高田平野断層帯の長期評価について

平成21年3月18日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

 地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。
 地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、平成17年4月までに陸域の活断層として、98断層帯の長期評価を行い公表した。

 その後、「今後の重点的調査観測について」(平成17年8月30日 地震調査研究推進本部)の中で、新たに基盤的調査観測の対象とすべき12の活断層帯が挙げられた。
 今回、このうち高田平野断層帯について、現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。

 評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。



平成21年3月18日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

高田平野断層帯の評価

 高田平野断層帯は、新潟県上越地方に位置する高田平野の東西両縁部に分布する活断層帯である。ここでは、平成17年度に産業技術総合研究所によって行われた調査をはじめ、これまでに行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した。

1.断層帯の位置及び形態

 高田平野断層帯は、高田平野西縁断層帯及び高田平野東縁断層帯からなる。
 高田平野西縁断層帯は、新潟県上越市直江津北方沖から上越市を経て妙高市に至る断層帯である。長さは約30kmで、概ね南北方向に延びており、断層の西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層である(図1及び表1)。
 高田平野東縁断層帯は、新潟県上越市から妙高市に至る断層帯である。長さは約26kmで、概ね北北東−南南西方向に延びており、断層の南東側が北西側に対して相対的に隆起する逆断層である(図1及び表3)。

2.断層帯の過去の活動

(1)高田平野西縁断層帯

 高田平野西縁断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は、約0.5−1.1m/千年の可能性がある。最新の活動は、1751年(寛延4年〈宝暦元年〉)の地震であった可能性がある。また、野外調査から直接得られたデータではないが、経験則から求めた1回のずれの量と平均的なずれの速度に基づくと、平均活動間隔は2千2百−4千8百年程度の可能性がある(表1)。

(2)高田平野東縁断層帯

 高田平野東縁断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は約0.9m/千年の可能性がある。最新活動時期は、約3千5百年前以後、19世紀以前であった可能性がある。また、野外調査から直接得られたデータではないが、経験則から求めた1回のずれの量と平均的なずれの速度に基づくと、平均活動間隔は2千3百年程度の可能性がある(表3)。

3.断層帯の将来の活動

(1)高田平野西縁断層帯

 高田平野西縁断層帯は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.3程度の地震が発生すると推定される。その時、断層近傍の地表面では、断層の西側が東側に対して相対的に2−3m程度高まる段差や撓(たわ)みが生じる可能性がある(表1)。
 高田平野西縁断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりとなる。

(2)高田平野東縁断層帯

 高田平野東縁断層帯は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.2程度の地震が発生する可能性がある。その時、断層近傍の地表面では、断層の南東側が北西側に対して相対的に2m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある(表3)。
 高田平野東縁断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表4に示すとおりとなる。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる(注1)。

4.今後に向けて

 高田平野東縁断層帯では、最新活動時期が明確になっていない。将来の活動を明確にするためには、最新活動時期を含む過去の活動や1回のずれの量について精度良いデータを集積させるとともに、平均活動間隔を精度良く求める必要がある。また、断層が北方及び南方に延びる可能性もあり、断層の位置及び長さについて、より確かな資料を得る必要がある。
 高田平野断層帯の周辺では、100年程度の間隔でたびたびマグニチュード6程度の地震による被害が発生している。しかしながら、このような規模の地震は地表に明瞭な痕跡を残さないことが多いため、トレンチ調査により活動履歴を調査することが困難である。このような地震についても評価を行うことを視野に入れた調査や、その評価方法の検討を行っていく必要がある。

表1 高田平野西縁断層帯の特性
項目 特性   信頼度  
注3
根拠
注4
1.断層帯の位置・形態
(1) 断層帯を構成す
   る断層
直江津北方沖の断層(注5)、高田平野
西縁断層、高城山(たかしろやま)断層
文献3、4、6による。
(2) 断層帯の位置・
   形状
地表における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
  (北端)北緯37°17′東経138°15′
  (南端)北緯37°01′東経138°15′
 長さ
  約30km





文献3、4、6による。
位置及び長さは図2
から計測。
地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置
  地表での長さ・位置と同じ
 上端の深さ
  0km
 一般走向
  N−S

 傾斜
  西傾斜

 幅
  不明











上端の深さが0km
であることから推定。


一般走向は断層の
両端を結んだ方向
図2参照)。
文献5、6などに示
された地形、地質の
特徴による。
地震発生層の下限の
深さは15−20km程
度。
(3) 断層のずれの向
   きと種類
 西側隆起の逆断層 文献5、6などに示
された地形、地質の
特徴による。
2.断層帯の過去の活動
(1) 平均的なずれの
   速度
 約0.5−1.1m/千年(上下成分) 文献5による。
(2) 過去の活動時期 活動1 (最新活動)
 1751年(寛延4年〈宝暦元年〉)の地震

活動2(1つ前の活動とは特定できない)
 約3千9百年前以後





文献2などに示され
た資料から推定。

文献5に示された資
料から推定。
(3) 1回のずれの量
   と平均活動間隔
1回のずれの量
 2−3m程度 (上下成分)
平均活動間隔
 2千2百−4千8百年程度





断層の長さから推定。

平均的なずれの速度
と1回のずれの量から
推定。
(4) 過去の活動区間  断層帯全体で1区間 断層の位置関係、形
状等から推定。
3.断層帯の将来の活動
(1) 将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
活動区間
 断層帯全体で1区間
地震の規模
 マグニチュード7.3程度
ずれの量
 2−3m程度(上下成分)






断層の位置関係、形
状等から推定。
断層の長さから推定。

断層の長さから推定。


表2 高田平野西縁断層帯の将来の地震発生確率等
項目   将来の地震発生確率等  
注6
 信頼度 
注7
備考
 地震後経過率 (注8

 今後30年以内の地震発生確率 
 今後50年以内の地震発生確率 
 今後100年以内の地震発生確率 
 今後300年以内の地震発生確率 

 集積確率(注9
0.05−0.1

ほぼ0%
ほぼ0%
ほぼ0%
ほぼ0%

ほぼ0%
発生確率及び集積確
率は文献1による。


表3 高田平野東縁断層帯の特性
項目 特性   信頼度  
注3
根拠
注4
1.断層帯の位置・形態
(1) 断層帯を構成す
   る断層
高田平野東縁断層、箕冠山(みかぶりや
ま)断層
文献3、6による。
(2) 断層帯の位置・
   形状
地表における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
  (北東端)北緯37°12′東経138°23′
  (南西端)北緯37°00′東経138°15′
 長さ
  約26km





文献6による。
位置及び長さは図2
から計測。
地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置
  地表での長さ・位置と同じ
 上端の深さ
  0km
 一般走向
  N30°E

 傾斜
  南東傾斜30−40°(深度200m以浅)

 幅
  不明











上端の深さが0km
であることから推定。


一般走向は断層の
両端を結んだ方向
図2参照)。
文献5に示された反
射法地震探査結果か
ら推定。
地震発生層の下限の
深さは15−20km程
度。
(3) 断層のずれの向
   きと種類
 南東側隆起の逆断層 文献5、6、7などに示
された地形、地質の特
徴による。
2.断層帯の過去の活動
(1) 平均的なずれの
   速度
 約0.9m/千年(上下成分) 文献5による。
(2) 過去の活動時期  活動1(最新活動)
  約3千5百年前以後、19世紀(1847年)
  以前
 活動2(1つ前の活動)
  約5千5百年前以後




文献7による。
(3) 1回のずれの量
   と平均活動間隔
1回のずれの量
 2m程度 (上下成分)
平均活動間隔
 2千3百年程度




断層の長さから推定。

平均的なずれの速度
と1回のずれの量か
ら推定。
(4) 過去の活動区間  断層帯全体で1区間 断層の位置関係、形
状等から推定。
3.断層帯の将来の活動
(1) 将来の活動区間
   及び活動時の
   地震の規模
活動区間
 断層帯全体で1区間
地震の規模
 マグニチュード7.2程度
ずれの量
 2m程度 (上下成分)






断層の位置関係、形
状等から推定。
断層の長さから推定。

断層の長さから推定。


表4 高田平野東縁断層帯の将来の地震発生確率等
項目 将来の地震発生確率等
(注6)
信頼度
注7
備考
 地震後経過率(注8) 

 今後30年以内の地震発生確率 
 今後50年以内の地震発生確率 
 今後100年以内の地震発生確率 
 今後300年以内の地震発生確率 

 集積確率(注9) 
0.07−1.5

ほぼ0%−8%
ほぼ0%−10%
ほぼ0%−20%
ほぼ0%−60%

ほぼ0%−90%より大
発生確率及び集積
確率は文献1による。

注1: 地震調査委員会の活断層評価では、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間の地震発生確率について、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
 なお、2005年4月時点でひととおり評価を終えた98の主要断層帯のうち、最新活動時期が判明しており、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生確率を求めたものについては、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間に地震が発生する確率の割合は以下のとおりとなっている。
30年確率の最大値が0.1%未満 : 約半数
30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満 : 約1/4
30年確率の最大値が3%以上 : 約1/4
(いずれも2005年4月時点での算定。確率の評価値に幅がある場合はその最大値を採用。)
注2: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率と集積確率は以下のとおりである。
地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995年兵庫県南部地震
(M7.3)
六甲・淡路島断層帯主部
淡路島西岸区間
「野島断層を含む区間」
(兵庫県)
0.02%−8% 0.06%−80% 約1.7−約3.5
1858年飛越地震
(M7.0−7.1)
跡津川断層帯
(岐阜県・富山県)
ほぼ0%−13% ほぼ0%−
90%より大
約1.7−約3.6
1847年善光寺地震
(M7.4)
長野盆地西縁断層帯
(長野県)
ほぼ0%−20% ほぼ0%−
90%より大
約0.8−約2.5
「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。30年確率の最大値は平均活動間隔が2千3百年の場合は10%程度である。
注3: 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
  ◎:高い、○:中程度、△:低い
注4: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
  文献1:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
  文献2:地震予知総合研究振興会(2005)
  文献3:活断層研究会編(1991)
  文献4:岡村ほか(1994)
  文献5:産業技術総合研究所(2006)
  文献6:渡辺ほか(2002)
  文献7:渡辺ほか(2003b)
注5: 高田平野西縁断層帯を構成する断層のうち、本断層帯の中で高田平野西縁断層の北方にあり、岡村ほか(1994)が直江津北方沖に図示した無名の断層については、断層が分布する地域名を基に「直江津北方沖の断層」と仮称する。
注6: 評価時点はすべて2009年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を示す。なお、計算にあたって用いた平均活動間隔、最新活動時期の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
注7: 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
   a: (信頼度が)高い  b: 中程度  c: やや低い  d: 低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度
a: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。
注8: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。
注9: 前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率。



(説明)

1. 高田平野断層帯に関するこれまでの主な調査研究

 高田平野断層帯について、辻村(1942)は丘陵と平野の境界が直線的に連続することから、平野東縁の一部を「岩の原断層崖」、平野の西縁の一部を「鉢巻山断層崖」として示した。その後、高田平野団体研究グループ(1981)などは主に魚沼層群相当層の地層変位や断層露頭に基づき複数の断層を見いだした。中村(1982a,b)は平野南東方に新第三紀層を変位させる断層を認め、この断層が段丘堆積物を変位させている可能性を指摘した。活断層研究会編(1980,1991)は平野の東縁の一部に菅原断層、平野の南東方に箕冠山(みかぶりやま)断層、平野の西方に高城山(たかしろやま)断層を示している。渡辺ほか(1998)は従来から指摘されていた平野西縁における海成段丘面(平山面)の傾動を断層運動によるものと考え、高田平野西縁の活断層を明らかにした。藤本(1999)は平野両縁の平野丘陵境界における活断層の存在を指摘している。渡辺ほか(2002)は大縮尺空中写真を用いた詳細な判読に基づいた研究により、平野東西両縁にほぼ連続して延びる活断層の分布を明らかにし、平野東縁の断層を高田平野東縁断層、平野西縁の断層を高田平野西縁断層と命名した。
 本断層帯の詳しい位置は、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)及び渡辺ほか(2002)に示されている。また、西縁延長上の海域においては、岡村ほか(1994)によって第四紀の活動を示す断層が図示されている。
 本断層帯の活動履歴に関する調査としては、渡辺ほか(2003a,b)が平野東縁に分布する断層を対象とした地形・地質調査を実施し、本断層帯の活動履歴を検討しているほか、産業技術総合研究所(2006)が平野東西両縁の断層帯を対象としたトレンチ調査などを実施し、本断層帯の過去の活動などについての新たな知見を得ている。

2.高田平野断層帯の評価結果

 高田平野断層帯は、高田平野の西縁に位置する西側隆起の断層帯と東縁に位置する東側(南東側)隆起の断層帯からなる(図1図2)。
 高田平野の東西両縁に分布する本断層帯は、その南端において地表ではほぼ連続して分布するが、全体的に見て高田平野を挟んで向かい合う位置関係にあること、断層帯の中点における相互の距離が5km以上離れていることから、別の起震断層を構成すると判断した。さらに、両断層帯は、上述のように、その南端においては地表では5km以内に接近し、ほぼ連続して分布するが、変位(ずれ)(注10)の向きが逆であり、断層面の傾斜を考慮すると地下深部では断層面が離れていくと考えられることからも別の断層帯を構成すると判断できる。したがって、ここでは、平野西縁の断層帯を高田平野西縁断層帯、平野東縁の断層帯を高田平野東縁断層帯として、それぞれについて評価を行った。

2.1 高田平野西縁断層帯

2.1.1 高田平野西縁断層帯の位置及び形態

(1)高田平野西縁断層帯を構成する断層

 高田平野西縁断層帯は新潟県上越市直江津北方沖から上越市を経て妙高市に至る断層帯である(図1図2)。
 本断層帯は、直江津北方沖の断層(注5)及び高田平野西縁断層、高城山断層から構成される。
 本断層帯を構成する各断層の位置・形態は、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)、渡辺ほか(2002)などで概ね一致し、海域については岡村ほか(1994)によって示されている。ここでは、各断層の位置は活断層研究会編(1991)、岡村ほか(1994)、渡辺ほか(2002)に、また断層の名称は活断層研究会編(1991)、渡辺ほか(2002)によった。
 このうち、高田平野西縁断層と走向・傾斜を同じくし、北方延長上の海域に認められる直江津北方沖の断層は、高田平野西縁断層との間に見かけ上6km程度の隔たりがあるが、微小地震活動が陸域から海域へ連続的に認められること、周辺の地質構造が類似しており、陸域から海域へと断層の連続性が想定できることなどから、ここでは一連の断層帯として評価することとした。

(2)断層面の位置・形状

 高田平野西縁断層帯の長さと一般走向は、断層帯の北端と南端を直線で結ぶと約30km、N−Sとなる(図2)。
 断層面上端の深さは、断層変位が地表に達していることから0kmとした。
 断層面の傾斜は、後述のとおり西傾斜と推定される。
 断層面の下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると15−20km程度と推定されるが、地下深部の断層面の詳細な傾斜が明らかでないため、断層面の幅は不明である。

(3)断層の変位の向き (ずれの向き)

 高田平野西縁断層帯は、東へ撓み下がる変位地形(渡辺ほか,2002など)やトレンチ壁面などに認められる地質構造(産業技術総合研究所,2006)などの特徴から、西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層であると考えられる。

2.1.2 高田平野西縁断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度 (平均的なずれの速度)

 産業技術総合研究所(2006)は、高田平野西縁断層帯の南端付近に位置する妙高市小出雲(おいずも)においてボーリング調査を実施し、火砕流堆積物などの堆積面の高度差と形成年代から平均上下変位速度を算出した。これによると、撓曲変形帯を挟んだ堆積面の高度差は、約11−13万年前に形成された渋江川火砕流堆積物の堆積面で約60m、約3−4万年前に形成された二本木岩屑流堆積物の堆積面で約33mと求められている(図3)。したがって、平均変位速度は、それぞれ0.5m/千年及び0.8−1.1m/千年と求められる。ただし、求められた値は、堆積物堆積時の起伏が不明であることや、沈降側が浸食されている可能性があること、それぞれの堆積面の勾配を考慮していない値であることに留意する必要がある。

 以上のことから、多少の不確かさを伴うが、本断層帯の平均上下変位速度は、約0.5−1.1m/千年の可能性があると判断した。

(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動

・宮内地点(トレンチ、ボーリング調査)
 高田平野西縁断層帯の南部に位置する妙高市宮内では、山地と平野境界付近に幅狭く分布する高位段丘が東に撓曲し、その基部に断層が推定されている(渡辺ほか,2002など)。産業技術総合研究所(2006)は、中位段丘面上に認められる西側上がりの低崖を対象として、トレンチ調査及びボーリング調査を実施した。
 トレンチ壁面のスケッチに基づくと、段丘を構成するシルト層とシルト質砂層を撓曲変形させ、低崖基部へと連続する西傾斜の逆断層と、これを覆う表土が確認されることから、段丘面形成後、表土堆積前に活動があったと推定される(産業技術総合研究所,2006)。段丘構成層の最上位にあたるローム層を削り込んだ部分に含まれる腐植から約1万年前を示す14C年代値(注11)が得られていることから、その活動時期は、約1万年前以後と推定される。
 なお、断層を覆う表土からも年代値が得られているが、表土は人工撹乱を受けている可能性があること(産業技術総合研究所,2006)から、ここでは採用しないこととした。
  また、トレンチ調査地点の平野側で実施したボーリング調査の結果、段丘構成層は沖積面下でさらに東へ傾き下がることから、トレンチ調査地点は撓曲構造の途中にあると判断され、トレンチ壁面で認められた逆断層は、より平野側に位置する断層が作る撓曲構造から派生した断層であると考えられている(産業技術総合研究所,2006)。

以上のことから、本地点の活動時期は、約1万年前以後と推定される。

・小出雲地点(トレンチ、ボーリング調査)
 高田平野西縁断層帯の南端付近の妙高市小出雲では、複数の火砕流堆積物や岩屑流堆積物の堆積面を南側上がりに変位させる撓曲崖において、産業技術総合研究所(2006)によりトレンチ及びボーリング調査が実施されている。トレンチ壁面には、北へ約40°傾斜した渋江川火砕流堆積物と、それを傾斜不整合で覆う未固結の土石流堆積物及びその上位に無層理の細砂−シルト層が認められる(図4)。
 トレンチ南東壁面のスケッチに基づくと、北へ傾いた渋江川火砕流堆積物の層理面と平行な滑り面を持つ平野(北東)側上がりの逆断層が認められ、断層は上位の土石流堆積物や細砂−シルト層を変位させ、これらが人工撹乱を受けた表土に覆われている。このことから、細砂−シルト層堆積後、表土堆積前に最新活動があったと推定される。
 細砂−シルト層からは、約3千9百−3千7百年前を示す14C年代値が得られていることから、その活動時期は、約3千9百年前以後と推定される。
 なお、産業技術総合研究所(2006)は、トレンチ調査で確認された断層面が層理面と平行であり、断層運動を考慮すると副次的な断層であると判断できることから、ここで認められた活動時期が本断層帯の最新活動時期を示しているかどうかは不明であるとしている。

 以上のことから、本地点の活動時期は、約3千9百年前以後と推定される。

b)先史時代・歴史時代の活動

 高田平野断層帯の周辺に被害をもたらした歴史地震としては、1502年(文亀元年)の地震、1666年(寛文5年)の地震、1751年(寛延4年〈宝暦元年〉)の地震及び、1847年(弘化4年)の地震などの記録がある(いずれも宇佐美,2003)。
 1502年(文亀元年)の地震では、越後の国府(上越市直江津駅付近)で多数の潰家や死者が出る被害があった。地震の規模はマグニチュード6.5−7.0と推定されている(宇佐美,2003)。
 1666年(寛文5年)の地震では、高田城本丸や城下の民家に被害があり、これらの状況から宇佐美(2003)はその規模をマグニチュード6・3/4とした。その後、地震予知総合研究振興会(2005)は、後年の地震による被害状況などを参考に再解析を行った結果、この地震の規模をマグニチュード6.5程度、震央の位置を高田平野の中央部とした。
 1751年(寛延4年〈宝暦元年〉)の地震は「名立(なだち)崩れ」と呼ばれており、多くの崖崩れや山崩れのほか、高田城などが大きな被害を受けていることから、宇佐美(2003)は地震の規模をマグニチュード7.0−7.4としている。その後、地震予知総合研究振興会(2005)は被害の分布とこの地域では揺れが大きくなりやすいことなどを考慮して再解析を行った結果、地震の規模をマグニチュード7.0程度、震源位置を直江津沖の海底下とした(図5)。
 1847年(弘化4年)の地震は、5日前に善光寺地震(マグニチュード7.4:宇佐美,2003)が発生しているため地震被害の区別が難しいが、頸城地方(上越地方)では潰家や死傷者が出ている(宇佐美,2003)。地震の規模は、宇佐美(2003)ではマグニチュード6・1/2±1/4、地震予知総合研究振興会(2005)ではマグニチュード6.4−6.6と推定している。また、宇佐美(2003)は、震源を高田平野北部の海岸近くに推定したが、地震予知総合研究振興会(2005)は、妙高から野尻湖に山崩れがあることを重視して、震源を高田平野南部の山際に推定した。
 これらの地震のうち1751年(寛延4年〈宝暦元年〉)の地震は、被害状況などから、高田平野西縁断層帯が活動した可能性がある。この地震について、歴史記録に基づいて推定した震度分布(図5:地震予知総合研究振興会,2005;都司・行谷,私信)と、高田平野西縁断層帯の活動を想定した予測震度分布(図6注12)は対応がよく、1751年(寛延4年〈宝暦元年〉)の地震は、高田平野西縁断層帯から想定される地震と、その規模、震源の位置がほぼ同じであったと考えられることから、高田平野西縁断層帯の活動によるものであったと判断した。
 また、高田平野断層帯付近では、1847年(弘化4年)の地震以後に被害地震の記述はない(宇佐美,2003)。

 以上の検討結果から、本断層帯の最新活動は1751年(寛延4年〈宝暦元年〉)の地震であった可能性がある。また、これに先立つ活動は約3千9百年前以後であったと推定されるが、この活動が最新活動の1つ前の活動かどうかは特定できない。

(3)1回の変位量 (ずれの量)

 高田平野西縁断層帯では、1回の活動に伴う変位量を示す直接的な資料は得られていない。
 しかし、本断層帯の長さは約30kmであることから、以下に示す松田(1975)の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約2.4mと計算される。

     Log L = 0.6M − 2.9    (1)
     Log D = 0.6M − 4.0    (2)

 ここで、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Mはマグニチュード、Dは1回の活動に伴う変位量(m)である。

 以上のことから、本断層帯の1回の活動に伴う上下変位量は2−3m程度であった可能性がある。

(4)活動間隔

 高田平野西縁断層帯の活動間隔に関する直接的な資料は得られていない。ただし、平均上下変位速度(約0.5−1.1m/千年)と、前述により算出された1回の変位量(計算値2.4m)から平均活動間隔を算出すると2千2百−4千8百年と求められる。
 以上のことから、本断層帯の平均活動間隔は2千2百−4千8百年程度の可能性がある。

(5)活動区間

 高田平野西縁断層帯は断層がほぼ連続的に分布することから、松田(1990)の基準に基づけば全体が1つの区間として活動したと推定される。

(6)測地観測結果

 高田平野断層帯周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果や、2004年9月までの約7年間のGPS観測結果では、東西方向の縮みが見られる。

(7)地震観測結果

 高田平野断層帯周辺の最近の地震観測結果によれば、断層帯周辺で微小な地震活動があり、地震発生層の下限は15−20km程度である。

2.1.3 高田平野西縁断層帯の将来の活動

(1)将来の活動区間及び地震の規模

 2.1.2(5)で述べたように、高田平野西縁断層帯は全体が1つの区間として同時に活動すると推定される。この場合、長さが約30kmであることから、前述の経験式(1)を用いて地震の規模を求めると、マグニチュード7.3程度と推定される。また、このような地震が発生した場合、前述の経験式(2)を用いて1回の変位量を求めると、断層近傍の地表面では、断層の西側が東側に対して相対的に2−3m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 高田平野西縁断層帯の平均活動間隔は2千2百−4千8百年程度で、最新活動は1751年(寛延4年〈宝暦元年〉)の地震であった可能性があることから、平均活動間隔に対する現在における地震後経過率は、0.05−0.1となる。また、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)を用いると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率、現在までの集積確率は、いずれもほぼ0%となる。表5にこれらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。

2.2 高田平野東縁断層帯

2.2.1 高田平野東縁断層帯の位置及び形態

(1)高田平野東縁断層帯を構成する断層

 高田平野東縁断層帯は、新潟県上越市から妙高市に至る断層帯である(図1図2)。
 本断層帯は、高田平野東縁断層、箕冠山断層から構成される。高田平野東縁断層の北部区間と南部区間は上越市三和区付近で左(杉型)雁行配列し、両区間には約4kmの不連続区間が認められる。
 本断層帯を構成する各断層の位置・形態は、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)、渡辺ほか(2002)などで概ね一致する。ここでは、各断層の位置は渡辺ほか(2002)に、名称は活断層研究会編(1991)、渡辺ほか(2002)によった。
 なお、竹内・加藤(1994)及び柳沢ほか(2001)が高田平野東縁断層帯の南方及び南東方に示した山越断層及び木成(こなり)断層については、中村(1982a,b)及び高野ほか(2003)によって段丘面の傾動などを根拠に活断層である可能性が指摘されている。しかし、傾動を示した詳細位置が不明であり、その確からしさを判断することができないため、これらの断層は評価の対象には含めないこととした。

(2)断層面の位置・形状

 高田平野東縁断層帯の長さと一般走向は、断層帯の北東端と南西端を直線で結ぶとそれぞれ約26km、N30°Eとなる(図2)。
 断層面上端の深さは、断層による変位が地表に認められることから0kmとした。
 断層面の傾斜は、反射法地震探査結果(産業技術総合研究所,2006)から、深度200m以浅では30−40°の南東傾斜と推定される(図7)。
 断層面の下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると15−20km程度と推定されるが、地下深部の断層面の詳細な傾斜が明らかでないため、断層面の幅は不明である。

(3)断層の変位の向き (ずれの向き)

 高田平野東縁断層帯は、北西へ撓み下がる変位地形(渡辺ほか,2002など)や地質構造(産業技術総合研究所,2006)などの特徴や、前述の反射法地震探査結果から、南東側が北西側に対して相対的に隆起する逆断層であると考えられる。

2.2.2 高田平野東縁断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度 (平均的なずれの速度)

 産業技術総合研究所(2006)は、高田平野東縁断層帯の北部付近に位置する上越市青野において、河成段丘面に変位を与えた撓曲帯を挟んで実施した複数のボーリング調査に基づき、本断層帯の平均変位速度を算出した。これによると、約7千6百−7千5百年前の14C年代値を示す試料を含む腐植質層(P3)に6.5mの高度差が認められることから、本地点の平均上下変位速度を約0.9m/千年と求めている(図7)。ただし、ここで得られた値は、幅の狭い範囲のボーリング地点間の値であるため、撓曲帯全体を表していない可能性もある。

 以上のことから、多少の不確かさを伴うが、本断層帯の平均上下変位速度は約0.9m/千年の可能性があると判断した。

(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動

・青野地点(ジオスライサー調査)
 前述の上越市青野において、渡辺ほか(2003b)は、低位河成段丘面に形成されている高度差約1.5mの撓曲崖を横断するようにジオスライサー調査を実施している(図10)。低下側では、深度約0−2mの範囲で約3千5百年前−12世紀の年代値を示す腐植層(h3−h1)が認められている。本地点の低位河成段丘面に見られる撓曲変形は、本地域における最も若い地形面の変形であることから、これが最新活動に伴うものであり、その時期は約3千5百年前以後であったとしている(渡辺ほか,2003b)。また、隆起側の最下部には、約5千5百−4千9百年前の年代値を示す腐植層(h4)が認められ、h4層の変位量は地形に認められる高度差(約1.5m)の2倍程度に達することから、h4層堆積以後に2回の活動があったとしている(渡辺ほか,2003b)。

 以上のことから、本地点の最新活動時期は約3千5百年前以後、1つ前の活動は約5千5百年前以後であった可能性がある。

 なお、渡辺(2006)は、前述の渡辺ほか(2003b)による上越市青野でのジオスライサー調査に4地点での掘削を追加し、地震発生層準の詳細な検討を行っている。その結果、約5千5百年前以後に3回の活動が認められ、最新活動時期が16世紀以後、1つ前の活動が約4千9百−2千8百年前、2つ前の活動が約5千5百−4千9百年前とされているが、根拠となる図等が示されておらず、信頼度を評価することができないため、ここでは参考扱いとして紹介するにとどめる。

b)先史時代・歴史時代の活動

 2.1.2(2)b)で述べたとおり、この地域では、地震による被害の記録が数多く残されている。
 また、高田平野断層帯付近では、1847年(弘化4年)の地震以後に被害地震の記述はない(宇佐美,2003)ことから、1847年以降に高田平野東縁断層帯は活動していないと考えられる。

 以上の検討結果から、本断層帯の最新活動時期は約3千5百年前以後、19世紀(1847年)以前、1つ前の活動時期は約5千5百年前以後であった可能性がある。

(3)1回の変位量(ずれの量)

 渡辺ほか(2003b)は、上越市青野の地表面の変位量(約1.5m)が最新活動に伴って生じたものとしている。
 産業技術総合研究所(2006)は、上越市青野での地形測量の結果、地表面に約2.5mの高度差が認められることから、高田平野東縁断層帯の1回の活動に伴う上下変位量を約2.5mと求めている(図7)。ただし、求められた値は、堆積面の勾配について考慮していないこと、撓曲帯全体の変形を表していない可能性もあることに留意する必要がある。
 さらに、本断層帯の長さが約26kmであることから、前述の経験式(1)及び(2)に基づくと、1回の活動に伴う変位量は約2.1mと計算される。

 以上のことから、本断層帯の1回の活動に伴う上下変位量は2m程度であった可能性がある。

(4)活動間隔

 高田平野東縁断層帯の活動間隔に関する直接的な資料は得られていない。ただし、平均上下変位速度(約0.9m/千年)と、前述により算出された1回の変位量(計算値2.1m)から平均活動間隔を算出すると2千3百年と求められる。
 以上のことから、本断層帯の平均活動間隔は2千3百年程度の可能性がある。

(5)活動区間

 高田平野東縁断層帯は、松田(1990)の基準に基づけば、全体が1つの区間として活動したと推定される。

(6)測地観測結果

 2.1.2(6)参照。

(7)地震観測結果

 2.1.2(7)参照。

2.2.3 高田平野東縁断層帯の将来の活動

(1)活動区間及び活動時の地震の規模

 2.2.2(5)に述べたように、高田平野東縁断層帯は全体が1つの区間として同時に活動すると推定される。この場合、長さが約26kmであることから、前述の経験式(1)を用いて地震の規模を求めると、マグニチュード7.2程度の可能性がある。また、このような地震が発生した場合、前述の経験式(2)を用いて1回の変位量を求めると、断層近傍の地表面では、断層の南東側が北西側に対して相対的に2m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 高田平野東縁断層帯の平均活動間隔は2千3百年程度で、最新活動時期は約3千5百年前以後、19世紀以前と求められていることから、平均活動間隔に対する現在における地震後経過率は、0.07−1.5となる。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率はそれぞれほぼ0%−8%、ほぼ0%−10%、ほぼ0%−20%、ほぼ0%−60%となり、現在までの集積確率はほぼ0%−90%より大となる。表6にこれらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。本評価で得られた将来の地震発生確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。

3.今後に向けて

 高田平野東縁断層帯では、最新活動時期が明確になっていない。将来の活動を明確にするためには、最新活動時期を含む過去の活動や1回のずれの量について精度良いデータを集積させるとともに、平均活動間隔を精度良く求める必要がある。また、渡辺ほか(2002)で示された資料において、図の端まで断層が達していることから、さらに北方及び南方に延びる可能性もあり、断層の位置及び長さについて、より確かな資料を得る必要がある。
 高田平野断層帯の周辺では、いくつかのマグニチュード6程度の被害地震の記録が残されており、それらによると、高田平野では100年程度の間隔でたびたび被害を受けてきている。歴史地震との対応を明確にすることは、将来の地震発生の可能性を精度良く評価するために極めて有効であることから、これらの活動履歴を明らかにする必要があるが、このような規模の地震は地表に明瞭な痕跡を残さないことが多いため、トレンチ調査により活動履歴を調査することが困難である。今後は地形地質的調査や古文書調査等により、最新活動時期と活動区間を明確にするなど、地表での痕跡を見つけにくい地震についても評価を行うことを視野に入れた調査や、その評価方法の検討を行っていく必要がある。

注10: 「変位」を、1−2ページの本文、5−8ページの表1では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは専門用語である「変位」が本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と切断を伴わない「撓(たわ)みの成分」よりなる。
注11: 炭素同位体年代については、Ramsey(1995,2001)、Reimer et al.(2004)に基づいて暦年較正し、原則として1σの範囲の数値で示した。このうち、2,000年前よりも新しい年代値は世紀単位で示し、2,000年前よりも古い年代値については、百年単位で四捨五入して示した。
注12: 予測震度分布を求めるにあたって設定した断層モデルのパラメータは以下のとおり。
幅:18km、傾斜:45°、上端の深さ:5km




文 献

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活断層研究会編(1980):「日本の活断層−分布図と資料−」.東京大学出版会,363p.

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表5 高田平野西縁断層帯の将来の地震発生確率及び参考指標
項目 数値 備考
地震後経過率

今後30年以内の発生確率
今後50年以内の発生確率
今後100年以内の発生確率
今後300年以内の発生確率

集積確率
0.05−0.1

ほぼ0%
ほぼ0%
ほぼ0%
ほぼ0%

ほぼ0%
発生確率及び集積確率は
地震調査研究推進本部地
震調査委員会(2001)参照。
指標(1) 経過年数
       比
指標(2)
指標(3)
指標(4)
指標(5)
マイナス3千1百年−マイナス1千3百年
0.08−0.2
ほぼ0
ほぼ0%
ほぼ0
0.0002−0.0005
地震調査研究推進本部地
震調査委員会長期評価部
会(1999)参照。


表6 高田平野東縁断層帯の将来の地震発生確率及び参考指標
項目 数値 備考
地震後経過率

今後30年以内の発生確率
今後50年以内の発生確率
今後100年以内の発生確率
今後300年以内の発生確率

集積確率
0.07−1.5

ほぼ0%−8%
ほぼ0%−10%
ほぼ0%−20%
ほぼ0%−60%

ほぼ0%−90%より大
発生確率及び集積確率は
地震調査研究推進本部地
震調査委員会(2001)参照。
指標(1) 経過年数
       比
指標(2)
指標(3)
指標(4)
指標(5)
マイナス1千4百−1千9百年
0.1−2.2
ほぼ0−6.4
ほぼ0%−90%より大
ほぼ0−0.8
0.0004
地震調査研究推進本部地
震調査委員会長期評価部
会(1999)参照。
評価時点はすべて2009年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を、「ほぼ0」は10−5未満の数値を示す。なお、計算にあたって用いた平均活動間隔、最新活動時期の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。

指標(1) 経過年数 当該活断層での大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は、最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(BPT分布モデルを適用した場合の考え方)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合の考え方)。
この指標は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。値がマイナスである場合は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達していないことを示す。高田平野東縁断層帯の場合、ポアソン過程を適用した場合の危険率は、2千3百分の1(0.0004)であり、いつの時点でも一定である。
高田平野東縁断層帯では、BPT分布モデルを適用した場合の危険率は評価時点で10万分の1以下−4百分の1(ほぼ0−0.003)であり、時間とともに増加する。10万分の1以下であれば、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達するには今後1千4百年要するが、4百分の1であればBPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達してから既に約1千9百年経過していることになる。
指標(1) 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率を超えるまでの時間をBとした場合において、前者を後者で割った値(A/B)である。
指標(2)
BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の評価時点での危険率の比。
指標(3)
評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標(4)
評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の地震発生確率の値で割った値。
指標(5)
ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。



付表

地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。

  ランク   分類条件の詳細
発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高く(◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。
平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。
平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性がやや低い。
平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く(▲)、発生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。