平成23年9月9日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2011年8月の地震活動の評価

1.主な地震活動

○ 8月1日に駿河湾でマグニチュード(M)6.2の地震が発生した。この地震により静岡県で最大震度5弱を観測し、重傷者が出るなどの被害を生じた。

○ 8月19日に福島県沖でM6.5の地震が発生した。この地震により宮城県と福島県で最大震度5弱を観測し、負傷者が出るなどの被害を生じた。

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2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

○ 8月1日に浦河沖の深さ約35kmでM5.5の地震が発生した。この地震は太平洋プレートと陸のプレートの境界付近で発生した地震である。発震機構は南北方向に張力軸を持つ型であった。

○ 8月22日に十勝地方南部〔十勝地方中部〕の深さ約25kmでM4.7の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。

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(2)東北地方

○ 8月5日に福島県浜通りの深さ約5kmでM4.7の地震が発生した。この地震の発震機構は北北西−南南東方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。

○ 8月19日に福島県沖の深さ約50kmでM6.5の地震が発生した。この地震は太平洋プレート内部で発生した地震である。発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。

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(3)関東・中部地方

○ 8月1日に駿河湾の深さ約25kmでM6.2の地震が発生した。この地震はフィリピン海プレート内部で発生した地震である。発震機構は南北方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。

○ 8月7日に茨城県北部の深さ約5kmでM4.7の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。

○ 8月15日に茨城県南部の深さ約65kmでM4.7の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。また、22日にも茨城県南部の深さ約65kmでM4.7の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型であった。

○ 8月17日に埼玉県南部〔茨城県南部〕の深さ約80kmでM4.3の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。

○ 8月31日に東京湾〔千葉県北西部〕の深さ約70kmでM4.6の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。

○ 東海地方のGPS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。

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(4)近畿・中国・四国地方

○ 8月10日に和歌山県北部の深さ約60kmでM4.7の地震が発生した。この地震はフィリピン海プレート内部で発生した地震である。発震機構は東北東−西南西方向に張力軸を持つ型であった。

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(5)九州・沖縄地方

目立った活動はなかった。

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補足

○ 9月4日に埼玉県南部の深さ約90kmでM4.7の地震が発生した。この地震は太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界付近で発生した地震である。発震機構は東北東−西南西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。

○ 9月7日22時29分に日高地方中部〔浦河沖〕の深さ約10kmでM5.1の地震が発生した。この地震の発震機構は北東−南西方向に圧力軸を持つ逆断層型(速報)で、地殻内で発生した地震である。また、同日07時27分にM4.3の地震が発生するなどのまとまった地震活動が見られている。


注:〔 〕内は気象庁が情報発表で用いた震央地域名である。


2011年8月の地震活動の評価についての補足説明

平成23年9月9日
地震調査委員会

1.主な地震活動について

2011年8月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
  M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ239回(7月は263回)および23回(7月は28回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は5回で、2011年は8月までに108回発生している。

(参考) M4.0以上の月回数73回(1998−2007年の10年間の中央値)、
M5.0以上の月回数9回(1973−2007年の35年間の中央値)、
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1924−2007年の84年間の平均値)

2010年8月以降2011年7月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。

− 新潟県上越地方  2010年10月3日 M4.7(深さ約20km)
− 宮古島近海  2010年10月4日 M6.4
− 父島近海  2010年12月22日 M7.8
− 三陸沖  2011年3月9日 M7.3
− 東北地方太平洋沖地震  2011年3月11日 M9.0(深さ約25km)
− 静岡県伊豆地方  2011年3月11日 M4.6(深さ約5km)
− 長野県・新潟県県境付近  2011年3月12日 M6.7(深さ約10km)
− 静岡県東部  2011年3月15日 M6.4(深さ約15km)
− 茨城県北部  2011年3月19日 M6.1(深さ約5km)
− 福島県浜通り  2011年3月23日 M6.0(深さ約10km)
− 茨城県南部  2011年3月24日 M4.8(深さ約50km)
− 秋田県内陸北部  2011年4月1日 M5.0(深さ約10km)
− 茨城県南部  2011年4月2日 M5.0(深さ約55km)
− 宮城県沖  2011年4月7日 M7.1(深さ約65km)
− 福島県浜通り  2011年4月11日 M7.0(深さ約5km)
− 長野県北部  2011年4月12日 M5.6(深さごく浅い)
− 千葉県東方沖  2011年4月12日 M6.4(深さ約25km)
− 茨城県南部  2011年4月16日 M5.9(深さ約80km)
− 長野県・新潟県県境付近  2011年4月17日 M4.9(深さ約10km)
− 秋田県内陸南部  2011年4月19日 M4.9(深さ約5km)
− 千葉県東方沖  2011年4月21日 M6.0(深さ約45km)
− 福島県浜通り  2011年5月6日 M5.2(深さ約5km)
− 新潟県中越地方  2011年6月2日 M4.7(深さ約5km)
− 岩手県沖  2011年6月23日 M6.9(深さ約35km)
− 長野県中部  2011年6月30日 M5.4(深さ約5km)
− 和歌山県北部  2011年7月5日 M5.5(深さ約5km)
− 三陸沖  2011年7月10日 M7.3
− 茨城県南部  2011年7月15日 M5.4(深さ約65km)

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2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

北海道地方では特に補足する事項はない。

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(2)東北地方

−福島県会津では、3月中旬からまとまった地震活動が続いている。

−福島県浜通りから茨城県北部の領域にかけて、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の発生後から活発な地震活動が続いている。

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(3)東北地方太平洋沖地震に伴う地震活動及び地殻変動について

−3月11日に発生した平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の余震域では、個別に評価した地震以外にも、最大震度5弱を観測する地震が発生するなど、活発な地震活動が見られる。今後も引き続き規模の大きな余震が発生する恐れがあり、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性がある。また、引き続き東北地方から関東・中部地方の広い範囲で、余効変動と考えられる東向きの地殻変動が観測されているが、徐々に小さくなってきている。

(4)関東・中部地方

「東海地方のGPS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。」:
 (なお、これは、8月31日に開催された定例の地震防災対策強化地域判定会における見解(参考参照)と同様である。)

(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成23年8月31日気象庁地震火山部)

「8月1日に駿河湾でM6.2、12日に遠州灘でM5.2の地震が発生しました。いずれも、東海地震の想定震源域もしくはその周辺で発生した地震でしたが、その後、現在まで、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていません。

1.地震活動の状況
 8月1日に駿河湾の深さ23kmを震源とするM6.2の地震が発生しました。この地震は南北方向に圧力軸を持つ逆断層型の地震で、フィリピン海プレート内で発生した地震です。余震の回数は次第に減少しています。
 また、8月12日に遠州灘の深さ15kmを震源とするM5.2の地震が発生しました。この地震は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型の地震で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界付近で発生した地震と考えられます。この地震の余震活動は低調で、8月17日以降は観測されていません。
 これらの地震発生前後で地震活動が変化した地域はみられません。
 静岡県中西部の地殻内では、全体的にみて、2005年中頃からやや活発な状態が続いています。
 浜名湖周辺のフィリピン海プレート内では、引き続き地震の発生頻度のやや少ない状態が続いています。
 その他の領域では概ね平常レベルです。
 なお、愛知県から長野県南部のプレート境界付近で7月23日から8月1日にかけてと8月21日から22日にかけて深部低周波地震が観測されました。この付近では昨年11月に深部低周波地震がまとまって観測されています。

2.地殻変動の状況
 8月1日と12日の地震では、東海地域のひずみ計の一部で地震発生に伴うステップ状の変化が観測されましたが、その後、特異な変化はみられませんでした。
 GPS観測及び水準測量の結果では、御前崎の長期的な沈降傾向は継続しています。更に、傾斜計、ひずみ計等の観測結果を含めて総合的に判断すると、東海地震の想定震源域及びその周辺におけるフィリピン海プレートと陸のプレートとの固着状態の特段の変化を示すようなデータは、現在のところ得られていません。
 なお、上記の深部低周波地震活動と同期して、愛知県のプレート境界付近に生じた「短期的ゆっくりすべり」に起因するとみられる地殻変動が、7月26日から8月1日にかけてと8月20日から22日にかけて、周辺のひずみ計で観測されました。このような地殻変動が観測されたのは昨年11月以来です。
 また、GPS観測の結果によると、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」による余効変動が東海地域においてもみられています。」

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(5)近畿・中国・四国地方

近畿・中国・四国地方では特に補足する事項はない。

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(6)九州・沖縄地方

九州・沖縄地方では特に補足する事項はない。

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参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
 @M6.0以上または最大震度が4以上のもの。A内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。B海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。

参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
 1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
 2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
 3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。