平成19年9月10日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2007年8月の地震活動の評価


1.主な地震活動

○ 8月2日にサハリン西方沖〔サハリン南部付近〕でマグニチュード(M)6.4の地震が発生した。

○ 8月13日頃から、九十九里浜付近〔千葉県東方沖〕で、16日のM5.3を最大とする地震活動があった。また、18日のM4.8の地震により、最大震度5弱を観測した。

○ 8月16日にペルー沿岸でM8.0の地震が発生し、日本の太平洋沿岸全域で弱い津波を観測した。 補足説明へ

2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

○ 8月26日に北海道東方沖の深さ約50kmでM5.4の地震が発生した。発震機構は北西―南東方向に圧力軸を持つ型であり、太平洋プレート内部で発生した地震である。

○ 8月22日に渡島支庁東部の深さ約120kmでM5.4の地震が発生した。発震機構は概ね南北方向に圧力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。 補足説明へ

(2)東北地方

目立った活動はなかった。 補足説明へ

(3)関東・中部地方

○ 8月13日頃から、九十九里浜付近〔千葉県東方沖〕で、16日のM5.3を最大とするやや活発な地震活動があった。また、18日のM4.8の地震により、最大震度5弱を観測した。これらの地震の発震機構は概ね北北西―南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界付近で発生した地震と考えられる。また、この地震活動と同時期に房総半島で地殻変動が観測された。この領域ではやや活発な地震活動がスロースリップと同期して発生しており、最近では1996年や2002年にも発生している。今回も、この地震活動と同時期にスロースリップが発生したものと思われる。このスロースリップの規模はMw(モーメントマグニチュード)6.4程度であったと推定される。

○ 7月16日に発生した平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の余震活動は減衰してきている。GPS観測結果によると、震源域周辺で余効変動が観測されている。

○ 東海地方のGPS観測結果等には特段の変化は見られない。 補足説明へ

(4)近畿・中国・四国地方

目立った活動はなかった。 補足説明へ

(5)九州・沖縄地方

○ 沖縄本島北西沖で8月1日にM6.1、7日にM6.3の地震が発生した。発震機構は共に北西―南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型であった。

○ 8月9日に沖永良部島おきのえらぶじま付近〔沖縄本島近海〕の深さ約45kmでM5.1の地震が発生した。発震機構は西北西―東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であり、フィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震と考えられる。 補足説明へ

(6)その他の地域

○ 8月2日にサハリン西方沖〔サハリン南部付近〕でM6.4の地震が発生した。発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。

○ 8月16日にペルー沿岸でM8.0の地震が発生し、日本の太平洋沿岸全域で弱い津波を観測した。ペルー沿岸では2001年6月24日にもM8.2の地震が発生し、同程度の津波を観測している。 補足説明へ

補足

○ 9月4日に千島列島の深さ約130kmでM6.3の地震が発生した。

○ 9月7日に台湾付近でM6.5の地震が発生した。

注:〔 〕内は気象庁が情報発表に用いた震央地域名である。


2007年8月の地震活動の評価についての補足説明

平成19年9月10日
地震調査委員会

1 主な地震活動について

2007年8月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
 M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ125回(7月は93回)および21回(7月は17回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は3回で、2007年は8月までに17回発生している。

(参考)M4.0以上の月回数73回(1996−2005年の10年間の中央値)、
M5.0以上の月回数9回(1976−2005年の30年間の中央値)、
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1926−2005年の80年間の平均値)

2006年8月以降2007年7月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。

− 千島列島東方 2006年11月15日M7.9
− 千島列島東方 2007年1月13日M8.2
− 能登半島地震 2007年3月25日M6.9(深さ約10km)
− 三重県中部 2007年4月15日M5.4(深さ約15km)
− 宮古島北西沖 2007年4月20日M6.3,M6.7,M6.1などの地震活動
− 新潟県中越沖地震 2007年7月16日M6.8(深さ約10km)

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2 各地方別の地震活動

(1)北海道地方

「8月26日に北海道東方沖の深さ約50kmでM5.4の地震が発生した。発震機構は北西―南東方向に圧力軸を持つ型であり、太平洋プレート内部で発生した地震である。」
 この地震は平成6年(1994年)北海道東方沖地震の余震域内で発生した。

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(2)東北地方

東北地方では特に補足する事項はない。

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(3)関東・中部地方

「7月16日に発生した平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の余震活動は減衰してきている。」
 緊急調査観測における地震波探査によると、震源域の周辺の浅い領域で、複数の複雑な断層構造が見られた。

「東海地方のGPS観測結果等には特段の変化は見られない。」:
 (なお、これは、9月1日に開催された地震防災対策強化地域判定会委員打合せ会における見解(参考参照)と同様である。)

 (参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成19年9月1日気象庁地震火山部)

「現在のところ、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていません。
全般的には顕著な地震活動はありません。静岡県中部ではプレート内で通常より活動レベルが低く、地殻内ではやや高い状態になっていますが、その他の地域では概ね平常レベルです。
東海地域及びその周辺の地殻変動には注目すべき特別な変化は観測されていません。」

−8月31日に静岡県西部の深さ約35kmでM4.3の地震が発生した。発震機構は東西方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、フィリピン海プレート内部で発生した地震である。

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(4)近畿・中国・四国地方

近畿・中国・四国地方では特に補足する事項はない。

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(5)九州・沖縄地方

九州・沖縄地方では特に補足する事項はない。

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(6)その他の地域

「8月2日にサハリン西方沖〔サハリン南部付近〕でM6.4の地震が発生した。発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。」
 米国海洋大気庁(NOAA)によると、この地震に伴い、サハリン南部で弱い津波を観測した。北海道の日本海沿岸とオホーツク海沿岸でも潮位変動が観測され、これらは地震による津波の到達前に確認され,大きな波高値を示していた。当時、観測データに基づき津波予報(津波注意報)が発表されたが、気圧変動などの観測データを見ると、これは主に気象擾乱によって励起されたものと考えられる。

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参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
 @M6.0以上または最大震度が4以上のもの。A内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。B海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。

参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
 1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
 2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
 3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。