平成19年5月14日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会


魚津断層帯の長期評価について


 地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。
 地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、平成17年4月までに陸域の活断層として、98断層帯の長期評価を行い公表した。

 その後、「今後の重点的調査観測について」(平成17年8月30日 地震調査研究推進本部)の中で、新たに基盤的調査観測の対象とすべき12の活断層帯が挙げられた。
 今回、このうち魚津断層帯について、現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。

 評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。


平成19年5月14日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

魚津断層帯の評価

 魚津断層帯は、飛騨山脈の北西縁から富山平野の東縁に沿って分布する活断層帯である。ここでは、平成17年度に産業技術総合研究所によって行われた調査をはじめ、これまでに行われた調査研究の成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した。

1.断層帯の位置及び形態

 魚津断層帯は、富山県下新川郡朝日町から同郡入善町にゅうぜんまち、黒部市、魚津市、滑川市なめりかわしを経て、中新川郡上市町かみいちまちに至る断層帯である。全体の長さは約32kmで、概ね北北東−南南西方向に延びる。本断層帯は断層の南東側が北西側に対して相対的に隆起する逆断層からなり、北東端付近では右横ずれを伴う(図1図2及び表1)。

2.断層帯の過去の活動

 魚津断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は、約0.3m/千年以上の可能性がある。また、野外調査から直接得られたデータではないが、経験則から求めた1回のずれの量と平均的なずれの速度に基づくと、平均活動間隔は8千年程度以下の可能性がある(表1)。

3.断層帯の将来の活動

 魚津断層帯は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.3程度の地震が発生すると推定される。その際には、断層近傍の地表面では断層の南東側が北西側に対して相対的に2−3m程度高まる段差やたわみが生じる可能性がある(表1)。本断層帯では、最新活動時期が特定できていないことから、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めている。そのため信頼度は低いが、将来このような地震が発生する長期確率は、表2に示すとおりであり、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では、やや高いグループに属することになる(注1注2注3)。

4.今後に向けて

 魚津断層帯は、その中央部における地表変形に対応する地下の断層面が既往の反射法弾性波探査では確認できていない。このため、さらに探査を実施し、断層面の地下形状を明らかにする必要がある。
 また、過去の活動に関する資料がほとんど得られていない。したがって、過去の活動履歴を明らかにするために基礎的なデータを集積する必要がある。



表1 魚津断層帯の特性
項  目 特  性   信頼度  
注4
根  拠
注5
1.断層帯の位置・形態
  (1)断層帯を構成する
   断層
不動堂断層、魚津断層、石垣平断層、
大浦断層など
  文献1、2、4、5、
9による。
  (2) 断層帯の位置・形
   状
地表における断層帯の位置・形状
  断層帯の位置
   (北東端)北緯36°55′東経137°34′
   (南西端)北緯36°41′東経137°22′

 長さ     約32km







文献1、2、4、5、
9による
位置及び長さは図2
ら計測。
地下における断層面の位置・形状
  長さ及び上端の位置   地表での長さ・
                  位置と同じ

 上端の深さ  0km

 一般走向   N30°E


 傾斜     南東傾斜
 

 幅      不明
















上端の深さが0km
であることから推定。

地形の特徴から推
定。
一般走向は、断層の
両端を直線で結んだ
方向(図2参照)。
文献1、2、9など
に示された地形の特
徴による。
地震発生層の下限の
深さは15km程度。
  (3)断層のずれの向
   きと種類
南東側隆起の逆断層
 (北東端付近では右横ずれ成分を伴う)
文献1、2、4−9
などに示された地形
の特徴による。
2.断層帯の過去の活動
  (1) 平均的なずれの
   速度
約0.3m/千年以上(上下成分)
文献6−8による。
  (2) 過去の活動時期 不明

2.2.(2)a)参照。
  (3) 1回のずれの量
   と平均活動間隔
1回のずれの量
 2−3m程度(上下成分)

平均活動間隔
 8千年程度以下







断層の長さから推定。

平均的なずれの速度
と1回のずれの量か
ら推定。
  (4) 過去の活動区間 断層帯全体で1区間
断層の位置関係・形
状等から推定。
3.断層帯の将来の活動
  (1) 将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
活動区間     断層帯全体で1区間

地震の規模    マグニチュード7.3程度
ずれの量      2−3m程度(上下成分)




断層の位置関係・形
状等から推定。
断層の長さから推定。
断層の長さから推定。


表2 魚津断層帯の将来の地震発生確率(ポアソン過程を適用)
項  目   将来の地震発生確率
注6
 信頼度 
注7
備  考

今後30年以内の地震発生確率
今後50年以内の地震発生確率
今後100年以内の地震発生確率
今後300年以内の地震発生確率


0.4%以上
0.6%以上
1%以上
4%以上

発生確率は文献3に
よる。


注1: 魚津断層帯では、最新活動時期が特定できていないため、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めることができない。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、このような更新過程が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしていることから、ここでは、ポアソン過程を適用して断層帯の将来の地震発生確率を求めた。しかし、ポアソン過程を用いた場合、地震発生の確率はいつの時点でも同じ値となり、本来時間とともに変化する確率の「平均的なもの」になっていることに注意する必要がある。
 なお、相対的評価(注2参照)は、通常の手法を用いた場合の全国の主な活断層のグループ分けと同じしきい値(推定値)を使用して行なった。
注2: 地震調査委員会の活断層評価では、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間の地震発生確率について、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
 
 なお、2005年4月時点でひととおり評価を終えた98の主要断層帯のうち、最新活動時期が判明しており、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めたものについては、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間に地震が発生する確率の割合は以下のとおりとなっている。
30年確率の最大値が0.1%未満 : 約半数 
30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満 : 約1/4
30年確率の最大値が3%以上 : 約1/4
(いずれも2005年4月時点での算定。確率の評価値に幅がある場合はその最大値を採用。)
注3: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率と集積確率は以下のとおりである。
地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995年兵庫県南部地震
(M7.3)
六甲・淡路島断層帯主部
淡路島西岸区間
「野島断層を含む区間」
(兵庫県)
0.02%−8% 0.06%−80% 約1.7−約3.5
1858年飛越地震
(M7.0−7.1)
跡津川断層帯
(岐阜県・富山県)
ほぼ0%−13% ほぼ0%−
90%より大
約1.7−約3.6
1847年善光寺地震
(M7.4)
長野盆地西縁断層帯
(長野県)
ほぼ0%−20% ほぼ0%−
90%より大
約0.8−約2.5

 「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。30年確率の最大値は平均活動間隔が8千年の場合は3%程度である。
注4: 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
   ◎:高い、○:中程度、△:低い
注5: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
  文献1:池田ほか編(2002)
  文献2:今泉ほか(2003)
  文献3:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
  文献4:活断層研究会編(1991)
  文献5:中田・今泉編(2002)
  文献6:産業技術総合研究所(2006)
  文献7:松浦ほか(2006)
  文献8:松浦ほか(2007)
  文献9:東郷ほか(2003)
注6: 評価時点はすべて2007年1月1日現在。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔に関しては、年代幅が十分に絞り込めていないため、信頼度は低い(△)ことに留意されたい。魚津断層帯は最新活動時期が特定できていないため、通常の手法による確率の値は推定できない。そのかわりとして、長期間の確率の平均値を示した。最新活動時期によってはこの値より大きく、または小さくなるが、その確率値のとり得る範囲は平均活動間隔から求めることができる。本断層帯は平均活動間隔が8千年程度以下と求められているので、仮に8千年とした場合の通常の手法による30年確率のとり得る範囲は魚津断層帯でほぼ0%−3%となる。
注7: 発生確率の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
    a:(信頼度が)高い b:中程度 c:やや低い d:低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度
a: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。


(説明)

1.魚津断層帯に関するこれまでの主な調査研究

 魚津断層帯の存在や特性については、深井(1956)が段丘の分類をおこない、上流部より下流部に向かって基盤をなす地質が新しくなること、高位段丘面ほど傾斜が急であることから、第四紀の山地側隆起の構造運動を指摘した。堂口(1980)、竹村(1987)は、地形学的手法に基づき富山平野東縁に複数の活断層の存在を指摘した。
 富山平野東縁については、当初、活断層研究会編(1991)によって親不知断層、不動堂断層、黒菱山断層、石垣平断層、大浦断層などの主に南東側隆起の活断層が示された。また、不動堂断層と大浦断層の間に分布する段丘面には北西方向の傾動が示されているが、断層線は図示されていなかった。その後、池田ほか編(2002)及び中田・今泉編(2002)、今泉ほか(2003)、東郷ほか(2003)は、大縮尺空中写真を用いた詳細な判読に基づいた研究により、従来知られている位置よりも北西側(平野側)に断層を認定し、池田ほか編(2002)は、これらの長さ30kmを超える断層帯を魚津断層帯と命名した。
 中村(2004,2005)は地形・地質調査を実施し、本断層帯が第四紀後期に繰り返し活動していることを明らかにした。また、産業技術総合研究所(2006)、松浦ほか(2006,2007)は、本断層帯の活動履歴等を明らかにするため、地形・地質調査、ボーリング調査及び反射法弾性波探査などの総合的調査を実施し、平均変位速度などについて知見を得た。
 本断層帯の詳しい位置は、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)、今泉ほか(2003)及び東郷ほか(2003)に示されている。

2.魚津断層帯の評価結果

2.1 魚津断層帯の位置及び形態

(1)魚津断層帯を構成する断層

  魚津断層帯は、富山県下新川郡朝日町から同郡入善町、黒部市、魚津市、滑川市を経て、中新川郡上市町に至る断層帯である (図2)。本断層帯は、不動堂断層、魚津断層、石垣平断層、大浦断層などから構成される。本断層帯を構成する各断層の位置・形態は、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)、今泉ほか(2003)、東郷ほか(2003)などで概ね一致する。ここでは、各断層の位置は今泉ほか(2003)、東郷ほか(2003)を基図とし、石垣平断層は活断層研究会編(1991)、大浦断層は中田・今泉編(2002)、南端付近は池田ほか編(2002)に、また断層の名称は活断層研究会編(1991)、今泉ほか(2003)、東郷ほか(2003)によった。

(2)断層面の位置・形状

 魚津断層帯の長さと一般走向は、断層帯の北東端と南西端を直線で結んで計測すると約32km、N30°Eとなる(図2)。本断層帯では、その南北両端(不動堂断層、大浦断層)付近で断層運動によって生じた変位地形が認められる。一方、断層帯の中央部で実施された反射法弾性波探査結果(図3;産業技術総合研究所,2006)では、地表では段丘面に傾動や撓みが認められるものの、後述するように地下では地層面がほぼ一様に北西に傾斜しており、地表の変形に対応する断層面が確認できなかった。しかしながら、本断層帯では、最終氷期ないしそれ以降の地形面に認められる傾きや撓みなどの変位地形が不明瞭ながらもほぼ連続していることから、全体を1つの断層帯として評価した。断層帯中央部で示されている断層線は幅広い撓曲変形の下端を示しており、断層は撓曲帯全体の広範囲に及んでいるものと思われる。断層面上端の深さは、断層帯の南北両端付近に明瞭な活断層によるずれを伴う地形が認められること、断層帯中部付近で断層運動による段丘面の撓曲が認められ、変位が地表に達していることから0kmとした。断層面の傾斜は、後述するように、変位地形の特徴から、南東傾斜と推定される。
 断層面の下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると15km程度と推定される。しかし、地下深部の傾斜が明らかではないため、断層面の幅は不明である。
 なお、本断層帯中央部の布施川右岸において、幅広い撓曲変形を形成した断層面は、産業技術総合研究所(2006)の反射法弾性波探査測線の調査範囲外もしくはさらに地下深部に存在する可能性もある。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)注8

 魚津断層帯は、段丘面に撓曲変形が認められること(今泉ほか,2003;東郷ほか,2003など)から、断層の南東側が北西側に対して相対的に隆起する逆断層と推定される。また、石垣平断層や大浦断層などの北西側が隆起する副次的な断層が認められる。本断層帯の北東端付近に位置する不動堂断層では部分的に北西向きの低崖と南東向きの低崖が認められ同一断層線上で入れ替わること(池田ほか編,2002;今泉ほか,2003など)、また、断層に沿って右横ずれを示す変位地形が認められること(今泉ほか,2003)などから、本断層帯の北東端付近で右横ずれ成分を伴うと判断される。

2.2 断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)

 産業技術総合研究所(2006)、松浦ほか(2006,2007)は、段丘面の傾きによって生じた高度差を断層変位によるものとして魚津断層帯の複数の地点で平均変位速度を求めている。
 産業技術総合研究所(2006)と松浦ほか(2006)は、本断層帯中央部の黒部市田家新たいえしん付近において複数の断層が並走していることに着目し、これらを横断する地形断面から、段丘面の高度差とその形成年代に基づいて、平均上下変位速度を約0.33−0.52m/千年と求めている。
 同地点において松浦ほか(2007)は、M1面、H2面の形成年代とその高度差から平均上下変位速度を求め(図4)、これらの値を合算して平均上下変位速度を0.24−0.44m/千年以上と求めている。

 以上のことから、平均上下変位速度は約0.3m/千年程度と求められる。しかし、段丘面(LH1面)の一部が断層下盤側の沖積面下に埋没していることから、上下変位量は、この値を上回ると考えられる。よって、本断層帯の平均上下変位速度は約0.3m/千年以上の可能性があると判断した。

 なお、中村(2005)は段丘面の変形とその形成年代から、平均上下変位速度を0.7−0.9m/千年と求めている。しかしながら、産業技術総合研究所(2006)、松浦ほか(2006,2007)は、中村(2005)が変位基準とした段丘面の年代はより古くなる可能性を指摘している(松浦ほか,2007;ではM1面、H2面の形成年代は2倍以上古いと指摘)ことからここでは採用しなかった。
 さらに、産業技術総合研究所(2006)は、布施川右岸沿いで実施した調査に基づいて平均上下変位速度を求めているが、LH1面の年代値に大きなばらつきが認められるため、ここでは変位基準として採用しなかった。

(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動

 魚津断層帯では、LH1面などの段丘面に変形が認められる。これらは断層運動によるものと考えられるが、活動履歴に関する直接的な資料は得られていない。
 なお、産業技術総合研究所(2006)は、布施川右岸の黒部市田家新における群列ボーリング調査において、埋没段丘面(LH1面)の傾斜の変化が、約6千年前の等時間面に見られないことから、約6千年前以後には活動がなかった可能性を示唆している。ただし、ここでは、等時代面の分解能から本断層帯の活動を検討できる精度はないと判断した。

b)先史時代・歴史時代の活動

 本断層の活動を直接示すような被害地震は知られていない。

(3)1回の変位量(ずれの量)

 魚津断層帯では、1回の活動に伴う変位量を示す直接的な資料は得られていない。
 しかし、本断層帯の長さは約32kmと推定されることから、以下に示す松田(1975)の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は2.5mと計算される。したがって、本断層帯の1回の活動に伴う上下変位量は2−3m程度であった可能性がある。
 ここで、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Mはマグニチュード、Dは1回の活動に伴う変位量(m)である。

                    LogL=0.6M−2.9     (1)
                    LogD=0.6M−4.0     (2)

(4)活動間隔

 魚津断層帯の活動間隔に関する直接的資料は得られていない。ただし、平均上下変位速度(0.3m/千年以上)と前述により算出された1回の上下変位量(2.5m)から、平均活動間隔は8千3百年以下と求められる。
 以上のことから、本断層帯の平均活動間隔は8千年程度以下であった可能性がある。

(5)活動区間

 魚津断層帯は、断層がほぼ連続的に分布することから、松田(1990)の起震断層の定義に基づくと、断層帯全体が1つの区間として活動してきたと推定される。

(6)測地観測結果

 魚津断層帯周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果では、断層の周辺で北西−南東方向の縮みが見られる。
 また、2006年6月までの9年間のGPS観測結果では、断層帯周辺で東西方向の縮みが見られる。

(7)地震観測結果

 魚津断層帯周辺の最近の地震観測結果によれば、断層帯周辺で微小な地震活動があり、地震発生層の下限は15km程度である。

2.3 断層帯の将来の活動

(1)活動区間及び活動時の地震の規模

 魚津断層帯は、全体が同時に活動すると推定される。その場合、長さが約32kmであることから、前述の経験式(1)及び(2)を用いると、本断層帯ではマグニチュード7.3程度の地震が発生すると推定される。また、このような地震が発生した場合、断層近傍の地表面では断層の南東側が北西側に対して相対的に2−3m程度高まる段差や撓みを生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 魚津断層帯では、最新活動時期を特定することができなかったため、上記のような規模の地震が発生する長期確率を更新過程(地震の発生確率が時間と共に変動するモデル)を用いて評価することはできない。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、地震の発生確率を求めるに当たって、通常の活断層評価で用いている更新過程が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしている。信頼度の低い平均活動間隔を用いた計算であることに十分留意する必要があるが、平均活動間隔が8千年程度以下であることを基に、ポアソン過程を適用して求めると、今後30年以内、50年以内、100年以内及び300年以内の地震発生確率は、それぞれ0.4%以上、0.6%以上、1%以上及び4%以上となる(表2)。
 本評価で得られた平均活動間隔の信頼度は低く、また、値が十分に絞り込まれていないため、地震発生確率にも幅があるが、その値が0.4%であるとしても、今後30年の間に地震が発生する確率が我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注1注2注3)。

3.今後に向けて

 魚津断層帯は、その南北両端付近で活断層によって生じた変形が明瞭に認められる。また、断層帯の中央部では明瞭な断層線は認められないものの、最終氷期ないしそれ以降の地形面に不明瞭ながらもほぼ連続した傾きや撓みなどの変形が認められる。しかしながら、産業技術総合研究所(2006)が実施した反射法弾性波探査の結果では、地表の変形に対応する断層面が確認できなかった。本断層帯中央部で断層帯全体の変形を作った断層面は、さらに地下深部や探査測線の範囲外に存在する可能性もある。このため、さらに反射法弾性波探査を実施し、断層面の地下形状を明らかにする必要がある。
 また、本断層帯においては、過去の活動に関する資料がほとんど得られていないため、将来における地震発生の可能性について十分な検討ができない段階にある。したがって、過去の活動履歴を明らかにするための基礎的なデータを集積する必要がある。


注8: 「変位」を、1ページの本文、5−6ページの表1では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは専門用語である「変位」が、本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「たわみの成分」よりなる。



文 献


付表
 地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。

  ランク   分類条件の詳細
発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高く(◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。
平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。
平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性がやや低い。
平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く(▲)、発生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。