平成19年11月21日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

サロベツ断層帯の長期評価について


 地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。
 地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、平成17年4月までに陸域の活断層として、98断層帯の長期評価を行い公表した。

 その後、「今後の重点的調査観測について」(平成17年8月30日 地震調査研究推進本部)の中で、新たに基盤的調査観測の対象とすべき12の活断層帯が挙げられた。
 今回、このうちサロベツ断層帯について、現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。

 評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。




平成19年11月21日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

サロベツ断層帯の評価

 サロベツ断層帯は、北海道北部の宗谷丘陵西縁に分布する活断層帯である。ここでは、平成17年度に産業技術総合研究所によって行われた調査をはじめ、これまで行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した。

1.断層帯の位置及び形態

 サロベツ断層帯は、北海道天塩郡豊富町(とよとみちょう)から同郡幌延町(ほろのべちょう)を経て、同郡天塩町(てしおちょう)に至る断層帯である。全体の長さは約44kmで、概ね北北西−南南東方向に延びる。なお、本断層帯に認められる地表の変位地形は、地下に伏在する東傾斜の断層のずれによる褶曲の成長の結果生じたものと考えられることから、本評価においては、個々の変位地形についてではなく、推定される地下の伏在断層を評価することとした。本断層帯は、東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層と推定される(図1図2及び表1)。

2.断層帯の過去の活動

 サロベツ断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は、0.7m/千年以上であった可能性がある。過去の活動時期は、約5千1百年前以後、約4千5百年前以前であった可能性があるが、これが最新活動であるかどうかは不明である。平均活動間隔は、約4千−8千年であった可能性がある(表1)。

3.断層帯の将来の活動

 サロベツ断層帯は、断層帯全体が1つの区間として活動する可能性がある(表1)。サロベツ断層帯では、マグニチュード7.6程度の地震が発生する可能性があり、その際に断層帯近傍の地表面では、3−4m程度の隆起が生じる可能性がある(表1)。サロベツ断層帯では、最新活動時期を十分特定できてはいないが、少なくとも約5千1百年前以後に最新活動があった可能性があることから、通常の活断層評価の手法により最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する確率を求め、表2に示した。本評価で得られた地震発生の確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる(注1)。

4.今後に向けて

 サロベツ断層帯で認められる変位地形は、いずれも地下に伏在する逆断層のずれに伴う褶曲の成長と、これに伴う隆起の結果形成されたものと考えられる。本評価では、断層面の形状を評価するにあたり、既存の反射法弾性波探査断面の解析結果などを用いて、地下の褶曲構造も考慮した。しかし南北への延長の可能性、特に南側の更岸背斜への延長の可能性については今後の検討が必要である。また、本断層帯の南北には、それぞれ海底に延びる活構造が知られており、それらとの関連性について検討する必要がある。
 本断層帯では、最新活動時期を特定できていないため、将来における地震発生の可能性について十分な検討ができない段階にある。よって、過去の活動履歴に結びつく資料を蓄積していく必要がある。

表1 サロベツ断層帯の特性
項  目 特  性   信頼度  
注3
根  拠
注4
1.断層帯の位置・形態
  (1)断層帯を構成する
   断層
サロベツ原野周辺に伏在する断層、
南更岸(みなみさらきし)の断層
  文献4、5による。
  (2) 断層帯の位置・形
   状
地表における断層帯の位置・形状
断層帯の位置
 (北端)北緯45°13′東経141°41′
 (南端)北緯44°49′東経141°47′
長さ
 約44km







文献4、5による。位置
図2から計測。

海岸線に平行な方向に
投影して計測。
地下における断層面の位置・形状
長さ
 地表での長さと同じ
上端の位置
 (北端)北緯45°12′ 東経141°34′
 (南端)北緯44°49′ 東経141°47′
上端の深さ
 2−7km
一般走向
 N20°W
傾斜
 主として低角度東傾斜、深部では不明(大
 曲断層の深部に連続する可能性もある)

 不明











文献2、6、7に示された
反射法弾性波探査結果
などから推定。位置は
図2から計測。









地震発生層の下限の深
さは25km程度。
  (3)断層のずれの向
   きと種類
東側隆起の逆断層
文献7などによる。
2.断層帯の過去の活動
  (1)平均的なずれの
   速度
 0.7m/千年以上 (上下成分)
文献7による。
  (2)過去の活動時期 活動1 (最新活動とは特定できない)
 約5千1百年前以後、約4千5百年前以前
活動2 (1つ前の活動)
 約6千年前以後、約5千年前以前




文献7による。
  (3)1回のずれの量
   と平均活動間隔
1回のずれの量   
 3−4m程度 (上下成分)
平均活動間隔
 約4千年−8千年





文献7による。

平均的な隆起の速度と
1回の隆起の量から推
定。
  (4)過去の活動区間 断層帯全体で1区間
断層帯の位置関係・形
状等から推定。
3.断層帯の将来の活動
  (1)将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
活動区間
 全体で1区間
地震の規模
 マグニチュード7.6程度
ずれの量
 3−4m程度 (上下成分)







断層帯の位置関係・形
状等から推定。
断層の長さから推定。

過去の活動から推定。

表2 サロベツ断層帯の将来の地震発生確率等
項  目   将来の地震発生確率等
注5
 信頼度 
注6
備  考

地震後経過率(注7

今後30年以内の地震発生確率
今後50年以内の地震発生確率
今後100年以内の地震発生確率
今後300年以内の地震発生確率

集積確率(注8


1.3以下

4%以下
7%以下
10%以下
30%以下

90%以下
発生確率及び集積確
率は文献3による。

注1: 地震調査委員会の活断層評価では、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間の地震発生確率について、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
   なお、2005年4月時点でひととおり評価を終えた98の主要活断層帯のうち、最新活動時期が判明しており、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めたものについては、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間に地震が発生する確率の割合は以下のとおりとなっている。
30年確率の最大値が0.1%未満 : 約半数 
30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満 : 約1/4
30年確率の最大値が3%以上 : 約1/4
(いずれも2005年4月時点での算定。確率の評価値に幅がある場合はその最大値を採用。)
注2: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率と集積確率は以下のとおりである。
地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995年兵庫県南部地震
(M7.3)
六甲・淡路島断層帯主部
淡路島西岸区間
「野島断層を含む区間」
(兵庫県)
0.02%−8% 0.06%−80% 約1.7−約3.5
1858年飛越地震
(M7.0−7.1)
跡津川断層帯
(岐阜県・富山県)
ほぼ0%−13% ほぼ0%−
90%より大
約1.7−約3.6
1847年善光寺地震
(M7.4)
長野盆地西縁断層帯
(長野県)
ほぼ0%−20% ほぼ0%−
90%より大
約0.8−約2.5
 「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。30年確率の最大値は平均活動間隔が4千年の場合は6%程度である。
注3: 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
   ◎:高い、○:中程度、△:低い
注4: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
  文献1:秦ほか(1969)
  文献2:伊藤(1999)
  文献3:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
  文献4:活断層研究会編(1991)
  文献5:中田・今泉編(2002)
  文献6:小椋・掃部(1992)
  文献7:産業技術総合研究所(2006)
注5: 評価時点はすべて2007年1月1日現在。なお、計算に当たって用いた最新活動時期と平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
注6: 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
  a:(信頼度が)高い b:中程度 c:やや低い d:低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度
a: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。
注7: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。今回の評価した数字のうち、1.3は5100年を4000年で割った値である。
注8: 前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率。


(説明)

1.サロベツ断層帯に関するこれまでの主な調査研究

 サロベツ断層帯付近には、中期更新世に形成されたと推定される海成段丘が発達している。これらの段丘面は、古くは山麓緩斜面とされていた(坂口,1955)が、阪口(1959)は、これらが海成段丘である可能性を指摘し、旧汀線高度が30−40mであることから、この地域の後期更新世以降の地殻変動を論じた。活断層研究会編(1980)は、アチャル台地東縁、豊徳台地東縁、豊富丘陵西縁、幌延丘陵西縁にそれぞれ確実度III(注9)の活断層の疑いのあるリニアメントを認めている。その後、池田ほか(1981)は、地形面構成層の堆積相解析に基づき、天塩川左岸に分布する段丘地形を海成段丘面(天塩段丘面)であるとはじめて明確に示すとともに、これらの段丘地形が新第三系の褶曲構造と調和する変形を受けていることから活褶曲であると結論づけた。また、杉山ほか(1987)はアチャル台地東縁、豊徳台地東縁、豊富丘陵西縁、北川口丘陵西縁に第四紀後期層の撓曲・傾動を、幌延丘陵に第四紀後期層の背斜軸を認めた。活断層研究会編(1991)は基本的にこれらの研究成果を踏襲し、アチャル台地、豊徳台地の東縁部と豊富丘陵、幌延丘陵、北川口丘陵の西縁に活傾動を推定した。
 本断層帯の詳しい位置は、杉山ほか(1987)、活断層研究会編(1991)、池田ほか編(2002)及び中田・今泉編(2002)などに示されている。

2.サロベツ断層帯の評価結果

 サロベツ断層帯は、池田ほか編(2002)及び中田・今泉編(2002)により、長さが20km以上、活動度B級相当であることが示され、基盤的調査観測としての活断層調査の対象となるべき基準を満たすことから、地震調査研究推進本部(2005)の中で、新たに基盤的調査観測の対象とすべき12の活断層帯のうちの1つとして挙げられた。このことに基づき、平成17年度に産業技術総合研究所が実施した調査(産業技術総合研究所,2006)をはじめ、これまで行われた調査研究成果に基づいて本断層帯を評価した。
 本断層帯に認められる変位地形は、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)では活断層(撓曲)として分類されているが、その大部分は位置が不確かな区間として示されている。本評価に用いた反射法弾性波探査断面などの資料によると、地表に認められる変位地形は、地下に伏在する断層のずれによる褶曲の成長の結果生じたものであり、断層が地表付近に存在することを示している訳ではないと考えられる。よって、本評価においては、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)などに示されている断層、撓曲等の個々の変位地形についてではなく、推定される地下の伏在断層を評価することとし、それをもって「サロベツ断層帯の評価」としてとりまとめた。

2.1 サロベツ断層帯の位置及び形態

(1)サロベツ断層帯を構成する断層

 サロベツ断層帯は、北海道北部の宗谷丘陵西縁に分布する断層帯である(図1)。
 本断層帯を構成する断層の位置・形態は、活断層研究会編(1980,1991)、杉山ほか(1987)、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)などに示されている。ここでは、断層の位置及び名称は、活断層研究会編(1991)、中田・今泉編(2002)によった。なお、反射法弾性波探査断面の解析結果によると、地下の背斜構造と地表での変位地形には対応が認められ、これらの地表で認められる変位地形は、地下に伏在する断層のずれによる褶曲の成長の結果生じたものであると考えられる(産業技術総合研究所,2006)ことから、本断層帯の評価としては、杉山ほか(1987)、活断層研究会編(1991)などに傾動が示されている領域に分布する伏在断層を取り扱うこととする(図2)。
 本断層帯は、北海道天塩郡豊富町(とよとみちょう)から同郡幌延町(ほろのべちょう)を経て、同郡天塩町(てしおちょう)に至る範囲に分布しており、サロベツ原野周辺に伏在する断層、南更岸の断層から構成される(図2)。
 傾動が示されている領域のうち、幌延丘陵西縁と北川口丘陵西縁の間は約8.2km離れているが、幌延背斜は天塩川が形成した沖積平野の地下に伏在し、北川口丘陵西半部まで連なることが指摘されており(産業技術総合研究所,2006)、地下では両者はほぼ連続していることになる。その他の断層はいずれも5km以内に近接していることから、この領域に伏在する断層は、松田(1990)の基準にしたがって、1つの起震断層を構成しているとみなすことにする。

(2)断層面の位置・形状

 産業技術総合研究所(2006)は、既存反射法弾性波探査断面の再解析を行い、断層関連褶曲モデルを用いて断層面を推定している(図3)。この結果によると、地下に伏在する東傾斜の低角の断層の上端は地表には達していない。断層の上端は西側の海岸線付近に位置し、このことは、背斜、向斜の一般走向がほぼ海岸線と平行していることなど、杉山ほか(1987)などに示される周辺の活構造とも調和的である。また、図6に示されている稚内層基底時間構造などにより地下構造を考察すると、断層帯北部の海岸線付近には、ペンケ背斜、稚咲内(わかさかない)背斜が存在し、その北のユークル背斜との間には褶曲軸にステップが認められる。同様に南側では、地表での南端とした南更岸の断層の付近を境に、北側では北北西−南南東、南側では南北から北北東−南南西と褶曲軸の走向に変化が見られる。これらのことを考慮し、断層面の上端の位置は海岸線付近、一般走向は海岸線に平行な方向とした。断層面の位置については、地表に変位地形が認められる範囲と地下構造に見られる一連の領域が概ね整合することから、地表での変位地形を用いて指し示すこととし、北端の位置は、地表での北端である兜沼撓曲の北端を走向方向へ投影した位置、南端は概ね海岸付近であることから地表での南端である南更岸の断層の南端の位置とした。よって、断層帯の長さ及び一般走向は、それぞれ約44km、N20°Wとした(図2)。ただし、南端については、南更岸の断層の北側の北川口背斜と南側の更岸背斜では、走向の違いがあまり明瞭ではないことから、さらに南へ延びる可能性も否定できない。
 断層面の上端の深さは、産業技術総合研究所(2006)によると、豊徳台地付近では約3.2km、豊富丘陵付近では1.8km以深、幌延丘陵付近では約6.7km、北川口丘陵付近では約6kmであり、これらから、2−7kmである可能性がある(図3)。
 断層面の傾斜は、産業技術総合研究所(2006)によると、豊徳台地付近では約30−48°で約6.8km以深では約18°に折れ曲がる。幌延丘陵付近ではほぼ水平で、幌延背斜軸部付近で約20°、さらに深部では約2°に折れ曲がる。北川口丘陵付近ではほぼ水平で北川口背斜軸部付近で約17°に折れ曲がる。いずれも下端深度は不明である(図3)。これらから、主として低角度東傾斜である可能性があるが、より深部では不明である。また、断層帯の東側に位置する地質断層である大曲断層の深部に連続する可能性もある。
 断層面の下端深度は、地震発生層の下限を目安とすると25km程度と推定される。しかし、地下深部における断層面の傾斜が明らかでないため、断層面の幅は不明である。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)注10

 サロベツ断層帯は、活断層研究会編(1980,1991)、杉山ほか(1987)、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)などに示された変位地形によると、アチャル台地東縁、豊徳台地東縁、南更岸の断層では断層の西側が東側に対して相対的に隆起、豊富丘陵西縁、幌延丘陵西縁、北川口丘陵西縁では断層の東側が西側に対して相対的に隆起と、西側隆起、東側隆起が混在している。しかし、小椋・掃部(1992)、伊藤(1999)、産業技術総合研究所(2006)などに示される反射法弾性波探査断面での地層の褶曲構造と断層の変位の向きから、本断層帯は、断層の東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層と推定される。

2.2 サロベツ断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)

 本断層帯に沿って分布する海成段丘面は、いずれも伏在する逆断層のずれに伴う褶曲の成長と、これに伴う隆起の結果形成されたものと考えられる。したがって、本断層帯の平均変位速度の評価にあたっては、海成段丘面の高度差を上下変位量として扱うこととする(産業技術総合研究所,2006)。また、以下では、海洋酸素同位体ステージ(以下「MIS」と表記)5eの古海面高度を5m、年代を12万5千年前(Chappell,1994)と仮定して平均変位速度を計算する。
 産業技術総合研究所(2006)は、稚咲内海岸から円山台地にかけての道道稚咲内豊富停車場線に沿って群列ボーリングおよびジオスライサーの掘削を行った。これらの解析結果と既存ボーリング資料に基づいて完新統の対比を行い、MIS5e堆積物の上下変位量から平均上下変位速度を求めている(図4)。
 産業技術総合研究所(2006)は、豊徳台地では台地の標高約50mとサロベツ原野下で最も標高が低いボーリングB3のMIS5e堆積物の深度の差が約60mであり、ボーリングB1でのMIS5d以降の風成堆積物の層厚約7mを差し引いたMIS5e堆積物の上下変位量が53mであることから、平均上下変位速度を約0.4m/千年としている。ただし、この値は背斜後翼部で得られたものであり、さらに大きくなる可能性も示唆されている。また、円山台地では、ボーリングB3とB5から見積もられるMIS5e堆積物上面の上下変位量18.5mから、平均上下変位速度を約0.2m/千年としている。
 さらに、産業技術総合研究所(2006)は、天塩郡豊富町豊徳、豊富町豊富、天塩町川口、遠別町(えんべつちょう)丸松において、中位段丘面堆積層の露頭調査から、堆積物の記載、火山灰分析、堆積相解析を実施し、断層帯周辺におけるMIS5e海成段丘面の分布を示している(図6)。また、この結果を、小池・町田編(2001)と対比することにより、幌延丘陵西縁では、MIS5eの旧汀線高度が39mであることから、平均上下変位速度を約0.3m/千年、アチャル台地東縁では、MIS5eの旧汀線高度が29mであることから、平均上下変位速度を約0.2m/千年とそれぞれ求めている。北川口丘陵西縁では、MIS5eの旧汀線高度が70mであり、ボーリングSr−1により沈降側のMIS5e堆積物が深さ17m以深に分布すると考えられることから、その差87mにより平均上下変位速度を約0.7m/千年と求めている。

 以上のことから、本断層帯の平均上下変位速度は0.7m/千年以上の可能性があると判断した。

 なお、産業技術総合研究所(2006)は、幌延町オトンルイでの100mのオールコアボーリングによる年代値と層相の対比により、沈降側のMIS5e堆積物が深度73.2m以深に分布すると推定でき、これと豊徳台地の高度差が約123.2m以上であることから、稚咲内背斜の平均変位速度を約1.0m/千年以上としている。しかし、MIS5e堆積物が直接確認されていないなど、根拠が十分ではないことから、ここでは採用しなかった。

(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動

 稚咲内海岸では、3列の砂丘・浜堤列(図5中のSD1−SD3)と、その間に低地が発達する。産業技術総合研究所(2006)は、稚咲内海岸の離水浜堤地形の内部構造を調べるため、この3列の砂丘・浜堤列の堤間低地でジオスライサーおよびボーリングの掘削を行い、コアの詳細な記載および堆積相解析を行った(図7)。その結果、SD1と豊徳台地間のボーリングB7およびB8では、海浜堆積物の基底面高度がいずれも標高7−8mであり、北海道北部における完新世の最高海水準の研究(大平,1995; 大平・海津,1999)を参考にすると、その値(約3−4m)に比べて有意に高いことから、海浜堆積物を隆起させるようなイベントがあったとしている。また、その時期は、堤間低地が豊徳台地の西向き海食崖に接することから、縄文海進の高海面期につづく小海退期に形成されたと考えられ、完新世の最高海面期は泥炭層基底面の年代値から潟湖の最大拡大時の約6千年前以降であったとしている(産業技術総合研究所,2006)。さらに、SD1−SD2間、SD2−SD3間の堤間低地では、それぞれ前浜堆積物、上部外浜堆積物、基盤岩上面の浸食面に両低地間で系統的な落差が認められ、SD1に対応して形成された上部外浜堆積物基底の浸食面の高度が−1.38m、浸食面下の基盤岩類に巣穴を作った穿孔貝の14C年代が約5千1百年−5千年前であるのに対し、SD2に対応して形成された上部外浜堆積物基底の浸食面の高度が−4.65m、浸食面直上の貝殻片の14C年代が約4千5百年前であることから、この間にもう1つの隆起イベントがあったとしている(産業技術総合研究所,2006)。

 以上のことから、本地域では、約5千1百年前以後、約4千5百年前以前に少なくとも1回の活動があった可能性がある。この活動が最新活動かどうかは不明であるが、後述の通り1回の活動に伴う変位量が3−4mであることを考慮すると、これ以降に活動があった可能性は低いと考えられる。また、これに先立つ活動としては、約6千年前以後、約5千年前以前に少なくとも1回の活動があった可能性がある。

 なお、前述の浜堤列において、SD2−SD3間の堤間低地も標高4m程度と高く、また、ここでの前浜堆積物の上面高度もボーリングB9で2.04mであり稚咲内漁港の平均高潮位面(+0.2m)よりも高いものとなっている。しかし、現世の海岸では平均高潮位面よりも高い場所に前浜堆積物が形成されていることや、既存ボーリング資料によると堤間低地から海岸線まで前浜堆積物の上面高度がほとんど変化しないことから、これを地震性隆起の証拠として採用しない(産業技術総合研究所,2006)。

b)先史時代・歴史時代の活動

 本断層帯周辺における被害地震についての資料は得られていない。
 
 以上のことから、本断層帯では、約5千1百年前以後、約4千5百年前以前に少なくとも1回の活動があった可能性がある。ただし、この活動が最新活動かどうかは不明である。また、これに先立つ活動としては、約6千年前以後、約5千年前以前に少なくとも1回の活動があった可能性がある。

(3)1回の変位量(ずれの量)

 稚咲内海岸の離水浜堤地形から推定される隆起イベントで生じた浸食面の高度差が約3.3mであることから、本断層帯の1回の活動に伴う上下変位量は3−4m程度であった可能性がある(図7)。ただし、この変位量は、断層の変位量そのものではなく、断層の変位に伴う地表での隆起量であることに注意する必要がある。
 また、サロベツ断層帯の長さは約44kmである可能性があることから、松田(1975)の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約3.5m(上下成分)と計算され、浸食面の高度差から求めた値と調和したものとなる。

      Log L = 0.6M − 2.9   (1)
      Log D = 0.6M − 4.0   (2)

 ここで、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Dは1回の活動に伴う変位量(m)、Mは地震のマグニチュードである。

 以上のことから、本断層帯の1回の活動に伴う上下変位量は3−4m程度であった可能性がある。

(4)活動間隔

 2.2(2)で述べたとおり、稚咲内海岸から豊徳台地にかけての地域において、過去約6千年の間に、少なくとも2回の活動が認められている。これら2回の活動からは、サロベツ断層帯の平均活動間隔は、1千5百千年以下と求めることができる。
 一方、2.2(1)で述べたように豊徳台地ではMIS5e堆積物の高度から、平均変位速度は0.4m/千年と推定されている。しかしながら、この値は背斜の翼部で計測した値であり、堆積物の上面を背斜の軸部まで延長すると、平均上下変位速度は0.8m/千年程度まで大きくなる可能性がある。この値と1回の上下変位量(3.3m)から平均活動間隔を算出すると、約4千−8千年と求められ、過去2回の活動時期から求めた活動間隔と比較して有意に長くなる。過去の活動時期でも述べたように、約5千1百年前以後、約4千5百年前以前の活動以後にさらに活動があった可能性は低いことを考慮すると、過去2回の活動間隔は平均的な活動間隔に比べ例外的に短かった可能性も指摘できる。したがって、ここでは過去2回の活動時期から求めた活動間隔は相対的に信頼性が低いと判断した。
 以上のことから、サロベツ断層帯の平均活動間隔は、約4千−8千年程度であった可能性がある。

(5)活動区間

 サロベツ断層帯は2.1(1)で述べたように、傾動が示されている領域のうち、幌延丘陵西縁と北川口丘陵西縁の間が約8.2km離れているが、反射法弾性波探査断面の解析結果(産業技術総合研究所,2006)に基づくと、地下では構造的に連続している可能性があり、それ以外はいずれも5km以内に近接していることから、この領域に伏在する断層は、松田(1990)の基準にしたがって、1つの起震断層を構成しているとみなすことができる。このことから、断層帯全体が1つの活動区間として活動した可能性がある。

(6)測地観測結果

 サロベツ断層帯周辺における1994年までの最近約100年間の測地観測結果では、断層帯の周辺でほぼ東西方向のわずかな縮みが見られる。
 また、2006年10月までの8年間のGPS観測結果では、顕著な歪みは見られない。

(7)地震観測結果

 サロベツ断層帯周辺の最近約5年間の地震観測結果によると、断層帯の東側で微小な地震活動が見られる。地震発生層の下限の深さは約25kmと推定される。ただし、その精度は高くない。

2.3 サロベツ断層帯の将来の活動

(1)活動区間及び活動時の地震の規模

 サロベツ断層帯は、過去の活動と同様に断層帯全体が1つの区間として同時に活動する可能性がある。その場合、前述の松田(1975)の経験式(1)に基づくと、マグニチュード7.6程度の地震が発生する可能性がある。その際には断層帯近傍の地表面では3−4m程度の隆起が生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 以上のように、サロベツ断層帯は全体が1つの区間として同時に活動する可能性がある。
 本断層帯では、平均活動間隔が約4千−8千年と求められている。また、最新活動かどうかは不明であるが、約5千1百年前以後、約4千5百年前以前に活動があった可能性があることから、最新活動時期は少なくとも5千1百年前以後の可能性がある。これらから、平均活動間隔に対する地震後経過率は1.3以下となる。また、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、4%以下、7%以下、10%以下及び30%以下となり(表2)、その最大値をとると、本断層は今後30年の間に地震が発生する可能性が我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。
 表3に、これらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。

3.今後に向けて

 サロベツ断層帯で認められる変位地形は、いずれも地下に伏在する逆断層のずれに伴う褶曲の成長と、これに伴う隆起の結果形成されたものと考えられる。本評価では、断層面の形状を評価するにあたり、既存の反射法弾性波探査断面の解析結果などを用いて、地下の褶曲構造も考慮した。しかし南北への延長の可能性、特に南側の更岸背斜への延長の可能性については今後の検討が必要である。また、本断層帯の南北には、それぞれ海底に延びる活構造が知られており、それらとの関連性について検討する必要がある。
 本断層帯では、最新活動時期を特定できていないため、将来における地震発生の可能性について十分な検討ができない段階にある。よって、過去の活動履歴に結びつく資料を蓄積していく必要がある。

注9: 「新編日本の活断層」(活断層研究会編,1991)は、空中写真判読によって判断される活断層としての確からしさを確実度と呼び、確からしさの高い方から、確実度I、II、IIIの3段階に区分している。
・確実度Iの活断層は、活断層であることが確実なものとされている。
・確実度IIの活断層は、活断層であると推定されるものであり、位置・ずれの向きとも推定できるが、確実度Iと判定できる決定的な資料に欠けるものとされている。
・確実度IIIの活断層は、活断層の可能性があるが、ずれの向きが不明瞭なもの、また、他の原因、例えば川や海の浸食による崖、あるいは断層に沿った浸食作用によって、線状模様が形成された疑いが残るものとされている。
注10: 「変位」を、1頁の本文及び5、6頁の表1では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは、専門用語である「変位」が、本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓(たわ)みの成分」よりなる。
注11: 炭素同位体年代については、Ramsey(1995,2001)、Reimer et al.(2004)に基づいて暦年補正し、原則として1σの範囲の数値で示した。



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表3 サロベツ断層帯の将来の地震発生確率及び参考指標
項  目 数  値 備   考
地震後経過率

今後30年以内の発生確率
今後50年以内の発生確率
今後100年以内の発生確率
今後300年以内の発生確率

集積確率
1.3以下

4%以下
7%以下
10%以下
30%以下

90%以下
発生確率及び集積確率は地
震調査研究推進本部地震
調査委員会(2001)参照。
指標(1) 経過年数
       比
指標(2)
指標(3)
指標(4)
指標(5)
  2千3百年以下
1.8以下
 5.4以下
90%以下
0.6以下
 0.0003以下
地震調査研究推進本部地震
調査委員会長期評価部会
(1999)参照。

 評価時点はすべて2007年1月1日現在。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。

指標(1)経過年数 当該活断層での大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は、最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(BPT分布モデルを適用した場合の考え方)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合の考え方)。この指標は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。値がマイナスである場合は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達していないことを示す。ポアソン過程を適用した場合の危険率は、3千3百分の1(0.0003)回以下であり、いつの時点でも一定である。BPT分布モデルを適用した場合の危険率は評価時点で1千分の1(0.001)以下であり、時間とともに増加する。1千分の1であればBPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達してからすでに2千3百年が経過していることになる。
指標(1)比 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルによる危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率を超えるまでの時間をBとした場合において、前者を後者で割った値(A/B)である。
指標(2) BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の評価時点での危険率の比。
指標(3) 評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標(4) 評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の地震発生確率の値で割った値。
指標(5) ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。



付表
地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。

ランク 分類条件の詳細
発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高く(◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。
平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。
平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性がやや低い。
平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く(▲)、発生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。