豊後水道付近のスロースリップイベントと深部低周波微動(1)周期的移動性微動とそれに同期したスロースリップイベント


図1.豊後水道・四国西部地域における深部低周波微動の活動度と愛媛県日吉(HIYH)での傾斜変動。傾斜記録にはBaytap−G(Tamura,et al.,1991)による潮汐補正が施されている。左上図の四角の領域内で発生した微動について1時間単位で計測した日別回数を下に示す。この地域は帯状に分布する微動活動域の中でも最も活発な場所であるが、数日間以上継続するような規模の大きい微動は約半年周期で発生し、それに同期してステップ的な傾斜変化が観測されている。

図2.(上)各活動期における図1の時間軸拡大図(2週間)。(下)微動源震央分布の時間変化。微動源位置はエンベロープ相関法(Obara,2002)よって決定された。2001年1月及び2002年2月には、微動は最初北東側で活発化し、その後南西方向の豊後水道側に移動したが、2001,2002年8月には、それとは逆に豊後水道側から北東方向に微動が移動した。HIYHにおける傾斜変化は微動の移動と非常に調和的で、微動が北東側で活発なときにはNS成分のみ、微動が南西側で活発化するときにはNS,EW両成分で傾斜変化が現れ、スロースリップ源も微動と共に移動することが予想される。

図3.四国西部の観測点における2002年8月の傾斜変化。観測点の位置は図4に示す。図2より、傾斜変化は8月6日から12日まで継続したので、その前後のデータでリニアトレンド(黒破線)を推定し、全体から除去した。

図4.2002年8月の傾斜変化から推定されたスロースリップイベントの断層モデル。
8月10日0時の前後についてそれぞれモデルを推定した。
傾斜ベクトル(観測値、及び計算値)を併せて示す。