考えている。 
なお、昭和59年の津波については、カリフォルニア大学金森教授らの研究に よると、マグマの貫入を原因とする海底隆起により20cm程度の津波が発生し 、この津波が海底地形の影響でほとんど減衰しないで伊豆諸島地域に伝搬したと 推定されている。

3.当面の対処案 

マグニチュード6程度の地震で津波が発生することは希であり、また今回の様 な津波に対する津波予報は現状では技術的に困難である。 
この海域でマグニチュード6程度の浅い地震が発生した場合、昭和59年の例 のように海面変動を伴うことがあることから、今後、地震情報を発表し、この中 に「多少の海面変動がある可能性もある」旨の情報を付加する等について検討し たい。


1996年8月の地震活動について