平成15年7月14日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会


増毛山地東縁断層帯・沼田−砂川付近の断層帯の長期評価について


地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。

地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、これまでに陸域の活断層として、37断層帯の長期評価を行い公表した。

今回、引き続き、増毛山地東縁断層帯・沼田−砂川付近の断層帯について現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。

評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。


平成15年7月14日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

増毛山地東縁断層帯・沼田−砂川付近の断層帯の評価

増毛(ましけ)山地東縁断層帯は、増毛山地の東縁部に分布する活断層帯である。また、「沼田−砂川付近の断層帯」(仮称)は石狩平野の北部の東縁に分布する活断層帯である。ここでは、平成8−9年度に北海道によって行われた調査をはじめ、これまで行われた調査研究成果に基づいて、これらの断層帯の諸特性を次のように評価した。


1 断層帯の位置及び形態

増毛山地東縁断層帯は、増毛山地東縁の北海道雨竜(うりゅう)郡沼田町から樺戸(かばと)郡月形(つきがた)町に至る断層帯である。全体として長さは約60kmで、西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層であり、和(やわら)断層や樺戸断層群などから構成されている(図1、2及び表1)。
沼田−砂川付近の断層帯は北海道雨竜郡沼田町から砂川市に至る断層帯である。全体として長さは約38kmで、東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層である(図1、2及び表3)。
 
2 断層帯の過去の活動

(1)増毛山地東縁断層帯
増毛山地東縁断層帯は、活動度が概ねB級で、平均的な上下方向のずれの速度は、1m/千年以下の可能性がある。本断層帯では、過去の活動に関する資料が乏しく、具体的な活動履歴については明らかにされていない。既往の調査研究成果による直接的なデータではないが、本断層帯の長さをもとに経験則を用いると、1回の活動におけるずれの量は5m程度(上下成分)であった可能性がある。また、この1回のずれの量と平均的な上下方向のずれの速度に基づくと、平均的な活動間隔は5千年程度以上であった可能性がある(表1)。

(2)沼田−砂川付近の断層帯

沼田−砂川付近の断層帯の最新活動時期を含めた最近の活動履歴については不明である(表3)。
 
3 断層帯の将来の活動

(1)増毛山地東縁断層帯

増毛山地東縁断層帯は、全体が一つの活動区間として活動した場合、マグニチュード7.8程度の地震が発生する可能性がある。また、その時、断層の近傍の地表面では、西側が東側に対して相対的に5m程度高まる段差や撓(たわ)みが生ずる可能性がある(表1)。過去の活動が十分に明らかではなく、最新活動時期が特定できていないことから信頼度は低いが、将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりである。本断層帯では最新活動時期が特定できていないことから、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めているが、その最大値をとると、本断層帯は今後30年の間に地震が発生する可能性が我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注1−3)。

(2)沼田−砂川付近の断層帯

 沼田−砂川付近の断層帯は、全体が一つの活動区間として活動した場合、マグニチュード7.5程度の地震が発生する可能性がある。また、その時、断層の近傍の地表面では、東側が西側に対して相対的に3m程度高まる段差や撓(たわ)みが生ずる可能性がある(表3)。

4 今後に向けて

増毛山地東縁断層帯の将来の活動性を明確にするためには、少なくとも最新の活動時期、1回の活動におけるずれの量を精度良く求めるとともに、活動間隔を明らかにする必要がある。また、本断層帯の南西方に位置する当別(とうべつ)断層との関係も含め、活動区間等を調査することが望ましい。
沼田−砂川付近の断層帯は、最近その存在が指摘されたものであり、活断層としての諸側面については未調査の段階にある。将来の活動性を明確にするためには、構成する断層の性状や地下構造を精査して最新の活動時期、1回の活動におけるずれの量、平均的なずれの速度を精度良く求めるとともに、活動間隔を明らかにする必要がある。

表1 増毛山地東縁断層帯の特性

表2 増毛山地東縁断層帯の将来の地震発生確率(ポアソン過程を適用)

表3 沼田−砂川付近の断層帯の特性

注1: 増毛山地東縁断層帯では、最新活動時期が特定できていないため、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めることができない。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、このような更新過程が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしていることから、ここでは、ポアソン過程を適用して増毛山地東縁断層帯の将来の地震発生確率を求めた。しかし、ポアソン過程を用いた場合、地震発生の確率はいつの時点でも同じ値となり、本来時間とともに変化する確率の「平均的なもの」になっていることに注意する必要がある。
なお、グループ分けは、通常の手法を用いた場合の全国の主な活断層のグループ分け(注2参照)と同じしきい値(推定値)を使用して行なった。
注2: 我が国の陸域及び沿岸域の主要な98の活断層帯のうち、2001年4月時点で調査結果が公表されているものについて、その資料を用いて今後30年間に地震が発生する確率を試算すると概ね以下のようになると推定される。
  98断層帯のうち約半数の断層帯:30年確率の最大値が0.1%未満
  98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満
  98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が3%以上
(いずれも2001年4月時点での推定。確率の試算値に幅がある場合はその最大値を採用。)
この統計資料を踏まえ、地震調査委員会の活断層評価では、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
注3: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率及び集積確率(このうち、1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震については「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)による暫定値)は以下のとおりである。

      

「長期的な地震発生確率の評価手法について」に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が5千年の場合は30年確率の最大値は5%程度である。
注4: 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。 
◎:高い、○:中程度、△:低い
注5: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
 文献1:北海道(1998a)
 文献2:池田ほか(2002)
 文献3:活断層研究会(1991)
 文献4:松井ほか(1965)
 文献5:宇佐美(1996)
 文献6:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
注6: 増毛山地東縁断層帯は最新活動時期を特定できていないため、通常の手法による確率の値は推定できない。そのかわりとして、長期間の確率の平均値を示した。最新活動時期によってはこの値より大きく、または小さくなるが、その確率値のとり得る範囲は平均活動間隔から求めることができる。本断層帯は平均活動間隔が5千年程度以上と求められているので、この場合の通常の手法による30年確率のとり得る範囲はほぼ0%−5%となる。
注7: 地震後経過率、発生確率及び現在までの集積確率(以下、発生確率等)の信頼度は、評価に用いた信頼できるデータの充足性から、評価の確からしさを相対的にランク分けしたもので、aからdの4段階で表す。各ランクの一般的な意味は次のとおりである。
   a:(信頼度が)高い b:中程度 c:やや低い d:低い
発生確率等の評価の信頼度は、これらを求めるために使用した過去の活動に関するデータの信頼度に依存する。信頼度ランクの具体的な意味は以下のとおりである。分類の詳細については付表を参照のこと。なお、発生確率等の評価の信頼度は、地震発生の切迫度を表すのではなく、発生確率等の値の確からしさを表すことに注意する必要がある。
発生確率等の評価の信頼度
a:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が比較的高く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が高い。
b:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が中程度で、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が中程度。
c:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性がやや低い。
d:過去の地震に関する信頼できるデータの充足度が非常に低く、これを用いて求めた発生確率等の値の信頼性が低い。このため、今後の新しい知見により値が大きく変わる可能性が高い。または、最新活動時期のデータが得られていないため、現時点における確率値が推定できず、単に長期間の平均値を確率としている。



(説明)

1 増毛山地東縁断層帯・沼田−砂川付近の断層帯に関するこれまでの主な調査研究

増毛(ましけ)山地東縁断層帯は、増毛山地の東縁部に分布する活断層帯である。増毛山地東縁断層帯に関係する主な研究としては、松井ほか(1965)、平野(1980)、活断層研究会(1980)、50万分の1活構造図「旭川」(杉山ほか,1987)がある。松井ほか(1965)は、この地域に分布する断層の一部が段丘を変位させている可能性があることを指摘した。平野(1980)は、第四紀後半に樺戸(増毛)山地全体の継続的な隆起があり、その隆起量は中央部付近で最も大きかったと推定した。活断層研究会(1980)は本断層帯南半部を活断層と認定した。50万分の1活構造図「旭川」(杉山ほか,1987)では、本断層帯北端部付近に新第三紀鮮新世の地層の褶曲構造と調和的な高位段丘面の変形が図示された。その後、活断層研究会(1991)は総延長50km以上にも達する顕著な活断層群として樺戸(かばと)断層群及び和(やわら)断層を示し、活動度をB級の下位とした。その後、北海道(1997,1998a,b)は、増毛山地東縁断層帯を対象として反射法弾性波探査、ボーリング調査、トレンチ調査などを行った。
また、最近、池田ほか(2002)により、石狩平野とその東側丘陵の境界(沼田−砂川付近)に位置する東側隆起の活断層が新たに認定・図示された。これについては、池田ほか(2002)以外に、関係する資料はない。

2 増毛山地東縁断層帯・沼田−砂川付近の断層帯の評価結果について

増毛山地東縁断層帯は、増毛山地の東縁部に位置しており、増毛山地とその東側の石狩平野との境界にほぼ南北に分布する西側隆起の断層帯である。池田ほか(2002)には、これとほぼ並行して石狩平野北部と東側の丘陵との境界付近に、全体として長さ40km近くに達する東側隆起の断層帯が示されている。断層帯両者の距離は概ね10km未満であり、地震調査研究推進本部(1997)の基準に基づけば、東側隆起の断層帯も増毛山地東縁断層帯に含まれることになる。このため、ここでは東側隆起の断層帯を「沼田−砂川付近の断層帯」(以下、池田ほか(2002)が沼田町−砂川市付近に図示した無名の断層をこのように仮称する)とし、これを増毛山地東縁断層帯と合わせて評価を行った。
 なお、増毛山地東縁断層帯の南西方には、比較的近接して当別(とうべつ)断層が分布するが、これについては、別途取り扱うことになっている(図3)。
 
2.1 増毛山地東縁断層帯

2.1−1 断層帯の位置・形態

(1)増毛山地東縁断層帯を構成する断層

増毛山地東縁断層帯は、北海道雨竜(うりゅう)郡沼田町から樺戸郡月形(つきがた)町にかけて延びている。
増毛山地東縁断層帯を構成する断層の位置・形態は、活断層研究会(1980,1991)、北海道(1997,1998a,b)、池田ほか(2002)、中田・今泉編(2002)などに示されている。ここでは、断層の位置は池田ほか(2002)に、また、断層の名称は活断層研究会(1991)にしたがった。
増毛山地東縁断層帯は、和断層や樺戸断層群などからなる。これらは相互の隔たりが2−3kmと近接し、走向・変位の向きを同じくする断層群であることから、松田(1990)の基準にしたがって、一つの起震断層を構成しているとみなすことにする。
 
(2)断層帯の位置・形状

増毛山地東縁断層帯の長さ及び一般走向は、図2に示された断層帯の北端と南端を直線で結んで計測し、約60km、 N20°Eとした。ただし、増毛山地東縁断層帯は、右雁行状に連なる長さ10km程度未満の断層線の集合からなり、全体としては東に凸の平面トレースを示す。 
断層面上端の深さは、西側隆起の撓曲変形が地表に達していることから0kmとした。
断層面の傾斜については、隆起側に膨らみを伴う東へ撓み下がる変位地形が認められること(池田ほか,2002)、反射法弾性波探査結果(北海道,1998a)等から、西傾斜と考えられる。
断層面下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると、20km程度と推定される。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注8)

 増毛山地東縁断層帯は、東へ撓み下がる変位地形や地質構造を形成しており(北海道,1998a;池田ほか,2002;松井ほか,1965など)、隆起側に膨らみを伴うこともしばしばあることから、西側が東側に乗り上げる逆断層と考えられる。

2.1−2 断層帯の過去の活動

(1) 平均変位速度(平均的なずれの速度)(注8)

 増毛山地東縁断層帯の平均変位速度に関する資料として以下のものがある。これらから、増毛山地東縁断層帯の活動度は概ねB級で、平均上下変位速度は1m/千年以下の可能性がある。

@ 雨竜地区の尾白利加(おしらりか)川左岸で、北海道(1998a)がT3段丘面、T5段丘面と呼んだ河成段丘面が変位して形成された東向きの撓曲崖が認められる(図4)。これらの撓曲崖を横断する地形断面図(図5)から、ここでのT3段丘面の上下変位量は50−60m程度、T5段丘面で15m程度と見積もられる。ただし,T3段丘面に関しては、下流に向かっての勾配をT5段丘面とほぼ同じと仮定した場合の推定値である。
T3段丘面がつくる撓曲崖の下部に掘削された雨竜地区のトレンチ壁面上部に露出したT3段丘面構成層をおおうシルト層 (3層)の14C年代(北海道,1998a)から、T3段丘面の形成年代は約3万2千年前(注9)より古いと考えられる。また、20km余り南方の於札内(おさつない)川沿いで、T3段丘面相当の構成物中から採取された木片の14C年代が、5万年前より古いことを示す資料(北海道,1998a)もある。これらに基づき、T3段丘面の形成年代が5万年前より古いとすると、1m/千年以下の平均変位速度が導かれる。ただし、池田ほか(2002)では、この撓曲崖の東方に、これと並走する活断層が図示されているので、これによる変位量も考慮する必要がある。しかし、その値は数mを越えることはなく、大勢に影響するほど大きくはないと考えられる。
なお、T5段丘面については、その形成年代を正確に見積もる資料が整っていないため、平均変位速度の検討に供し得ない。
A 活断層研究会(1991)は、@の尾白利加川左岸のT3段丘面を構成物にくさり礫を含む高位面としている。
B 池田ほか(2002)には、いくつかの地点において変位した地形面の種類とその推定変位量に関する記載がある。これに注目すると、M面群(約12〜2万年前)は10−60m、L面群(約2万年前以降)は2−5m程度変位していることになる。しかし、このような結果に関しては、変位基準の判定や変位量の見積もりに関する根拠が明らかにされていないので、その信頼度を推し量ることができない。

(2) 活動時期

増毛山地東縁断層帯の最新活動を含む最近の活動履歴については、関係する資料がないため、明らかでない。
尾白利加川や徳富川の左岸で認められる撓曲崖の一部は、北海道(1998a)では若いT5段丘面が変位して形成されたものとされている。北海道(1998a)は、浦臼地区の札的内(さってきない)川沿いではこれより下位のT6段丘面も変位している可能性があるとしている。池田ほか(2002)は、札的内川沿い以外でも、北海道(1998a)がT6段丘面や沖積低地面とした区域で新しい変位地形が認められるとしている。これらは、増毛山地東縁断層帯の活動が完新世にあったことを示唆するものであり、注目されるが、それらの詳しい実態は把握できない。
 
(3) 1回の変位量(ずれの量)(注8)

増毛山地東縁断層帯の1回の活動に伴う変位量に関する直接的資料は得られていない。
なお、1回の変位量について、断層の長さ(約60km)から次の松田の経験式に基づいて算出すると、約4.8mと求まる。このことから、断層帯全体の1回の変位量は5m程度(上下成分)であった可能性がある。

   Log L = 0.6 M − 2.9  (1)
   Log D = 0.6 M − 4.0  (2)

ただし、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Dは断層の変位量(m)、Mは地震のマグニチュードである。

(4)活動間隔

増毛山地東縁断層帯の活動間隔に関する直接的資料は得られていない。
なお、平均活動間隔について、断層の長さから推定される1回の変位量(上下成分5m)と平均変位速度(1m/千年以下)から計算した値に基づくと、活動間隔は5千年程度以上であった可能性がある。

(5)活動区間

増毛山地東縁断層帯の活動区間に関する直接的資料は得られていない。

(6)先史時代・歴史時代の活動

増毛山地東縁断層帯周辺では、歴史時代の被害地震の記録や地震考古学上の知見は知られていない。1834年に石狩湾で起った推定マグニチュード6.4の地震の記録があるが、この断層帯から発生した可能性のある地震の記述はない(宇佐美,1996)。また、札幌市付近などで上述の1834年の地震やそれに先立つ歴史時代の地震によって生じたと考えられる液状化跡が見つかっている(伏島・平川1996など)が、これらと本断層帯との関係は不明である。

(7)測地観測結果

増毛山地東縁断層帯周辺における過去約100年間及び約10年間の測地観測結果では、この断層帯周辺で北西−南東方向の縮みが見られる。最近4年間のGPS観測結果でも北西−南東方向の縮みが見られる。
 
(8)地震観測結果  

増毛山地東縁断層帯の北端部付近で1986年11月13日にマグニチュード5.3の浅発地震が、本断層帯の西方で1995年5月23日にマグニチュード5.7の地震が深さ約16kmで発生した。後者の地震の発震機構解はほぼ東西に圧力軸をもつ逆断層型であった。
最近の地震観測結果によれば、地震発生層の下限の深さは20km程度と推定される。

2.1−3 断層帯の将来の活動

(1)活動区間と活動時の地震の規模

増毛山地東縁断層帯全体を一つの活動区間とした場合、上述の経験式(1)に基づくと、増毛山地東縁断層帯(長さ約60km)から発生する地震の規模はマグニチュード7.8程度の可能性がある。
また、このような地震が発生した場合、地表に西側隆起で5m程度の段差や撓みを伴う変位が生ずる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

増毛山地東縁断層帯の平均活動間隔は5千年程度以上であった可能性がある。しかし、最新活動時期が特定できていないため、上述のような規模の地震が発生する長期確率を通常の評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)を用いて評価することができない。
地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、地震の発生確率を求めるに当たって、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしている。本断層帯では平均活動間隔が5千年程度以上であることをもとに、ポアソン過程を適用して地震発生確率を求めると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、0.6%以下、1%以下、2%以下、及び6%以下となる。
なお、通常の活断層評価で用いている更新過程によった場合、平均活動間隔が5千年程度以上と求められているので、30年確率のとり得る範囲はほぼ0%−5%となる。
 
 
2.2 沼田−砂川付近の断層帯

2.2−1 沼田−砂川付近の断層帯の位置・形態

(1)沼田−砂川付近の断層帯を構成する断層

沼田−砂川付近の断層帯は、北海道雨竜郡沼田町から砂川市にかけて延びている。
沼田−砂川付近の断層帯を構成する断層の位置・形態は、池田ほか(2002)、中田・今泉編(2002)に示されている。ここでは、断層の位置は池田ほか(2002)にしたがった。
沼田−砂川付近の断層帯は長さ10km程度未満の複数の断層線からなる。これらは相互の隔たりが5km未満で、変位の向きを同じくする断層であることから、松田(1990)の基準にしたがって、一つの起震断層を構成しているとみなすことにする。

(2)断層の位置・形状

沼田−砂川付近の断層帯全体の長さ及び一般走向は、図2に示された北端と南端を直線で結んで計測し、約38km、N−Sとした。なお、沼田−砂川付近の断層帯の北部の沼田町付近には、変位の向きが逆の断層が分布するが、東側隆起の断層の背後に分布していることから副次的な断層とみなした。一方、南部は石狩平野内に入るため、その延長が平野に伏在して南方に向かう可能性も否定できない。すなわち、現状では、沼田−砂川付近の断層帯の南端の位置は正確に把握できていないといえる。
断層面上端の深さは、西側隆起の撓曲変形が地表に達していることから0kmとした。
断層面の傾斜については、隆起側に膨らみを伴う西へ撓み下がる変位地形が認められる(池田ほか,2002)ことから、東傾斜と考えられる。
断層面下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると、20km程度と推定される。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注8)

沼田−砂川付近の断層帯は、西へ撓み下がる変位地形を形成しており、隆起側に膨らみを伴うこともしばしばある(池田ほか,2002)ことから、東側が西側に乗り上げる逆断層と考えられる。

2.2−2 断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注8)

池田ほか(2002)では、沼田−砂川付近の断層帯沿いにおいて、M面群(約12〜2万年前)が5−10m、L面群(約2万年前以降)が3−5m程度変位していることが示されている。これから沼田−砂川付近の断層帯の活動度はB級の下位である可能性があることになるが、その平均変位速度については、変位基準の判定や変位量の見積もりに関する根拠が明らかにされていないので特定できない。

(2)活動時期

池田ほか(2002)では、約2万年前以降に形成された地形面に変位が及んでいるとしている。これ以外に沼田−砂川付近の断層帯の最新活動を含む最近の活動履歴に関する資料はない。
 
(3)1回の変位量(ずれの量)(注8)

沼田−砂川付近の断層帯の1回の活動に伴う変位量に関する直接的資料は得られていない。
 
(4)活動間隔

沼田−砂川付近の断層帯の活動間隔に関する直接的資料は得られていない。

(5)活動区間

沼田−砂川付近の断層帯の活動区間に関する直接的資料は得られていない。
 
(6)先史時代・歴史時代の活動

2.1−2(6)を参照。

(7)測地観測結果

2.1−2(7)を参照。

(8)地震観測結果  

2.1−2(8)を参照。

2.2−3 断層帯の将来の活動

(1)活動区間と活動時の地震の規模

沼田−砂川付近の断層帯全体を一つの活動区間とした場合、上述した経験式に基づくと、沼田−砂川付近の断層帯(長さ約38km)から発生する地震の規模はマグニチュード7.5、1回の活動に伴う変位量は3.0mと算出される。
以上に基づくと、沼田−砂川付近の断層帯で発生する地震の規模はマグニチュード7.5程度の可能性があり、このような地震が発生した場合、地表に東側隆起で3m程度の段差や撓みを伴う変位が生ずる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

沼田−砂川付近の断層帯における将来の地震発生については、関係する資料が整っていないため、検討できない。
 
3 今後に向けて

ここでは、増毛山地とその東側の石狩平野との境界に分布する増毛山地東縁断層帯と、その東側近傍で平野の北部と東側の丘陵との境界付近に分布する沼田−砂川付近の断層帯についての評価を行った。
増毛山地東縁断層帯に関しては、最近の活動履歴や1回の変位量の解明がほとんど進んでいないうえ、平均変位速度も不確かである。本断層帯の将来の活動性を明確にするためには、これらについての精度良いデータを集積させるとともに、活動間隔を明らかにする必要がある。また、本断層帯の南西側には、西側隆起の逆断層である当別断層が分布することから、活動区間については、これとの関連性も含めて調査することが望ましい。
沼田−砂川付近の断層帯は、最近その存在が指摘されたものであり、その実態については未調査の段階にある。本格的な活断層調査を行って、構成する断層とその位置、最近の活動履歴、1回の変位量、平均変位速度、深部構造など基本的な特性を把握するとともに、活動間隔を明らかにする必要がある。

注8: 「変位」を、1、2頁の本文、5−8頁の表1及び表2では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは、専門用語である「変位」が、本文や表1及び表2の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓みの成分」よりなる。
注9: 炭素同位体年代は、Kitagawa and van der Plicht(1998)のデータに基づいて暦年補正し、千年単位で表示した。



文 献

伏島祐一郎・平川一臣(1996):北海道大学構内で観察された液状化跡−先史地震と液状化構造形成過程の解読−,活断層研究,14,9−18.

羽坂俊一・磯部一洋・下川浩一・七山 太(1997):札幌付近で発見された多数の液状化跡と表層地質の関連性,地質ニュース,520,16−29.

平川一臣・上屋真一・中村有吾・伏島祐一郎(2000):石狩低地帯の液状化跡に関する資料,活断層研究,19,55−58.

平野信一(1980):樺戸山地南東縁地域の地形と地殻変動.西村嘉助先生退官記念地理学論文集,古今書院,147−152.

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付表

地震発生確率等の評価の信頼度に関する各ランクの分類条件の詳細は以下のとおりである。