平成26年10月9日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2014年9月の地震活動の評価

1.主な地震活動

○ 9月3日に栃木県北部でマグニチュード(M)5.1の地震が発生した。この地震により、栃木県で最大震度5弱を観測した。

○ 9月16日に茨城県南部でM5.6の地震が発生した。この地震により、栃木県、群馬県および埼玉県で最大震度5弱を観測し、負傷者が出るなどの被害を生じた。

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2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

○ 9月4日に日高地方西部の深さ約30kmでM4.7の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。

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(2)東北地方

○ 9月10日に岩手県沖の深さ約65kmでM4.9の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。

○ 9月24日21時45分に福島県沖の深さ約50kmでM5.1の地震が発生した。また、同日22時30分にもほぼ同じ場所でM5.1の地震が発生した。これらの地震の発震機構は、それぞれ西北西−東南東方向と東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

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(3)関東・中部地方

○ 9月3日に栃木県北部の深さ約5kmでM5.1の地震が発生した。この地震の震源付近では、4日にもM4.5の地震が発生した。これらの地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。

○ 9月16日に茨城県南部の深さ約45kmでM5.6の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

○ 東海地方のGNSS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。

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(4)近畿・中国・四国地方

目立った活動はなかった。

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(5)九州・沖縄地方

○ 9月18日に宮古島近海の深さ約50kmでM5.2の地震が発生した。この地震の発震機構は北北西−南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

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補足

○ 10月3日に岩手県沖の深さ約30kmでM5.7の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。


注: 〔 〕内は気象庁が情報発表で用いた震央地域名である。
 GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称である。


2014年9月の地震活動の評価についての補足説明

平成26年10月9日
地震調査委員会

1.主な地震活動について

2014年9月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
  M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ67回(8月は95回)および11回(8月は11回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は0回(8月は2回)であった。

(参考) M4.0以上の月回数73回(1998−2007年の10年間の中央値)、
M5.0以上の月回数9回(1973−2007年の35年間の中央値)、
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1924−2007年の84年間の平均値)

2013年9月以降2014年8月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。

− 福島県浜通り  2013年9月20日   M5.9(深さ約15km)
− 福島県沖  2013年10月26日   M7.1
− 茨城県南部  2013年11月10日   M5.5(深さ約65km)
− 茨城県北部  2013年12月31日   M5.4(深さ約5km)
− 伊予灘  2014年3月14日   M6.2(深さ約80km)
− チリ北部沿岸  2014年4月2日   Mw8.1
− 伊豆大島近海  2014年5月5日   M6.0(深さ約160km)
− アリューシャン列島ラット諸島  2014年6月24日   Mw7.9
− 岩手県沖  2014年7月5日   M5.9(深さ約50km)
− 胆振地方中東部  2014年7月8日   M5.6(深さ約5km)
− 福島県沖  2014年7月12日   M7.0
− 青森県東方沖  2014年8月10日   M6.1(深さ約50km)

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2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

北海道地方では特に補足する事項はない。

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(2)東北地方

東北地方では特に補足する事項はない。

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(3)東北地方太平洋沖地震に伴う地震活動及び地殻変動について

− 東北地方太平洋沖地震の余震域で発生したM4.0以上の地震の発生数は、東北地方太平洋沖地震後の約1年間と比べて、その後の1年間(2012年3月〜2013年2月)では5分の1以下、2年後からの1年間(2013年3月〜2014年2月)では10分の1以下にまで減少してきている。
 2004年に発生したスマトラ北部西方沖の地震(Mw9.1)では、4ヵ月後にMw8.6、約2年半後にMw8.5、約5年半後にMw7.5、約7年半後に海溝軸の外側の領域でMw8.6の地震が発生するなど、震源域およびその周辺で長期にわたり大きな地震が発生している。
 GNSS連続観測によると、東北地方から関東・中部地方の広い範囲で余効変動と考えられる地殻変動が引き続き観測されている。地殻変動量は、東北地方太平洋沖地震直後からの約1ヶ月間で、最大で水平方向に30cm、上下方向に6cmの沈降と5cmの隆起であったものから、最近1ヶ月あたりでは水平方向、上下方向ともに最大1cm程度と小さくなっている。
 余震活動は全体として徐々に低下している傾向にあると見てとれるものの、依然として東北地方太平洋沖地震前の地震活動より活発な状況にあることや、他の巨大地震における事例から総合的に判断すると、今後も長期間にわたって余震域やその周辺で規模の大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があるので、引き続き注意が必要である。

(4)関東・中部地方

−「9月3日に栃木県北部の深さ約5kmでM5.1の地震が発生した。(以下、略)」:
 その後、この地震の震源付近では、震度1以上を観測する地震が30回発生するなどの余震活動がみられたが、活動は低下してきている。
 今回の地震活動がみられた栃木県・群馬県県境付近では、東北地方太平洋沖地震以降、地震活動が活発となった。2013年2月25日にはM6.3(最大震度5強)の地震が発生している。

−「東海地方のGNSS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。」:
 (なお、これは、9月29日に開催された定例の地震防災対策強化地域判定会における見解(参考参照)と同様である。)

(参考)最近の東海地域とその周辺の地殻活動(平成26年9月29日気象庁地震火山部)

「現在のところ、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測していません。

1.地震の観測状況
 浜名湖周辺のフィリピン海プレート内では、引き続き地震の発生頻度の低い状態が続いています。
 8月30日から9月5日にかけて愛知県西部でプレート境界付近を震源とする深部低周波地震(微動)を観測しました。

2.地殻変動の観測状況
 GNSS観測及び水準測量の結果では、御前崎の長期的な沈降傾向は継続しています。
 平成25年はじめ頃から、静岡県西部から愛知県東部にかけてのGNSS観測及びひずみ観測で、通常とは異なる変化が継続的にみられており、水準測量の結果でも同時期に浜名湖周辺がわずかに隆起する結果が得られています。
 また、8月30日から9月5日にかけて愛知県、静岡県及び長野県の複数のひずみ観測点でわずかな地殻変動を観測しました。

3.地殻活動の評価
 平成25年はじめ頃から継続的に観測されている通常とは異なる地殻変動は、東海地震の想定震源域の縁辺部にあたる浜名湖付近のプレート境界で「長期的ゆっくりすべり」が発生している可能性を示しています。ほぼ同じ場所では、「長期的ゆっくりすべり」が、平成12年秋頃から平成17年夏頃にかけて発生し、それ以前も十数年程度の間隔で繰り返し発生していたとみられます。また、今回の通常とは異なる地殻変動が全て「長期的ゆっくりすべり」に起因しているとしても、累積のすべりの規模(Mw6.5程度)は、平成12年秋頃からの「長期的ゆっくりすべり」の最終的な規模(Mw7.1程度)に比べ小さいといえます。
 そのほかに東海地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すようなデータは今のところ得られていません。
 一方、上記の8月30日から9月5日にかけて観測した深部低周波地震(微動)及びひずみ観測点で観測した地殻変動は、愛知県西部の、想定震源域より深いプレート境界において発生した「短期的ゆっくりすべり」に起因すると推定しています。
 以上のように、現在のところ、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測していません。
 なお、GNSS観測の結果によると「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」による余効変動が、小さくなりつつありますが東海地方においてもみられています。 」

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(5)近畿・中国・四国地方

近畿・中国・四国地方では特に補足する事項はない。

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(6)九州・沖縄地方

九州・沖縄地方では特に補足する事項はない。

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参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
 ①M6.0以上または最大震度が4以上のもの。②内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。③海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。

参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
 1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
 2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
 3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。