平成16年10月13日
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屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯の長期評価について
地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。
地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、これまでに陸域の活断層として、64断層帯の長期評価を行い公表した。
今回、引き続き、屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯について現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。
評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。
・平成17年1月12日 経験式を用いた場合のマグニチュードの標記を変更しました。(赤字)
・平成18年1月11日 地震発生確率を訂正しました。(橙色)
平成16年10月13日 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 |
屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯の評価
屏風山(びょうぶやま)・恵那山(えなさん)断層帯及び猿投山(さなげやま)断層帯は、恵那山地、三河高原と美濃山地との境界から、岡崎平野・知多半島に至る活断層帯である。ここでは、平成7年度及び10−14年度の愛知県、平成11−13年度の岐阜県による調査をはじめ、これまでに行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した。
1.屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯の位置及び形態
屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯は、屏風山断層帯、赤河(あこう)断層帯、恵那山−猿投山北断層帯、猿投−高浜断層帯及び「加木屋断層帯」に区分される。
屏風山断層帯は、岐阜県中津川市から恵那市に至る断層帯である。長さは約15kmで、東北東−西南西方向に延び、断層の南東側が北西側に対して相対的に隆起する逆断層である(図1、図2−1及び表1)。
赤河断層帯は、岐阜県加茂郡白川町から恵那市に至る断層帯である。長さは約23kmで、北西−南東方向に延びる。断層の南西側が北東側に対して相対的に隆起する断層を主体とする(図1、図2−1及び表3)。
恵那山−猿投山北断層帯は、岐阜県中津川市から瑞浪市を経て、愛知県豊田市北西部に至る断層帯である。全体の長さは約51kmで、北東−南西方向に延びる。断層帯の東半部は断層の南東側が北西側に対して相対的に隆起する逆断層を主体とし、一部右横ずれ成分を伴う。断層帯の西半部は右横ずれを主体とする断層であり、一部上下成分を伴う(図1、図2−1及び表4)。
猿投−高浜断層帯は、愛知県西加茂郡藤岡町から大府市を経て、西尾市に至る断層帯である。全体の長さは約51kmで、屈曲点を境に北側では北東−南西方向、南側では北北西−南南東方向に延びる。本断層帯は、断層の西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層である(図1、図2−2及び表6)。
加木屋断層帯は、愛知県東海市から半田市を経て知多郡南知多町に至る断層帯である。長さは約35kmで、南北方向に延びる。断層帯の北半部は断層の西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層で、断層帯の南半部は断層の東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層である(図1、図2−2及び表8)。
2.断層帯の過去の活動
(1)屏風山断層帯
屏風山断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は0.1−0.3m/千年と推定される。本断層帯では5万年前以後に複数の断層活動が認められるが、個々の活動時期は不明である。また、既往の調査研究成果による直接的なデータではないが、経験則から求めた1回のずれの量と平均的なずれの速度に基づくと、平均活動間隔は4千−1万2千年程度であった可能性がある(表1)。
(2)赤河断層帯
赤河断層帯では、過去の活動に関する資料は得られていない(表3)。
(3)恵那山−猿投山北断層帯
恵那山−猿投山北断層帯の平均的なずれの速度は0.2−0.4m/千年(東半部では上下成分、西半部では右横ずれ成分主体)の可能性があり、最新の活動時期は約7千6百年前以後、約5千4百年前以前であったと推定される。活動時には、断層帯の東半部では断層の南東側が北西側に対して相対的に2−3m程度高まる段差や撓みが生じ、西半部では2−3m程度の右横ずれが生じたと推定される。また、平均活動間隔は約7千2百−1万4千年であった可能性がある(表4)。
(4)猿投−高浜断層帯
猿投−高浜断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は0.1m/千年程度の可能性があり、最新の活動時期は約1万4千年前頃であったと考えられる。また、既往の調査研究成果による直接的なデータではないが、経験則から求めた1回のずれの量と平均的なずれの速度に基づくと、平均活動間隔は4万年程度であった可能性がある(表6)。
(5)加木屋断層帯
加木屋断層帯の平均的な上下方向のずれの速度は0.1m/千年程度の可能性があるが、最新活動時期を含めた最近の活動履歴については不明である。また、既往の調査研究成果による直接的なデータではないが、経験則から求めた1回のずれの量と平均的なずれの速度に基づくと、平均活動間隔は3万年程度であった可能性がある(表8)。
3.断層帯の将来の活動
(1)屏風山断層帯
屏風山断層帯は、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード6.8程度の地震が発生すると推定される。また、その時、断層近傍の地表面では、断層の南東側が北西側に対して相対的に1m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある。
本断層帯は、最新活動時期が判明していないので、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めている。そのため信頼度は低いが、将来このような地震が発生する長期確率を求めると表2に示すとおりとなり、その最大値をとると、本断層帯は今後30年の間に地震が発生する可能性が我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注1−3)。
(2)赤河断層帯
赤河断層帯では、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.1程度の地震が発生すると推定される。また、その時、断層近傍の地表面では、断層の南西側が北東側に対して相対的に2m程度高まる段差が生じる可能性がある。ただし、過去の活動が明らかでないため、将来このような地震が発生する長期確率は求めることはできない。
(3)恵那山−猿投山北断層帯
恵那山−猿投山北断層帯では、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.7程度の地震が発生する可能性がある。また、その時、断層帯の東半部では断層の南東側が北西側に対して相対的に2−3m程度高まる段差や撓みが生じ、西半部では2−3m程度の右横ずれが生じると推定される。
本断層帯の最新活動後の経過率及び将来この様な地震が発生する長期確率は表5に示すとおりである。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが、その最大値を取ると、本断層帯は、今後30年間に地震が発生する確率が我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注2、3)。
(4)猿投−高浜断層帯
猿投−高浜断層帯では、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.7程度の地震が発生すると推定される。また、その時、断層の西側が東側に対して相対的に4m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある。
本断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表7に示すとおりである(注2、3)。
(5)加木屋断層帯
加木屋断層帯では、全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード7.4程度の地震が発生すると推定される。また、その時、断層帯の北半部では西側が東側に対し、南半部では東側が西側に対して相対的に3m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある。
本断層帯は、最新活動時期が判明していないので、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めている。そのため信頼度は低いが、将来このような地震が発生する長期確率を求めると表9に示すとおりとなり、本断層帯は今後30年の間に地震が発生する可能性が我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注1−3)。
4.今後に向けて
屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯は規模が大きく、その活動様式も複雑と考えられる。よって、過去の活動履歴や断層の地下深部の形状等について、さらに調査を行って本断層帯の特性を明らかにし、活動区間や区間ごとの活動度など本断層帯で発生する地震の姿を明らかにする必要がある。
屏風山断層帯では、最新活動時期が不明であるなど過去の活動履歴の詳細が明らかとなっていないため、今後、過去の活動履歴についてより一層精度良く明らかにする必要がある。
赤河断層帯及び加木屋断層帯については、過去の活動履歴がほとんど明らかにされておらず、将来の地震発生の可能性について十分な評価ができないため、過去の活動履歴全般について更に調査を行う必要がある。
恵那山−猿投山北断層帯では、恵那山断層以東(東半部)と猿投山北断層(西半部)とで、変位の主体となる方向が異なり、別々に活動した可能性も否定できないため、過去の活動履歴について信頼性を向上させる観点で更に調査を行う必要がある。
猿投−高浜断層帯では、南半部を構成する大高−大府断層及び高浜撓曲では過去の活動履歴に関する資料が得られておらず、北半部の猿投−境川断層に関しても最新活動時期以外に信頼度の高いデータが得られていない。よって、これらに関して精度の高いデータを得る必要がある。
また、名古屋市付近に推定されている断層は防災上重要な位置にあるため(図3)、その存在の有無を含めて調査を行い、詳細を明らかにする必要がある。
表1 屏風山断層帯の特性
項 目 | 特 性 | 信頼度 (注4) |
根 拠 (注5) |
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1.断層帯の位置・形態 | ||||
(1)構成する断層 | 蕨平 (わらびだいら) 断層、手賀野 (てがの) 断層、屏風山 (びょうぶやま) 断層北東部 |
文献8による。 |
||
(2)断層帯の位置・ 形状 |
地表における断層帯の位置・形状 断層帯の位置 (北東端) 北緯35°30′東経137°35′ (南西端) 北緯35°26′東経137°26′ 長さ 約15km |
◎ ○ ○ |
文献6による。 位置及び長さは図2 から計測。 |
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地下における断層面の位置・形状 長さ及び上端の位置 地表での長さ・ 位置と同じ 上端の深さ 0km 一般走向 N60°E 傾斜 高角、南東傾斜 (地表付近) 幅 不明 |
○ ◎ ◎ ○ |
上端の深さが0km であることから推定。 一般走向は断層の 北東端及び南西端 を直線で結んだ方向 (図2参照)。 傾斜は、文献6など に示された地形の特 徴及び断層露頭から 推定。 地震発生層の下限の 深さは約20km。 |
||
(3)断層のずれの向 きと種類 |
南東側隆起の逆断層 |
○ | 文献8に示された地形 の特徴などから推定 (説明文2.1.1(3) 参照)。 |
|
2.断層帯の過去の活動 | ||||
(1)平均的なずれの 速度 |
0.1−0.3m/千年 (上下成分) |
○ |
文献4−6に示された 資料から推定。 |
|
(2)過去の活動時期 | 不明 (5万年前以後複数の断層活動が認めら れるが、個々の活動時期は不明。) |
説明文2.1.2(2) 参照。 |
||
(3)1回のずれの量 と平均活動間隔 |
1回のずれの量 1m程度 (上下成分) 平均活動間隔 4千−1万2千年程度 |
△ △ |
断層の長さから推定。 1回のずれの量と、 平均的なずれの速度 から推定。 |
|
(4)過去の活動区間 | 断層帯全体で1区間 | ○ | 断層の位置関係・形 状から推定。 |
|
3.断層帯の将来の活動 | ||||
(1)将来の活動区間 及び活動時の地 震の規模 |
活動区間 断層帯全体で1区間 地震規模 マグニチュード6.8程度 ずれの量 1m程度 (上下成分) |
○ ○ △ |
断層の位置関係・形 状から推定。 断層の長さから推定。 断層の長さから推定。 |
表2 屏風山断層帯の将来の地震発生確率(ポアソン過程を適用)
項 目 将来の地震発生確率等
(注6)信頼度
(注7)備 考
今後30年以内の地震発生確率
今後50年以内の地震発生確率
今後100年以内の地震発生確率
今後300年以内の地震発生確率
0.2% − 0.7%
0.4% − 1%
0.8% − 2%
2% − 7%
d
発生確率は文献7に
よる。
表3 赤河断層帯の特性
項 目 | 特 性 | 信頼度 (注4) |
根 拠 (注5) |
|
1.断層帯の位置・形態 | ||||
(1)断層帯を構成す る断層 |
赤河 (あこう) 断層、権現山断層、中野方 (なかのほう) 北方の断層 |
文献8による。 |
||
(2)断層帯の位置・ 形状 |
地表における断層帯の位置・形状 断層帯の位置 (北西端) 北緯35°34′東経137°12′ (南東端) 北緯35°27′東経137°24′ 長さ 約23km |
◎ ◎ ◎ |
文献8による。 位置及び長さは図2 から計測。 |
|
地下における断層面の位置・形状 長さ及び上端の位置 地表での長さ・ 位置と同じ 上端の深さ 0km 一般走向 N50°W 傾斜 高角 幅 不明 |
○ ◎ ◎ △ |
上端の深さが0km であることから推定。 一般走向は、断層の 北西端及び南東端を 直線で結んだ方向 (図2参照)。 傾斜は、文献8に示 された地形の特徴な どから推定。 地震発生層の下限の 深さは約15km。 |
||
(3)断層のずれの向 きと種類 |
南西側隆起の断層 |
△ | 地形の特徴から推 定。 |
|
2.断層帯の過去の活動 | ||||
(1)平均的なずれの 速度 |
不明 |
説明文2.2.2(1) 参照。 |
||
(2)過去の活動時期 | 不明 |
|||
(3)1回のずれの量 と平均活動間隔 |
1回のずれの量 2m程度 (上下成分) 平均活動間隔 不明 |
△ |
断層の長さから推定。 |
|
(4)過去の活動区間 | 断層帯全体で1区間 | ○ | 断層の位置関係・形 状から推定。 |
|
3.断層帯の将来の活動 | ||||
(1)将来の活動区間 及び活動時の地 震の規模 |
活動区間 断層帯全体で1区間 地震の規模 マグニチュード7.1程度 ずれの量 2m程度 (上下成分) |
○ ○ △ |
断層の位置関係・形 状から推定。 断層の長さから推定。 断層の長さから推定。 |
表4 恵那山−猿投山北断層帯の特性
項 目 | 特 性 | 信頼度 (注4) |
根 拠 (注5) |
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1.断層帯の位置・形態 | ||||
(1)断層帯を構成す る断層 |
恵那山 (えなさん) 断層、奥平断層、川上 (かおれ) 断層、飯沼断層、猿投山北 (さ なげやまきた) 断層 |
文献8による。 |
||
(2)断層帯の位置・ 形状 |
地表における断層帯の位置・形状 断層帯の位置 全体 : (北東端) 北緯35°27′東経137°33′ (南西端) 北緯35°11′東経137°06′ 東半部 : (北東端) 北緯35°27′東経137°33′ (南西端) 北緯35°16′東経137°13′ 西半部 : (北東端) 北緯35°19′東経137°17′ (南西端) 北緯35°11′東経137°06′ 長さ 全 体: 約51km 東半部: 約37km 西半部: 約22km |
○ ◎ ○ ○ △ ◎ ○ ○ △ |
文献2、6及び8に よる。 位置及び長さは図2 から計測。 |
|
地下における断層面の位置・形状 長さ及び上端の位置 地表での長さ・ 位置と同じ 上端の深さ 0km 一般走向 全 体: N55°E 東半部: N55°E 西半部: N45°E 傾斜 東半部: 30−50°南東傾斜 (地表付近) 西半部: 高角 (地表付近) 幅 東半部: 不明 西半部: 20km程度 |
○ ◎ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ |
上端の深さが0km であることから推定。 一般走向は、断層の 北東端及び南西端を 直線で結んだ方向 (図2参照)。 文献6に示されたト レンチ、ボーリング 調査結果に基づく。 文献2に示されたボ ーリング調査結果、 断層の分布形態に基 づく。 地震発生層の下限の 深さは約20km。 断層面の傾斜と地震 発生層の深さから推 定。説明文2.3.1 (2)参照。 |
||
(3)断層のずれの向 きと種類 |
東半部: 南東側隆起の逆断層 (右横ずれ成分を伴う) 西半部: 右横ずれ断層 (上下成分を伴う) |
◎ ◎ |
地形の特徴などから 推定。 地形の特徴や断層の 形状から推定。 |
|
2.断層帯の過去の活動 | ||||
(1)平均的なずれの 速度 |
0.2−0.4m/千年 (東半部は上下成分、西半部は右横ずれ 成分を主体とする。) |
△ |
文献6に示された資 料から推定。 |
|
(2)過去の活動時期 | 活動1 (最新活動) 約7千6百年前以後、約5千4百年前以前 活動2 (1つ前の活動) 約2万1千年前以後、約2万年前以前 活動3 (2つ前の活動) 約3万4千年前以後、約2万2千年前以前 |
○ △ △ |
過去の活動時期は文 献3、6に示された資 料から推定。 |
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(3)1回のずれの量 と平均活動間隔 |
1回のずれの量 2−3m程度 (東半部は上下成分、西半部 は右横ずれ成分を主体とする。) 平均活動間隔 約7千2百−1万4千年 |
○ △ |
文献6に示された資料 から推定。 過去3回の活動から推 定。 |
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(4)過去の活動区間 | 断層帯全体で1区間 | ○ | 断層の位置関係・形 状から推定。 |
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3.断層帯の将来の活動 | ||||
(1)将来の活動区間 及び活動時の地 震の規模 |
活動区間 断層帯全体で1区間 地震の規模 マグニチュード7.7程度 ずれの量 2−3m程度 (東半部は上下成分、西半部 は右横ずれ成分を主体とす る。) |
○ ○ ○ |
断層の位置関係・形 状から推定。 断層の長さから推定。 文献6に示された資料 から推定。 |
表5 恵那山−猿投山北断層帯の将来の地震発生確率等
項 目 | 将来の地震発生確率等 (注6) |
信頼度 (注7) |
備 考 |
地震後経過率 (注8) 今後30年以内の地震発生確率 今後50年以内の地震発生確率 今後100年以内の地震発生確率 今後300年以内の地震発生確率 集積確率 (注9) |
0.4 − 1.1 ほぼ0% − 2% ほぼ0% − 3% 0.001% − 6% 0.005% − 20% 0.003% − 60% |
b |
発生確率及び集積確 率は文献7による。 |
表6 猿投−高浜断層帯の特性
項 目 | 特 性 | 信頼度 (注4) |
根 拠 (注5) |
|
1.断層帯の位置・形態 | ||||
(1)断層帯を構成す る断層 |
猿投−境川断層、高根山撓曲、大高−大府 (おおたか−おおぶ) 断層、高浜撓曲 |
文献1、2、8及び 10による。 |
||
(2)断層帯の位置・ 形状 |
地表における断層帯の位置・形状 断層帯の位置 (北東端) 北緯35°15′東経137°12′ (屈曲点) 北緯35°00′東経136°58′ (南東端) 北緯34°52′東経137°03′ 長さ 約51km |
◎ ◎ ◎ ◎ |
文献2、10による。 位置及び長さは図2 から計測。 |
|
地下における断層面の位置・形状 長さ及び上端の位置 地表での長さ・ 位置と同じ 上端の深さ 0km 一般走向 N40°E (北東端−屈曲点) N25°W (屈曲点−南東端) 傾斜 約50−80°西傾斜 (地表付近) 幅 不明 |
○ ◎ ◎ ◎ ○ |
上端の深さが0km であることから推定。 一般走向は、断層の 北東端、屈曲点及び 南東端を直線で結ん だ方向 (図2参照)。 傾斜は、文献2など に示された地質構造 及び地形の特徴から 推定。 地震発生層の下限の 深さは約20km。 |
||
(3)断層のずれの向 きと種類 |
西側隆起の逆断層 |
◎ |
文献1、2などに示 された地形の特徴・ 地質構造による。 |
|
2.断層帯の過去の活動 | ||||
(1)平均的なずれの 速度 |
0.1m/千年程度 (上下成分) |
△ |
文献2に示された資 料から推定。 |
|
(2)過去の活動時期 | 活動1 (最新活動) 約1万4千年前頃 |
◎ |
文献2に示された資 料から推定。 |
|
(3)1回のずれの量 と平均活動間隔 |
1回のずれの量 4m程度 (上下成分) 平均活動間隔 4万年程度 |
△ △ |
断層の長さから推定。 1回のずれの量と、 平均的なずれの速度 から推定。 |
|
(4)過去の活動区間 | 断層帯全体で1区間 | ○ | 断層の位置関係・形 状から推定。 |
|
3.断層帯の将来の活動 | ||||
(1)将来の活動区間 及び活動時の地 震の規模 |
活動区間 断層帯全体で1区間 地震の規模 マグニチュード7.7程度 ずれの量 4m程度 (上下成分) |
○ ○ △ |
断層の位置関係・形 状から推定。 断層の長さから推定。 断層の長さから推定。 |
表7 猿投−高浜断層帯の将来の地震発生確率等
項 目 | 将来の地震発生確率等 (注6) |
信頼度 (注7) |
備 考 |
地震後経過率 (注8) 今後30年以内の地震発生確率 今後50年以内の地震発生確率 今後100年以内の地震発生確率 今後300年以内の地震発生確率 集積確率 (注9) |
0.4 ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% |
b |
発生確率及び集積確 率は文献7による。 |
表8 加木屋断層帯の特性
項 目 | 特 性 | 信頼度 (注4) |
根 拠 (注5) |
|
1.断層帯の位置・形態 | ||||
(1)断層帯を構成す る断層 |
加木屋 (かぎや) 断層、平井撓曲、半田池 撓曲、本宮山 (ほんぐうさん) 撓曲、別曽池 (べっそいけ) 撓曲、河和 (こうわ) 背斜、 古布 (こう) 断層など |
文献8、9、11及び 12による。 |
||
(2)断層帯の位置・ 形状 |
地表における断層帯の位置・形状 断層帯の位置 全体 : (北端) 北緯35°03′東経136°55′ (南端) 北緯34°44′東経136°55′ 北半部 : (北端) 北緯35°03′東経136°55′ (南端) 北緯34°56′東経136°57′ 南半部 : (北端) 北緯34°58′東経136°52′ (南端) 北緯34°44′東経136°55′ 長さ 全 体: 約35km 北半部: 約13km 南半部: 約26km |
○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ |
文献9、11及び12 による。 位置及び長さは図2 から計測。 |
|
地下における断層面の位置・形状 長さ及び上端の位置 地表での長さ・ 位置と同じ 上端の深さ 0km 一般走向 全 体: N−S 北半部: N15°W 南半部: N10°W 傾斜 北半部: 高角、西傾斜 (地下800m以浅) 南半部: 東傾斜 幅 不明 |
○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ |
上端の深さが0km であることから推定。 一般走向は、断層の 北端及び南端を直線 で結んだ方向(図2 参照)。 文献1に示された浅 層反射法弾性波探査 結果による。 文献8に示された地 形の特徴などから 推定。 地震発生層の下限の 深さは約20km。 |
||
(3)断層のずれの向 きと種類 |
北半部: 西側隆起の逆断層 南半部: 東側隆起の逆断層 |
◎ ◎ |
地質構造及び地形の 特徴などから推定 (北・南半部)。 |
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2.断層帯の過去の活動 | ||||
(1)平均的なずれの 速度 |
0.1m/千年程度 (上下成分) |
△ |
文献1に示された資 料から推定。 |
|
(2)過去の活動時期 | 不明 |
|||
(3)1回のずれの量 と平均活動間隔 |
1回のずれの量 3m程度 (上下成分) 平均活動間隔 3万年程度 |
△ △ |
断層の長さから推定。 1回のずれの量と、 平均的なずれの速度 から推定。 |
|
(4)過去の活動区間 | 断層帯全体で1区間 | △ | 断層の位置関係・形 状から推定。 |
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3.断層帯の将来の活動 | ||||
(1)将来の活動区間 及び活動時の地 震の規模 |
活動区間 断層帯全体で1区間 地震の規模 マグニチュード7.4程度 ずれの量 3m程度 (上下成分) |
△ ○ △ |
断層の位置関係・形 状から推定。 断層の長さから推定。 断層の長さから推定。 |
表9 加木屋断層帯の将来の地震発生確率(ポアソン過程を適用)
項 目 | 将来の地震発生確率等 (注6) |
信頼度 (注7) |
備 考 |
今後30年以内の地震発生確率 今後50年以内の地震発生確率 今後100年以内の地震発生確率 今後300年以内の地震発生確率 |
0.1% 0.2% 0.3% 1% |
d |
発生確率は文献7に よる。 |
注1: | 屏風山断層帯及び加木屋断層帯では、最新活動時期が特定できていないため、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めることができない。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、このような更新過程が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしていることから、ここでは、ポアソン過程を適用して屏風山断層帯及び加木屋断層帯の将来の地震発生確率を求めた。しかし、ポアソン過程を用いた場合、地震発生の確率はいつの時点でも同じ値となり、本来時間とともに変化する確率の「平均的なもの」になっていることに注意する必要がある。なお、グループ分けは、通常の手法を用いた場合の全国の主な活断層のグループ分け(注2参照)と同じしきい値(推定値)を使用して行なった。 | ||
注2: | 我が国の陸域及び沿岸域の主要な98の活断層帯のうち、2001年4月時点で調査結果が公表されているものについて、その資料を用いて今後30年間に地震が発生する確率を試算すると概ね以下のようになると推定される。 | ||
98断層帯のうち約半数の断層帯:30年確率の最大値が0.1%未満 98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満 98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が3%以上 (いずれも2001年4月時点での推定。確率の試算値に幅がある場合はその最大値を採用。) |
|||
この統計資料を踏まえ、地震調査委員会の活断層評価では、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。 | |||
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合: | |||
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」 | |||
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合: | |||
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」 | |||
注3: | 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率及び集積確率(このうち、1995年兵庫県南部地震については「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)による暫定値)は以下のとおりである。 |
地震名 活動した活断層 地震発生直前
の30年確率
(%)地震発生直前
の集積確率
(%)断層の平均
活動間隔
(千年)1995年兵庫県南部地震
(M7.3)野島断層
(兵庫県)0.4−8% 2%−80% 約1.8−約3.0 1858年飛越地震
(M7.0−7.1)跡津川断層帯
(岐阜県・富山県)ほぼ0%−13% ほぼ0%−
90%より大約1.7−約3.6 1847年善光寺地震
(M7.4)長野盆地西縁断層帯
(長野県)ほぼ0%−20% ほぼ0%−
90%より大約0.8−約2.5
「長期的な地震発生確率の評価手法について」に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が2千年の場合は30年確率の最大値は10%程度、5千年の場合は5%程度である。 | ||
注4: | 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。 ◎:高い、○:中程度、△:低い |
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注5: | 文献については、本文末尾に示す以下の文献。 文献1:愛知県(1996) 文献2:愛知県(1999) 文献3:愛知県建築部・玉野総合コンサルタント(株)(1997) 文献4:岐阜県(2000) 文献5:岐阜県(2001) 文献6:岐阜県(2002) 文献7:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001) 文献8:活断層研究会編(1991) 文献9:近藤・木村(1987) 文献10:中田・今泉編(2002) 文献11:坂本ほか(1986) 文献12:吉田・尾崎(1986) 文献13:(財)地震予知総合研究振興会(2000) |
|
注6: | 評価時点はすべて2004年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を示す。なお、恵那山−猿投山北断層帯及び猿投−高浜断層帯では、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。 また、屏風山断層帯及び加木屋断層帯は最新活動時期を特定できていないため、通常の手法による確率の値は推定できない。そのかわりとして、長期間の確率の平均値を示した。最新活動時期によってはこの値より大きく、または小さくなるが、その確率値のとり得る範囲は平均活動間隔から求めることができる。屏風山断層帯では平均活動間隔が4千−1万2千年程度と求められているので、この場合の通常の手法による30年確率のとり得る範囲はほぼ0%−6%となる。また、加木屋断層帯では平均活動間隔が3万年程度と求められているので、この場合の通常の手法による30年確率の取り得る範囲はほぼ0%−0.9%となる。 |
|
注7: | 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。 a:(信頼度が)高い b:中程度 c:やや低い d:低い 発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。 発生確率等の評価の信頼度 |
|
a:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。 b:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。 c:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。 d:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼度が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。 |
||
注8: | 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。今回の評価の数字で、恵那山−猿投山北断層帯の場合、0.4は5400年を14000年で割った値であり、1.0は7600年を7200年で割った値。 | |
注9: | 前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率。 |
(説明)
1.屏風山(びょうぶやま)・恵那山(えなさん)断層帯及び猿投山(さなげやま)断層帯に関するこれまでの主な調査研究
1.1 屏風山断層帯、赤河(あこう)断層帯、恵那山−猿投山北断層帯
本断層帯のうち屏風山断層帯や恵那山−猿投山北断層帯は、辻村(1932)によって、屏風山断層崖、恵那山断層崖とされていたものを指す。有井(1958)は、このうち岩村盆地周辺に分布する屏風山断層崖と恵那山断層崖を図示し、断層露頭の記載を行った。また、恵那層の浸食高度及び基底面高度から屏風山・恵那山断層崖の変位量を求めた。
森山(1985b,1987)は、恵那・中津川盆地、三河高原に分布する活断層を図示し、土岐面及び土岐砂礫層を変位基準として平均変位速度を求めた。
岐阜県(2000,2001,2002)は、屏風山断層及び恵那山断層を対象とし、地形・地質調査やトレンチ調査などを実施し、過去の活動履歴について検討を行った。愛知県建築部・玉野総合コンサルタント(株)(1997)は、猿投山北断層を対象としたトレンチ調査を実施し、過去の活動履歴について検討を行った。
その他の地表地質と地下構造に関する主な調査研究としては、辻村(1942)、河田(1959)、木曾(1959,1963)、木宮(1971)、陶土団体研究グループ(1994a,b,1999)、阿部ほか(1999)、(財)地震予知総合研究振興会(2000)、田中ほか(2001)等がある。
1.2 猿投−高浜断層帯及び加木屋(かぎや)断層帯
本断層帯のうち猿投−高浜断層帯及び加木屋断層帯については、松澤・植村(1957)が最初に大高−大府(おおぶ)線を図示し、町田ほか(1962)が、碧海面の増傾斜運動と高浜撓曲崖の指摘を行った。高浜撓曲崖に関しては、松澤・嘉藤(1965)も断層崖の可能性を指摘した。また、嘉藤・桑原(1967)は、境川下流域から衣浦湾西部に断層を想定し、知多半島の北部に名和−加木屋線を提唱した。糸魚川(1971)は、これら大高−大府線、名和−加木屋線の位置を図面に表示し、大高−大府線を大高−大府断層と呼称した。桑原ほか(1985)は、ボーリング調査と微化石分析に基づいて地質構造を検討し、衣浦港沿いに断層の存在を推定した。飯田・坂部(1972)は、大高−大府断層とその南東延長に位置する深溝断層との関連について考察を行った。
その他、桑原(1971)、桑原ほか(1972)、牧野内(1975,1976,1980)、岡田(1979)、坂本ほか(1986)、吉田・尾崎(1985)、細山(1995)等により、岡崎平野−知多半島北部の各断層について記載が行われた。
岡田(1986)は、猿投−境川断層においてトレンチ調査を実施し、過去の活動履歴について検討を行った。また、愛知県(1999)は猿投−境川断層及び高根山撓曲を対象とし、反射法弾性波探査、ボーリング調査、トレンチ調査を実施して、断層の分布や活動時期などを推定した。加木屋断層帯の活動性に関しては、吉田・尾崎(1986)、愛知県(1996)等によって調査が行われている。
また、濃尾平野、三河平野及び岡崎平野を対象とした地下構造調査が、愛知県により平成11年度から実施されており、各堆積平野の3次元地下構造モデルが作成されている(愛知県2000,2001a,b,2002a,b,2003a,b)。
その他、本断層帯周辺に関する調査のとりまとめとして、岡田(1979)は愛知県とその周辺に分布する断層を縮尺20万分の1の地図上で示し、その概要を報告した。また、岡田ほか(2000,2001,2002)は、愛知県内に分布する活断層について、その概要と調査結果を「愛知県の活断層」として取りまとめている。
本断層帯及び周辺の断層の位置等を示したものとしては、上記のほか、活断層研究会編(1980,1991)、水野ほか(2002)、中田・今泉編(2002)等がある。
2.屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯の評価結果
屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯は、岐阜県中津川市ないし岐阜県加茂郡白川町から、恵那市、瑞浪市、愛知県瀬戸市、大府市付近を経て、西尾市ないし知多郡南知多町に至る断層帯である。
屏風山・恵那山断層帯と猿投山断層帯は、当初、松田(1990)により屏風山・恵那山断層帯と猿投山断層帯のそれぞれ独立した起震断層に区分され、地震調査研究推進本部(1997)でも個別に基盤的調査観測対象とされた。しかし、両断層帯は非常に近接して分布することから、ここではまとめて評価することとした。また、愛知県(1996,1999)や中田・今泉編(2002)に基づくと、岡崎平野に位置する大高−大府断層、高浜撓曲崖に関しても猿投山断層帯と連続した断層トレースとして示されることから、今回の評価に含めることとした。ここでは、松田(1990)の起震断層の定義に基づき、これら各断層を屏風山断層帯、恵那山−猿投山北断層帯及び猿投−高浜断層帯に区分した。
このうち、屏風山断層帯は、地表の断層トレースに基づくと長さ約33kmの起震断層となる。しかしながら、屏風山断層の南西部の約16km区間(恵那市鍋山付近より南西の区間)については、断層を横切って分布するすべての土石流堆積面に変位が認められず、そのうち、土石流堆積面FV(2)面構成層中にはDNP火山灰(大山生竹火山灰;約8万年前以前;町田・新井,2003)が含まれることが確認された(岐阜県,2001)。よって、屏風山断層の南西部は、その活動性が低く、地震調査研究推進本部(1997)の基盤的調査観測対象の基準には該当しないと考えられるため、ここでの詳細な評価の対象としないこととした(注10、図4)。この結果、屏風山断層帯は長さが約15kmとなり、単独では基盤的調査観測対象の基準(長さ20km以上)を満たさないことになる。ただし、屏風山断層帯は主要98断層帯の1つとして設定されており、また、最近も活動を繰り返している区間が存在する(岐阜県,2000,2001,2002)ことから、今回の評価対象とした。また、知多半島には南北方向に長さ数km程度の断層が断続的に分布し、長さ約35kmの1つの起震断層を構成している。この知多半島の断層群と前述の猿投−高浜断層帯との距離は概ね5−6kmである。ここでは知多半島に分布する断層群を「加木屋断層帯」(以下、活断層研究会編(1991)などが知多半島に図示した断層群をこのように仮称する。)と呼称して、合わせて評価を行った。さらに、屏風山断層帯の北西には赤河断層帯が分布する。赤河断層帯は、屏風山断層帯や恵那山−猿投山北断層帯など本断層帯の主体をなす断層帯とは交差する方向に延びる断層帯である。ただし、活断層研究会編(1991)により、断層長が約23kmで活動度(注11)が[B級]とされていることなどから、本評価の中で取り扱うこととした。
なお、本断層帯の周囲に位置する笠原断層、天白河口断層(活断層研究会編,1991;名古屋市,1999など)及び名古屋市付近の断層帯(中田・今泉編,2002が示した名古屋市内を南北方向に延びる断層)の各起震断層に関しては、単独では地震調査研究推進本部(1997)の基盤的調査観測対象には該当しないことから、ここでは詳細な評価の対象としないこととした(図3、4)。このうち、名古屋市付近の断層帯は、3km程度の間隔で猿投−高浜断層帯の北方延長上に位置する。ただし、名古屋市付近の断層帯はずれの向きが猿投−高浜断層帯と反対に西落ちを示すことから、独立した起震断層として取り扱う。また、猿投−高浜断層帯の南東延長部には、深溝(ふこうず)地震断層と横須賀地震断層が分布する。両断層とも、1945年三河地震の際に活動したことが知られているが、活動度が低いため(活断層研究会編,1991)、詳細な評価は実施しない(図4)。
2.1 屏風山断層帯
2.1.1 屏風山断層帯の位置及び形態
(1)屏風山断層帯を構成する断層
屏風山断層帯は、岐阜県中津川市から恵那市に至る断層帯である(図1、図2−1)。本断層帯は、蕨平(わらびだいら)断層、手賀野(てがの)断層及び屏風山(びょうぶやま)断層北東部から構成される。
断層帯の位置・形態については、岡田(1979)、活断層研究会編(1980,1991)、岐阜県(2002)などで概ねよい一致をなす。ここでは、各断層の位置・形態は岐阜県(2002)に基づいた。また、各断層の名称は活断層研究会編(1991)によった。
(2)断層面の位置・形状
屏風山断層帯の長さ及び一般走向は、本断層帯の北東端と南西端を結んで計測すると約15km、N60°Eとなる(図2−1)。
断層面の上端の深さは、断層または撓曲による変位がほぼ地表に達していることから、0kmとした。
断層面の傾斜は、地形の特徴(活断層研究会編,1991など)や断層露頭の観察結果(岐阜県,2002など)から、地表付近では高角度で南東傾斜を示すと推定される。
断層面の幅は、地下深部における断層面の傾斜が明らかではないため不明である。
(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注12)
本断層帯は、地形の特徴(活断層研究会編,1991など)や断層露頭の観察結果(岐阜県,2002など)から、断層の南東側が北西側に対して相対的に隆起する逆断層と推定される。
なお、本断層帯は広域的な応力場や周辺に分布する断層との関係から横ずれ変位成分を伴っている可能性も示唆されるが、横ずれ変位地形は認められず、詳細は不明である。
2.1.2 屏風山断層帯の過去の活動
(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注12)
手賀野断層における地形調査に基づくと、20万−30万年前のH1面に26m、7万5千−9万5千年前のM1面に12−13m、5万−7万5千年前のM2面に10−11mの変位が認められる(岐阜県,2001,2002)ことから、手賀野断層の平均上下変位速度は0.1−0.2m/千年と推定される。ただし、手賀野断層付近には、南東側約2kmに別の断層が並走していることを考慮すると、上記数値より大きくなる可能性もある。
蕨平断層における地形調査に基づくと、20万−30万年前のH2面に20−25mの変位が認められること(岐阜県,2000)から、蕨平断層の平均上下変位速度は0.1−0.13m/千年と推定される。また、中田・今泉編(2002)は、上記地点付近の地形面の年代を20万年前、変位量については50mと推定しており、この値に基づくと同地点の平均上下変位速度は0.25m/千年となる。
以上の検討結果から、屏風山断層帯の平均上下変位速度は0.1−0.3m/千年と推定される。
(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動
[1]手賀野断層中垣外(なかがいと)地点
手賀野断層(中津川市中垣外地点)で実施された地形・地質調査結果から、L1面(5万年前以前)より新しい土石流堆積面のF4−1面に4.5−5.0m、F4−2面に約3.0m、F4−3面に1.5−2.5m、及びF4−4面に約1.0mの累積変位が認められ、各地形面の形成間に断層活動が推定されている(岐阜県,2002)。これに基づくと、手賀野断層は第四紀後期に繰り返し活動してきたと推定される。ただし、F4−1面とF4−3面では年代が得られておらず、またF4−2面とF4−4面の年代値も直接的に求められたものではないことから、個々の活動時期を特定することはできない。
なお、岐阜県(2001)は、同地点でトレンチ調査を実施している。トレンチ調査は変位地形が確認された区間の東方延長部にあたるF4−5面において行われた。トレンチ壁面には、液状化の痕跡が認められ、岐阜県(2001)はその発生時期を7,390±50yBPから5,350±50yBPの間とした。しかしながら、本地点で見られる液状化が、本断層の活動に伴うものかどうかは不明である。
[2]屏風山断層中垣外南東地点
岐阜県(2002)は屏風山断層(中津川市中垣外南東地点)においてトレンチ調査を行った。トレンチ調査は、約1万3千年前のF2面上に形成された比高約5−6mの撓曲崖で行われた。トレンチ壁面には断層は認められなかったが、地形面に認められる撓曲崖付近でF2面構成層最上部のシルト層が急傾斜している構造が確認された。しかしながら、堆積物の残留磁化方位と帯磁率異方性を用いて詳細を検証した結果、急傾斜部と水平部において有意な差は認められず、上記の構造は堆積構造とする見解が得られた(岐阜県,2002)。よって、本地点では断層活動の時期を特定することはできない。
以上のように、屏風山断層帯では5万年前以後、断層活動を繰り返していると推定される。ただし、最新活動時期を含めた詳細な活動時期は不明である。
b)先史時代・歴史時代の活動
本断層帯周辺に被害をもたらした歴史地震としては、1586年(天正13年)の天正地震などがある(宇佐美,2003)。
1586年(天正13年)の天正地震では、中部から近畿東部にかけての広い範囲で大きな被害が生じた(宇佐美,2003)。しかし、この地震に関しては史料が限られていることから、本断層帯との関係については判断できない。
(3)1回の変位量(ずれの量)(注12)
屏風山断層帯では、1回の活動に伴う変位量を直接示す資料は得られていない。しかし、本断層帯の長さは約15kmと推定されることから、経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約1.2mと計算される。したがって、本断層帯の1回の活動に伴う上下変位量は1m程度であった可能性がある。
用いた経験式は松田(1975)による次の式である。ここで、Lは断層の長さ(km)、Mはマグニチュード、Dは1回の活動に伴う変位量である。
LogL = 0.6M − 2.9 (1)
LogD = 0.6M − 4.0 (2)
(4)活動間隔
本断層帯では、平均活動間隔を直接示す資料は得られていない。しかし、平均上下変位速度が0.1−0.3m/千年と推定され、1回の活動に伴う変位量が1m程度(計算値1.2m)の可能性があることから、平均活動間隔は4千−1万2千年程度と求められる。
したがって、本断層帯の平均活動間隔は4千−1万2千年程度の可能性があるとした。
(5)活動区間
本断層帯では、構成する断層がほぼ連続して分布することから、松田(1990)に基づくと、全体が1つの活動区間として活動したと推定される。
(6)測地観測結果
本断層帯周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果では、この断層帯周辺で北西−南東方向の縮みが見られるのに加え、北東−南西方向のわずかな伸びが見られる。1985年からの10年間及び最近5年間のGPS観測結果では、顕著な歪みは見られない。
(7)地震観測結果
本断層帯周辺の最近約6年間の地震観測結果によれば、断層帯付近の地震活動は比較的低調である。断層帯付近における地震発生層の下限の深さは約20kmである。
2.1.3 屏風山断層帯の将来の活動
(1)活動区間及び活動時の地震の規模
屏風山断層帯は、断層帯全体が1つの活動区間として同時に活動すると推定される。この場合、長さが約15kmと推定されることから、前述の経験式(1)及び(2)により地震の規模を求めると、マグニチュード6.8程度の地震が発生すると推定される。また、その際には断層近傍の地表面では南東側が北西側に対して相対的に1m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある。
(2)地震発生の可能性
屏風山断層帯の平均活動間隔は、4千−1万2千年程度であった可能性がある。しかし、最新活動時期が特定できていないため、上記のようなマグニチュード6.8程度の地震が発生する長期確率を更新過程(地震の発生確率が時間と共に変動するモデル)を用いて評価することはできない。
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、地震の発生確率を求めるに当たって、通常の活断層評価で用いている更新過程が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしている。信頼度の低い平均活動間隔を用いた計算であることに十分留意する必要があるが、本断層帯では、平均活動間隔が4千−1万2千年程度であることを基に、ポアソン過程を適用して地震発生確率を求めると、今後30年以内、50年以内、100年以内及び300年以内の地震発生確率は、それぞれ0.2%−0.7%、0.4%−1%、0.8%−2%及び2%−7%となる(表2)。
なお、通常の活断層評価で用いている更新過程によった場合、平均活動間隔が4千−1万2千年程度と求められているので、30年確率の取り得る値はほぼ0%−6%となる。
2.2 赤河断層帯
2.2.1 赤河断層帯の位置及び形態
(1)赤河断層帯を構成する断層
赤河断層帯は、岐阜県加茂郡白川町から恵那市に至る断層帯で、赤河断層、権現山断層、中野方(なかのほう)北方の断層(注14)よりなる(図1、図2−1)。断層帯の位置・形態については、岡田(1979)、活断層研究会編(1980,1991)及び水野ほか(2002)で概ね良い一致をなす。なお、中田・今泉編(2002)では、本断層の北部を推定活断層として記載している。
ここでは、各断層の位置及び名称は、活断層研究会編(1991)によった。
(2)断層面の位置・形状
本断層帯の長さは、断層帯の北西端と南東端を直線で結ぶと約23km、一般走向はN50°Wとなる(図2−1)。
断層面の上端の深さは、断層による変位がほぼ地表付近に達していることから0kmとした。
断層面の傾斜は、ほぼ直線的な断層形状を示すことから(活断層研究会編,1991など)、地表付近では高角と推定される。
断層面の幅は、地下深部における断層面の傾斜が明らかではないため不明である。
(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注12)
本断層帯は、地形の特徴(活断層研究会編,1991など)から、断層の南西側が北東側に対して相対的に隆起する断層である可能性がある。横ずれ成分については、中野方北方の断層では、断層を横切る稜線に左屈曲が認められること(活断層研究会編,1991など)から左横ずれ成分を伴う可能性がある。
2.2.2 赤河断層帯の過去の活動
(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注12)
本断層帯では、平均変位速度に関する資料は得られていない。
なお、活断層研究会編(1991)は、約100万年前に形成された土岐面の変位量に基づいて、本断層帯の活動度を[B級]としている。
(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動
本断層帯では、過去の活動履歴に関する具体的な資料は得られていない。
b)先史時代・歴史時代の活動
2.1.2(2)b)を参照。
(3)1回の変位量(ずれの量)(注12)
本断層帯では、1回の活動に伴う変位量を直接示す資料は得られていない。しかし、本断層帯の長さが約23kmと考えられることから、前述の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約1.8mと計算される。したがって、本断層帯の1回の活動に伴う上下変位量は2m程度であった可能性がある。
(4)活動間隔
本断層帯では、活動時期、平均変位速度等が求められていないため、平均活動間隔を求めることができない。
(5)活動区間
本断層帯は、断層がほぼ連続的に分布することから、松田(1990)の起震断層の基準に基づけば、全体が1つの活動区間として活動したと推定される。
(6)測地観測結果
本断層帯周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果では、この断層帯周辺で北西−南東方向の縮みが見られるのに加え、北東−南西方向のわずかな伸びが見られる。1985年からの10年間及び最近5年間のGPS観測結果では、顕著な歪みは見られない。
(7)地震観測結果
本断層帯周辺の最近約6年間の地震観測結果によれば、断層帯付近の地震活動は比較的低調である。本断層帯付近における地震発生層の下限の深さは約15kmである。
2.2.3 赤河断層帯の将来の活動
(1)活動区間及び活動時の地震の規模
2.2.2(5)で述べたように、本断層帯は全体が1つの活動区間として同時に活動すると推定される。この場合、長さが約23kmと推定されることから、前述の経験式(1)及び(2)により地震の規模を求めると、マグニチュード7.1程度の地震が発生すると推定され、その際には断層の南西側が北東側に対して相対的に2m程度高まる段差が生じる可能性がある。
(2)地震発生の可能性
本断層帯では、過去の活動に関する資料が得られていないため、将来の地震発生確率は不明である。
2.3 恵那山−猿投山北断層帯
2.3.1 恵那山−猿投山北断層帯の位置及び形態
(1)恵那山−猿投山北断層帯を構成する断層
恵那山−猿投山北断層帯は、岐阜県中津川市から、瑞浪市を経て、愛知県豊田市北西部に至る断層帯で恵那山断層、奥平断層、川上(かおれ)断層、飯沼断層及び猿投山北断層からなる(図1、図2−1)。断層帯の位置・形態については、活断層研究会編(1980,1991)と、愛知県(1999)ないし岐阜県(2002)などで概ねよい一致をなす。
ここでは、恵那山断層、奥平断層、川上断層及び飯沼断層の位置・形態に関しては、岐阜県(2002)及び活断層研究会編(1991)に基づき、猿投山北断層に関しては愛知県(1999)及び活断層研究会編(1991)に従った。また、各断層の名称は活断層研究会編(1991)によった。
(2)断層面の位置・形状
本断層帯の長さ及び一般走向は、断層帯の北東端と南西端を直線で結ぶと約51km、N55°Eとなる(図2−1)。
本断層帯は、断層帯の東半部を構成する恵那山断層、奥平断層、川上断層及び飯沼断層と、西半部を構成する猿投山北断層とで断層形状が異なる。
断層帯東半部は、その北東端と南西端を直線で結ぶと長さは約37km、一般走向はN55°Eとなる。断層帯西半部は、その北東端と南西端を直線で結ぶと長さは約22km、一般走向はN45°Eとなる。
断層面の上端の深さは、断層または撓曲による変位がほぼ地表に達していることから、0kmとした。
東半部の断層面の傾斜は、恵那山断層(岐阜県岩村町富田地点)で実施されたトレンチ及びボーリング調査の結果(岐阜県,2002)から、地表付近では30−50°南東傾斜と推定される。西半部に関しては、猿投山北断層(愛知県瀬戸市東白坂地点)で実施されたトレンチ及びボーリング調査の結果(80°南東傾斜;愛知県建築部・玉野総合コンサルタント(株),1997)や、直線的な断層の分布形状(活断層研究会編,1991)に基づくと、地表付近では高角と推定される。
後述のように、本断層帯付近の地震発生層の下限の深さは約20kmと推定される。東半部は地下深部の断層面の傾斜が明らかではないため、断層面の幅は不明である。西半部は横ずれ断層を主体とすることから、地下深部での断層面の傾斜も地表付近と同様に高角であるとすれば、断層面の幅は20km程度と推定される。
(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注12)
本断層帯のうち東半部は、活断層研究会編(1991)及び岐阜県(2002)などに示された地形の特徴から、断層の南東側が北西側に対して相対的に隆起する逆断層と考えられる。横ずれ成分については、恵那山断層南西部及び奥平断層に沿って断層を横切る小河川に右方向の屈曲が認められること(活断層研究会編,1991;岐阜県,2002など)から右横ずれ成分を伴うと考えられる。
西半部は、猿投山北断層に沿って断層を横切る小河川に右方向の屈曲が認められること(活断層研究会編,1991;愛知県,1999など)や直線的な断層の分布形状(活断層研究会編,1991)から、右横ずれを主体とする断層で、一部で上下成分を伴うと考えられる。
2.3.2 恵那山−猿投山北断層帯の過去の活動
(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注12)
本断層帯では、長期的な期間にわたる平均変位速度は得られていない。ただし、後述するように、恵那山断層(岩村町富田地点)において実施されたボーリング調査結果(岐阜県,2002:図5)により、1回の活動に伴う上下変位量が2−3m程度(計算値2.3−3.0m)と推定されること、及び同地点などで行われたトレンチ調査により、平均活動間隔が約7千2百−1万4千年と求められていることに基づくと、恵那山断層の平均上下変位速度は0.2−0.4m/千年の可能性がある。ここでは、本値を本断層帯全体の平均変位速度とみなす。
なお、猿投山北断層(瀬戸市東白坂地点)で行われたトレンチ調査結果(愛知県建築部・玉野総合コンサルタント(株),1997)に基づくと、約2万年前の地層(B層)に約1.25−1.5mの上下変位が認められることから、猿投山北断層の平均上下変位速度は0.1m/千年程度と求められる。しかし、本値は1回の断層活動に相当する期間から求めた値であること、また猿投山北断層は横ずれを主体とする断層であることから、ここでは参考値として扱う。
(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動
[1]恵那山断層富田地点
恵那山断層(岩村町富田地点)ではトレンチ調査及びボーリング調査が行われている(岐阜県,2002:図5、6)。トレンチ調査は、F4−3面(土石流堆積物)に認められる2−3mの崖地形上で行われた。トレンチ壁面には、30−50°で南傾斜するf−1〜f−4断層が認められた。
f−4断層は、トレンチ南西壁面において、約7千6百−7千4百年前の14C年代値を示す礫混じり砂・砂・シルト層(H層)を1.0−1.5m変形させ、約2千4百−2千2百年前の14C年代値を示す(礫混じり)腐植土(B層)に覆われる(岐阜県,2002)。よって、最新活動時期は約7千6百年前以後、約2千2百年前以前と推定される。
また、南西壁面において、土石流堆積物である砂礫・シルト(F層)が、約1万1千年前の14C年代値を示す礫混じり砂(E層)に傾斜不整合で覆われる。さらに北東壁面では、約3万4千年前を示す砂・シルト層(K層)と、砂礫・極粗粒砂(J層)との間にも傾斜不整合が認められる。これらのことから、F層堆積(下位のI層の年代:約2万1千年前)以後−E層堆積(約1万1千年前)以前、及びK層堆積(約3万4千−3万3千年前)以後−J層堆積(上位のI層で最も古い年代:約2万3千−2万2千年前)以前の2つの層準に断層活動が推定できる。
以上の検討結果から、本地点における最新の活動は約7千6百年前以後−約2千2百年前以前であったと推定される。また1つ前の活動は約2万1千年前以後−1万1千年前以前、2つ前の活動は約3万4千年前以後−約2万2千年前以前であった可能性がある。ただし、これらの活動時期の間に別の活動があったかどうかは不明である。
なお、岐阜県(2002)は、同地点で実施したボーリング調査結果をもとに、各地層の年代と高度差に基づいて、最新活動以外に少なくとも3回の活動(K層堆積後−I層堆積前、I層堆積後−F層堆積前、F層堆積後−E層堆積前)があったと推定している。このうち、K−I層間及びF−E層間に推定された活動は、上記のトレンチ調査結果から推定した活動時期と整合する。しかし、I層基底とF層基底との間には有意な高度差が認められないことから、I−F層間には断層活動は認定できない。また、岐阜県(2002)は、上記富田地点から約500m東に位置する地点で別途トレンチ調査を実施したが、その成因を断層活動によるものと認定するには至らなかったとしている。ただし、F4−3面上に比高約1.5−2mの撓曲崖が認められることから、トレンチで得られたF4−3層相当層の年代(約6千2百年前)以降に最新活動があった可能性もあり、これは上記の最新活動時期と矛盾しない。
[2]猿投山北断層東白坂地点
猿投山北断層(愛知県瀬戸市東白坂地点)ではトレンチ調査が行われている(愛知県建築部・玉野総合コンサルタント(株),1997;鈴木,2001)。トレンチ調査は右横ずれ変位を示す浅い谷とその延長上の低位段丘面上に認められる0.5m程度の低断層崖を対象にして行われた。トレンチ壁面には、高角度の断層が認められた(図7)。
トレンチ調査結果に基づくと、約1万年前以後、約9千7百年前以前の14C年代値を示す砂−礫層(D層)の撓曲変形に約5千6百−5千4百年前の14C年代値を示す砂・細礫混じり粘土層(E層)がアバットして堆積していることから、最新の活動は約1万−5千4百年前であったと推定される。また、トレンチ内に分布するB層基底−D層は一様に変形していることから、1つ前の活動はB層の堆積した約2万年前より前であった可能性がある。
なお、愛知県建築部・玉野総合コンサルタント(株)(1997)及び鈴木(2001)は、断層がE層(約3千5百−3千4百年前)上部の黒ボク層を0.4−0.5m変位させ、南西壁面ではF層(1−4世紀)に覆われることから、最新活動時期を約3千5百年前以後、4世紀以前とした。しかしながら、愛知県建築部・玉野総合コンサルタント(株)(1997)等が指摘している黒ボク層の変形については完全に否定することはできないが、その下位の地層であるE層とD層の境界には断層によるずれは認められないことから、これはE層堆積以後の断層活動を積極的に示す証拠とはならない。また、愛知県建築部・玉野総合コンサルタント(株)(1997)はA層(約2万1千年前)からC層上部(約1万5千年前)を切る断層が、D層下部(約1万5千年前)とF層に覆われることから、2つ前の活動を約1万5千年前と推定し、また断層を挟んでB層下部(約2万年前)の層厚が違うこと、A層(約2万1千年前)上面の上下変位量(1.25−1.5m)がC層上面の上下変位量(1.0−1.2m)より大きいことから、3つ前の活動を約2万1千年前以後、約2万年前以前と推定した。しかしながら、B層基底からD層は一様に変形していること、また地層対比にも問題があることなどから、愛知県建築部・玉野総合コンサルタント(株)(1997)及び鈴木(2001)が指摘した2つ前及び3つ前の活動は認め難い。
以上の検討結果をまとめると、本断層帯の最新活動時期は、約7千6百年前以後、約5千4百年前以前であったと推定される。また、1つ前の活動時期は、約2万1千年前以後、約2万年前以前、2つ前の活動時期は、約3万4千年前以後約2万2千年前以前であった可能性がある(図9)。
b)先史時代・歴史時代の活動
2.1.2(2)b)を参照。
また、1892年に本断層帯付近でマグニチュード5.5の地震が発生し、小規模の被害が生じているが、本断層帯の活動との関連は不明である。
(3)1回の変位量(ずれの量)(注12)
恵那山断層(岩村町富田地点)において実施されたボーリング調査結果(岐阜県,2002:図5)に基づくと、I層の変位量が4.5−5m、K層の変位量が7−9mであり、これらの地層の変位量はそれぞれ2回分、3回分の断層活動による累積変位量と推定されることから、1回の活動に伴う上下変位量は2−3m程度と推定される。
一方、本断層帯の長さは約51kmであり、前述の経験式(1)及び(2)を用いると、本断層帯全体の1回の活動に伴う変位量は約4.1mと計算され、上記で求めた値(2−3m程度)よりやや大きくなるものの概ね矛盾しない範囲の値を示す。
ここでは、岩村町富田地点のボーリング調査結果を基に、本断層帯の1回の活動に伴う上下変位量ないし右横ずれ変位量を2−3m程度と推定した。
なお、猿投山北断層(瀬戸市東白坂地点)で実施されたトレンチ調査結果に基づくと、最新活動に伴う上下変位量は1.25−1.5m程度と推定されるが、猿投山北断層は横ずれを主体とする断層であることから、本地点の横ずれ変位量はこれより大きいと考えられる。
(4)活動間隔
本断層帯では、過去3回の活動時期が得られており、それらの年代から本断層帯の平均活動間隔は約7千2百−1万4千年の可能性があるとした。
(5)活動区間
本断層帯は、ほぼ連続して分布することから、松田(1990)の起震断層の定義に基づけば全体が1つの活動区間として活動したと推定される。
なお、東半部(南東側隆起主体)と西半部(右横ずれ主体)とでは大局的にはずれの方向が異なるが、東半部の西部では右横ずれ成分も伴うことから、これらのずれの方向は漸移的に変化するものと判断される。
(6)測地観測結果
本断層帯周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果では、この断層帯周辺で北西−南東方向の縮みが見られるのに加え、北東−南西方向のわずかな伸びが見られる。1985年からの10年間及び最近5年間のGPS観測結果では、顕著な歪みは見られない。
(7)地震観測結果
本断層帯周辺の最近約6年間の地震観測結果によれば、断層帯付近の地震活動は比較的低調である。断層帯付近における地震発生層の下限の深さは約20kmである。
2.3.3 恵那山−猿投山北断層帯の将来の活動
(1)活動区間及び活動時の地震の規模
2.3.2.(5)で述べたように、本断層帯は全体が1つの活動区間として同時に活動すると推定される。この場合、長さが約51kmと推定されることから、前述の経験式(1)に基づくと、マグニチュード7.7程度の地震が発生する可能性がある。また、その際には、過去の活動に基づくと、断層帯の東半部では断層の南東側が北西側に対して相対的に2−3m程度高まる段差や撓みが生じ、西半部では2−3m程度の右横ずれが生じると推定される。
(2)地震発生の可能性
本断層帯全体が同時に活動するとすると、過去の活動に基づく平均活動間隔が約7千2百−1万4千年で、最新活動時期が約7千6百年前以後、約5千4百年前以前と求められていることから、平均活動間隔に対する現在における地震後経過率は0.4−1.1となる。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPTモデル,α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、及び300年以内の地震発生確率は、ほぼ0%−2%、0.001%−3%、0.001%−6%及び0.005%−20%、また、現在までの集積確率は0.003%−60%となる(表5)。表10に、これらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。
2.4 猿投−高浜(さなげ−たかはま)断層帯
2.4.1 猿投−高浜断層帯の位置及び形態
(1)猿投−高浜断層帯を構成する断層
猿投−高浜断層帯は、愛知県西加茂郡藤岡町から、大府(おおぶ)市を経て西尾市に至る断層帯で、猿投−境川断層、高根山撓曲、大高−大府断層及び高浜撓曲よりなる(図1、図2−2)。断層帯の位置・形態については、活断層研究会編(1980,1991)、愛知県(1996,1999)、中田・今泉編(2002)などで概ねよい一致をなす。
各断層の位置は、愛知県(1996,1999)及び中田・今泉編(2002)によった。このうち断層帯南東端に関しては、中田・今泉編(2002)に基づいて西尾市市街地付近と判断した。また各断層の名称は、活断層研究会編(1991)に基づいた。
(2)断層面の位置・形状
本断層帯の長さは、北東端、屈曲点と南東端を結ぶと約51kmで、一般走向はN40°E(北東端−屈曲点)、N25°W(屈曲点−南東端)となる。
断層面の上端の深さは、断層または撓曲による変位がほぼ地表付近に達していることから0kmとした。
断層面の傾斜は、断層露頭の観察結果及びボーリング調査結果(愛知県,1999)などから、約50−80°西傾斜と推定される。
断層面の幅は、地下深部の断層面の傾斜が明らかではないため不明である。
(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注12)
本断層帯は、活断層研究会編(1991)、愛知県(1996,1999)などに示された地形の特徴、ボーリング調査結果(愛知県,1999など)及び反射法弾性波探査結果(愛知県,1996)から、断層の西側(北西−南西側)が東側(南東−北東側)に対して相対的に隆起する逆断層と考えられる。
2.4.2 猿投−高浜断層帯の過去の活動
(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注12)
猿投−境川断層において実施された地形調査結果(愛知県,1999)に基づくと、20万−30万年前の最高位段丘面に14−26m、約6万年前の中位段丘面に3−7mの変位が認められることから、本断層の平均上下変位速度は0.1m/千年程度の可能性がある。ここでは、本値を猿投−高浜断層帯の平均上下変位速度とみなす。
(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動
[1]猿投−境川断層深見地点
猿投−境川断層(藤岡町深見地点)ではトレンチ調査が行われている(愛知県,1999)。トレンチ調査は、事前に実施されたボーリング調査から推定された断層通過地点で行われた。トレンチ壁面には、高角度の断層が認められた(図8)。本断層は見かけ正断層だが、これは本地点では横ずれ成分を持つためと解釈できる。この断層は約1万4千年前の14C年代値を示す砂層(a層)を少なくとも0.5m以上変位させ、約1万4千年前の14C年代値を示す砂礫層(b層)に覆われている。
[2]猿投−境川断層乙部(おとべ)地点
猿投−境川断層(豊田市乙部地点)ではトレンチ調査が行われている(岡田,1986)。トレンチ調査は事前に実施された地表踏査、弾性波探査及びボーリング調査結果から推定された断層通過地点で行われた。トレンチ壁面には、花崗岩と東海層群が接する断層は認められたが、上位の谷底堆積物には変位は認められなかった。この谷底堆積物は完新世の堆積物と推定されている(岡田,1986)ことから、本地点では少なくとも完新世には断層活動はなかったと考えられる。
以上の検討結果から、猿投−境川断層では約1万4千年前頃に最新活動があったと考えられ、ここではこれを本断層帯の最新活動時期とみなす(図9)。これに先行する活動の時期は不明である。
なお、愛知県(1996)は、大高−大府断層(大府市月見地点)で実施した浅層反射法弾性波探査の結果、空中写真判読で確認した低断層崖付近に地層の不連続面が認められるとした。さらに、同地点で実施したボーリング調査により、約2,500yBPの年代値を示す沖積層基底面に1mの高度差を認め、これを断層の活動による変位と推定して約2千−3千年前以後に断層活動があったとした。しかし、地表の低断層崖はその後の調査で人工的な段差と判断されたこと(愛知県,1996)、沖積層や常滑層群は推定断層線を挟んで連続性良く分布が確認されることなどから、沖積層に認められた1m程度の高度差は断層活動によるものとは断定できない。
b)先史時代・歴史時代の活動
本断層帯付近で発生した地震としては、1861年の西尾付近の地震(マグニチュード6.0;宇佐美,2003)及び1945年三河地震(マグニチュード6.8;宇佐美,2003)がある。
1861年の西尾付近の地震では、本断層帯の南東側の西尾市西部や額田郡などで被害があった。ただし、この地震と本断層帯との直接的な関係は不明である。また、1945年三河地震では、本断層帯の南東側の播豆(はず)郡を中心に死者2,306名、全壊家屋7,221などの大きな被害が生じた。この地震では、本断層帯の南端の北東方約4kmから南東方約20kmにかけて、長さ27kmの地表地震断層(横須賀地震断層、及び深溝地震断層)があらわれ、断層の南西側が約2m高まるとともに横ずれを伴った(津屋,1946)。なお、これらの地表地震断層に沿っては、その一部に活動度C級とされる活断層が認められている(活断層研究会編,1991)。
このように、猿投−高浜断層帯付近では、歴史地震に伴う被害や地変等が複数知られているが、本断層帯と直接の関係を示す資料は認められない。
(3)1回の変位量(ずれの量)(注12)
猿投−境川断層(藤岡町深見地点)で実施されたトレンチ調査の結果(愛知県,1999)に基づくと、本断層帯の最新活動に伴う1回の上下変位量は0.5mと求められる。一方、本断層帯の長さは約51kmであり、前述の経験式(1)及び(2)を用いると1回の活動に伴う変位量は約4.1mと計算され、トレンチ調査結果から求めた数値と整合しないことになる。ここでは本断層帯が幅広い撓曲変形を伴っていることを考慮し、本断層帯の1回の活動に伴う上下変位量を4m程度の可能性があるとした。
(4)活動間隔
本断層帯では、平均活動間隔を求めるための直接的な資料は得られていない。ただし、平均変位速度が0.1m/千年程度、1回の活動に伴う変位量が4m程度の可能性があることから、平均活動間隔は4万年程度の可能性があるとした。
(5)活動区間
本断層帯は、松田(1990)の基準に基づけば1つの起震断層を構成しているとみることができる。よって、ここでは全体が1つの活動区間として活動したと推定する。
(6)測地観測結果
本断層帯周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果では、本断層帯周辺で北西−南東方向の縮みが見られる。断層帯南部では、北東−南西方向のわずかな伸びが見られる。1985年からの10年間では、顕著な歪みは見られない。最近5年間のGPS観測結果では、断層帯西部で南北方向の縮みが見られる。
(7)地震観測結果
本断層帯周辺の最近約6年間の地震観測結果によれば、断層帯付近の地震活動は比較的低調である。断層帯付近における地震発生層の下限の深さは約20kmである。
2.4.3 猿投−高浜断層帯の将来の活動
(1)活動区間及び活動時の地震の規模
2.4.2(5)で述べたように、本断層帯は全体が1つの活動区間として同時に活動すると推定される。この場合、長さが約51kmであることから、前述の経験式(1)、(2)によると、本断層帯で発生する地震の規模はマグニチュード7.7程度と推定され、また、その時、断層の西側が東側に対して相対的に4m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある。
(2)地震発生の可能性
本断層帯の平均活動間隔は4万年程度の可能性があり、最新活動時期が約1万4千年前頃と考えられることから、平均活動間隔に対する現在における地震後経過率は0.4となる。地震調査研究推進本部(2001)に示された手法(BPTモデル,α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内及び300年以内の地震発生確率はいずれもほぼ0%である。また、現在までの集積確率はほぼ0%となる(表7)。表11に、これらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。
2.5 加木屋断層帯
2.5.1 加木屋断層帯の位置及び形態
(1)加木屋断層帯を構成する断層
加木屋断層帯は、愛知県東海市から、半田市を経て、知多郡南知多町に至る断層帯で、加木屋断層、平井撓曲、半田池撓曲、本宮山(ほんぐうさん)撓曲、別曽池(べっそいけ)撓曲、河和(こうわ)背斜及び古布(こう)断層などからなる(図1、図2−2)。加木屋断層の位置・形態については、活断層研究会編(1980,1991)、愛知県(1996)などで概ねよい一致をなす。また、平井撓曲をはじめ、知多半島に分布する断層群に関しては、坂本ほか(1986)、吉田・尾崎(1986)、近藤・木村(1987)等により記載が行われ、活断層研究会編(1991)により、取りまとめが行われている。
各断層の位置及び名称は、坂本ほか(1986)、吉田・尾崎(1986)、近藤・木村(1987)及び活断層研究会編(1991)によった。
(2)断層面の位置・形状
本断層帯全体の長さは、断層帯の北端と南端を直線で結ぶと約35km、一般走向はN−Sとなる。
本断層帯は、加木屋断層(北半部)と平井撓曲以南の断層群(南半部)とで断層形状が異なる。
断層帯北半部を構成する加木屋断層に関しては、北端と南端を直線で結ぶと長さは約13km、一般走向はN15°Wとなる。
断層帯南半部を構成する平井撓曲をはじめとする断層群は、長さ2−5km程度で断続的に分布し、その北端と南端を直線で結ぶと長さは約26km、一般走向はN10°Wとなる。
断層面の上端の深さは、断層帯北半部、南半部とも断層または撓曲による変位がほぼ地表付近に達していることから0kmとした。
断層面の傾斜は、断層帯北半部では浅層反射法弾性波探査結果(愛知県,1996)から、地下800m以浅では高角、西傾斜と推定される(図10)。断層帯南半部では、地形の特徴(活断層研究会編,1991など)や断層露頭の観察結果(愛知県,1996)から、東傾斜と推定される。なお、断層帯北半部と南半部との間隔は4−5km程度であり、地下深部では両者の断層面の一部が近接している可能性があるが、地下深部の形状等を示す資料は得られていないため詳細は不明である。
断層面の幅は、傾斜が明らかではないことから不明である。
(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注12)
本断層帯は、活断層研究会編(1991)による地形の特徴や吉田・尾崎(1986)などに示された地質構造等に基づくと、断層帯の北半部では断層の西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層、断層帯の南半部については断層の東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層と考えられる。
2.5.2 加木屋断層帯の過去の活動
(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注12)
加木屋断層においては、更新世後期(10万年前)の高位面が8−12m東側隆起を示すこと(愛知県,1996)から、0.1m/千年程度の平均上下変位速度を示す可能性がある。一方、断層帯南半部を構成する断層については、平均変位速度に関して評価できる資料は得られていない。ただし、変動地形の明瞭さから判断すると、南半部全体でも加木屋断層と同程度の平均上下変位速度を有すと判断される。よって、ここでは本値を本断層帯全体の平均上下変位速度とみなす。
なお、愛知県(1996)では、加木屋断層において約50万年前の加木屋層の基底が20m程度変位すると報告しているが、年代値の信頼度が低いため採用しない。
(2)活動時期
a)地形・地質的に認められた過去の活動
本断層帯では、過去の活動履歴に関する具体的な資料は得られていない。
b)先史時代・歴史時代の活動
2.1.2(2)b)を参照。
(3)1回の変位量(ずれの量)(注12)
本断層帯では、1回の活動に伴う変位量を直接示す資料は得られていない。しかし、本断層帯の長さが約35kmであることから、前述の経験式(1)及び(2)を用いると、1回の活動に伴う変位量は約2.8mと計算される。したがって、本断層帯の1回の活動に伴う上下変位量は3m程度であった可能性があるとした。
(4)活動間隔
本断層帯では、平均活動間隔を求めるための資料は得られていない。しかし、平均上下変位速度が0.1m/千年程度、1回の活動に伴う上下変位量が3m(計算値2.8m)程度である可能性があることから、平均活動間隔は3万年程度の可能性がある。
(5)活動区間
本断層帯は、松田(1990)の起震断層の基準に基づけば全体が1つの活動区間として活動した可能性があると判断される。
ただし、個々の断層についての過去の活動時期に関する資料は得られておらず、また、北半部と南半部とでは傾斜の方向が異なり、両者の間隔が4−5kmになることから、北半部と南半部とではそれぞれが別の活動区間を形成している可能性も残る。
(6)測地観測結果
本断層帯周辺における1994年までの約100年間の測地観測結果では、この断層帯周辺で顕著な歪みは見られない。1985年からの10年間では、北西−南東方向のわずかな縮みが見られる。最近5年間のGPS観測結果では、断層帯北部で南北方向の縮みが見られる。
(7)地震観測結果
本断層帯周辺の最近約6年間の地震観測結果によれば、断層帯付近の地震活動は比較的活発である。断層帯付近における地震発生層の下限の深さは約20kmである。
2.5.3 加木屋断層帯の将来の活動
(1)活動区間及び活動時の地震の規模
2.5.2(5)で述べたように、本断層帯は全体が1つの活動区間として活動する可能性がある。この場合、長さが約35kmであることから、前述の経験式(1)及び(2)により地震の規模を求めると、マグニチュード7.5程度の地震が発生すると推定される。また、その時、断層帯の北半部では西側が東側に対し、南半部では東側が西側に対して3m程度高まる段差や撓みが生じる可能性がある。
(2)地震発生の可能性
本断層帯の平均活動間隔は、直接的なデータではないが、3万年程度の可能性がある。しかし、最新活動時期が特定できていないために、上記のようなマグニチュード7.4程度の地震が発生する長期確率を更新過程(地震の発生確率が時間と共に変動するモデル)を用いて評価することができない。
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、地震の発生確率を求めるに当たって、通常の活断層評価で用いている更新過程が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしている。信頼度の低い平均活動間隔を用いた計算であることに十分留意する必要があるが、本断層帯では、平均活動間隔が3万年程度であることを基に、ポアソン過程を適用して地震発生確率を求めると、今後30年以内、50年以内、100年以内及び300年以内の地震発生確率は、それぞれ0.1%、0.2%、0.3%及び1%となる(表9)。
なお、通常の活断層評価で用いている更新過程によった場合、平均活動間隔が3万年程度と求められているので、30年確率の取り得る値はほぼ0%−0.9%となる。
3.今後に向けて
屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯は規模が大きく、その活動様式も複雑と考えられる。よって、過去の活動履歴や断層の地下深部の形状等について、さらに調査を行って本断層帯の特性を明らかにし、活動区間や区間毎の活動度など本断層帯で発生する地震の姿を明らかにする必要がある。
屏風山断層帯では、最新活動時期が不明であるなど過去の活動履歴の詳細が明らかとなっていない。このため、今後、過去の活動履歴についてより一層精度良く明らかにする必要がある。
赤河断層帯及び加木屋断層帯については、過去の活動に関する資料がほとんど得られておらず、将来の地震発生の可能性について十分な評価ができないため、過去の活動履歴全般について更に調査を行う必要がある。
恵那山−猿投山北断層帯では、恵那山断層以東(東半部)と猿投山北断層(西半部)とで、変位の主体となる方向が異なり、別々に活動した可能性も否定できないため、本断層帯では、過去の活動履歴について信頼性を向上させる観点で更に調査を行う必要がある。
猿投−高浜断層帯では、南半部を構成する大高−大府断層及び高浜撓曲では過去の活動履歴に関する資料が得られておらず、北半部の猿投−境川断層に関しても最新活動時期以外に信頼度の高いデータが得られていない。よって、これらに関して精度の高いデータを得る必要がある。
また、名古屋市付近に推定されている断層は防災上重要な位置にあるため(図3)、その存在の有無を含めて調査を行い、詳細を明らかにする必要がある。
注10: | 屏風山断層の南西部(約16km)では、約8万年前以降に変位はなかったとされている(岐阜県,2001)。該当区間の断層長と松田(1975)の経験式*に基づくと、1回の変位量は約1.3mとなることから、その最近の活動度(注11)はC級下位以下となる。なお、仮に屏風山断層帯の全長を約33kmとして試算しても、上述の経験式より1回の変位量は約2.6mとなり、活動度はC級下位以下となる(*:2.1.2(3)の項目を参照)。 | |
注11: | 活断層の活動の活発さの程度を示す指標として「活動度」が定義されている(松田,1975)。 ・活動度がAの活断層は、1千年あたりの平均的なずれの量が1m以上、10m未満であるものをいう。 ・活動度がBの活断層は、1千年あたりの平均的なずれの量が0.1m以上、1m未満であるものをいう。 ・活動度がCの活断層は、1千年あたりの平均的なずれの量が0.01m以上、0.1m未満であるものをいう。 なお、活断層研究会編(1991)により約50万年前以後に活動しなかったとみられると指摘されている断層に関しては、活断層研究会編(1991)の表記手法に基づいて、上記のようにして求めた活動度に[ ]を付している。 |
|
注12: | 「変位」を、1−4頁の本文及び9−17頁の表1、3、4、6、8では、一般にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは専門用語である「変位」が、本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓(たわ)みの成分」よりなる。 | |
注13: | 10,000年BPよりも新しい炭素同位体年代については、Niklaus(1991)に基づいて暦年補正し、原則として1σの範囲の数値で示した。このうち2,000年前よりも新しい年代値は世紀単位で示し、2,000年前よりも古い年代値については、百年単位で四捨五入して示した。また、10,000年BPよりも古い炭素同位体年代については、Kitagawa and van der Plicht(1998)のデータに基づいて暦年補正した値を用いた。 | |
注14: | 「中野方北方の断層」については、活断層研究会編(1991)では単に「中野方北方」としか記載がないことから、本評価に際しては便宜上この断層を「中野方北方の断層」と、名称の後ろに「の断層」を付加して表記した。また、名古屋市付近に分布が推定されている断層については、中田・今泉編(2002)では、断層形態の記載のみで名称が付されていないことから、本評価では「名古屋市付近の断層」と仮称した。 |
文 献
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表10 恵那山−猿投山北断層帯の地震発生確率及び参考指標
項 目 | 数 値 | 備 考 | ||
地震後経過率 今後30年以内の発生確率 今後50年以内の発生確率 今後100年以内の発生確率 今後300年以内の発生確率 集積確率 |
0.4 − 1.1 ほぼ0% − 2% ほぼ0% − 3% 0.001% − 6% 0.005% − 20% 0.003% − 60% |
発生確率及び集積確率は地 震調査研究推進本部地震調 査委員会(2001)参照。 |
||
指標(1) 経過年数 比 指標(2) 指標(3) 指標(4) 指標(5) |
マイナス4千4百年 − 2千6百年 0.6 − 1.5 0.001 − 4 0.003% − 60% 0.0002 − 0.5 0.00007 − 0.0001 |
地震調査研究推進本部地震 調査委員会長期評価部会 (1999)参照。 |
項 目 | 数 値 | 備 考 | ||
地震後経過率 今後30年以内の発生確率 今後50年以内の発生確率 今後100年以内の発生確率 今後300年以内の発生確率 集積確率 |
0.4 ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% ほぼ0% |
発生確率及び集積確率は地 震調査研究推進本部地震調 査委員会(2001)参照。 |
||
指標(1) 経過年数 比 指標(2) 指標(3) 指標(4) 指標(5) |
マイナス1万4千年 0.5 0.0002 ほぼ0% ほぼ0 0.00003 |
地震調査研究推進本部地震 調査委員会長期評価部会 (1999)参照。 |
注15: | 評価時点はすべて2004年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を、「ほぼ0」は10−5未満の数値を示す。なお、計算に用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。 |
指標(1) | 経過年数 | :当該活断層での大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は、最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(BPT分布モデルを適用した場合の考え方)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合の考え方)。 この指標は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。値がマイナスである場合は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達していないことを示す。 恵那山−猿投山北断層帯の場合ポアソン過程を適用した場合の危険率は、恵那山−猿投山北断層帯の場合は1万4千年分の1−7千2百分の1(0.00007−0.0001)であり、いつの時点でも一定である。 BPT分布モデルを適用した場合の危険率は現時点ではほぼ0−1千8百分の1(0.0006)であり、時間とともに増加する。ほぼ0であればBPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達するには今後4千4百年を要するが、1千8百分の1であればBPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達してから2千6百年が経過したことになる。 |
指標(1) | 比 | :最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルによる危険率がポアソン過程とした場合のそれを超えるまでの時間をBとする。前者を後者で割った値(A/B)。 |
指標(2) | :BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の評価時点での危険率の比。 | |
指標(3) | :評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。 | |
指標(4) | :評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の確率の値で割った値。 | |
指標(5) | :ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。 |
付表
地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。
ランク | 分類条件の詳細 |
a | 発生確率を求める際に用いる平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも比較的高 く (◎または○)、これらにより求められた発生確率等の値は信頼性が高い。 |
b | 平均活動間隔及び最新活動時期のうち、いずれか一方の信頼度が低く (△)、これらにより 求められた発生確率等の値は信頼性が中程度。 |
c | 平均活動間隔及び最新活動時期の信頼度がいずれも低く (△)、これらにより求められた発 生確率等の値は信頼性がやや低い。 |
d | 平均活動間隔及び最新活動時期のいずれか一方または両方の信頼度が非常に低く (▲)、発 生確率等の値は信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性 が高い。または、データの不足により最新活動時期が十分特定できていないために、現在の 確率値を求めることができず、単に長期間の平均値を確率としている。 |