新庄盆地断層帯の長期評価の一部改訂について

平成23年5月19日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

 地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について -地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策-」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。

 地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、平成17年4月までに陸域の活断層として、98断層帯の長期評価を行い公表した。

 新庄盆地断層帯の評価は平成14年7月10日に公表しているが、その後、最近の調査結果により、活動履歴などに関する新たな知見が得られたことから、これを基に評価の見直しを行い、一部改訂版としてとりまとめた。また、評価の新旧対比表を付録として巻末に示した。

 評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。


平成23年5月19日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

新庄盆地断層帯の評価(一部改訂)

 新庄盆地断層帯は、山形県最上地方の新庄盆地の東縁および西縁に位置する活断層帯である。ここでは、平成9-10年度に山形県によって行われた調査及び平成19年度に産業技術総合研究所によって行われた調査をはじめ、これまで行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した。


新庄盆地断層帯については、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2002)により、それまで行われていた調査研究に基づいた長期評価が公表されているが、産業技術総合研究所(2008)によって行われた補完調査によって新知見が得られたことから、今回再評価を行った。

1.断層帯の位置および形態

 新庄盆地断層帯は、その分布形態から新庄盆地断層帯東部と新庄盆地断層帯西部に区分される。
 新庄盆地断層帯東部は、山形県新庄市から最上郡舟形町(ふながたまち)に至る断層帯である。長さは約22kmで、概ね北北東-南南西方向に延びており、東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層である(図1及び表1)。
 新庄盆地断層帯西部は、最上郡鮭川村(さけがわむら)から大蔵村(おおくらむら)に至る断層帯である。長さは約17kmで、ほぼ南北方向に延びており、西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層である(図1及び表3)。

2.断層帯の過去の活動

(1)新庄盆地断層帯東部
 新庄盆地断層帯東部の平均的な上下方向のずれの速度は、0.5m/千年程度の可能性がある。最新の活動は約6千2百年前以後であった可能性がある。1回の活動におけるずれの量は約2m(上下成分)であった可能性がある。1回のずれの量と平均的な上下方向のずれの速度に基づくと、平均的な活動間隔は4千年程度であった可能性がある(表1)。

(2)新庄盆地断層帯西部
 新庄盆地断層帯西部の平均的な上下方向のずれの速度は、0.3m/千年程度の可能性がある。本断層帯西部では、過去の活動に関する資料が乏しく、具体的な活動履歴については明らかにされていない。野外調査から直接得られたデータではないが、1回の活動におけるずれの量は1m程度(上下成分)であった可能性がある。また、この1回のずれの量と平均的な上下方向のずれの速度に基づくと、平均的な活動間隔は4千7百年程度であった可能性がある(表3 )。

3.断層帯の将来の活動

(1)新庄盆地断層帯東部
 新庄盆地断層帯東部では、断層帯全体が一つの活動区間として活動した場合、マグニチュード7.1程度の地震が発生する可能性がある。また、その時、断層の近傍の地表面では、東側が西側に対して相対的に約2m高まる段差や撓(たわ)みが生ずる可能性がある(表1)。本断層帯東部の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりである。本評価で得られた地震発生の長期確率の最大値をとると、本断層帯東部は今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる(注1)。

(2)新庄盆地断層帯西部
 新庄盆地断層帯西部では、断層帯全体が一つの活動区間として活動した場合、マグニチュード6.9程度の地震が発生する可能性がある。また、その時、断層の近傍の地表面では、西側が東側に対して相対的に1m程度高まる段差や撓(たわ)みが生ずる可能性がある(表3)。本断層帯西部では過去の活動が十分に明らかではなく、最新活動時期が特定できていないため、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めている。そのため信頼度は低いが、将来このような地震が発生する長期確率は表4に示すとおりであり、本断層帯西部は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注1)。

4.今後に向けて

 新庄盆地断層帯の将来の活動性を明確にするためには、最新活動時期、1回の活動におけるずれの量、活動間隔などを明らかにする必要がある。
 新庄盆地断層帯東部の将来の活動性を明確にするためには、最新の活動時期を絞り込むとともに、それ以前の過去の活動について活動時期を精度良く求め、活動間隔を明らかにする必要がある。
 新庄盆地断層帯西部は、最新活動を含めた過去の活動についてほとんどデータが得られていない。よって、過去の活動履歴に結びつく資料を蓄積し、最新の活動時期と1回の活動におけるずれの量を精度良く求める必要がある。またそれ以前の活動時期も明らかにし、活動間隔を解明しなければならない。


表1 新庄盆地断層帯東部の特性
項目 特性   信頼度  
注4
根拠
注5
1.断層帯の位置・形態
(1) 断層帯を
 構成する断層
 新庄東山断層、長者原(ちょうじゃはら)
 断層、沖の原断層、舟形断層など
文献1、3、4、7、11、
12、13による。
(2) 断層帯の
 位置・形状等
地表における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
 (北端)北緯38°49′ 東経140°23′
 (南端)北緯38°38′ 東経140°18′

 長さ 約22km

地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置 地表での長さ・位
              置と同じ
 上端の深さ 0km
 一般走向 N20°E


 傾斜 東傾斜30-40°
    (深さ1km以浅)
 幅 20-30km程度

















文献1、7、11による。
数値は、図2から計測。形
状は図2を参照。





上端の深さが0kmである
ことから推定。

一般走向は断層帯の北端
と南端を直線で結んだ方向
図2参照)。
傾斜角は文献10による。

幅は、地震発生層の下限の
深さ(約15km程度)と地表
近くで認められている断層面
の傾斜から推定。
(3) 断層のずれ
 の向きと種類
 東側隆起の逆断層 文献1、3、6、10、11、
12、13に示された変位地
形・地質構造から推定。
2.断層帯の過去の活動
(1) 平均的な
  ずれの速度
0.5m/千年程度(上下成分) 文献1、8、12、14による。
(2) 過去の活
  動時期
活動1(最新活動)
  約6千2百年前以後


文献8による。
(3) 1回のずれ
 の量と平均活
 動間隔
1回のずれの量(撓みを含む)
         約2m(上下成分)

平均活動間隔 4千年程度




文献8による。

平均的なずれの速度と1
回のずれの量から推定。
(4) 過去の活動
 区間
活動区間 断層帯全体で1区間
3.断層帯の将来の活動
(1) 将来の活動
 区間及び活動
 時の地震の規
 模
活動区間 断層帯全体で1区間

マグニチュード 7.1程度

ずれの量 約2m(上下成分)






断層の長さから推定。

過去の活動から推定。


表2 新庄盆地断層帯東部の将来の地震発生確率
項目   将来の地震発生確率等
注6
 信頼度 
注7
備考
地震後経過率(注8

今後30年以内の地震発生確率
今後50年以内の地震発生確率
今後100年以内の地震発生確率
今後300年以内の地震発生確率

集積確率(注9
1.6以下

5%以下
8%以下
20%以下
40%以下

90%より大、もしくはそれ以下
発生確率及び集積
確率は文献2による。

表3 新庄盆地断層帯西部の特性
項目 特性   信頼度  
注4
根拠
注5
1.断層帯の位置・形態
(1) 断層帯を
 構成する断層
鮭川(さけがわ)断層、津谷(つや)付近
の断層、上絵馬河西(かみえまかわにし)
断層など
文献1、3、4、7、11、
12、13による。
(2) 断層帯の位置・
   形状
地表における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
  (北端)北緯38°50′ 東経140°13′
  (南端)北緯38°41′ 東経140°14′

 長さ 約17km

地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置 地表での長さ・位
              置と同じ
 上端の深さ 0km
 一般走向 N-S


 傾斜 西傾斜



 幅  不明














文献1、7、11による。
数値は、図2から計測。形
状は図2を参照。





上端の深さが0kmである
ことから推定。

一般走向は断層帯の北端
と南端を直線で結んだ方向
図2参照)。
傾斜方向は文献1、5、8、
11、12に示された変位地
形、反射法弾性波探査結
果から推定。
地震発生層の下限の深さ
は15km程度。
(3) 断層のずれの向
   きと種類
西側隆起の逆断層 文献1、3、5、8、11、12、
13に示された変位地形・
地質構造から推定。
2.断層帯の過去の活動
(1) 平均的な
  ずれの速度
0.3m/千年程度(上下成分) 文献1、5による。
(2) 過去の活
  動時期
活動時期 不明
(3) 1回のずれ
  の量と平均活
  動間隔
1回のずれの量(撓みを含む)
          1m程度(上下成分)

平均活動間隔 4千7百年程度




断層の長さから推定。

平均的なずれの速度と1
回のずれの量から推定。
(4) 過去の活動
  区間
活動区間 全体で1区間
3.断層帯の将来の活動
(1) 将来の活動
  区間及び活動
  時の地震の規模
活動区間 断層帯全体で1区間

マグニチュード 6.9程度

ずれの量 1m程度(上下成分)






断層の長さから推定。

断層の長さから推定。


表4 新庄盆地断層帯西部の将来の地震発生確率(ポアソン過程を適用)
項目   将来の地震発生確率等
注6
 信頼度 
注7
備考
今後30年以内の地震発生確率
今後50年以内の地震発生確率
今後100年以内の地震発生確率
今後300年以内の地震発生確率
0.6%
1%
2%
6%
発生確率及び集積
確率は文献2による。

注1: 地震調査委員会の活断層評価では、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間の地震発生確率について、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上-3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
 なお、2005年4月時点でひととおり評価を終えた98の主要断層帯のうち、最新活動時期が判明しており、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めたものについては、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間に地震が発生する確率の割合は以下のとおりとなっている。
30年確率の最大値が0.1%未満 : 約半数
30年確率の最大値が0.1%以上-3%未満 : 約1/4
30年確率の最大値が3%以上 : 約1/4
(いずれも2005年4月時点での算定。確率の評価値に幅がある場合はその最大値を採用。)
注2: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率と集積確率は以下のとおりである。
地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995年兵庫県南部地震
(M7.3)
六甲・淡路島断層帯主部
淡路島西岸区間
「野島断層を含む区間」
(兵庫県)
0.02%-8% 0.06%-80% 約1.7-約3.5
1858年飛越地震
(M7.0-7.1)
跡津川断層帯
(岐阜県・富山県)
ほぼ0%-13% ほぼ0%-
90%より大
約1.7-約3.6
1847年善光寺地震
(M7.4)
長野盆地西縁断層帯
(長野県)
ほぼ0%-20% ほぼ0%-
90%より大
約0.8-約2.5
「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が4千年の場合は30年確率の最大値は6%程度である。
注3:  新庄盆地断層帯西部では、最新活動時期が特定できていないため、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めることができない。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、このような更新過程が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしていることから、ここでは、ポアソン過程を適用して将来の地震発生確率を求めた。しかし、ポアソン過程を用いた場合、地震発生の確率はいつの時点でも同じ値となり、本来時間とともに変化する確率の「平均的なもの」になっていることに注意する必要がある。
注4:  信頼度は、特性欄に記載されたデ-タの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
  ◎:高い、○:中程度、△:低い、▲:とても低い
注5: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
文献1:池田ほか編(2002)
文献2:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
文献3:活断層研究会編(1991)
文献4:松田(1990)
文献5:松浦(2003)
文献6:松浦(2006)
文献7:中田・今泉編(2002)
文献8:産業技術総合研究所(2008)
文献9:佐藤ほか(1999)
文献10:佐藤ほか(2006)
文献11:澤ほか(2001)
文献12:鈴木(1988)
文献13:山形県(1998)
文献14:山形県(1999)
注6: 評価時点はすべて2011年1月1日現在。
注7: 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
   a: (信頼度が)高い  b: 中程度  c: やや低い  d: 低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度
a: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。
注8: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。今回評価した数字である1.6は6200年を4000年で割った値である。
注9: 前回の地震発生から評価時点までの間に地震が発生しているはずの確率。


(説明)

1.新庄盆地断層帯に関するこれまでの主な調査研究

 新庄盆地の活構造に関する研究は、村田(1941)、大塚(1942)、杉村(1952)、Taguchi(1962)、中川ほか(1971)、Kumaki(1983)、佐藤(1986a)、佐藤(1986b)、鈴木(1988)、松浦(2003)、松浦(2006)などによって行なわれてきた。これらの研究により、盆地内の段丘面は新第三紀層の褶曲構造と調和的に変形し、また、変位の累積が見られることから、段丘面の形成期間中も褶曲運動が継続していたことが明らかにされた。鈴木(1988)は、新庄盆地と山形盆地の活構造を比較して、これらにおける断層運動様式が異なることを明らかにし、これに基づいて両盆地の発達過程について考察した。
 山形県(1998,1999)は、地形地質調査を行い、平均変位速度などについて検討した。産業技術総合研究所(2008)は、トレンチ調査およびボーリング調査を実施し、本断層帯の過去の活動履歴について検討を行っている。本断層帯の地下構造について、佐藤ほか(1999)、佐藤・平田(2000)、池田ほか編(2002)、佐藤ほか(2006)は、盆地東縁で行なった反射法弾性波探査結果に基づいて、この地域の地下構造とテクトニクスについて考察した。
 なお、本断層帯の詳細な位置については、活断層研究会(1980,1991)、鈴木(1988)、澤ほか(2001)、中田・今泉編(2002)、池田ほか編(2002)などに示されている。

2.新庄盆地断層帯の評価結果について

 本断層帯は、新庄盆地の東側の丘陵との境界付近に位置し、東側が隆起する断層(新庄東山(しんじょうひがしやま)断層、長者原(ちょうじゃはら)断層、沖の原(おきのはら)断層、舟形(ふながた)断層など)と、新庄盆地の西側の丘陵との境界付近に位置し、西側が隆起する断層(鮭川(さけがわ)断層、津谷(つや)付近の断層、上絵馬川西(かみえまかわにし)断層など)に大別される(図1)。ここでは松田(1990)の基準に基づいて、両者はそれぞれ別の起震断層を構成しているとみなし、前者を新庄盆地断層帯東部、後者を新庄盆地断層帯西部として区分する。
 本断層帯では地震調査研究推進本部地震調査委員会(2002)により、新庄盆地断層帯東部に相当する断層について、それまで行われていた調査研究に基づいた長期評価が公表されている。産業技術総合研究所(2008)によって東部の活動履歴に関する新しい知見が得られたことなどから、断層帯東部の再評価を行った。一方、新庄盆地断層帯西部に相当する断層は長さが短いことなどから評価の対象から外れていた。しかし、産業技術総合研究所(2008)などによって本断層帯西部について詳細な調査が実施されていること、池田ほか編(2002)で示された活構造によれば本断層帯西部の長さが約17kmにおよび、基盤的調査観測対象の基準の長さに近いことが判明したことから、今回、断層帯東部の再評価と合わせて断層帯西部の評価を行った。

2.1 新庄盆地断層帯東部

2.1.1 新庄盆地断層帯東部の位置・形態

(1)新庄盆地断層帯東部を構成する断層

 本断層帯東部は、新庄盆地とその東側の奥羽脊梁山脈との境界付近に位置する東上がりの断層である。本断層帯東部を構成する断層の位置・形態は、活断層研究会(1980,1991)、鈴木(1988)、山形県(1998)、澤ほか(2001)、中田・今泉編(2002)、池田ほか編(2002)などに示されている。これらでは、主要な断層分布についてほぼ共通した認識が示されている。ここでは、断層の位置及び名称は、澤ほか編(2001)、池田ほか編(2002)および中田・今泉編(2002)によった。
 本断層帯東部は、山形県新庄市から最上郡舟形町(ふながたまち)にかけて延びており、主として新庄東山断層、長者原断層、沖の原断層、舟形断層から構成される(図2)。ただし、澤ほか(2001)では、活断層研究会(1991)で扱われた経壇原(きょうだんばら)断層に当たるものが本断層帯付近に図示されている。これらは相互の隔たりが2-3kmと近接し、変位の向きを同じくする断層であることから、松田(1990)の基準にしたがって、一つの起震断層を構成しているとみなすことにする。

(2)断層面の位置と形状

 本断層帯東部の長さ及び一般走向は、図2に示された長者原断層の南端とその北側に続く新庄東山断層相当部の北端とを直線で結んで計測すると、それぞれ約22km、N20°Eとなる。前回評価(地震調査研究推進本部地震調査委員会、2002)では、新庄東山断層について、澤ほか(2001)が推定断層(地形的に活断層と特定できない断層)としていることから、最近は活動的でない可能性も示した。しかし、鈴木(1988)により、更新統の山屋層上部層に変形を与えていると指摘されていること、中田・今泉編(2002)により、断層沿いの段丘面の傾動が示されていること、松浦(2006)により、鬼首池月火山灰(27万-24万年前;注11)に断層近傍での撓みや断層を挟んで大きな上下変位があるとされていること、などから新庄東山断層は第四紀後期以降も活動的であると判断した。
 断層面上端の深さは、断層による変位が地表に達していることから0kmとした。
 断層面の傾斜角及び深部形状については、変位地形(鈴木,1988)、反射法弾性波探査結果(佐藤ほか,1999,2006;佐藤・平田,2000;池田ほか編,2002)などから、東傾斜と判断される。また、反射法弾性波探査結果(図3;佐藤ほか,2006)によると、深さ約1km以浅では、東傾斜約30-40°と推定される。
 断層面下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると15km程度と推定される。反射法弾性波探査で得られた傾斜が地下深部まで続くとすれば、断層面の幅は20-30km程度となる

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)注10

 本断層帯東部は、活断層研究会(1980,1991)、鈴木(1988)、山形県(1998)、澤ほか(2001)、池田ほか編(2002)、松浦(2006)、佐藤ほか(2006)などに示された変位地形や地質構造から、東側を西側に対して相対的に隆起させていると考えられる。本断層帯東部は、断層の東側に撓曲や膨らみを伴うことがあるので、東側が西側に乗り上げる逆断層と考えられる。

2.1.2 新庄盆地断層帯東部の過去の活動

(1) 平均変位速度(平均的なずれの速度)注10

 本断層帯東部の平均変位速度を見積もるための資料として、以下のものがある。
 小国川沿いに発達する低位段丘面(L1面及びL2面)は、並走する長者原断層と沖の原断層によって変位しており、鈴木(1988)によると、L1面の変位量は長者原断層で9m、沖の原断層で6m、L2面ではそれぞれの断層で2.5m、3mとされる。また池田ほか編(2002)は鈴木(1988)のL1面の長者原断層による変位量を7mと図示している。これらのことから、ここでの本断層帯東部によるL1面とL2面の上下変位量は少なくとも13m、5.5mとなり、L1面とL2面の形成年代を鈴木(1988)にしたがい約2-3万年前、約1万年前とすると、それぞれの地形面形成後の平均上下変位速度は0.4-0.7m/千年、0.6m/千年となる。
 最上川沿いの舟形町堀内地区で、山形県(1999)は、長者原断層による低位段丘I面の変位を認め、その上下変位量が少なくとも16-23mに達していることを明らかにしている。また、同地点において産業技術総合研究所(2008)が行ったボーリング調査および露頭調査の結果から、段丘構成層が約20mの撓曲変形していることが読み取れる。山形県(1999)にしたがって、この面の形成年代を約5万年前と仮定すると、これ以後の平均上下変位速度は0.3-0.5m/千年となる。
 このほか新庄東山断層沿いでは、活断層研究会(1991)が30~50万年前の更新統山屋層の上下変位量(80m)から平均上下変位速度を0.2m/千年と見積もっている。一方、松浦(2006)は、同断層沿いで鬼首池月火山灰(27万-24万年前;注11)基底に150m前後の上下変位があることから、平均上下変位速度を0.5m/千年前後と算出している。しかし、いずれの値も変位基準の初生的な高度が断層を挟んで同一レベルにあったとは限らないことから、ここでは参考値とする。

 以上のことから、本断層帯東部の平均上下変位速度は0.5m/千年程度である可能性がある。しかし、いずれの地点とも、変位基準の形成年代に関し不確かさが伴われており、精度の高い値とはいえない。また、さらに比較的長く並走する舟形断層の活動性については、不明なため考慮されていないので、この点も留意する必要がある。

(2) 活動時期

a)地形・地質的に認められた過去の活動
・長者原地点
 産業技術総合研究所(2008)は、長者原断層の長者原地点においてピット調査、ボーリング調査を実施している(図4)。
 L3面上の低断層崖周辺で掘削したピット壁面および3カ所のボーリングコアからは断層は検出されなかった。しかし産業技術総合研究所(2008)は、L3面の離水年代について、段丘構成層を覆う腐植質シルトの14C年代(注12)から約6千年前と推定し、L3面が最新活動で上下に2m変位しているとしている(図5)。これは後述する断層の長さから求められる1回の変位量(1.7m(上下成分))と調和的である。段丘構成層を覆う腐植質シルトから得られた14C年代値(注12)のうち、最も古い値は約6千2百年前であったことから、本地点における最新活動時期は約6千2百年前以後であった可能性がある。
 なお、山形県(1999)は同地点の上下変位に関し、複数回の活動を記録している可能性もあると指摘しており、L3面が2回以上の変位を被っている可能性も否定できないことを留意する必要がある。

 なお、産業技術総合研究所(2008)は、長者原断層の堀内地点において露頭調査、トレンチ調査、ボーリング調査を実施している。L4面上で掘削したトレンチの壁面およびボーリングコアからは、断層は検出されなかったが、産業技術総合研究所(2008)は、L4面が最新活動で上下に1.6m変位しているとし、L4面の離水年代について、構成層中に十和田a火山灰(西暦915年;注11)を挟むことや、腐植質シルトの年代などから、最新活動時期を1千年前以後と推定している。しかし、L4面は高位の段丘を開析する谷底面として形成されており、まだ離水していないとみなされることなどから、地形環境が安定しておらず、上下変位とされた高度差は必ずしも断層変位であるとは限らないため、ここでは採用しない。さらに産業技術総合研究所(2008)は、トレンチ壁面で腐植質シルトに東側隆起の変形構造が観察されるとして、8千-6千2百年前(注12)に1回前の活動があったと報告しているが、腐植質シルトの分布は堆積構造でも説明できることから、この活動についても採用しないこととする。

b)先史時代・歴史時代の活動
 山形県では、少なくとも19世紀初頭から地震の記録があるが、本断層帯から発生した被害地震の記述はない(宇佐美,2003)ので、最近約200年間はこの断層帯は活動していないと考えられる。

 以上のことから、新庄盆地断層帯東部における最新活動時期は約6千2百年前以後であった可能性がある。

(3)1回の変位量(ずれの量)注10

 山形県(1999)は、最上川沿い(長者原地点)で、長者原断層による沖積面と低位段丘III面の変位量がいずれも2m程度であることを理由に、この断層の1回の変位量(上下成分)を約2mとしている。2.1.2(2)a)で述べたとおり、産業技術総合研究所(2008)も同地点において最新活動による上下変位を約2mと報告している(図5)。
 なお、1回の変位量について、断層の長さ(22km)から次の松田(1975)の経験式に基づいて算出すると、約1.7m(上下成分)と求まる。
    LogL=0.6M-2.9  (1)
    LogD=0.6M-4.0  (2)

 ただし、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Dは断層の変位量(m)、Mは地震のマグニュードである。

以上のことから、断層帯全体の1回の変位量は約2m(上下成分)であった可能性がある。

(4)活動間隔

 本断層帯東部では、活動間隔に関する直接的な資料は得られていない。
 しかしながら、平均活動間隔について、1回の変位量(上下成分約2m)と平均変位速度(上下成分0.5m/千年程度)からは、4千年程度と求まる。
 以上のことから、本断層帯東部の平均活動間隔は4千年程度であった可能性がある。

(5)活動区間

 本断層帯東部の活動区間については、松田(1990)の基準に基づけば、全体で1区間と考えられる。

(6)測地観測結果

 本断層帯周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果では、断層帯の周辺では顕著な歪みは見られない。
 また、2003年宮城県沖地震前(2003年4月まで)の約6年間のGPS観測結果や2009年7月までの1年間のGPS観測結果では、断層帯周辺で東西方向のわずかな縮みが見られる。

(7)地震観測結果

 本断層帯付近の地震活動は全般的に低調である。最近約12年間の地震観測結果によれば、地震発生層の下限の深さは15km程度と推定される。

2.1.3 新庄盆地断層帯東部の将来の活動

(1)活動区間と活動時の地震の規模

  本断層帯東部では、断層帯全体を一つの活動区間とした場合、上記の経験式(1)によると、本断層帯東部(長さ22km)から発生する地震の規模はマグニチュード7.1程度の可能性がある。このような地震が発生した場合、断層の東側が相対的に約2m高まるような段差や撓みが生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 本断層帯東部の平均活動間隔は、4千年程度の可能性があり、最新活動時期が約6千2百年前以後である可能性があることから、平均活動間隔に対する現在における地震後経過率は1.6以下となる。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、5%以下、8%以下、20%以下、40%以下となり、現在までの集積確率は90%より大、もしくはそれ以下となる(表2)。表5にこれらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。本評価で得られた将来の地震発生確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯東部は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。

2.2 新庄盆地断層帯西部

2.2.1 新庄盆地断層帯西部の位置・形態

(1)新庄盆地断層帯西部を構成する断層

 本断層帯西部は、新庄盆地とその西側の出羽丘陵との境界付近に位置する西上がりの断層である(図2)。本断層帯西部を構成する断層の位置・形態は、活断層研究会(1980,1991)、鈴木(1988)、山形県(1998)、澤ほか(2001)、中田・今泉編(2002)、池田ほか編(2002)などに示されている。これらでは、主要な断層分布についてほぼ共通した認識が示されている。ここでは、断層の位置及び名称は澤ほか(2001)、池田ほか編(2002)および中田・今泉編(2002)によった。
 本断層帯西部は、山形県の最上郡鮭川村(さけがわむら)から最上郡大蔵村(おおくらむら)にかけて延びており、主として鮭川断層およびその南方延長部から構成される(図2)。このほか澤ほか(2001)、中田・今泉編(2002)、池田ほか編(2002)では、盆地中央部にも西側隆起の特徴を持つ上絵馬河西(かみえまかわにし)断層を図示している。さらに、中田・今泉編(2002)、池田ほか編(2002)では、鮭川断層の西側に鮭川村から戸沢村にかけて延びる津谷付近の断層(注13)を図示しているが、これらは相互の隔たりが5km以内で近接し、変位の向きを同じくする断層であることから、松田(1990)の基準にしたがって、一つの起震断層を構成しているとみなすことにする。

(2)断層面の位置と形状

 本断層帯西部の長さ及び一般走向は、図2に示された鮭川断層の北端と南へ続く向斜軸の南端とを直線で結んで計測すると、それぞれ約17km、N-Sとなる。
 断層面上端の深さは、断層による変位が地表に達していることから0kmとした。
 断層面の傾斜角及び深部形状については、変位地形(鈴木,1988、澤ほか,2001、池田ほか編,2002、松浦,2003、産業技術総合研究所,2008)、反射法弾性波探査結果(図6;産業技術総合研究所,2008)などから、西傾斜と判断される。
 断層面下端の深さは、地震発生層の下限を目安にすると15km程度と推定されるが、断層面の幅については、地下深部の傾斜が明らかでないため不明である。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)注10

 本断層帯西部は、活断層研究会(1980,1991)、鈴木(1988)、山形県(1998)、澤ほか(2001)、池田ほか編(2002)、松浦(2003)、産業技術総合研究所(2008)などに示された変位地形や地質構造から、西側を東側に対して相対的に隆起させていると考えられる。本断層帯西部は西傾斜と判断されることから、西側が東側に乗り上げる逆断層と考えられる。

2.2.2 新庄盆地断層帯西部の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)注10

 本断層帯西部の平均変位速度を見積もるための資料として、以下のものがある。
 鮭川断層沿いの観音寺地点では、池田ほか編(2002)がM面に5mの変位量を図示している。このM面は、松浦(2003)のLL1面に相当し、形成年代が2万年前と推定されている(松浦,2003)ことから、平均変位速度は約0.3m/千年(上下成分)と求められる。
 鮭川断層沿いの本合海地点では、松浦(2003)により、5万年前に形成されたと考えられるLH1面が上下方向に5-10m程度変位していることが示されている。したがって平均変位速度は約0.1-0.2m/千年(上下成分)と求められる。

 以上のことから、本断層帯西部の平均上下変位速度は0.3m/千年程度である可能性がある。なお、本断層帯西部で得られている平均変位速度の値は、いずれの地点とも変位量が実測値ではなく、地形図等からの読み取り値であることから、数値の精度は高くないことに留意する必要がある。
 なお、鮭川断層は津谷付近の断層と並行しているため、本断層帯西部の平均上下変位速度は、0.3m/千年よりも大きい可能性もある。ただし、観音寺地点と本合海地点はどちらも津谷付近の断層とは並行していない地点に位置するため、ここでは、鮭川断層の平均上下変位速度を本断層帯西部の代表値とした。

(2)活動時期

a)地形・地質的に認められた過去の活動
 本断層帯西部の最新活動を含めた最近の活動履歴に関する資料は得られていない。

b)先史時代・歴史時代の活動
 2.1.2(2)bを参照。

(3)1回の変位量(ずれの量)注10

 本断層帯西部では、1回の変位量に関する直接的な資料は得られていない。
 しかしながら、1回の変位量について、断層の長さ(17km)から上記の松田(1975)の経験式(1)、(2)に基づいて算出すると、約1.4m(上下成分)と求まる。

 以上のことから、断層帯全体の1回の変位量は1m程度(上下成分)であった可能性がある。

(4)活動間隔

 本断層帯西部では、活動間隔に関する直接的な資料は得られていない。
 しかしながら、平均活動間隔について、断層の長さから推定される1回の変位量(上下成分約1.4m)と平均変位速度(上下成分0.3m/千年程度)からは、4千7百年程度と求まる。
 以上のことから、本断層帯西部の平均的な活動間隔は4千7百年程度であった可能性がある。

(5)活動区間

 本断層帯西部の活動区間については、松田(1990)の基準に基づけば、全体で1区間と考えられる。

(6)測地観測結果

 2.1.2(6)参照

(7)地震観測結果

 2.1.2(7)参照

2.2.3 新庄盆地断層帯西部の将来の活動

(1)活動区間と活動時の地震の規模

 本断層帯西部では、断層帯全体を一つの活動区間とした場合、上記の経験式(1)によると、本断層帯西部(長さ約17km)から発生する地震の規模はマグニチュード6.9程度の可能性がある。このような地震が発生した場合、断層の西側が相対的に1m程度高まるような段差や撓みが生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 本断層帯西部の平均活動間隔は、直接的なデータではないが4千7百年程度の可能性がある。しかし、最新活動時期が特定できていないため、上記のようなマグニチュード6.9程度の地震が発生する長期確率を更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)を用いて評価することができない。
 地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、地震の発生確率を求めるに当たって、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしている。信頼度の低い平均活動間隔を用いた計算であることに十分留意する必要があるが、本断層帯西部では、平均活動間隔が4千7百年程度であることをもとに、ポアソン過程を適用して地震発生確率を求めると、今後30年以内の発生確率が0.6%、今後50年以内の発生確率が1%、今後100年以内の発生確率が2%、今後300年以内の発生確率が6%となる(表4)。

3.今後に向けて

 本断層帯では、活動履歴に関する資料が整っておらず、断層帯東部についてはより精度の良い活動履歴を明らかにすることと、長者原断層以外の断層についても過去の活動を解明する必要がある。断層帯西部では、最新活動時期、1回の変位量、活動間隔などが解明されていないため、将来の断層活動について十分な検討できない段階にある。これらの過去の活動履歴を明らかにするための基礎的なデータを豊富に集積する必要がある。

注10: 「変位」を、1、2頁の本文及び5-8頁の表1表3では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは、専門用語である「変位」が、本文や表1表3の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓みの成分」よりなる。
注11:  鬼首池月火山灰、十和田a火山灰の年代値は、町田・新井(2003)に基づき、それぞれ27万-24万年前、西暦915年とした。
注12: 21,000 年BP よりも新しい炭素同位体年代については、Ramsey(1995, 2001)及びReimer et al. (2004)に基づいて暦年較正し、原則として1σの範囲の数値で示した。このうち、10,000年前よりも古い年代値は四捨五入して千年単位で示し、10,000 年前よりも新しい年代値については、四捨五入して百年単位で示した。
注13:  戸沢村津谷付近に分布する断層については、中田・今泉編(2002)、池田ほか編(2002)では、断層形態の記載のみで名称が付されていないことから、本評価では「津谷付近の断層」と仮称した。


文 献

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表5 新庄盆地断層帯東部の将来の地震発生確率及び参考指標
項目 数値 備考
地震後経過率

今後30年以内の発生確率
今後50年以内の発生確率
今後100年以内の発生確率
今後300年以内の発生確率

集積確率
1.6以下

5%以下
8%以下
20%以下
40%以下

90%より大もしくはそれ以下
発生確率及び集積確率は地
震調査研究推進本部地震調
査委員会(2001)参照。
 指標(1) 経過年数
       比
 指標(2)
 指標(3)
 指標(4)
 指標(5)
3千4百年以下
2.2以下
6.5以下
90%より大もしくはそれ以下
0.8以下
0.0003以下
地震調査研究推進本部地
震調査委員会長期評価部会
(1999)参照。
評価時点はすべて2011年1月1日現在。
計算に用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。

 指標(1)  経過年数  :  当該断層帯に起因する大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は、最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(BPT分布モデルを適用した場合の考え方)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合の考え方)。
この指標は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。値がマイナスである場合は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達していないことを示す。
新庄盆地断層帯東部の場合、ポアソン過程を適用した場合の危険率は、4千分の1(0.0003)以下であり、いつの時点でも一定である。
BPT分布モデルを適用した場合の危険率は、評価時点では5百分の1(0.002)以下であり、時間とともに増加する。BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達してから3千4百年が経過したこととなる。
指標(1) 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率を超えるまでの時間をBとした場合において、前者を後者で割った値(A/B)である。
指標(2) BPT分布モデルを適用した場合と、ポアソン過程を適用した場合の評価時点での危険率の比。
指標(3) 評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標(4) 評価時点以後30年以内の地震発生確率の値をBPT分布モデルでとりうる最大の地震発生確率の値で割った値。
指標(5) ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。評価時点はすべて2011年1月1日現在。

付表

地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。

  ランク   分類条件の詳細
発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高く(◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。
平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。
平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性がやや低い。
平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く(▲)、発生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。


<付録>

 新庄盆地断層帯については、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2002)により、それまで行われていた調査研究に基づいた長期評価が公表されているが、今回、産業技術総合研究所(2008)の調査によりボーリング・トレンチ調査などが実施され、過去の活動履歴などについて新たな知見が得られたことから、これに基づき検討を行い、一部改訂版としてとりまとめた。
 以下に新庄盆地断層帯東部における改訂となった項目とその値について、前回の評価と今回の評価の対比表を示す。なお、評価にあたっては、下表に示す数値のほか、各値を求めた根拠についても改訂していることに留意されるとともに、その詳細については評価文を参照されたい。

新庄盆地断層帯東部の評価についての新旧対比表
項目 前回の評価
(平成14年7月10日公表)
今回の評価
(平成23年5月19日公表)
断層帯の位置・形
状等
地表における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
 (北端)北緯38°44′
       -38°49′
     東経140°18′
       -140°23′
 (南端)北緯38°38′
     東経140°18′

 長さ 約11-23km

地下における断層帯の位置・形状
 一般走向 NS-N20°E
 傾斜 東傾斜

 幅 不明













地表における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
 (北端)北緯38°49′
     東経140°23′
 (南端)北緯38°38′
     東経140°18′



 長さ 約22km

地下における断層帯の位置・形状
 一般走向 N20°E
 傾斜 東傾斜30-40°
    (深さ1km以浅)
 幅 20-30km程度















 平均的なずれの
速度
 0.5m/千年前後(上下成分)  0.5m/千年程度(上下成分)
過去の活動時期  不明
(19世紀初頭以降にこの断層
帯から発生したと考えられる被
害地震は知られておらず、最近
約200年間は活動していないと
考えられる)
活動1(最新活動)
 約6千2百年前以後

平均活動間隔 2-4千年程度 4千年程度
1回のずれの量 1-2m程度(上下成分) 約2m(上下成分)
地マグニチュード 6.6-7.1程度  7.1程度
地震発生確率
(30年)
0.7%-1%[ポアソン] 5%以下[BPT]
地震後経過率 1.6以下  c
 対比表に示した(◎、○、△)及び(a、b、c、d)については信頼度を表す。それぞれの詳細については
注4注7を参照のこと。