平成18年10月17日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会


櫛形山脈断層帯の長期評価の一部改訂について


 地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。

 地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、これまでに陸域の活断層として、98断層帯の長期評価を行い公表した。

 櫛形山脈断層帯の評価は平成14年9月11日に公表しているが、その後、最近の調査結果により活動履歴などに関する新たな知見が得られたことから、これを基に評価の見直しを行い、一部改訂版としてとりまとめた。また、評価の新旧対比表を付録として巻末に示した。

 評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。


平成18年10月17日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

櫛形山脈断層帯の評価(一部改訂)

 櫛形山脈(くしがたさんみゃく)断層帯は、越後平野の東縁に位置する活断層帯である。ここでは、平成10−12年度に新潟県、平成17年度に産業技術総合研究所によって行われた調査をはじめ、これまで行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した


櫛形山脈断層帯については、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2002a)により、それまで行われていた調査研究に基づいた長期評価が公表されているが、産業技術総合研究所(2006)によって新しい知見が得られたことから、今回再評価を行った。


1.断層帯の位置及び形態

 櫛形山脈断層帯は、新潟県の岩船郡荒川町から胎内市を経て、新発田市に至る断層帯である。長さは約16kmで、概ね北北東−南南西方向に延びる。ただし、両端の位置には不確かさがある。本断層帯は、断層の西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層である。本断層帯は加治川断層、櫛形山地西方断層などから構成されている(図1及び表1)。

2.断層の過去の活動

 櫛形山脈断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は、0.2−0.4m/千年程度の可能性がある。最新活動時期は、約3千2百年前以後、約2千6百年前以前と推定され、活動時には、断層の西側が東側に対して相対的に1m程度隆起した可能性がある。また、平均活動間隔は、約2千8百−4千2百年と推定される(表1)。

3.断層の将来の活動

 櫛形山脈断層帯は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード6.8程度の地震が発生する可能性がある。その時、断層の近傍の地表面では、断層の西側が東側に対して相対的に1m程度高まる段差や撓(たわ)みが生じる可能性がある(表1)。本断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は、表2に示すとおりである(注1)。本評価で得られた地震発生確率には幅があるが、その最大値をとると、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の活断層の中では、高いグループに属することになる(注1)。

4.今後に向けて

 今回の評価では、最新活動時期や平均活動間隔がより精度良く求めることができ、将来の地震発生確率について信頼度の高い評価とすることができた。
 しかし、本断層帯の位置及び長さが正確に把握されていないため、将来の活動時の地震の規模の信頼度はいまだに低い。本断層帯の将来の活動をより明確にするためには、付近の断層帯を含め、それらの性状についてより精度の良い資料を得ることが望ましい。

表1 櫛形山脈断層帯の特性

項  目 特  性   信頼度  
注3
根  拠
注4
1.断層帯の位置・形態
  (1)櫛形山脈断層帯
  を構成する断層
加治川断層、坂町付近の断層、櫛形(くしがた)
山地西方断層など
  文献1、3−9、11、12
による。
  (2) 断層帯の位置・
   形状等
地表における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
  (北端) 北緯38°08′東経139°28′
  (南端) 北緯38°00′東経139°23′
 長さ     約16km





文献1、3、12による。
位置及び長さは図 2
から計測。
地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置  地表での長さ・
                位置と同じ
 上端の深さ  0km
 一般走向   N30°E


 傾斜     西傾斜45°程度
         (地下十数m以浅)


 幅      不明









上端の深さが0kmであ
ることから推定。
地形の特徴から推定。
一般走向は、断層帯の
北端と南端を直線で結
んだ方向(図2参 照)。
傾斜方向は、文献8、11
に示された断層露頭、ト
レンチ調査、ボーリング
調査の結果から推定。
地震発生層の下限の深
さは約15−20km。
  (3) 断層のずれの向
   きと種類
西側隆起の 逆断層

文献1、3、4、7−12
に示された変位地形、
地質構造から推定。
2.断層帯の過去の活動
  (1) 平均的なずれの
   速度
0.2−0.4m/千年 程度(上下成分)

文献8に示された資料
による。
  (2) 過去の活動時期 活動1(最新活動)
  約3千2百年前以後、約2千6百年前以前
活動2(1つ前の活動)
  約6千8百年前以後、約5千6百年前以前
活動3(2つ前の活動)
  約1万1千年前以後、約8千7百年前以前






文献8−10に示された
資料から推定。
  (3) 1回のずれの量
   と平均活動間隔
1回のずれの量 1m程度(上下成分)

平均活動間隔 約2千8百−4千2百年



文献10に示された資料
による。
過去3回の活動から推
定。
  (4) 過去の活動区間 断層帯全体で1区間

断層の位置形態から推
定。
3.断層帯の将来の活動
  (1) 将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
活動区間  断層帯全体で1区間

地震の規模 マグニチュード6.8程度

ずれの量  1m程度(上下成分)





断層の位置形態から推
定。
断層の長さから推定。

文献10に示された資料
による。


表2 櫛形山脈断層帯の将来の地震発生確率等

項  目   将来の地震発生確率等  
注5
 信頼度 
注6
備  考

 地震後経過率(注7

 今後30年以内の発生確率 
 今後50年以内の発生確率 
 今後100年以内の発生確率 
 今後300年以内の発生確率 

 集積確率(注8
 

0.6−1.1

0.3%−5%
0.6%−8%
1%−20%
5%−40%

3%−80%

発生確率及び集積確率は
文献2による。


注 1: 地震調査委員会の活断層評価では、将来の活動 区間が単独で活動した場合の今後30年間の地震発生確率について、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。


今後30年間の地震発生確率(最大値)が3% 以上の場合:



「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生す る可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」


今後30年間の地震発生確率(最大値)が. 0.1%以上−3%未満の場合:



「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生す る可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
   
  なお、2005年4月時点でひととおり評価を 終えた98の主要断層帯のうち、最新活動時期が判明しており、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)によ り地震発生確率を求めたものについては、将来の活動区間が単独で活動した場合の今後30年間に地震が発生する確率の割合は以下のとおりとなってい る。


30年確率の最大値が0.1%未満 : 約半数 
30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満 : 約1/4
30年確率の最大値が3%以上 : 約1/4
(いずれも2005年4月時点での算定。確率の評価値に幅がある場合はその最大値を採用。)
 
注 2: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地 震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率及び集積確率は以下のとおりである。
地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995年兵庫県南部地震
(M7.3)
六甲・淡路島断層帯主部
淡路島西岸区間
「野島断層を含む区間」
(兵庫県)
0.02%−8% 0.06%−80% 約1.7−約3.5
1858年飛越地震
(M7.0−7.1)
跡津川断層帯
(岐阜県・富山県)
ほぼ0%−13% ほぼ0%−
90%より大
約1.7−約3.6
1847年善光寺地震
(M7.4)
長野盆地西縁断層帯
(長野県)
ほぼ0%−20% ほぼ0%−
90%より大
約0.8−約2.5

「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。 その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。30年確率の最大値は平均活動間隔が3千年の場合は8%程度、4千年の場合は30年確率の最大値は6%程度である。
注3: 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
  ◎:高い、○:中程度、△:低い
注4: 文献については、 本文末尾に示す以下の文献。
  文献1:池田ほか編(2002)
  文献2:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
  文献3:活断層研究会編(1991)
  文献4:小松原(1991)
  文献5:松田(1990)
  文献6:中田・今泉編(2002)
  文献7:新潟県(1999)
  文献8:新潟県(2000)
  文献9:新潟県(2001)
  文献10:産業技術総合研究所(2006)
  文献11:渡辺・宇根(1985)
  文献12:渡辺ほか(2003)
注5: 評価時点はすべて2006年1月1日現在であ る。
注6: 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。 各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
  a:(信頼度が)高い b:中程度 c:やや低い d:低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度


a: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用い て求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて 求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求め た発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d: 過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用い て求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていない ため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。
注7: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。今回の評価の数字で、0.6は2600年を4200年で割った値であり、1.1は3200年を2800年で割った値。
注8: 前回の地震発生か ら評価時点までに地震が発生しているはずの確率。


(説明)

1.櫛形山脈断層帯に関するこれまでの主な調査研究

 櫛形山脈断層帯は、越後平野の北部東縁に認められる北北東−南南西走向で西上がりの逆断層である。この断層は新潟堆積盆地とその東側の基盤岩山地とを境する構造線として山下(1970)が提唱した新発田−小出線に沿って分布する活断層帯の一つであり、櫛形山断層崖(辻村,1942)として知られる櫛形山脈の西縁付近に位置する。
 活断層としての本断層帯の概要は、活断層研究会編(1980)によって明らかとなった。渡辺・宇根(1985)は、本断層帯を構成する主要断層である加治川断層を精査して、その変位地形や断層露頭の記載を行い、この断層が西上がりの逆断層であり、左横ずれ成分を伴う可能性があることを指摘した。小松原(1991)は、この加治川断層を含めた櫛形山地周辺の活構造を記載し、これらの第四紀後期における活動度等について考察している。また、小松原・田中(1994)は、越後平野北部東縁地域の第四紀の構造発達過程を検討する中で、本断層帯の南方延長部における五十公野(いじみの)丘陵東縁断層の存在を推定している。谷口・吾妻(1998)は、新発田市東方の加治川右岸において、新たにいくつかの活断層を見出し、その性状を記載した。
 新潟県(1999,2000,2001)及び産業技術総合研究所(2006)は、本断層帯を対象として、ボーリング調査、トレンチ調査などを行い、断層帯の平均変位速度や活動履歴などについて新たな知見を得た。越後平野東縁部の活断層の分布を示した池田ほか編(2002)は、この地域に認められる逆断層群を新潟平野東縁断層帯として一括し、本断層帯をもその一部に含めて図示した。その後、本断層帯の詳しい位置が中田・今泉編(2002)及び渡辺ほか(2003)によって示されている。

2.櫛形山脈断層帯の評価結果

 櫛形山脈断層帯は、越後平野とその東側の櫛形山脈との境界付近に位置する断層帯である(図1、及び)。
 櫛形山脈断層帯の南東方には池田ほか編(2002)、小松原(1991)、中田・今泉編(2002)及び渡辺ほか(2003)により幾条かの短い断層が示されており、その南方の谷口・吾妻(1998)によって指摘された断層帯とともに胎内川左岸から加治川右岸にかけてほぼ連続的に分布する。松田(1990)の基準に従えば、これらの断層は櫛形山脈断層帯と同一の起震断層を構成することになる。しかし、これらの断層は櫛形山脈断層帯とは変位の向きが異なることから別の起震断層であると考えられる。この長さは約18kmとなり、単独では地震調査研究推進本部(1997)による基盤的調査観測対象の基準に達しないことと、詳細な調査結果が得られていないことから、評価の対象としないことにした(図3)。
 この結果、櫛形山脈断層帯は、前回の評価(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2002a)と同様に長さ約16kmと判断される(2.1(2)で後述)。このため単独では基盤的調査観測対象の基準(長さ20km以上)を満たさないことになるが、詳細な調査が行われていることなどから、そのまま評価対象とした。
 本断層帯の南西方延長部に、本断層帯と走向及び変位の様式、向きを同じくする月岡断層帯が存在する。また、その中間には、小松原・田中(1994)が推定する五十公野丘陵東縁断層が位置する。しかし、これらも、本断層帯との隔たりが月岡断層帯は10km余り、五十公野丘陵東縁断層も7km程度とともに大きいことから、松田(1990)の起震断層の基準に基づき、本断層帯とは別の断層帯として区分し、五十公野丘陵東縁断層は以下の詳細な評価の対象としないこととした。なお、月岡断層帯は既に別途評価を実施している(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2002b)。

2.1 櫛形山脈断層帯の位置及び形態

(1)櫛形山脈断層帯を構成する断層

 本断層帯は、新潟県岩船郡荒川町から胎内市を経て、新発田市に至る断層帯である。本断層帯は、加治川断層とその北方に分布する坂町付近の断層(注9)及び櫛形山地西方断層などによって構成される(図2)。
 本断層帯を構成する断層の位置・形態は、活断層研究会編(1980,1991)、渡辺・宇根(1985)、小松原(1991)、新潟県(1999,2000,2001)、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)などに示されている。これらでは、その南部を構成する加治川断層については、ほぼ共通した認識が示されているが、その他の断層の扱いは必ずしも一致していない。また、概ね胎内川以南については、渡辺ほか(2003)によって網羅的かつ詳細な調査成果が得られている。ここでは、本断層帯を構成する断層及びその分布位置に関しては活断層研究会編(1991)、池田ほか編(2002)及び渡辺ほか(2003)に、また断層の名称は活断層研究会編(1991)に、それぞれしたがった(図2)。

(2)断層帯の位置・形状

 本断層帯全体の長さ及び一般走向を、図2に示された坂町付近の断層の北端と、加治川断層の南端を直線で結んで計測すると、約16km、N30°Eとなる。
 池田ほか編(2002)では、坂町付近の断層の北部が図示されていないので、その北端の位置は明らかではない。一方、加治川断層の南側には、加治川が形成しつつある現成の河成面が大きく広がっている。この範囲では、変位地形が浸食されたり、埋積されているため検出できないとも考えられるので、本断層帯はさらに南方へ延びている可能性もある。また、本断層帯の南方延長に分布する月岡断層帯の一部がこの加治川沿いの若い沖積地の南縁付近まで追跡されていることを考慮すると、本断層帯と月岡断層帯は連続している可能性も否定できない(図3)。
 断層面上端の深さは、断層による変位が地表に達していることから0kmとした。
 断層面の傾斜は、断層露頭の性状(渡辺・宇根,1985)とボーリング調査結果(新潟県,2000)及びトレンチ調査結果(産業技術総合研究所,2006)などから、西傾斜と考えられ、ボーリング調査結果から地下十数mまでは45°程度と推定される。
 断層面の下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると約15−20kmと推定されるが、地下深部の傾斜が明らかではないことから、断層面の幅は不明である。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)注10

 本断層帯は、活断層研究会編(1980,1991)、渡辺・宇根(1985)、小松原(1991)、新潟県(1999,2000,2001)、池田ほか編(2002)、渡辺ほか(2003)、産業技術総合研究所(2006)などに示された変位地形や地質構造から、東側に対して西側が相対的に隆起していると見なすことができる。上述のように断層面は西へ傾斜しているので、本断層帯は、西側が東側に乗り上げる逆断層と考えられる。
 なお、横ずれ成分については、これを横切る河流の屈曲現象などに基づいて、左横ずれ成分を伴う可能性が指摘されている(渡辺・宇根,1985;小松原,1991)。しかし、それに対応する地質学的な証拠は見出されていない。また、識別される新期の変位地形の中に、それを積極的に裏づける横ずれ地形が認められないことから、横ずれ変位を伴う可能性は低いと判断し、ここではその存在を考慮しないこととした。

2.2 断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)

 本断層帯の平均変位速度を評価するための資料として、以下のものがある。

[1] 新発田市貝屋地点

 新発田市貝屋において、丘陵を開析して西に向かう河谷が加治川断層によって断たれて形成されたと考えられる東に開口する風隙地形(注11)が認められる。新潟県(2000)は、この風隙の谷底部と断層の下盤側に位置すると見られるその東側の低地部で、ピット調査(下小中山No.1地点ピット)とボーリング調査(Ky−2孔)を行い(図4)、約3万5千年前のシルト層の分布に約8.5mの高度差を見出した。両地点で認められたこのシルト層が、一連の堆積物であるとすると、その分布高度差と年代から、約0.2m/千年の平均上下変位速度が導かれる。

[2] 新発田市金山地点

 新発田市金山においても、加治川断層の変位で生じたと考えられる東に開口する風隙地形が認められる。新潟県(2000)は、この風隙の谷底面を、上記の貝屋地区で姶良Tn火山灰の降下期頃に離水したことを示す資料が得られたkj−5面に対比し、これと、400m余り下流の東側低地部で実施されたボーリング調査で見つかった姶良Tn火山灰層との分布高度の差12mを同火山灰降下期以降における加治川断層の上下変位量とみなし、平均上下変位速度を求めている。姶良Tn火山灰の降下年代を約2万8千年前(注12)とすると、平均上下変位速度は約0.4m/千年となる。なお、12mという数値は、風隙前縁の低崖を低断層崖とみなしてその比高1.5mとボーリング地点における姶良Tn火山灰層埋没深度10.5mを加えて求められたものである。

 上記の[1][2]いずれについても、変位基準の認定や変位量の見積もりの結果に不確かさが伴っていて、精度の高い資料とは言えない。しかし、両者が同程度の値を示すことに注目して、ここでは、本断層帯は0.2−0.4m/千年程度の平均上下変位速度を有する可能性があると判断した。

(2)活動時期

a)地形・地質的に認められた過去の活動

[1] 貝屋地点(トレンチ調査)

 産業技術総合研究所(2006)は、新発田市貝屋で地形改変前に撮影された空中写真の判読により連続する東向きの低崖が認められることから、これを横断する形でボーリング及びトレンチ調査を実施し、礫層、シルト層などを切る数条の西傾斜を示す逆断層を確認した(図5)。
 トレンチ北壁面のスケッチに基づくと、壁面に現れた断層は、4層中に発達するF1断層群及び主として5層中に発達するF2断層群の2つの断層群に区分された。F1a断層は縄文晩期の土器を含む4a層(砂質礫層)を変位させており、3層(礫混じり腐植質シルト層)以上の地層に覆われる。3層は人為的な地層と推定されていることから(産業技術総合研究所,2006)、そこから得られた年代値は3層の形成年代を示さないと考えられる。また、4a層中位に含まれる土器の年代は、約3千2百年前と推定されている(産業技術総合研究所,2006)。以上のことから、この地点では約3千2百年前以後に活動があったと推定される。
 F2断層群は5層(砂質礫層)及び4b層(砂質シルト層、砂質礫層)を変位させ、4a層の一部に覆われている。このことから、4b層堆積後、4a層堆積前に活動があった可能性がある。4b層からは年代値は得られていないが、その下位にあたる5層上部から得られた14C年代値(約9千−8千7百年前,注13)、F2断層群を覆う4a層下部から得られた14C年代値(約5千6百−5千5百年前)に基づくと、その活動時期は、約9千年前以後、約5千5百年前以前となる。また、5層は4b層に比較して明らかに急斜しているため、5層堆積後、4b層堆積前に活動があった可能性もある。以上のことから、約9千年前以後、約5千5百年前以前に、少なくとも1回の活動があったと推定される。
 6層はほぼ垂直に傾斜する7層(礫と腐植質シルトの互層)を傾斜不整合関係で覆うことから、7層堆積後、6層堆積前に、少なくとも1回の活動があったと推定される(図6)。6層からは年代値が得られていないが、7層上部から得られた14C年代値(約1万1千年前)と、6層の上位にあたる5層上部(砂質礫層、レンズ状に腐植質シルト層挟む)から得られた14C年代値(約9千1百−8千7百年前)に基づくと、その活動時期は、約1万1千年前以後、約8千7百年前以前であったと推定される。

[2] 金山地点(トレンチ調査)

 新潟県(2000)は、加治川断層の南端部に位置する新発田市金山の低地部で群列ボーリング調査を実施した。その結果、姶良Tn火山灰層が挟在する砂礫層に西側から新第三紀鮮新世の鍬江層が乗り上げる西傾斜約45°の逆断層(加治川断層)が伏在し、さらにこれを覆う沖積層の一部が変形して東に30−50°急傾斜することを明らかにした。
 産業技術総合研究所(2006)は、新潟県(2000)の調査地点に近接する地点でトレンチ調査を実施した。トレンチ壁面には、シルト・砂等が露出し、それらが南東側に撓(たわ)み下がる構造が認められた(図7)。
 トレンチ北壁面のスケッチに基づくと、5層上部(粗粒砂層主体、シルト層挟在)は撓曲(とうきょく)変形しているが、その変形は少なくとも3層(暗灰色腐植質シルト層)以上の地層には及んでいない。このことから、5層堆積後、3層堆積前に最新活動があった可能性がある。5層上部から得られた14C年代値(約3千9百−3千6百年前)と、3層下部から得られた14C年代値(約2千8百−2千6百年前)に基づくと、その活動時期は約3千9百年前以後、約2千6百年前以前となる。
 また5層(粗粒砂層)基底の上下変位量は、5層上部の上下変位量より大きいことから、5層堆積中に活動があった可能性がある。この上下変位量は、5層基底と5層下部の約5千8百−5千6百年前の14C年代を示す腐植層との間で大きく変化していることから、断層活動はこの間に限定される可能性がある。6層最上部からは約6千8百−6千7百年前の14C年代値が得られていることから、その活動時期は、約6千8百年前以後、約5千6百年前以前の可能性がある。

b)先史時代・歴史時代の活動

 本断層帯周辺では、歴史時代の被害地震の記録や地震考古学上の知見は得られていない。1670年に新潟県中部の南蒲原郡付近に被害をもたらした地震の記録があるが、この断層帯から発生した可能性のある地震の記述はない(宇佐美,2003)。したがって、少なくとも最近300年間程度は、この断層帯の活動はなかった可能性がある。

 以上のことから、本断層帯の最新活動は、約3千2百年前以後、約2千6百年前以前にあったと推定される。1つ前の活動は約6千8百年前以後、約5千6百年前以前の可能性があり、また、2つ前の活動は約1万1千年前以後、約8千7百年前以前であったと推定される(図9)。

(3)1回の変位量(ずれの量)

 新発田市金山のトレンチ及びボーリング調査結果に基づくと、5層上面に0.7m、6層上面に1.7mの落差が認められる(図8)。ここで、5層の落差は最新活動1回の、6層上面の落差は2回の活動によって形成されたと推定できる。このことから、1回の活動に伴う上下変位量は1m程度となる。
 また、本断層帯の両端の位置には不確かさを伴うが、断層帯全体の長さは約16kmであることから、以下の経験式(松田,1975)に基づくと、1回の活動に伴う上下変位量は1m程度(計算値1.3m)と求まる。

        Log L=0.6M−2.9   (1)
        Log D=0.6M−4.0   (2)

 ここで、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Mは地震のマグニチュード、Dは1回の活動に伴う変位量(m)である。
 なお、新潟県(2001)は、新発田市金山で実施したボーリング調査の結果から、1回の変位量を3.0−3.5m程度の上下変位と推定しているが、この値については前述の検討結果から複数回の活動によって形成されたと考えられる。

 以上のことから、本断層帯の1回の活動に伴う上下変位量は1m程度であった可能性がある。

(4)活動間隔

 本断層帯では、最新活動が約3千2百年前以後、約2千6百年前以前、1つ前の活動は約6千8百年前以後、約5千6百年前以前、2つ前の活動は約1 万1千年前以後、約8千7百年前以前であったことから、平均活動間隔は約2千8百−4千2百年であったと推定される。
 なお、上述で求めた1回の変位量(1m)と、平均変位速度(0.2−0.4m/千年)に基づき計算すると、平均活動間隔は約2千5百−5千年と求められ、上記の値と調和的である。

(5)活動区間

 本断層帯を構成する各断層は、概ね連続的に分布することから、松田(1990)の基準に基づけば、全体が1つの区間として活動した可能性がある。

(6)測地観測結果

 本断層帯周辺における2006年4月までの8年間のGPS観測結果では、断層帯の西側で東西方向の縮みが見られる。

(7)地震観測結果

 本断層帯の南方の月岡断層帯付近では、1995年4月1日にマグニチュード5.6の地震が発生している。この地震の発震機構解は、西北西−東南東に圧力軸をもつ逆断層型であった。最近9年間の地震活動から、地震発生層の深さの下限は約15−20kmと推定される。

2.3 断層帯の将来の活動

(1)活動区間及び活動時の地震の規模

 2.2.(5)で記述したように、本断層帯は全体が1つの活動区間として同時に活動する可能性がある。
 本断層帯の全体の長さに関する評価には不確かさがあるが、計測した断層帯全体の長さは約16kmであることから、上述の経験式(1)を用いて地震の規模を求めると、マグニチュード6.8程度となる可能性がある。その際には、過去の活動に基づくと、断層の西側が東側に対して相対的に1m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 本断層帯の平均活動間隔が約2千8百−4千2百年、最新活動時期が約3千2百年前以後、約2千6百年前以前であったと推定されることから、平均活動間隔に対する現在における地震後経過率は、0.6−1.1となる。また、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ0.3%−5%、0.6%−8%、1%−20%、及び5%−40%となる。また、現在までの集積確率は、3%−80%となる。表3にこれらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。本評価で得られた将来の地震発生確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。

2.4 今後に向けて

 今回の評価(一部改訂)では、最新活動時期を従来の評価より狭い範囲に推定し、かつ複数の活動時期を推定することができた。これにより、平均活動間隔をより精度よく求めることができたことから、将来の地震発生確率等についても同様に信頼度の高い評価とすることができた。また、1回の変位量について前回よりも絞り込んだ値を求めることができ、ここから求められる地震の規模が、断層の長さから計算される値と調和的となった。このことから、将来の活動時の地震の規模についても、やや信頼度を高めることができた。
 しかし、本断層帯の位置及び長さは、いまだ正確には把握されていない。断層帯の北半部を構成する坂町付近の断層は、その北端の位置が明らかとなっていない。また本断層帯の南東に比較的近接している胎内川左岸から加治川右岸にかけて分布する断層帯についてもその位置・形状が明確になっていない。さらに南半部を構成する加治川断層の南側には加治川による新しい河成面が広がっており、その南端が明らかではない。本断層帯の南には走向及び変位の向きを同じくする月岡断層帯があることから、相互の関係を調査する必要がある。
 本断層帯の将来の活動をより明確にするためには、付近に分布する他の断層帯を含め、それらの性状について、より精度の良い資料を得ることが望ましい。


注9: 池田ほか編(2002)が岩船郡荒川町坂町付近に示した無名の断層について、本評価では、 便宜上、坂町付近の断層と仮称し、表記した。
注10: 「変位」を、1頁の本文及び5、6頁の表1では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは、専門用語である「変位」が本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓(たわ)みの成分」よりなる。
注11: 「風隙」とは、過去に河川が流れていたことを示す稜線上のくぼみを示す。貝屋、金山両地点では河谷の一部で断層活動による局所的な隆起・傾動などの地変が起こり、この地点を境にしてその両側を流れる河川が異なる方向へ流れるようになったことにより形成されたと考えられる。
注12: 姶良Tn火山灰層(AT)の降下年代値については、日本第四紀学会第四紀露頭集編集委員会編(1996)、小池・町田(2001)等から、25,000年BPとし、暦年補正して約2万8千年前とした。
注13: 炭素同位体年代については、Ramsey (1995,2001) 、Reimer et al.(2004)に基づいて暦年補正し、原則として1σの範囲の数値で示した。このうち2,000年前よりも新しい年代値は世紀単位で示し、2,000年前よりも古い年代値については、百年単位で四捨五入して示した。また、10,000年より古い年代値については、1千年単位で四捨五入して示した。



文 献

池田安隆・今泉俊文・東郷正美・平川一臣・宮内崇裕・佐藤比呂志編(2002): 「第四紀逆断層アトラス」.東京大学出版会,254p.

地震調査研究推進本部(1997): 「地震に関する基盤的調査観測計画」.38p.

地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会(1999):「(改訂試案)長期的な地震発生確率の評価手法について」.74p.

地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001): 「長期的な地震発生確率の評価手法について」.46p.

地震調査研究推進本部地震調査委員会(2002a): 「櫛形山脈断層帯の評価」.17p.

地震調査研究推進本部地震調査委員会(2002b): 「月岡断層帯の評価」.18p.

活断層研究会編(1980): 「日本の活断層−分布図と資料」.東京大学出版会,363p.

活断層研究会編(1991): 「新編日本の活断層−分布図と資料」.東京大学出版会,437p.

小池一之・町田 洋編(2001):「日本の海成段丘アトラス」.東京大学出版会,CD−ROM3枚・付図2葉・105p.

小松原琢(1991): 新潟平野北東縁部の活構造−変位速度からみた地殻変動の地域的特徴−.東北地理,43,73−97.

小松原琢・田中 保(1994): 新潟平野東縁部の第四系と地殻変動.地球科学,48,31−50.

町田 洋・新井房夫(2003): 「新編 火山灰アトラス−日本列島とその周辺」.東京大学出版会,336p.

松田時彦(1975): 活断層から発生する地震の規模と周期について.地震第2輯,28,269−283.

松田時彦(1990): 最大地震規模による日本列島の地震分帯図.地震研究所彙報,65,289−319.

中田 高・今泉俊文編(2002): 「活断層詳細デジタルマップ」.東京大学出版会,DVD−ROM2枚・付図1葉・60p.

日本第四紀学会第四紀露頭集編集委員会編(1996): 「第四紀露頭集−日本のテフラ」.日本第四紀学会,352p.

新潟県(1999):「平成10年度地震関係基礎調査交付金 櫛形山脈断層帯に関する調査 成果報告書」.1・1−4・18.

新潟県(2000): 「平成11年度地震関係基礎調査交付金 櫛形山脈断層帯に関する調査 成果報告書」.57p.

新潟県(2001): 「平成12年度地震関係基礎調査交付金 櫛形山脈断層帯に関する調査 成果報告書」.43p.

Ramsey,C.B.(1995): Radiocarbon Calibration and Analysis of Stratigraphy: The OxCal Program.Radiocarbon37,425−430.

Ramsey,C.B.(2001): Development of the Radiocarbon Program OxCal.Radiocarbon43,355−363.

Reimer,P.J.Baillie,M.G.L.,Bard,E.,Bayliss,A.,Beck,J.W.,Bertrand,C.,Blackwell,P.G.,Buck,C.E.,Burr,G.,Cutler,K.B.,Damon,P.E.,Edwards,R.L.,Fairbanks,R.G.,Friedrich,M.,Guilderson,T.P.,Hughen,K.A.,Kromer,B.,McCormac,F.G.,Manning,S.,Ramsey,C.B.,Reimer,R.W.,Remmele,S.,Southon,J.R.,Stuiver,M.,Talamo,S.,Taylor,F.W.,van der Plicht,J.and Weyhenmeyer,C.E.(2004): IntCal04 terrestrial radiocarbon age calibration,0−26cal kyr BP.Radiocarbon46,1029−1058.

産業技術総合研究所(2006): 櫛形山脈断層帯の活動性および活動履歴調査「基盤的調査観測対象活断層の追加・補完調査」成果報告書.No.H17−9,13p.

谷口 薫・吾妻 崇(1998): 新潟平野東縁部における新たな活断層の認定.活断層研究,17,65−71.

辻村太郎(1942): 「断層地形論考」.古今書院,347p.

宇佐美龍夫(2003): 「最新版 日本被害地震総覧[416]−2001」.東京大学出版会,605p.

渡辺満久・宇根 寛(1985): 新潟平野東縁の活断層と山地の隆起.地理学評論,58,536−547.

渡辺満久・宮内崇裕・八木浩司・藤本大介(2003):1:25,000都市圏活断層図「新発田」.国土地理院技術資料D・1−No.416.

山下 昇(1970):柏崎−銚子線の提唱.星野通平・青木 斌編「島弧と海洋」.東海大学出版会,179−191.




表3 櫛形山脈断層帯の将来の地震発生確率及び参考指標

項  目                           数  値                  備   考
地震後経過率(注 7

今後30年以内の発生確率
今後50年以内の発生確率
今後100年以内の発生確率
今後300年以内の発生確率

集積確率(注8
0.6−1.1

0.3%−5%
0.6%−8%
1%−20%
5%−40%

3%−80%
発生確率及び集積確率は地震
調査研究推進本部地震調査委
員会(2001)参照。
指標(1) 経過年数
       比
指標(2)
指標(3)
指標(4)
指標(5)
マイナス3百年−1千2百年
0.9−1.6
0.5−5
3%−80%
0.06−0.6
0.0002−0.0004
地震調査研究推進本部地震調
査委員会長期評価部会(199
9)参照。
評価時点はすべて2006年1月1日現在。その最大値は、平均活動間隔が 2千8百年で最新の活動が
3千2百年前の場合で、その時の地震の規模はマグニチュード6.8程度である。

指標 (1) 経過年数 当該活断層帯での大地震発生の危険率(1年 間当たりに発生する回数)は最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(BPT分布モデルを適用した場合の考え方)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合の考え方)。
この指標は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。値がマイナスである場合は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達していないことを示す。ポアソン過程を適用した場合の危険率は、4千2百分の1(0.0002)−2千8百分の1(0.0004)であり、いつの時点でも一定である。BPT分布モデルを適用した場合の危険率は評価時点で9千1百分の1−6百分の1(0.0001−0.002)であり、時間とともに増加する。9千1百分の1であれば、BPT分布モデルを適用した場合の危険率はポアソン過程を適用した場合の危険率に達するまでに今後約3百年を要するが、6百分の1であればすでに1千2百年が経過していることになる。
指標 (1) 最新活動(地震発生)時期から評価時点まで の経過時間をAとし、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率を超えるまでの時間をBとした場合において、前者を後者で割った値(A/B)である。
指標 (2)
BPT分布モデルを適用した場合と、ポアソ ン過程を適用した場合の評価時点での危険率の比。
指標 (3)
評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標 (4)
評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の地震発生確率の値で割った値。
指標 (5)
ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。


付表

地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。

  ランク   分類条件の詳細
発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高く(◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。
平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。
平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く(△)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性がやや低い。
平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く(▲)、発生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の確率値を求めることができず、 単に長期間の平均値を確率としている。



<付録>

 櫛形山脈断層帯については、産業技術総合研究所(2006)の調査によりトレンチ調査などが実施され、新たな知見が得られたことから、これに基づき再検討 を行い、過去の活動履歴などについて改訂を行った。
 以下に改訂となった項目とその値について、前回の評価と今回の評価の対比表を示す。なお、評価にあたっては、下表に示す数値のほか各値を求めた根拠についても改訂していることに留意されるとともに、その詳細については評価文を参照されたい。

櫛形山脈断層帯の評価についての新旧対比表

項  目 前回の評価
(平成14年9月11日公表)
今回の評価
(平成18年10月17日公表)
最新活動時期 約6600年前以後、
300年前程度以前 
約3200年前以後、
約2600年前以前 
1回のずれの量 3.5m以下 1m程度
平均活動間隔 約3000−18000年 約2800−4200年
地震の規模
(マグニチュード)
6.8−7.5程度 6.8程度
地震発生確率
(30年)
ほぼ0%−7%
[BPT] 
0.3%−5
[BPT] 
地震後経過率 0.02−2. 2 0.6−1.1

対比表に示した(◎、○、△)及び(a、b、c、d)については信頼度を表す。それぞれの詳細については注3注6を参照されたい。▲は信頼度が非常に低い事を示す。