平成15年11月12日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会


当別断層の長期評価について


地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。

地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、これまでに陸域の活断層として、41断層帯の長期評価を行い公表した。

今回、引き続き、石狩低地東縁断層帯について現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。

評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。


平成15年11月12日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

当別断層の評価

当別(とうべつ)断層は、増毛(ましけ)山地南部の当別川上流部から月形町西方以南の石狩平野の西縁部にかけて分布する活断層である。ここでは、平成11−13年度に北海道によって行われた調査をはじめ、これまで行われた調査研究成果に基づいて、この断層の諸特性を次のように評価した。

1.断層の位置及び形態

当別断層は、北海道石狩郡当別町二番川付近から同本中小屋(もとなかごや)付近にかけて、南北方向に延びている。長さが約20kmで、西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層である(図1、2及び表1)。

2.断層の過去の活動

当別断層の平均的な上下方向のずれの速度は、0.1−0.2m/千年程度で、最新の活動は 約1万1千年前以後、約2千2百年前以前にあった可能性がある。活動時には、断層の西側が東側に対して相対的に1.5m程度隆起した可能性がある。本断層の平均的な活動間隔は7千5百―1万5千年程度であった可能性がある(表1)。

3.断層の将来の活動

当別断層は、全体が一つの活動区間として活動した場合、マグニチュード7.0程度の地震が発生する可能性がある。また、その時、断層の近傍の地表面では、西側が東側に対して相対的に1.5m程度高まる段差や撓(たわ)みが生ずる可能性がある(表1)。本断層の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は、表2に示すとおりである。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが、その最大値をとると、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注1、2)。

4.今後に向けて

当別断層の将来の活動性を明確にするためには、少なくとも最新の活動時期、1回の活動におけるずれの量を精度良く求めるとともに、活動間隔を明らかにする必要がある。また、本断層の北東に位置する増毛山地東縁断層帯との関係も含め、活動区間等を調査する必要がある。さらに、本断層の南方延長上にある野幌(のっぽろ)丘陵の両縁の活動帯との関係等についても詳しく検討することが望ましい。

表1 当別断層の特性

表2 当別断層の将来の地震発生確率等

注1: 我が国の陸域及び沿岸域の主要な98の活断層帯のうち、2001年4月時点で調査結果が公表されているものについて、その資料を用いて今後30年間に地震が発生する確率を試算すると概ね以下のようになると推定される。
 98断層帯のうち約半数の断層帯:30年確率の最大値が0.1%未満
 98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満
 98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が3%以上
 (いずれも2001年4月時点での推定。確率の試算値に幅がある場合はその最大値を採用。)
 この統計資料を踏まえ、地震調査委員会の活断層評価では、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
 今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
 「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
 今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
 「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
注2: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率及び集積確率(このうち、1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震については「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)による暫定値)は以下のとおりである。

   

「長期的な地震発生確率の評価手法について」に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が7千5百年の場合は30年確率の最大値は3%程度、1万5千年の場合は2%程度である。
注3: 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
◎:高い、○:中程度、△:低い
注4: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
 文献1:北海道(2002)
 文献2:池田ほか編(2002)
 文献3:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
 文献4:活断層研究会編(1991)
 文献5:中田・今泉編(2002)
 文献6:岡(1997b)
注5: 評価時点はすべて2003年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を示す。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
注6: 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
 a:(信頼度が)高い b:中程度 c:やや低い d:低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度
a:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。
注7: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。0.1は2千2百年を1万5千年で除した値であり、1.5は1万1千年を7千5百年で除した値。
注8: 前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率。

(説明)

1.当別断層に関するこれまでの主な調査研究

当別(とうべつ)断層(垣見・植村, 1956)は、増毛(ましけ)山地南部の当別川上流部から月形町西方以南の石狩平野の西縁部にかけて分布する南北方向で西側隆起の活断層である。

活断層としての本断層の存在やその特性に関する研究として、大内(1980)、活断層研究会編(1980, 1991)、岡(1997b)等がある。大内(1980)は、北部の当別川上流部で本断層が低位の河岸段丘面を西側隆起に変位させていることを明らかにし、その推定年代と変位量から平均変位速度及び活動度を見積もり、本断層がB級の活断層であることを指摘した。活断層研究会編(1980)は本断層の北部のみを確実度Tの活断層として図示した。活断層研究会編(1991)は、さらに南部の月形町西方以南の石狩平野の西縁部についても活断層の存在を推定し、その確実度をUとして図示した。岡(1997b)は当別川上流部の青山付近で見出された活断層露頭を報告した。岡(1997a)は、本断層の南方延長上の石狩平野下で、第四紀前半の材木沢層の下限が900m程度西側隆起に食い違っていると指摘している。また、その西方の伊達山付近で、中位段丘面が少なくとも60m変位していることを小松原・安斎(1998)が明らかにしている。

北海道(2000, 2001, 2002)は、反射法弾性波探査、ボーリング調査、トレンチ調査等を行い、平均変位速度、活動履歴等について新たな知見を得た。

池田ほか編(2002)及び中田・今泉編(2002)は、当別川上流部、並びに月形町西方以南の石狩平野の西縁部に、それぞれ活断層を図示している。なお、池田ほか編(2002)では本断層南部の石狩平野西縁部に位置するものは増毛山地東縁断層帯の一部として扱われている。

2.当別断層の評価結果について

2.1 断層の位置・形態

(1)当別断層を構成する断層

当別断層を構成する断層の位置・形態は、活断層研究会編(1980, 1991)、北海道(2000, 2001, 2002)、池田ほか編(2002)、中田・今泉編(2002)などに示されている。これらでは、主要断層の分布についてはほぼ共通する認識が示されているが、中央部の断層線が途切れる部分の扱いや南部における断層線の位置については、差異が認められる。ここでは、断層の位置は主に北海道(2002)にしたがい、中田・今泉編(2002)も考慮に入れた。また、断層の名称は活断層研究会編(1991)にしたがった。

本断層は、北海道石狩郡当別町二番川付近から本中小屋(もとなかごや)付近にかけてほぼ南北に延びている。北部の当別川上流流路に沿って分布する断層(a)と、南部の月形町西方以南の石狩平野西縁沿いに分布する断層(b)からなる。これらは、松田(1990)の基準にしたがうと、一つの起震断層を構成しているとみなされる。

なお、本断層の北東には比較的近接して増毛山地東縁断層帯が分布する(図3)が、これについては、別途取り扱っている。

(2)断層の位置・形状

本断層の長さ及び一般走向は、図2に示された断層の北端と南端を直線で結んで計測し、約20km、 N−Sとした。本断層の南側延長部にあたる石狩平野下で新第三紀層を変位させる断層または断層を伴った褶曲構造が伏在することが知られている(重川ほか, 1990;岡, 1997a;北海道, 2002)ので、本断層は石狩平野内に入ってさらに南方へと延びている可能性もあり、その南端の位置は不確かである。

断層面上端の深さは、断層による変位が地表に達していることから0kmとした。

断層面の傾斜については、岡(1997b)や北海道(2002)による地表断層露頭の記載から、地表付近では30−50°程度で西に傾斜していると推定される。深部の形状については、資料がない。

断層面下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると、20km程度と推定される。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注9)

本断層は、西側を相対的に隆起させる断層で(大内, 1980;活断層研究会編, 1980, 1991;北海道, 2002;池田ほか編, 2002;中田・今泉編, 2002) 、上述のように地表付近に限られるが西傾斜の断層面が確認されていることから、西側が東側に乗り上げる逆断層と考えられる。

2.2 断層の過去の活動

(1) 平均変位速度(平均的なずれの速度)(注9)

当別川上流部では、一番川付近で、本流流路に沿って発達する新旧2つの段丘面が断層(a)により西側隆起に変位している(図4)。北海道(2002)は、それぞれをT4面、T5面に対比し、各上下変位量を約6m、約2.8mと見積もっている(図5)。T4面、T5面の形成年代を北海道(2002)にしたがい、約4−5万年前、約2万年前とすると、各段丘面形成後の平均上下変位速度は約0.12−0.15m/千年、約0.14m/千年となる。

以上のことから、本断層の平均上下変位速度は、0.1−0.2m/千年程度の可能性があると考えた。ただし、以上のデータは断層(a)の一部に関するものであり、断層(b)では平均変位速度に関する詳しいデータは得られていないので、その扱いには注意を要する。断層(b)の南西、伊達山の西側では、中位段丘面が西向きの傾動を示し、少なくとも60m変位している(小松原・安斎, 1998)が、本断層の南方延長については不明な点が多く、これと本断層とは位置的に大きく隔たっている可能性もある。両者の関係が明らかでないので、この資料についてはここでは考慮しないことにした。

(2) 活動時期

本断層の活動履歴に関する資料として、以下のものがある。

@ 断層北部の青山中央神社地点において、北海道(2002)はトレンチ調査・ピット調査を実施している(図6)。ここでは、T6−T6’面(北海道, 2002)とされる段丘面上に1m程度の比高をもつ東向き撓曲崖が形成されており、トレンチやピットはこの撓曲崖の基部付近に掘削された。

トレンチ壁面には新第三紀の望来(もうらい)層とそれを不整合に覆う堆積物(V−T層)と、これら堆積物の一部を変位させる断層が露出した(図7)。図7をみると、V層と少なくともU層の下部層が、西側が東側に乗り上げるように上下に約1.3m(北海道, 2002)変位している。しかし、その上位でこの部分を横切って分布するT層には同様な変位・変形が認められないことから、U層の下部層形成後、T層形成前の時期に東向きの撓曲崖をつくるような断層活動があったと考えられる。T6−T6’面上で認められる撓曲崖は、比高がこの断層活動の変位量とほぼ等しいので、この時生じたと考えられる。その時代は、U層の下部層とT層上部が示す14C年代(北海道, 2002;注10)から、約1万4千年前以後、約2千2百年前以前と推定される。

トレンチの北側に隣接して掘削されたピットの壁面にもV−T層の続きの地層と、V層−U層下部が約1.3m(北海道, 2002) 西側隆起に変位または撓曲変形し、これをU層の一部以上の地層が傾斜不整合で覆う構造が露出している(図8)。さらに北方で掘削された試掘孔でも東向きに撓曲変形した地層群が見いだされており、ここでは、その一部が約1万1千年前の14C年代を示す(図9;北海道, 2002)ことから、これらトレンチ、ピットで見つかった断層活動は、約1万1千年前以後、約2千2百年前以前にあったと推定される。

なお、トレンチ壁面には、T層の下部まで断ち切る小断層が2つ示されており(図7)、T層の堆積開始後にも断層活動があった可能性がある。これらによるT層基底面の上下の食い違いは10cm程度と小さい。また、これを境にU層の層相・層厚が急変していることから、横ずれ変位を伴っている可能性も考えられ、この活動は、上記の約1万1千年前以後、約2千2百年前以前にあった活動とは異質な側面をもつ。これらの小断層は隣のピットでは検出されないので、局所的な現象である可能性もある。

以上から青山中央神社地点付近では、約1万1千年前以後、約2千2百年前以前に断層(a)の活動があったと考えられ、これは断層(a)の最新活動であったと思われる。トレンチで見出されたT層堆積開始期以後の活動は、断層(a)の本質的な活動に当たらない可能性があるとして、ここでは考慮しないことにした。

A 断層北部の一番川南方では、断層(a)によりT5面上に東向き低断層崖が形成されているが、その南側延長上に分布する低位の段丘面(T7面)には断層変位が認められない。北海道(2002)は、ここで、トレンチ、ピット、ボーリング調査を行い、地下15m付近で本断層と思われる地質断層を確認するとともに、その上方延長で、T7面及びその構成層(少なくともその上部層)は変位することなく分布することを示す資料を得ている。

これらから、ここでは、T7面の離水後に断層(a)は活動したことがないと推定される。T7面の離水期については、T7面構成層の14C年代測定結果(北海道, 2002)に基づき、約6千7百−5千年前以後と推定されるが、詳しくは特定できない。

以上のことから、本断層は、約1万1千年前以後、約2千2百年前以前に活動したと考えられる。この断層活動は本断層の最新活動に当たる可能性がある。ただし、これは、本断層の北部、断層(a)に関係した資料のみに基づいており、断層(b)に関する情報は得られていないため考慮していない。

(3) 1回の変位量(ずれの量)(注9)

青山中央神社地点付近では、上述のようにトレンチ、ピット調査の結果(図7、8)、約1万1千年前以後、約2千2百年前以前にあった断層活動で約1.3mの西側隆起の上下変位が生じたことが明らかになっている。
一方、本断層の長さは約20kmであることから、次の松田(1975)の経験式に基づくと、1回の変位量は約1.6mとなる。

    Log L = 0.6M − 2.9 (1)
    Log D = 0.6M − 4.0 (2)

ただし、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Dは断層の変位量(m)、Mは地震のマグニチュード。

以上のことから、本断層の断層活動1回の変位量は、1.5m程度(上下成分)である可能性があると考えた。

(4)活動間隔

本断層の活動間隔に関する資料として、以下のものがある。

@ 約1万1千年前以後、約2千2百年前以前にあった断層活動が本断層の最新活動であるとすると、その後少なくとも約2,200年間は活動していないので、活動間隔は2,200年以上である可能性がある。

A 上述のように一番川付近では、T5面が約2.8m上下に変位している(図5)。断層活動1回の変位量を1.5m程度とすると、これはほぼ2回分に当たる。T5面の離水期を北海道(2002)にしたがって約2万年前とすると、ここでは、10,000年を越える間隔で断層は活動したことも考えられる。

B 1回の変位量(上下成分1.5m程度)と平均変位速度(上下成分0.1−0.2m/千年)に基づき計算すると、平均活動間隔は15,000−7,500年となる。

以上のことから、本断層の平均活動間隔は7千5百―1万5千年程度であった可能性があると考えた。

(5)活動区間

本断層の活動区間に関する直接的資料は得られていない。

(6)先史時代・歴史時代の活動

本断層周辺では、歴史時代の被害地震の記録や地震考古学上の知見は知られていない。宇佐美(2003)には、1834年に石狩湾で起った推定マグニチュード6.4の地震の記録があるが、この断層から発生した可能性のある地震の記述はない。また、札幌付近などで1834年やそれに先立つ歴史時代に生じたと考えられる液状化跡が見つかっている(伏島・平川, 1996など)が、これらと本断層との関係は不明である。

(7)測地観測結果

本断層周辺における最近5年間のGPS観測結果によると、北西−南東方向の縮みが見られる。

(8)地震観測結果

本断層の北方で1995年5月23日にマグニチュード5.7の地震が深さ約16kmで発生した。この地震の発震機構解はほぼ東西に圧力軸をもつ逆断層型であった。
最近の地震活動から、地震発生層の下限の深さは20km程度と推定される。

2.3 断層の将来の活動

(1)活動区間と活動時の地震の規模

本断層全体を一つの活動区間とした場合、上述した経験式(1)により、本断層(長さ約20km)から発生する地震の規模はマグニチュード7.0となる。

このような地震が発生した場合、地表に西側隆起で1.5m程度の段差や撓みを伴う変位が生ずる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

本断層の平均活動間隔は7千5百―1万5千年程度で、最新活動時期は約1万1千年前以後、約2千2百年前以前であった可能性がある。したがって、本断層では、最新活動後、評価時点(2003年)までの経過時間は約1万1千−2千2百年で、平均活動間隔の0.1−1.5倍の時間が経過していることになる。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、ほぼ0%−2%、ほぼ0%−4%、ほぼ0%−8%、及びほぼ0%−20%となる。また、現在までの集積確率は、ほぼ0%−90%より大となる(表2)。本評価で得られた将来の地震発生確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる。表3にこれらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会, 1999)を示す。

3.今後に向けて

当別断層の将来の活動性を明確にするためには、最新の活動時期、1回の変位量、及び活動間隔を精度良く求める必要がある。特に南部に位置する断層(b)に関して基本資料が得られていないので、補充する必要がある。本断層の北東側には、増毛山地東縁断層帯が分布することから、活動区間については、これとの関連性も含めて調査する必要がある。また、本断層の南方延長上の石狩平野の地下構造を精査し、小松原・安斎(1998)によって指摘された断層南西方の伊達山付近の中位段丘面の変形や、南方の野幌(のっぽろ)丘陵縁辺の活動帯との関連性についても詳しく検討する必要がある。

注9: 「変位」を、1頁の本文、4−5頁の表1では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは、専門用語である「変位」が、本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓みの成分」よりなる。
注10: 10,000年BPよりも新しい炭素同位体年代については、Niklaus(1991)に基づいて暦年補正した値を用いた。また、10,000年BPより古い炭素同位体年代については、Kitagawa and van der Plicht(1998)のデータに基づいて暦年補正し、千年単位で表示した。



文 献

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表3 将来の地震発生確率及び参考指標

注11: 評価時点はすべて2003年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を、「ほぼ0」は10−5未満の数値を示す。なお、計算に用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
指標(1) 経過年数 :当該活断層に起因する大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は、最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(BPT分布モデルを適用した場合の考え方)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合の考え方)。
この指標は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。マイナスの値は、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達していないことを示す。
ポアソン過程を適用した場合の危険率は、1万5千分の1−7千5百分の1(0.00007−0.0001)であり、いつの時点でも一定である。
BPT分布モデルを適用した場合の危険率は、評価時点ではほぼ0−1千2百分の1(0.0008)であり、時間とともに増加する。ほぼ0であればBPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達するには今後8千3百年を要するが、1千2百分の1であればBPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率に達してから5千8百年が経過したことになる。
指標(1) :最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルを適用した場合の危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率を超えるまでの時間をBとした場合において、前者を後者で割った値(A/B)である。
指標(2) :BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の評価時点での危険率の比。
指標(3) :評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標(4) :評価時点以後30年以内の地震発生確率の値をBPT分布モデルでとりうる最大の確地震発生率の値で割った値。
指標(5) :ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。

付表

地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。