十日町断層帯の長期評価の一部改訂について

平成22年3月18日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

 地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について -地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策-」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。

 地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、平成17年4月までに陸域の活断層として、98断層帯の長期評価を行い公表した。

 十日町断層帯の評価は平成17年4月13日に公表しているが、その後、最近の調査結果により、活動履歴などに関する新たな知見が得られたことから、これを基に評価の見直しを行い、一部改訂版としてとりまとめた。また、評価の新旧対比表を付録として巻末に示した。

 評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。


平成22年3月18日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

十日町断層帯の評価(一部改訂)

 十日町断層帯は、新潟県中越地方に位置しほぼ南北に細長く延びる十日町盆地とその東西両側の丘陵との境界に位置する断層帯である。ここでは、平成19年度に産業技術総合研究所によって行われた調査をはじめ、これまでに行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した。


十日町断層帯については、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2005)により、それまでに行われた調査研究に基づいた長期評価が公表されているが、産業技術総合研究所(2008)によって行われた補完調査などによって十日町断層帯西部に関する新知見が得られたことから、今回再評価を行った。なお、十日町断層帯東部については、活動時期の推定に用いた年代値の暦年補正のみを行い、その他の評価内容は前回評価(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2005)に従った。

1.断層帯の位置及び形態

 十日町断層帯は、その分布形態から十日町断層帯西部と十日町断層帯東部に区分される。
 十日町断層帯西部は、新潟県小千谷(おぢや)市から十日町市を経て中魚沼郡津南(つなん)町西部の新潟・長野県境付近に至る断層帯である。長さは約33kmで、北北東-南南西方向に延びており、断層帯の西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層である(図1-11-2及び表1)。
 十日町断層帯東部は、十日町市北部から十日町市南部に至る断層帯である。長さは約19kmで、北北東-南南西方向に延びており、断層帯の東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層である。(図1-11-2及び表3)。

2.断層帯の過去の活動

(1)十日町断層帯西部

 十日町断層帯西部の平均的な上下方向のずれの速度は、1m/千年程度の可能性がある。最新活動時期は、約3千1百年前以前であった可能性がある。また、野外調査から直接得られたデータではないが、1回のずれ量と平均的な上下方向のずれの速度に基づくと、平均活動間隔は3千3百年程度であった可能性があり、このとき断層近傍の地表面では西側が東側に対して相対的に2-3m程度高まる段差や撓(たわ)みが生じた可能性がある(表1)。

(2)十日町断層帯東部

 十日町断層帯東部の平均的な上下方向のずれの速度は、0.2-0.4m/千年程度の可能性があり、最新活動を特定することはできないが、約3千8百年前以後、約3千2百年前以前に活動があったと推定される。また、既往の調査研究成果による直接的なデータではないが、本断層帯の長さをもとに経験則で求めた1回のずれ量と平均的な上下方向のずれの速度に基づくと、平均活動間隔は、4千-8千年程度であった可能性がある(表3)。

3.断層帯の将来の活動

(1)十日町断層帯西部

 十日町断層帯西部は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.4程度の地震が発生する可能性がある。その際、断層の近傍の地表面では西側が東側に対して相対的に2-3m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある(表1)。十日町断層帯西部では、最新活動時期を十分特定できていないことに留意する必要があるが、通常の活断層評価の手法により最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する確率を求めると表2に示すとおりとなる。本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる(注1)。

(2)十日町断層帯東部

 十日町断層帯東部は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.0程度の地震が発生する可能性がある。その際、断層の近傍の地表面では東側が西側に対して相対的に1-2m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある(表3)。本断層帯では、過去の活動が十分に明らかではなく、最新活動時期が特定できていないことから、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めている。そのため信頼度は低いが、将来このような地震が発生する確率は表4のとおりであり、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注1)。

4.今後に向けて

 十日町断層帯西部では、最新活動について年代を絞り込める質の高いデータを得る必要がある。将来の活動を明確にするためには、最新活動時期等の過去履歴についての精度よいデータを集積させるとともに、平均活動間隔を精度良く明らかにする必要がある。
 十日町断層帯東部では、最新活動を含めた過去の活動履歴や1回のずれの量が明らかになっていない。また、地下構造に関する資料が不足していることから、断層の深部形状も正確に把握できていない。将来の活動を明確にするためには、これらについての精度よいデータを集積させるとともに、それぞれの活動間隔を明らかにする必要がある。


表1 十日町断層帯西部の特性
項目 特性   信頼度  
注5
根拠
注6
1.断層帯の位置・形態
(1) 断層帯を構成す
   る断層
 十日町盆地西縁断層、宮野原断層など 文献1、3、4による。
(2) 断層帯の位置・
   形状
地表における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
   (北端) 北緯37°14′東経138°46′
   (南端) 北緯36°59′東経138°35′
  長さ         約33km




文献1による。
位置及び長さは図2
ら計測。
地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置 
         地表での長さ・位置と同じ
 上端の深さ   0km
 一般走向    N30°E
   

 傾斜       西傾斜


 幅        不明












上端の深さが0kmで
あることから推定。
地形の特徴から推定。
一般走向は断層帯の
両端を直線で結んだ
方向(図2を参照)。
文献1、5、7等に示さ
れた地形・地質の特徴
による。
地震発生層の下限の
深さは15km程度。
(3) 断層のずれの向
   きと種類
西側隆起の逆断層 文献1、8、9、12等に
示された地形・地質の
特徴による。
2.断層帯の過去の活動
(1) 平均的なずれの
   速度
1m/千年程度(上下成分) 文献7等に示された資
料から推定。
(2) 過去の活動時期 活動1(最新活動)
約3千1百年前以前

活動時期は、文献13
に示された資料から
推定。
(3) 1回のずれの量
   と平均活動間隔
1回のずれの量  2-3m程度(上下成分)

平均活動間隔   3千3百年程度



断層の長さから推定。

平均的なずれの速度と
1回のずれの量から推
定。
(4) 過去の活動区間 断層帯全体で1区間 断層の位置関係・形状
等から推定。
3.断層帯の将来の活動
(1) 将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
活動区間     断層帯全体で1区間

地震の規模   マグニチュード7.4程度
ずれの量     2-3m程度(上下成分) 



断層の位置関係・形状
等から推定。
断層の長さから推定。
断層の長さから推定。  


表2 十日町断層帯西部の将来の地震発生確率等
項目   将来の地震発生確率等  
注3
 信頼度 
注8
備考

地震後経過率(注9

今後30年以内の地震発生確率
今後50年以内の地震発生確率
今後100年以内の地震発生確率
今後300年以内の地震発生確率

集積確率(注10


0.9以上

3%以上
5%以上
10%以上
30%以上

40%以上







発生確率及び集積確
率は文献2による。


表3 十日町断層帯東部の特性
項目 特性   信頼度  
注5
根拠
注6
1.断層帯の位置・形態
(1) 断層帯を構成す
   る断層
十日町盆地東縁断層、細尾-如来寺(にょ
らいじ)断層など
文献8、12による。
(2) 断層帯の位置・
   形状
地表における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
   (北端) 北緯37°12′東経138°47′ 
   (南端) 北緯37°03′東経138°42′
  長さ         約19km




文献8、12による。
位置及び長さは図2
ら計測。
地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置 
         地表での長さ・位置と同じ
 上端の深さ   0km
 一般走向    N20°E
   

 傾斜       東傾斜
            

 幅        不明











上端の深さが0kmで
あることから推定。
地形の特徴から推定。
一般走向は、断層帯の
両端を直線で結んだ
方向(図2を参照)。
文献6、10に示された
地形・地質の特徴によ
る。
地震発生層の下限の
深さは15km程度。
(3) 断層のずれの向
   きと種類
東側隆起の逆断層 文献8、11、12に示さ
れた地形・地質の特徴
による。
2.断層帯の過去の活動
(1) 平均的なずれの
   速度
0.2-0.4m/千年程度(上下成分) 主に文献6に示された
資料から推定。
(2) 過去の活動時期 約3千8百年前以後、約3千2百年前以前
に活動があったと推定されるが、これが本
断層帯の最新活動であるかは不明。


説明文2.2.2(2)を
参照。
(3) 1回のずれの量
   と平均活動間隔
1回のずれの量  1-2m程度(上下成分)
平均活動間隔   4千-8千年程度


断層の長さから推定。
平均的なずれの速度と
1回のずれの量から推
定。
(4) 過去の活動区間 不明
3.断層帯の将来の活動
(1) 将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
活動区間     断層帯全体で1区間
地震の規模   マグニチュード7.0程度
ずれの量     1-2m程度(上下成分)



断層の長さから推定。
断層の長さから推定。

表4 十日町断層帯東部の将来の地震発生確率(ポアソン過程を適用)
項目   将来の地震発生確率等  
注7
 信頼度 
注8
備考

今後30年以内の地震発生確率
今後50年以内の地震発生確率
今後100年以内の地震発生確率
今後300年以内の地震発生確率


0.4%-0.7%
0.6%-1%
1%-2%
4%-7%





最新活動時期が不明
のため、平均活動間
隔をもとにポアソン過
程で推測した。

注1: 地震調査委員会の活断層評価では、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間の地震発生確率について、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上-3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
 なお、2005年4月時点でひととおり評価を終えた98の主要断層帯のうち、最新活動時期が判明しており、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の確率を求めたものについては、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間に地震が発生する確率の割合は以下のとおりとなっている。
30年確率の最大値が0.1%未満 : 約半数
30年確率の最大値が0.1%以上-3%未満 : 約1/4
30年確率の最大値が3%以上 : 約1/4
(いずれも2005年4月時点での算定。確率の評価値に幅がある場合はその最大値を採用。)
注2: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率と集積確率は以下のとおりである。
地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995年兵庫県南部地震
(M7.3)
六甲・淡路島断層帯主部
淡路島西岸区間
「野島断層を含む区間」
(兵庫県)
0.02%-8% 0.06%-80% 約1.7-約3.5
1858年飛越地震
(M7.0-7.1)
跡津川断層帯
(岐阜県・富山県)
ほぼ0%-13% ほぼ0%-
90%より大
約1.7-約3.6
1847年善光寺地震
(M7.4)
長野盆地西縁断層帯
(長野県)
ほぼ0%-20% ほぼ0%-
90%より大
約0.8-約2.5
「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。30年確率の最大値は平均活動間隔が3千3百年の場合は8%程度、8千年の場合は4%程度である。
注3: 十日町断層帯西部の地震発生の確率(今後30年間)の最大値を有効数字2桁で表すと、2.9%以上となる。ここでは、最新活動時期の下限が示されていないことから、実際の地震発生の確率は3%を超えると判断し、注1に示した相対的な分類については、「高い」に属するものとして扱った。
注4: 十日町断層帯東部では、最新活動時期が特定できていないため、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めることができない。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、このような更新過程が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしていることから、ここでは、ポアソン過程を適用して断層帯の将来の地震発生確率を求めた。しかし、ポアソン過程を用いた場合、地震発生の確率はいつの時点でも同じ値となり、本来時間とともに変化する確率の「平均的なもの」になっていることに注意する必要がある(注14も参照のこと)。
 なお、グループ分けは、通常の手法を用いた場合の全国の主な活断層のグループ分け(注1参照)と同じしきい値(推定値)を使用して行なった。
注5:  信頼度は、特性欄に記載されたデ-タの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
  ◎:高い、○:中程度、△:低い
注6: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
 文献1:池田ほか編(2002)
 文献2:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
 文献3:活断層研究会編(1980)
 文献4:活断層研究会編(1991)
 文献5:町田・池田(1969)
 文献6:太田編(1998)
 文献7:信濃川ネオテクトニクス団体研究グループ(2002)
 文献8:鈴木ほか(2001)
 文献9:竹内ほか(2000)
 文献10:田中(2000)
 文献11:柳沢ほか(1985)
 文献12:渡辺ほか(2001)
 文献13:産業技術総合研究所(2008)
注7: 評価時点はすべて2010年1月1日現在。「ほぼ0%」は10-3%未満の確率値を示す。なお、計算に用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。十日町断層帯東部は最新活動時期を特定できていないため、通常の手法による確率の値は推定できない。そのかわりとして、長期間の確率の平均値を示した。最新活動時期によってはこの値より大きく、または小さくなるが、その確率値のとり得る範囲は平均活動間隔から求めることができる。十日町断層帯東部は平均活動間隔が4千-8千年程度と求められているので、この場合の通常の手法による30年確率のとり得る範囲は0.001%-2%となる。
注8: 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
   a: (信頼度が)高い  b: 中程度  c: やや低い  d: 低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度
a: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。
注9: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。今回評価した数字のうち0.9は3100年を3300年で割った値である。
注10: 前回の地震発生から評価時点までの間に地震が発生しているはずの確率。


(説明)

1.十日町断層帯に関するこれまでの主な調査研究

 十日町断層帯は、新潟県中越地方に位置しほぼ南北に細長く延びる十日町盆地とその東西両側の丘陵との境界に位置する活断層帯である。
 本地域では十日町盆地は魚沼層群の向斜軸に沿って広がり、その中央部を流れる信濃川に沿って分布する河成段丘面の変形と、基盤である魚沼層群の地質構造についての研究が古くからなされ(池辺,1942; 大塚,1942)、活褶曲による河成段丘面の累積的変位が指摘されてきた(Ota,1969; Ota et al.,1973)。また、河成段丘については、内藤(1965)、信濃川段丘グループ(1968,1970)、町田・池田(1969)、新潟平野団体研究グループ(1972)、早津・新井(1981)により、区分、形成年代などについて詳しく検討された。断層の分布については、町田・池田(1969)がまず十日町盆地の南部に段丘を変位させる西側隆起の逆断層の存在を示した。活断層研究会編(1980,1991)は、本地域の活断層の分布や性状を明らかにし、その一部に「十日町断層」、「津南断層」の名を与えた。
 太田編(1997,1998,1999)などは、科学技術振興調整費「日本海東縁部における地震発生ポテンシャル評価に関する総合研究」の一環として、詳しい地形・トレンチ調査などを実施し、十日町盆地の東縁に沿って東側隆起の断層が存在すること、及び従来の「十日町断層」はその副次的な断層であることを指摘した。渡辺ほか(2001)及び鈴木ほか(2001)は、この盆地の東縁の断層を十日町盆地東縁断層と命名した。一方、渡辺ほか(2001)、鈴木ほか(2001)、池田ほか編(2002)は、十日町盆地の西縁に沿って津南断層まで連続する断層の存在を明確にし、これを十日町盆地西縁断層と命名した。これらは、中田・今泉編(2002)でも取り扱われている。このほか、田中(2000)が、活断層の位置とその変位量について検討している。また、信濃川ネオテクトニクス団体研究グループ(2002)が、津南断層の活動性について論じている。産業技術総合研究所(2008)は、十日町盆地断層帯西部の活動性を確認することを目的として、地表地質調査、ボーリング調査及びトレンチ調査を実施した。
 本断層帯の東側に位置する魚沼丘陵では、著しい傾動隆起に伴い鮮新世-更新世に堆積した魚沼層や段丘が顕著な西への傾動を示すことが知られており(町田・池田,1969など)、これには、魚沼丘陵の東縁に位置する六日町断層が深く関与しているとする指摘がある(池田ほか編,2002; 金,2004)。

2.十日町断層帯の評価結果

 十日町断層帯は、新潟県中越地方に位置し、ほぼ南北に細長く延びる十日町盆地に沿って分布する断層帯で、盆地の西縁に位置する西側隆起の断層帯と東縁に位置する東側隆起の断層帯からなる。この2つの断層帯は、地表では5km以内に接近して並走するが、変位の向き(ずれの向き)(注11)が逆であることから、ここでは別の断層帯と考え、盆地西縁に連続する断層帯を十日町断層帯西部、盆地東縁に連続する断層帯を十日町断層帯東部として、それぞれについて評価する。なお、十日町断層帯東部については、長さが約19kmのため、地震調査研究推進本部(1997)の基盤的調査観測対象の基準を満たさないものの、太田編(1997,1998,1999)により、トレンチ調査などを含む詳細な調査が行われていることから、本評価の対象とすることとした。

2.1 十日町断層帯西部

2.1.1 十日町断層帯西部の位置及び形態

(1)十日町断層帯西部を構成する断層

 十日町断層帯西部は小千谷(おぢや)市から十日町市を経て中魚沼郡津南(つなん)町西部の新潟・長野県境付近にかけて分布している(図1-1)。
 十日町断層帯西部を構成する断層の位置及び形態は、活断層研究会編(1980,1991)、新潟県地質図改訂委員会編(2000)、田中(2000)、渡辺ほか(2001)、鈴木ほか(2001)、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)などに示されている。ここでは、断層の位置・名称は池田ほか編(2002)にしたがい、名称の一部は活断層研究会編(1980,1991)にしたがった。
 十日町断層帯西部は、十日町盆地西縁断層、宮野原断層などから構成される(図1-1)。これらは、互いに近接し、走向・変位の向きを同じくする断層群であることから、松田(1990)の起震断層の基準にしたがって、1つの断層帯を構成しているとみなせる。なお、本断層帯西部の北方には、西側隆起の逆断層である長岡平野西縁断層帯の南端部が分布するが、これは、本断層帯西部と8km程度離れていることから、松田(1990)の起震断層の基準にしたがって、別の断層帯を構成していると見なせる(図3)。

 本断層帯西部の西方の関田山地に分布する野々海峠断層群については、重力性の正断層群である可能性が高い(柳沢ほか,2001)ことから、本断層帯には含めず、詳細な評価の対象としないことにした。

 また、同じく本断層帯西部の西方の青倉断層、平滝断層、伏野峠断層(活断層研究会,1980,1991)は、走向及び変位のセンスが本断層帯と異なる。さらに、これらの断層は、相互の隔たりが5km以内であるが、各断層の長さは4-5kmで、全長も13km程度であることから、詳細な評価の対象としないことにした(図3)。

(2)断層面の位置・形状

 十日町断層帯西部の長さ及び一般走向は、図2に示された断層帯の両端を直線で結んで計測すると、約33km、N30°Eとなる。
 断層面の上端の深さは、地表まで変位が及んでいることから0kmとした。
 断層面の傾斜については、一部で膨らみを伴った東向きの撓曲崖(信濃川ネオテクトニクス団体研究グループ,2002; 池田ほか編,2002)が形成されていること、また、南部の清津川沿いで観察された断層露頭(西傾斜50°; 町田・池田,1969)の性状から、西傾斜と考えられる。
 断層面下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると15km程度と推定されるが、断層面の幅については、地下深部の傾斜が明らかではないため不明である。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)注11

 十日町断層帯西部は、幅広い撓曲を伴った西側隆起の変位地形(鈴木ほか,2001; 渡辺ほか,2001; 池田ほか編,2002など)や地質構造(竹内ほか,2000など)を形成していること、上述のように断層面は西に傾斜していることから、西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層と考えられる。

2.1.2 十日町断層帯西部の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)注11

 信濃川右岸の津南町卯ノ木(うのき)地点では、朴ノ木坂(ほおのきざか)段丘の一部と見なされてきた中位段丘面(信濃川段丘グループ,1968; 町田・池田,1969など)が、東向きの撓曲崖をつくって西側が大きく隆起している(田中,2000; 鈴木ほか,2001; 信濃川ネオテクトニクス団体研究グループ,2002; 池田ほか編,2002; 中田・今泉編,2002:図4)。その上下変位量は、信濃川ネオテクトニクス団体研究グループ(2002)から、少なくとも45mと見積もられる。変位した地形面の離水期は、段丘堆積物の直上に大山倉吉火山灰(約6万5千-5万5千年前:注12)が認められること(信濃川ネオテクトニクス団体研究グループ,2002)から、約6万5千-5万5千年前と推定される。このような資料に基づくと、卯ノ木付近では、平均変位速度は、0.8m/千年以上となり、1m/千年程度に達している可能性もある。
 以上のことから、十日町断層帯西部の平均変位速度は、1m/千年程度の可能性がある。

 なお、産業技術総合研究所(2008)は、川西地区のボーリング調査結果から、十日町盆地西縁断層の活動により変形を受けている地形面(図5の7面相当)において、2mの高度差が認められ、これが1回の変位で形成されたと考えられることから、この地点における平均上下変位速度を0.5m/千年程度と算出している。しかし、この高度差は、大規模な耕地整理後の地形面から計測されたものであり、変位量の値として採用することは適切ではなく、また1回の変位から算出した平均上下変位速度であることから、信頼性が低いため、ここでは参考値とする。
 また、十日町断層帯西部に沿っては、高位段丘、中位段丘及び低位段丘がそれぞれ少なくとも80-90m、10-50m、2-10m変位しているとする報告(田中,2000; 池田ほか編,2002; 中田・今泉編,2002など)がある。しかし、いずれにおいても、変位基準の取り扱いやその年代推定、変位量の見積もりなどに関し不明な点があり、これらからは平均変位速度を特定することができないため、これらは参考値とする。

(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動

・川西地点(空中写真による地形判読と群列ボーリング調査)
 十日町盆地西縁断層の中部付近に位置する十日町市川西では、丘陵と平野境界付近に分布する段丘が東に撓曲し、その基部に断層が推定されている(鈴木ほか,2001; 渡辺ほか,2001など)。産業技術総合研究所(2008)は、川西地区の段丘面上の2測線(A測線、B測線)において、それぞれ群列ボーリング調査を実施した。また、地震調査研究推進本部事務局は、川西地区の空中写真(1947年米軍撮影)から地形判読を行い、地形発達史を踏まえて地形分類図(図5)を作成し、活動時期に関する検討を行った。これによると、7面には、断層の活動で変位した可能性がある東向きの小崖地形が認められるのに対し、より新しい時期に形成されたと考えられる8面には断層変位地形は認められない(図5)。このため、7面形成後、8面形成前に、本断層帯の活動があったと考えられる。なお、7面で認められた低断層崖は、米軍の撮影した航空写真を用いた地形判読では確認できるが、現在は人工改変によりこの崖地形は失われているので、詳細な変位量等は不明である。産業技術総合研究所(2008)によると、7面上のB測線および8面上のA測線において、段丘堆積物及びそれを被覆する堆積物から、それぞれ約3千9百年-3千8百年前、約3千3百年-3千1百年前を示す14C年代値(注13)が得られている。しかし、7面の試料については、B測線の1箇所でのみ得られた段丘堆積物中の再堆積した材が示す結果である(図6)。このため、7面の年代値に関する信頼度が低いと考え、ここでは参考値とする。以上のことから、本地点における活動時期は約3千1百年前以前であった可能性がある。
 なお、産業技術総合研究所(2008)は、群列ボーリングを実施した地点から北方約1kmの地点でトレンチ調査を実施している。しかし、トレンチの壁面では断層が確認できなかったことから、この地点では掘削した場所よりも東側の扇状地の末端付近を断層が通過している可能性が高いとしている。

b)先史時代・歴史時代の活動

 十日町断層帯西部の活動と直接関係する被害地震は知られていない(宇佐美,2003)。

 以上のことから、十日町断層帯西部の最新活動時期は、約3千1百年前以前であった可能性がある。

(3)1回の変位量(ずれの量)注11

 断層の長さ(約33km)から次の松田(1975)の経験式(1)、(2)に基づいて1回の変位量を算出すると、約2.6mと求まる。

    LogL=0.6M-2.9  (1)
    LogD=0.6M-4.0  (2)

 ここで、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Dは1回の活動に伴う変位量(m)、Mは地震のマグニチュードである。

 以上のことから、1回の変位量は2-3m程度(上下成分)であった可能性がある。

(4)活動間隔

 十日町断層帯西部の活動間隔に関する直接的な資料は得られていない。
 ただし、平均上下変位速度(計算値:0.8m/千年)と1回の上下変位量(計算値:2.6m)から平均活動間隔を算出すると、3千3百年程度と求められる。
 以上のことから、本断層帯の平均活動間隔は3千3百年程度であった可能性がある。

(5)活動区間

 十日町断層帯西部は、松田(1990)の基準に基づけば、全体が1つの区間として活動した可能性がある。

(6)測地観測結果

 十日町断層帯周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果では、断層帯の周辺でほぼ東西方向の縮みが見られる。
 また、2004年9月までの5年間のGPS観測結果や、「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震」以後の2009年4月までの1年間のGPS観測結果でも、断層帯の周辺でほぼ東西方向のわずかな縮みが見られる。
 なお、「平成16年(2004年)新潟県中越地震」に伴い、小千谷観測点(小千谷市)では約27cm隆起し、守門(すもん)観測点(魚沼市)では北西方向に約21cm移動するなど本断層帯の北東方を中心とする地域で地殻変動が観測された。

(7)地震観測結果

 十日町断層帯周辺の最近約7年間の地震観測結果によると、本断層帯付近における地震発生層の下限の深さは10~15kmと推定される。本断層帯周辺で発生する地震の発震機構は、北西-南東または西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型が多い。
 なお、2004年10月23日に本断層帯の北東方で「平成16年(2004年)新潟県中越地震」(マグニチュード6.8、最大震度7)が発生し、死傷者が出るなどの被害を生じた。また、「平成16年(2004年)新潟県中越地震」の余震活動以外では、本断層帯付近および西側を中心に、最大でマグニチュード5程度の地震活動が複数発生しており、このうち一部の地震(最小でマグニチュード4.5)により、局所的な被害が生じている。

2.1.3 十日町断層帯西部の将来の活動

(1)活動区間と活動時の地震の規模

 2.1.2(5)に述べたように、十日町断層帯西部は全体が1つの区間として同時に活動する可能性がある。その場合、断層の長さが約33kmと推定されることから、前述の経験式(1)に基づくと、マグニチュード7.4程度の地震が発生する可能性があり、その際には断層近傍の地表面では、断層の西側が東側に対して相対的に2-3m程度高まる段差や撓みを生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 十日町断層帯西部では、最新活動時期が約3千1百年前以前、平均活動間隔が3千3百年程度であった可能性があることから、平均活動間隔に対する現在における地震後経過率は0.9以上となる。また、最新活動時期を十分に特定できていないことに留意する必要があるが、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された通常の活断層評価の手法(BPT 分布モデル、α=0.24)によると、今後30 年以内、50 年以内、100 年以内、300 年以内の地震発生確率は、それぞれ3%以上(注3)、5%以上、10%以上、30%以上となる。また、現在までの集積確率は40%以上となる(表2)。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが、その下限値をとっても、今後30 年の間に地震が発生する可能性が我が国の主な活断層の中では高いグループに属することとなる。表5に、これらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会, 1999)を示す(注14)。

2.2 十日町断層帯東部

2.2.1 十日町断層帯東部の位置及び形態

(1)十日町断層帯東部を構成する断層

 十日町断層帯東部は十日町市北部から同市南部にかけて分布している(図1-1)。
 十日町断層帯東部を構成する各断層の位置・形態は、活断層研究会編(1980, 1991)、太田編(1998)、新潟県地質図改訂委員会編(2000)、田中(2000)、渡辺ほか(2001)、鈴木ほか(2001)、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)などに示されている。ここでは、断層の位置・名称は、鈴木ほか(2001)、渡辺ほか(2001)にしたがった。
 十日町断層帯東部は、十日町盆地東縁断層、細尾-如来寺(にょらいじ)断層などから構成される(図1-1)。これらは、互いに近接し、走向・変位の向きを同じくする断層であることから、松田(1990)の起震断層の基準にしたがって、1つの断層帯を構成しているとみなせる。なお、活断層研究会編(1980,1991)、渡辺ほか(2001)、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)などでは、本断層帯東部の北方延長上の山本山付近に、短い断層群が示されている(図3)。これらは、西向きの撓曲変形に関係した副次的な断層と思われ、本断層帯東部とは5-6km程度離れて存在し、地質構造的にも不連続的であることから、本評価では取り扱わないこととした。また、本断層帯東部の約10km東方には、西傾斜である六日町断層帯が分布し、地下では両者の断層面が近接している可能性があるが、地下の形状等を示す資料は得られていないため詳細は不明である。そのため、ここではそれぞれ別の断層帯として評価した(図3)。なお、六日町断層帯については、別途評価を実施している(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2009)。

(2)断層面の位置・形状

 十日町断層帯東部の長さ及び一般走向は、図2に示された断層帯の両端を直線で結んで計測すると、約19km、N20°Eとなる。
 断層面の上端の深さは、地表まで変位が及んでいることから0kmとした。
 断層面の傾斜については、膨らみや背後に逆向き低断層崖を伴った西向きの撓曲崖を形成していること(太田編,1998; 田中,2000など)、また、トレンチ調査で観察された断層の性状(太田編,1998)から、東傾斜と考えられる。
 断層面下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると15km程度と推定される。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)注11

 十日町断層帯東部は、東側隆起の変位地形(鈴木ほか,2001; 渡辺ほか,2001など)や地質構造(柳沢ほか,1985など)を形成していること、上述のように、断層面は東に傾斜しているので、東側が西側に乗り上げる逆断層と考えられる。

2.2.2 十日町断層帯東部の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)

 十日町断層帯東部の平均変位速度に関する資料として以下のものがある。

 十日町市中条地点では、信濃川支流の飛渡(とびたり)川が形成した低位の扇状地面上に、南北に延びる比高4m程度の西向き低断層崖が生じている(太田編,1998; 鈴木ほか,2001; 池田ほか編,2002; 中田・今泉編,2002)。変位している扇状地面については、その正確な形成年代は分からないが、大割野 I 面相当と見なされる(新潟平野団体研究グループ,1972; 太田編,1998; 田中,2000)。太田編(1998)や田中(2000)にしたがって、大割野 I 面の離水時期を2-1万年前とすると、ここでの平均上下変位速度として0.2-0.4m/千年が導かれる。

 十日町市伊達地点では、信濃川支流の入間川が形成した低位の扇状地面上に北西向きの低断層崖が生じている(太田編,1998; 鈴木ほか,2001; 池田ほか編,2002; 中田・今泉編,2002)。太田編(1998)は、変位した地形面を大割野 I 面相当とし、その変位量を3-3.5mと見積もっている。この資料から、ここでの平均上下変位速度として0.15-0.35m/千年が導かれる。

 以上のことから、十日町断層帯東部の平均上下変位速度は、0.2-0.4m/千年程度の可能性がある。

 なお、十日町市宮栗付近や馬場(ばば)付近では、大割野 I 面や正面(しょうめん)面(離水時期はおおよそ2.5万年前とされる; 早津・新井,1981; 太田編,1998; 田中,2000)が比高10-20mに及ぶ変形を示すことがあるが、このような変形は、極めて幅が狭く、また、局所的で連続性に乏しいことから、ごく表層でのみ生じている現象の可能性もあるとみて、平均変位速度の検討資料には加えなかった。

(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動

 太田編(1998)は、十日町市馬場南地点において、大割野 I 面上に西向きの撓曲崖を認め、その基部でトレンチ調査を行った。トレンチの壁面には、礫層および砂・シルト・腐植土層からなる地層群にシルト質層からなる地塊が東から衝上している構造が認められた(図7)。トレンチの壁面西部に注目すると、Aの地層群は、の断層で変位し、複雑な断裂・変形構造を示すBの地層群を削って生じた凹みに堆積していることから、Bの地層群の堆積より後で、Aの地層群の堆積より前に断層活動があったと考えられる。Bの地層群の上部から約3千8百-3千6百年前、Aの地層群の下部から約3千4百-3千2百年前の14C年代値が得られていることから、活動時期は、約3千8百年前以後、約3千2百年前以前と推定される(注13)。
 以上のことから、十日町断層帯東部では、約3千8百年前以後、約3千2百年前以前に断層活動があったと推定される。ただし、馬場南地点付近では、対象となった断層の他にこれと並走する別の断層の分布が認められている(太田編,1998; 鈴木ほか,2001; 池田ほか編,2002)ので、上記の断層活動が、十日町断層帯東部の最新活動であったかどうかは不明である(注14)。

b)先史時代・歴史時代の活動

 十日町断層帯東部の活動を示すような被害地震の記録は報告されていない(宇佐美,2003)。

(3)1回の変位量(ずれの量)注11

 十日町断層帯東部の1回の活動に伴う変位量に関する直接的な資料は得られていない。
 ただし、断層の長さ(約19km)から前述の松田の経験式(1)、(2)に基づいて1回の変位量を算出すると、約1.5mと求まる。
 以上のことから、本断層帯の1回の変位量は1-2m程度(上下成分)であった可能性がある。

(4)活動間隔

 十日町断層帯東部の活動間隔に関する直接的な資料は得られていない。
 ただし、平均上下変位速度(計算値:0.2-0.4m/千年)と、前述により算出された1回の変位量(上下成分、計算値:1.5m)から平均活動間隔を算出すると、3千8百-7千5百年と求まる。
 以上のことから、本断層帯の平均活動間隔は4千-8千年程度の可能性がある(注14)。

(5)活動区間

 十日町断層帯東部の活動区間に関する直接的な資料は得られていない。

(6)測地観測結果

 2.1.2(6)参照

(7)地震観測結果

 2.1.2(7)参照

2.2.3 十日町断層帯東部の将来の活動

(1)活動区間と活動時の地震の規模

 十日町断層帯東部全体を1つの活動区間とした場合、前述の松田(1975)の経験式(1)、(2)に基づくと、断層帯(長さ約19km)から発生する地震の規模はマグニチュード7.0程度の可能性がある。また、このような地震が発生した場合、断層の近傍の地表面に東側隆起で1-2m程度高まる段差や撓みを生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 十日町断層帯東部の平均活動間隔は4千-8千年程度であった可能性がある。しかし、最新活動時期が特定できていないため、上述のような規模の地震が発生する長期確率を通常の評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)を用いて評価することはできない。
 地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、地震の発生確率を求めるにあたって、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしている。本断層帯では平均活動間隔が4千-8千年程度であることをもとに、ポアソン過程を適用して地震発生確率を求めると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、0.4%-0.7%、0.6%-1%、1%-2%及び4%-7%となる(表4)。
 平均活動間隔の信頼度が低く、また、値が十分に絞り込まれていないため、地震発生確率にも幅があるが、本断層帯は今後30年の間に地震が発生する可能性が我が国の主な 活断層の中ではやや高いグループに属することになる。
なお、通常の活断層評価で用いている更新過程によった場合、平均活動間隔が4千-8千年程度と求められているので、30年確率のとり得る範囲は0.001%-2%となる(注14)。

3.今後に向けて

 十日町断層帯西部では、最新活動について年代を絞り込める質の高いデータを得る必要がある。将来の活動を明確にするためには、これらについての精度よいデータを集積させるとともに、平均活動間隔を精度良く明らかにする必要がある。
 十日町断層帯東部では、最新活動を含めた過去の活動履歴や1回の変位量が明らかになっていない。また、地下構造に関する資料が不足していることから、断層の深部形状も正確に把握できていない。将来の活動を明確にするためには、これらについての精度よいデータを集積させるとともに、それぞれの活動間隔を明らかにする必要がある。なお、本断層帯とその東側に分布する六日町断層帯は、相互の位置関係および傾斜の向きから、地下では両者の断層面が近接している可能性もあるが、それぞれの断層帯の地下の断層面の位置・形状については明らかになっていない。さらに、過去の活動履歴からは、両断層帯は別々の時期に地表で変位を生じるような活動をしてきたと推定されるが、両断層帯が同時に活動する可能性も否定できない。このため、地下の断層面の形状を明らかにし、その関係について明らかにする必要がある(図1-2)。

注11: 「変位」を、1-2頁の本文及び5-7頁の表1では、一般にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは専門用語である「変位」が、本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓(たわ)みの成分」よりなる。
注12: 大山倉吉火山灰(DKP)の降下年代は、町田・新井(2003)にしたがって、約6万5千-5万5千年前とした。
注13: 炭素同位体年代については、Ramsey(1995,2001)、Reimer et al.(2004)に基づいて暦年補正し、原則として1σの範囲の数値を百年単位で四捨五入して示した。
注14: 十日町断層帯西部では、最新活動時期の上限値について、産業技術総合研究所(2008)による「約3千9百年前以後」の値を参考値としている。この値を用いると、平均活動間隔が3千3百年程度と求められているので、平均活動間隔に対する現在における地震後経過率は0.9-1.2となる。さらに地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)を用いると、今後30年以内の地震発生確率は、3%-4%となる。なお、最新活動時期の上限値が求められていないことから、通常の評価で用いている更新過程(BPT分布モデル)を用いて評価することはできないと考えた場合、ポアソン過程を適用して地震発生確率を求めると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、0.9%、2%、3%及び9%となる。また、十日町断層帯東部では、最新活動時期は特定できていないが、約3千8百年前以後、約3千2百年前以前に活動があったと推定された。また、平均活動間隔は4千-8千年程度と求められているので、この活動時期(約3千8百年前以後、約3千2百年前以前)が最新活動時期の可能性もある。その際、平均活動間隔に対する現在における地震後経過率は0.4-1.0となる。さらに、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)を用いると、今後30年以内の地震発生確率は、0.001%-2%となる。


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鈴木康弘・東郷正美・渡辺満久・金 幸隆・佐藤尚登(2001):都市圏活断層図「十日町」.国土地理院技術資料,D・1-No.388.

竹内圭史・吉川敏之・釜井俊孝(2000):「松之山温泉地域の地質」.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,76p.

田中真弓(2000):信濃川中流域,十日町盆地における河成段丘の変位からみた活褶曲と活断層の関係.第四紀研究,39,411-426.

天然ガス鉱業会・大陸棚石油開発協会(1992):「改訂版日本の石油・天然ガス資源」.520p.

宇佐美龍夫(2003):「最新版 日本被害地震総覧[416]-2001」.東京大学出版会,605p.

渡辺満久・池田安隆・宮内崇裕(1998):十日町盆地の活断層-第四紀後期の活動度-.日本地震学会講演予稿集,,P117.

渡辺満久・堤 浩之・鈴木康弘・金 幸隆・佐藤尚登(2001):都市圏活断層図「小千谷」.国土地理院技術資料,D・1-No.388.

柳沢幸夫・金子隆之・赤羽貞幸・粟田泰夫・釜井俊孝・土谷信之(2001):飯山地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,144p.

柳沢幸夫・小林巌雄・竹内圭史・立石雅昭・茅原一也・加藤碩一(1986):小千谷地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,177p.

柳沢幸夫・茅原一也・鈴木尉元・植村 武・小玉喜三郎・加藤碩一(1985):十日町地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,104p.



表5 十日町断層帯西部の将来の地震発生確率及び参考指標
項目 数値 備考
地震後経過率

今後30年以内の発生確率
今後50年以内の発生確率
今後100年以内の発生確率
今後300年以内の発生確率

集積確率
0.9以上

3%以上
5%以上
10%以上
30%以上

40%以上
発生確率及び集積確率は
震調査研究推進本部地震調
査委員会(2001)
参照。
指標(1) 経過年数
      比
指標(2)
指標(3)
指標(4)
指標(5)
8百年以上
1.3以上
3.2以上
40%以上
0.4以上
0.0003以上
地震調査研究推進本部地震
調査委員会長期評価部会
(1999)
参照。
 評価時点はすべて2010年1月1日現在。

指標(1) 経過年数 当該活断層での大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は、最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(BPT分布モデルを適用した場合の考え方)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合の考え方)。
この指標は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。値がマイナスである場合は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達していないことを示す。
十日町断層帯西部の場合、ポアソン過程を適用した場合の危険度は3千3百分の1(0.0003)以上であり、いつの時点でも一定である。
BPT分布モデルを適用した場合の危険率は評価時点で1千分の1(0.0009)以上であり、時間とともに増加する。1千分の1であれば、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達してから8百年が経過したこととなる。
指標(1) 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率を超えるまでの時間をBとした場合において、前者を後者で割った値(A/B)である。
指標(2) BPT分布モデルを適用した場合と、ポアソン過程を適用した場合の評価時点での危険率の比。
指標(3) 評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標(4) 評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の地震発生確率の値で割った値。
指標(5) ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。

付表

地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。

  ランク   分類条件の詳細
発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高く(◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。
平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。
平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性がやや低い。
平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く(▲)、発生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。


<付録>

 十日町断層帯については、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2005)により、それまで行われていた調査研究に基づいた長期評価が公表されているが、今回、産業技術総合研究所(2008)の調査によりボーリング・トレンチ調査などが実施され、過去の活動履歴などについて新たな知見が得られたことから、これに基づき検討を行い、一部改訂版としてとりまとめた。
 以下に十日町断層帯西部における改訂となった項目とその値について、前回の評価と今回の評価の対比表を示す。なお、評価にあたっては、下表に示す数値のほか、各値を求めた根拠についても改訂していることに留意されるとともに、その詳細については評価文を参照されたい。
 また、本評価では、炭素同位体年代について、Ramsey (1995,2001)、Reimer et al.(2004)に基づいた方法によって暦年補正を行っていることから、過去の活動時期の一部が前回の評価(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2002)から変更となっている。(注13参照)。このため、十日町断層帯東部では、過去の活動履歴に関する新たな資料は得られていないものの、過去の活動時期の年代に変更が生じていることに留意する必要がある。

十日町断層帯西部の評価についての新旧対比表
項目 前回の評価
(平成17年4月13日公表)
今回の評価
(平成22年3月18日公表)
過去の活動時期 不明  活動1(最新活動)
 約3千1百年前以前

平均活動間隔 2千-3千年程度 3千3百年程度
過去の活動区間 不明 断層帯全体で1区間
地震発生確率
(30年)
1%[ポアソン] 3%以上
[BPT]
地震後経過率 0.9以上

十日町断層帯東部の評価についての新旧対比表
項目 前回の評価
(平成17年4月13日公表)
今回の評価
(平成22年3月18日公表)
過去の活動時期 約3千9百年前以後、
約3千3百年前以前
に活動があったと推
定されるが、これが本
断層帯の最新活動で
あるかは不明。 
     約3千8百年前以後、約
3千2百年前以前に活
動があったと推定され
るが、これが本断層帯の
最新活動であるかは不
明。
    
   
 対比表に示した(◎、○、△)及び(a、b、c、d)については信頼度を表す。
それぞれの詳細については注5注8を参照のこと。