平成17年2月9日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会


長井盆地西縁断層帯の長期評価について


地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について−地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。

地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、これまでに陸域の活断層として、77断層帯の長期評価を行い公表した。

今回、引き続き、長井盆地西縁断層帯について現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。

評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。


平成17年2月9日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

長井盆地西縁断層帯の評価

長井盆地西縁断層帯は、山形県南部の長井盆地の北方から長井盆地西縁、米沢盆地西縁にかけて分布する活断層帯である。ここでは、平成12−13年度に山形県によって行われた調査をはじめ、これまでに行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した。

1.断層帯の位置及び形態

長井盆地西縁断層帯は、山形県西村山郡朝日町から長井市を経て米沢市に至る断層帯である。長さは約51kmで、南北方向に延びており、断層の西側が相対的に隆起する逆断層と推定される(図1−1及び表1)。

2.断層帯の過去の活動

長井盆地西縁断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は、0.4−0.5m/千年程度の可能性があり、最新の活動は約2千4百年前以後にあったと推定される。活動時には、断層の西側が東側に対して相対的に2.5m程度隆起した可能性がある。本断層帯の平均活動間隔は5千−6千3百年程度であった可能性がある(表1)。

3.断層帯の将来の活動

長井盆地西縁断層帯は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.7程度の地震が発生する可能性がある。その時、断層近傍の地表面では西側が東側に対して相対的に2.5m程度高まる段差や撓みが生ずる可能性がある(表1)。本断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりである(注1、2)。

4.今後に向けて

長井盆地西縁断層帯については、活動履歴に関する詳しい資料が得られていないため、これらについての精度良いデータを集積させて、活動区間を明確にし、最近の活動履歴や平均活動間隔を正確に把握する必要がある。

表1 長井盆地西縁断層帯の特性

項  目 特  性   信頼度  
(注3)
根  拠
(注4)
1.断層帯の位置・形態
  (1)断層帯を構成
 する断層
宮宿(みやじゅく)断層、常盤(ときわ)
断層、古屋敷の断層、長井盆地西縁断層、
黒川右岸の断層、高戸屋山断層、下屋敷付
近の断層、米沢盆地西縁断層
  文献1、3による。
  (2) 断層帯の位置・
   形状
地表における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
  (北端)北緯38°18′東経140°09′
  (南端)北緯37°51′東経140°05′
 長さ    約51km








文献3、5による。
位置及び長さは図2
から計測。
地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置
       地表での長さ・位置と同じ

 上端の深さ  0km

 一般走向   N10゜E


 傾斜     西傾斜


 幅      不明











上端の深さが0kmで
あることから推定。

地形の特徴から推定。

一般走向は、断層帯の
両端を直線で結んだ
方向。
文献1、4−7などに
示された地形の特徴
による。
地震発生層の下限の
深さは15km程度。
  (3) 断層のずれの向
   きと種類
 西側隆起の逆断層

文献1、4−7など
に示された地形の特
徴による。
2.断層帯の過去の活動
  (1) 平均的なずれの
   速度
 0.4−0.5m/千年程度(上下成分)


文献4に示された資
料から推定。
  (2) 過去の活動時期  活動1(最新活動)
    約2千4百年前以後


文献4に示された資
料から推定。
  (3) 1回のずれの量
   と平均活動間隔
 1回のずれの量 2.5m程度
       (上下成分)

 平均活動間隔 5千−6千3百年程度




文献4に示された資
料から推定。

平均的なずれの速度
と1回のずれの量か
ら推定。
  (4) 過去の活動区間  不明
 
3.断層帯の将来の活動
  (1) 将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
 活動区間   断層帯全体で1区間
 地震の規模  マグニチュード7.7程度
 ずれの量   2.5m程度(上下成分)




断層の長さから推定。
過去の活動から推定。


表2 断層帯の将来の地震発生確率等

項  目   将来の地震発生確率等  
(注5)
 信頼度 
(注6)
備  考

地震後経過率 (注7)

今後 30 年以内の地震発生確率
今後 50 年以内の地震発生確率
今後 100 年以内の地震発生確率
今後 300 年以内の地震発生確率

集積確率(注8)


0.5以下

0.02%以下
0.04%以下
0.1%以下
0.5%以下

0.1%以下
発生確率及び集積確
率は文献2による。

注1: 我が国の陸域及び沿岸域の主要な98の活断層のうち、2001年4月時点で調査結果が公表されているものについて、その資料を用いて今後30年間に地震が発生する確率を試算すると概ね以下のようになると推定される。
  98断層帯のうち約半数の断層帯:30年確率の最大値が0.1%未満
98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満
98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が3%以上
(いずれも2001年4月時点での推定。確率の試算値に幅がある場合はその最大値を採用。)
  この統計資料を踏まえ、地震調査委員会の活断層評価では、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
注2: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率と集積確率は以下のとおりである。
地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995年兵庫県南部地震
(M7.3)
六甲・淡路島断層帯
主部淡路島西岸区間
「野島断層を含む区間」
(兵庫県)
0.02%−8% 0.06%−80% 約1.7−約3.5
1858年飛越地震
(M7.0−7.1)
跡津川断層帯
(岐阜県・富山県)
ほぼ0%−13% ほぼ0%−
90%より大
約1.7−約3.6
1847年善光寺地震
(M7.4)
長野盆地西縁断層
(長野県)
ほぼ0%−20% ほぼ0%−
90%より大
約0.8−約2.5

「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が5千年の場合は30年確率の最大値は5%程度である。
注3: 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
  ◎:高い、○:中程度、△:低い
注4: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
  文献1:池田ほか編(2002)
  文献2:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
  文献3:活断層研究会編(1991)
  文献4:宮内ほか(2004)
  文献5:中田・今泉編(2002)
  文献6:山形県(2001)
  文献7:山形県(2002)
注5: 評価時点はすべて2005年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を示す。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
注6: 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
  a:(信頼度が)高い b:中程度 c:やや低い d:低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度
a:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。
注7: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。今回評価した数字のうち0.5は2400年を5000年で割った値である。
注8: 前回の地震発生から評価時点までの間に地震が発生しているはずの確率。


(説明)

1.長井盆地西縁断層帯に関するこれまでの主な調査研究

長井盆地西縁断層帯は、山形県南部の長井盆地北方から長井盆地西縁、米沢盆地西縁にかけて分布する西上がりの逆断層である。
辻村(1932)は、本断層帯周辺に分布する断層として、米沢断層群を記載した。今泉(1980)は、本断層帯付近に分布する断層として、長井盆地西縁断層、高戸屋山断層及び小樽川断層からなる長井〜米沢活断層系を提唱した。活断層研究会編(1980,1991)は、長井盆地西縁に沿う活断層の分布を明らかにし、米沢盆地域では、その西方の丘陵内に分布する北東−南西走向の活断層を示した。
活動履歴に関する調査については、阿子島(1986)が長井市草岡付近及び白鷹町高岡付近で段丘礫層を切る断層露頭を記載し、八木(1999)は晩氷期−完新世後半に離水した扇状地面の変位量から、本断層帯の最新活動時期と活動間隔について議論した。最近、宮内ほか(2004)は、長井盆地西縁断層帯の第四紀後期の活動性と地形発達について議論している。また、山形県(2001,2002)によって、地形・地質調査、浅層反射法探査、ボーリング調査、トレンチ調査などが行われ、米沢盆地の西縁に沿って分布する活断層の存在が明らかにされた。このほか、本断層帯の詳しい位置は、池田ほか編(2002)及び中田・今泉編(2002)に示されている。

2.長井盆地西縁断層帯の評価結果

2.1 長井盆地西縁断層帯の位置及び形態

(1)長井盆地西縁層帯を構成する断層

本断層帯は、山形県西村山郡朝日町から長井市を経て米沢市にかけて分布している(図1−1図2)。
本断層帯を構成する断層の位置・形態は、活断層研究会編(1980,1991)、山形県(2002)、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)などに示されている。これらでは、主要断層の分布についてはほぼ共通する認識が示されている。ここでは、断層の位置は主に中田・今泉編(2002)に、一部は活断層研究会編(1991)にしたがった。また、断層の名称は活断層研究会編(1991)及び池田ほか編(2002)にしたがった(注9)。
本断層帯は、北から、宮宿(みやじゅく)断層、常盤(ときわ)断層、古屋敷の断層、長井盆地西縁断層、黒川右岸の断層、高戸屋山断層、下屋敷付近の断層、米沢盆地西縁断層などによって構成される。
長井盆地西縁断層と古屋敷の断層の北側及び南側、高戸屋山断層・米沢盆地西縁断層の間には、やや大きな断層線の不連続が認められるが、幅5kmを大幅に超えるものではないことから、松田(1990)の起震断層の基準に従って、全体を1つの断層帯とみなした。
なお、本断層帯の北側には、明神山東方付近の断層(池田ほか編,2002など)が分布するが、東側隆起の断層が主体であることから、山形盆地断層帯に関連する可能性があると考え、本断層帯には含めないこととした(図1−2図3)。また、活断層研究会編(1991)の白鷹山周辺の断層と一本松東の断層は、断層の走向及び性質が異なることや全長が20kmに満たないことから、評価対象には含めなかった。さらに、米沢盆地西方の丘陵地に北東−南西方向に分布する小樽川断層(活断層研究会編,1991)は、山形県(2001)の調査の結果、活断層ではない可能性が高まったことから評価対象に含めなかった(図3)。

(2)断層面の位置・形状

本断層帯の長さ及び一般走向は、図2に示された断層帯の両端を直線で結んで計測すると、約51km、N10゜Eとなる。なお、北端付近に分布する宮宿断層、常盤断層及び古屋敷の断層は山地内に間隔をおいて位置しているので、長井盆地あるいは米沢盆地の西縁をなす断層とは性質を異にする可能性もあり、本断層帯の北端位置の認定には大幅な不確かさが伴われている。
断層面の上端の深さは、地表まで変位が及んでいることから0kmとした。
断層面の傾斜については、後述のように、本断層帯が西側を隆起させる逆断層と推定されることから、西傾斜であると推定される。
断層面下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると15km程度と推定されるが、断層面の幅については、地下深部の傾斜が明らかではないため不明である。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注10)

本断層帯は、東へ撓み下がる変位地形が認められること、撓曲崖の背後では逆傾斜する傾動や西向き低断層崖が生じていること(中田・今泉編,2002など)から判断すると、西側が東側に乗り上げる逆断層と推定される。

2.2 長井盆地西縁断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注10)

本断層帯中部の長井市川原沢地点ではM2面が15m変位している(宮内ほか,2004;図4)。M2面は被覆火山灰層下部に姶良Tn火山灰(約2.8万年前;町田・新井,2003,注11)を挟むことから、3−4万年前に形成されたと推定される(宮内ほか,2004)。この資料から、平均変位速度は0.4−0.5m/千年程度と導かれる。
なお、飯豊町中西地点ではNM面が約9m、飯豊町小山地点ではL1面が6−8m変位しているとされている(山形県,2001;宮内ほか,2004)が、これらは、変位の認定の根拠となる地形面の形成年代が定かでない。
以上のことから、本断層帯の平均上下変位速度は、0.4−0.5m/千年程度の可能性がある。

(2)活動時期

a)地形・地質的に認められた過去の活動

本断層帯中部の長井市平山地点では、L2面が西側隆起で変位している(八木,1998;山形県,2002;宮内ほか,2004)。宮内ほか(2004)によるボーリング調査の結果、L2面構成層の最も上部に位置する泥炭層の14C年代値は、約2千4百−2千2百年前を示している(注12)。
以上のことから、本断層帯の最新活動時期は約2千4百年前以後と推定される。

b)先史時代・歴史時代の活動

本断層帯に関連する先史時代・歴史時代の地震は知られていない(宇佐美,2003)。
なお、阿子島ほか(1997)、阿子島ほか(1998)は、寒河江(さがえ)市の三条遺跡において、地震動による噴砂と地盤流動化の痕跡を検出し、関係した地震の発生時期を13世紀頃と推定した。しかし、これと本断層帯との直接的な関係は不明である。

(3)1回の変位量(ずれの量)(注10)

上述の平山地点におけるL2面の上下変位量は約2.5mである。(宮内ほか,2004;図5)。L2面は、変位が認められる最も新しい地形面であることから、この変位量は、1回の活動により生じた可能性がある。
したがって、本断層帯の1回の上下変位量は、2.5m程度の可能性がある。
なお、本断層帯の長さは約51kmであることから、次の松田(1975)の経験式に基づくと、1回の変位量は4.1mと求められる。

    LogL=0.6M−2.9(1)
    LogD=0.6M−4.0(2)
ただし、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Dは断層の変位量(m)、Mは地震のマグニチュード。

(4)活動間隔

本断層帯の活動間隔に関する直接的な資料は得られていないが、前述の1回の変位量(上下成分2.5m程度)と平均上下変位速度(0.4−0.5m/千年程度)から計算すると、5千−6千3百年程度の可能性がある。

(5)活動区間

本断層帯の活動区間に関する直接的資料は得られていない。

(6)測地観測結果

本断層周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果では、顕著な歪みは見られない。
また、1985年から約10年間の観測結果や最近5年間のGPS観測結果でも、顕著な歪みは見られない。

(7)地震観測結果

本断層帯周辺の最近約6年間の地震観測結果によると、本断層帯付近の地震活動状況は、全般に低調である。本断層帯付近の地震発生層の下限の深さは15km程度と推定される。

2.3 長井盆地西縁断層帯の将来の活動

(1)活動区間と活動時の地震の規模

長井盆地西縁断層帯全体を1つの活動区間とした場合、前述の松田(1975)の経験式(1)に基づくと、長井盆地西縁断層帯(長さ約51km)から発生する地震の規模はマグニチュード7.7程度の可能性がある。
このような地震が発生した場合には、過去の活動から、断層近傍の地表面には西側隆起で2.5m程度の段差や撓みが生ずる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

本断層帯の平均活動間隔は5千−6千3百年程度、最新活動時期が約2千4百年前以後と求められていることから、平均活動間隔に対する現在における地震後経過率は0.5以下となる。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ0.02%以下、0.04%以下、0.1%以下、0.5%以下となる。また、現在までの集積確率は、0.1%以下となる。表3にこれらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。

3.今後に向けて

長井盆地西縁断層帯の活動履歴に関する詳しい資料が得られていないので、これらについての精度良いデータを集積させて、活動区間を明確にし、最近の活動履歴や平均活動間隔を正確に把握する必要がある。とくに、米沢盆地西縁断層や本断層帯北部に含めた常盤断層、宮宿断層及び古屋敷の断層は、活動履歴等がまったく不明であるので、基礎資料を整え、それぞれの断層の活動性、長井盆地西縁断層との関係について再検討する必要がある。

注9: 本評価で示した断層の名称のうち、「古屋敷の断層」、「黒川右岸の断層」、「明神山東方付近の断層」、「白鷹山周辺の断層」及び「一本松東の断層」については、活断層研究会編(1991)では、「古屋敷」、「黒川右岸」などとしか名称の記載がないことから、本評価に際しては便宜上これらの断層を、名称の後ろに「の断層」を付加して表記している。また、「下屋敷付近の断層」については、中田・今泉編(2002)では、断層形態の記載のみで名称が付されていないことから、本評価で仮称している。
注10: 「変位」を、1頁の本文及び4、5頁の表1では、一般にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは専門用語である「変位」が、本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓(たわ)みの成分」よりなる。
注11: 姶良Tn火山灰(AT)の降下年代値については、日本第四紀学会第四紀露頭集編集委員会編(1996)、小池・町田編(2001)等から、25,000年BPとし、暦年補正して約2万8千年前とした。
注12: 10,000年BPよりも新しい炭素同位体年代については、Niklaus(1991)に基づいて暦年補正し、原則として1σの範囲の数値で示した。

文 献

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安彦宏人・安孫子政行・安部昇一・伊藤 修・柿崎正昭・名和時雄・西谷克彦・沼野達明・大場 聡・桜井和敏・鈴木雅宏・柴橋敬一・高橋静夫・田宮良一・山形 理・吉田三郎(1979b):5万分の1地質図幅「荒砥」及び同説明書.山形県,1−25.

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Niklaus, T. R.(1991):CalibETH version 1.5, ETH Zurich, 2disketts and manual, 151p.

佐竹伸一(1989):最上川中流部・五百川峡谷周辺の地質と大地の成り立ち.山形応用地質,9,17−24.

佐竹伸一(2000):最上川中流部・朝日町三中地区の構造地形について.山形応用地質,20,77−80.

佐藤比呂志・池田安隆(1999):東北日本の主要断層モデル.月刊地球,21,569−575.

鈴木敬治・吉田 義・真鍋健一(1977):東北地方南部地域における内陸盆地の発達史について.地質学論集,14,45−64.

豊島正幸(1977)最上川中流部,山形・長井両盆地間の河岸段丘.東北地理,29,221−227.

辻村太郎(1932):東北地方の断層盆地(上)(下).地理学評論,8,641−658,984−992.

宇佐美龍夫(2003):「最新版 日本被害地震総覧[416]−2001」.東京大学出版会,493p.

八木浩司(1999):山形県・長井盆地西縁の活断層の最終活動時期と活動度.「後氷期の重要地質事象に関する高精度年代測定の実用化に関する研究」,平成9年度〜平成10年度科学研究費補助金(基礎研究(C)(1)),研究成果報告書,33−38.

八木浩司・平賀正和(1999):長井盆地西縁の活断層の最終時期と活動度(演旨).季刊地理学,51,243−243.

山形県(2001):「平成12年度地震関係基礎調査交付金 長井盆地西縁断層帯に関する調査 成果報告書」.山形県,254p.

山形県(2002):「平成13年度地震関係基礎調査交付金 長井盆地西縁断層帯に関する調査 成果報告書」.山形県,160p.

柳沢幸夫・山元孝広(1998):玉庭地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,94p.

米地文夫・阿子島功・西谷克彦・長浜洋美(1983):米沢盆地北縁・長井盆地の地形面と第四系(予報).東北地理,35,149−150.


表3 長井盆地西縁断層帯の地震発生確率及び参考指標

項  目                         数  値                  備   考
地震後経過率

今後30年以内の発生確率
今後50年以内の発生確率
今後100年以内の発生確率
今後300年以内の発生確率

集積確率
0.5以下

0.02%以下
0.04%以下
0.1%以下
0.5%以下

0.1%以下


発生確率及び集積確率は地
震調査研究推進本部地震調
査委員会(2001)参照。
指標(1) 経過年数
      比
指標(2)
指標(3)
指標(4)
指標(5)
マイナス1千1百年以下
0.7以下
0.04以下
0.1%以下
0.005以下
0.0002

地震調査研究推進本部地
震調査委員会長期評価部
会 (1999) 参照。

注13: 評価時点はすべて2005年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を、「ほぼ0」は10−5未満の数値を示す。なお、計算に用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
指標(1) 経過年数 :当該活断層での大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は、最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(BPT分布モデルを適用した場合の考え方)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合の考え方)。
この指標は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。値がマイナスである場合は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達していないことを示す。
本断層帯の場合、ポアソン過程を適用した場合の危険度は、5千−6千3百分の1(0.0002)であり、いつの時点でも一定である。
BPT分布モデルを適用した場合の危険率は評価時点でほぼ0であり、時間とともに増加する。BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達するには今後最長で1千1百年以上を要する。
指標(1) :最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルによる危険率がポアソン過程とした場合のそれを超えるまでの時間をBとする。前者を後者で割った値(A/B)。
指標(2) :BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の評価時点での危険率の比。
指標(3) :評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標(4) :評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の確率の値で割った値。
指標(5) :ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。

付表

地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。

  ランク   分類条件の詳細
発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較
的高く(◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。

平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く(△)、これらに
より求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。

平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く(△)、これらにより求められ
た発生確率等の値は信頼性がやや低い。

平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く(▲)、
発生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる
可能性が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないため
に、現在の確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。