平成27年6月9日 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 |
○ 5月3日に鳥島近海でマグニチュード(M)5.9の地震が発生した。この地震により、八丈島八重根で0.6mの津波を観測したほか、千葉県から沖縄県にかけての太平洋沿岸で微弱な津波を観測した。
○ 5月13日に宮城県沖でM6.8の地震が発生した。この地震により岩手県で最大震度5強を観測し、住家一部損壊などの被害が生じた。
○ 5月22日に奄美大島近海でM5.1の地震が発生した。この地震により鹿児島県(奄美市)で最大震度5弱を観測した。
○ 5月25日に埼玉県北部でM5.5の地震が発生した。この地震により茨城県で最大震度5弱を観測し、重傷者が出るなどの被害を生じた。
○ 5月30日に小笠原諸島西方沖でM8.1の深発地震が発生した。この地震により東京都(小笠原村)と神奈川県で最大震度5強を観測し、負傷者が出るなどの被害を生じた。
目立った活動はなかった。
○ 5月3日に福島県沖の深さ約45kmでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
○ 5月13日に宮城県沖の深さ約45kmでM6.8の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。GNSS観測の結果によると、この地震に伴い、小さな地殻変動が観測された。
○ 5月15日に福島県沖の深さ約50kmでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
○ 5月3日に鳥島近海でM5.9の地震が発生した。この地震により、八丈島八重根で0.6mの津波を観測したほか、千葉県から沖縄県にかけての太平洋沿岸で微弱な津波を観測した。
○ 5月11日に鳥島近海でM6.3の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。
○ 5月25日に埼玉県北部の深さ約55kmでM5.5の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東−西南西方向に張力軸を持つ型で、フィリピン海プレート内部で発生した地震である。
○ 5月30日に茨城県南部の深さ約55kmでM4.8の地震が発生した。この地震の発震機構は南北方向に圧力軸を持つ型であった。
○ 5月30日に小笠原諸島西方沖の深さ約680kmでM8.1の深発地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に張力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した。
○ 5月31日に鳥島近海でM6.6の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東−西南西方向に張力軸を持つ正断層型で、海溝軸付近の太平洋プレート内で発生した地震である。
○ 東海地方のGNSS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。
目立った活動はなかった。
○ 5月22日に奄美大島近海の深さ約20kmでM5.1の地震が発生した。この地震の発震機構は北東−南西方向に張力軸を持つ型で、陸のプレートの地殻内で発生した地震である。
○ 6月4日に網走地方〔釧路地方中南部〕のごく浅いところでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。
注: 〔 〕内は気象庁が情報発表で用いた震央地域名である。
GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称である。
平成27年6月9日 地震調査委員会 |
2015年5月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ84回(4月は81回)および14回(4月は14回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は4回(4月は3回)であった。
(参考) | M4.0以上の月回数73回(1998−2007年の10年間の中央値)、 |
M5.0以上の月回数9回(1973−2007年の35年間の中央値)、 | |
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1924−2007年の84年間の平均値) |
2014年5月以降2015年4月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。
− 伊豆大島近海 | 2014年5月5日 M6.0(深さ約160km) |
− アリューシャン列島ラット諸島 | 2014年6月24日 Mw7.9 |
− 岩手県沖 | 2014年7月5日 M5.9(深さ約50km) |
− 胆振地方中東部 | 2014年7月8日 M5.6(深さ約5km) |
− 福島県沖 | 2014年7月12日 M7.0 |
− 青森県東方沖 | 2014年8月10日 M6.1(深さ約50km) |
− 栃木県北部 | 2014年9月3日 M5.1(深さ約5km) |
− 茨城県南部 | 2014年9月16日 M5.6(深さ約45km) |
− 長野県北部 | 2014年11月22日 M6.7(深さ約5km) |
− 徳島県南部 | 2015年2月6日 M5.1(深さ約10km) |
− 三陸沖 | 2015年2月17日 M6.9 |
− 岩手県沖 | 2015年2月17日 M5.7(深さ約50km) |
− 与那国島近海 | 2015年4月20日 M6.8 |
北海道地方では特に補足する事項はない。
東北地方では特に補足する事項はない。
− 東北地方太平洋沖地震の余震域で発生したM4.0以上の地震の発生数は、東北地方太平洋沖地震後の約1年間と比べて、その後の1年間(2012年3月〜2013年2月)では5分の1以下、2年後からの1年間(2013年3月〜2014年2月)では10分の1以下、3年後からの1年間(2014年3月〜2015年2月)では15分の1以下にまで減少してきている。
GNSS連続観測によると、東北地方から関東・中部地方の広い範囲で余効変動と考えられる地殻変動が引き続き観測されている。地殻変動量は、東北地方太平洋沖地震直後からの約1ヶ月間で、最大で水平方向に30cm、上下方向に6cmの沈降と5cmの隆起であったものから、最近1ヶ月あたりでは水平方向、上下方向ともにほぼ1cm未満と小さくなっているが、地震前の動きには戻っていない。
2004年に発生したスマトラ北部西方沖の地震(Mw9.1)では、4ヵ月後にMw8.6、約2年半後にMw8.5、約5年半後にMw7.5、約7年半後に海溝軸の外側の領域でMw8.6の地震が発生するなど、震源域およびその周辺で長期にわたり大きな地震が発生している。
余震活動は全体として徐々に低下している傾向にあると見てとれるものの、依然として東北地方太平洋沖地震前の地震活動より活発な状況にあることや、他の巨大地震における事例から総合的に判断すると、今後も長期間にわたって余震域やその周辺で規模の大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があるので、引き続き注意が必要である。
−「5月3日に鳥島近海でM5.9の地震が発生した。(以下、略)」:
この付近では、1984年6月13日にM5.9、1996年9月5日にM6.2、2006年1月1日にM5.9の地震が発生し、今回と同様に、M6.0程度の規模にもかかわらず津波を観測している。今回の地震に対して津波注意報が発表された。
−「5月30日に小笠原諸島西方沖の深さ約680kmでM8.1の深発地震が発生した。(以下、略)」:
この地震により全国各地で震度1以上を観測したが、特に、沈み込む太平洋プレート内を伝わった地震波により、小笠原諸島から東日本にかけて最大震度5強を観測するなど揺れが大きくなった(異常震域)。余震活動は低調である。最大規模の余震は6月3日に発生したM5.6の地震である。今回の地震の震央周辺の深さ500km程度の場所では定常的な地震活動がみられるが、今回の地震の震源付近ではこれまで地震活動がみられていなかった。深さ600kmを超えるM8程度の深発地震は世界的にみても事例が少ない。
−「東海地方のGNSS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。」:
(なお、これは、5月18日に開催された定例の地震防災対策強化地域判定会における見解(参考参照)と同様である。)
(参考)最近の東海地域とその周辺の地殻活動(平成27年5月18日気象庁地震火山部)
「 現在のところ、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測していません。
1.地震の観測状況
浜名湖周辺のフィリピン海プレート内では、引き続き地震の発生頻度の低い状態が続いています。
4月25日から5月6日にかけて、愛知県東部と長野県南部でプレート境界付近を震源とする深部低周波地震(微動)を観測しています。
2.地殻変動の観測状況
GNSS観測及び水準測量の結果では、御前崎の長期的な沈降傾向は継続しています。
平成25年はじめ頃から静岡県西部から愛知県東部にかけてのGNSS観測及びひずみ観測にみられている通常とは異なる変化は、現在も継続しています。
また、4月26日から5月2日にかけて、愛知県、静岡県及び長野県の複数のひずみ観測点でわずかな地殻変動を観測しました。
3.地殻活動の評価
平成25年はじめ頃から観測されている通常とは異なる地殻変動は、浜名湖付近のプレート境界で「長期的ゆっくりすべり」が発生している可能性を示しており、現在も継続しています。
そのほかに東海地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すようなデータは今のところ得られていません。
一方、上記の深部低周波地震(微動)及びひずみ観測点で観測した地殻変動は、愛知県の想定震源域より深いプレート境界において発生した「短期的ゆっくりすべり」に起因すると推定しています。
以上のように、現在のところ、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測していません。
なお、GNSS観測の結果によると「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」による余効変動が、小さくなりつつありますが東海地方においてもみられています。 」
− 箱根山では、4月26日から規模の小さな地震がまとまって発生している(5月31日までの最大の地震はM3.0)。周辺に設置されている傾斜計、体積ひずみ計、及び、GNSSの観測によると、同時期に小さな地殻変動が観測されている。
近畿・中国・四国地方では特に補足する事項はない。
九州・沖縄地方では特に補足する事項はない。
−「6月4日に網走地方〔釧路地方中南部〕のごく浅いところでM5.0の地震が発生した。(以下、略)」:
その後、この地震の震源付近では6月7日までに震度1以上を観測する地震が9回発生するなどの余震活動がみられている。
参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
①M6.0以上または最大震度が4以上のもの。②内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。③海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。
参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。