平成14年9月11日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

月岡断層帯の長期評価について


 地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成11年4月23日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。

 地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、これまでに、陸域の活断層として、21地域23断層帯の長期評価を行い、公表した。

 今回、引き続き、陸域の活断層である月岡断層帯について、現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、別添のとおりとりまとめた。

 なお、今回の評価は、現在までに得られている最新の知見を用いて最善と思われる手法により行ったものではあるが、データとして用いる過去地震に関する資料が十分にないこと等による限界があることから、評価結果である地震発生確率や予想される次の地震の規模の数値には誤差を含んでおり、防災対策の検討など評価結果の利用にあたってはこの点に十分留意する必要がある。


(別添) 

月岡断層帯の評価

平成14年9月11日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

 月岡断層帯は、越後平野の東縁に位置する活断層帯である。ここでは、平成8−9年度に新潟県によって行われた調査をはじめ、これまで行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した。

1 断層帯の位置及び形態 

 月岡断層帯は、新潟県の北蒲原郡豊浦町から中蒲原郡村松町にかけて、概ね北北東−南南西方向に延びている。全体として長さは約30kmで、西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層である。本断層帯は月岡断層、村松断層などの断層から構成されている(図1、2及び表1)。

2 断層帯の過去の活動

 月岡断層帯は、0.4m/千年程度の平均的な上下方向のずれの速度を有していると推定される。本断層帯の最新の活動は約6千5百年前以後、約9百年前以前にあったと推定される。活動時には、断層の西側が東側に対して相対的に3m程度もしくはそれ以上隆起した可能性がある。本断層帯の平均的な活動間隔は7千5百年以上であった可能性がある(表1)。

3 断層帯の将来の活動

月岡断層帯では、断層帯全体が一つの活動区間として活動した場合、マグニチュード7.3程度の地震が発生する可能性がある。また、その時、断層の近傍の地表面では、西側が東側に対して相対的に3m程度もしくはそれ以上高まる段差や撓(たわ)みが生ずる可能性がある(表1)。本断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は、表2に示すとおりである(注1)。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが、その最大値をとると、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注1、2)。

4 今後に向けて

月岡断層帯の将来の活動性を明確にするためには、最新の活動時期、1回の活動におけるずれの量、及び活動間隔を精度良く求める必要がある。また、本断層帯の北方に位置する櫛形山脈断層帯との連続性・連動性についても詳しく検討する必要がある。

 

表1 月岡断層帯の特性

 

表2 将来の地震発生確率等

注1:

我が国の陸域及び沿岸域の主要な98の活断層帯のうち、2001年4月時点で調査結果が公表されているものについて、その資料を用いて今後30年間に地震が発生する確率を試算すると概ね以下のようになると推定される。
  98断層帯のうち約半数の断層帯:30年確率の最大値が0.1%未満
  98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満
  98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が3%以上
 (いずれも2001年4月時点での推定.確率の試算値に幅がある場合はその最大値を採用.)
 この統計資料を踏まえ、地震調査委員会の活断層評価では、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
 今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
  「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
 今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
  「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」

注2: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率及び集積確率(このうち、1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震については「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)による暫定値)は以下のとおりである。

      

「長期的な地震発生確率の評価手法について」に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が5千年の場合は30年確率の最大値は5%程度である。
注3: 信頼度は、特性欄に記載されたデータの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。 
◎:高い、○:中程度、△:低い
注4: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
 文献1:粟田・小松原(1999)
 文献2:池田ほか(2002)
 文献3:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
 文献4:活断層研究会(1991)
 文献5:小松原・田中(1994)
 文献6:松田(1990)
 文献7:新潟県(1997)
 文献8:新潟県(1998)
 文献9:新潟県(2001)
 文献10:渡辺・宇根(1985)
注5: 評価時点はすべて2002年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を示す。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
注6: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となる。今回の評価の数字で、0.1は900年を7500年で割った値であり、0.9は6500年を7500年で割った値。
注7: 前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率。



(説明)

1 月岡断層帯に関するこれまでの主な調査研究

 本断層帯は、越後平野の東縁部に位置する北北東−南南西走向の西上がりの逆断層帯である。この断層帯は新潟堆積盆地と越後山地を境する構造線として山下(1970)が提唱した新発田−小出線に沿って分布する活断層帯の一つであり、菱ヶ岳断層崖(辻村,1942)として知られる五頭山地の西縁に位置する。

 活断層としての本断層帯の存在やその特性については、小泉(1971)、鈴木(1974)、活断層研究会(1980)、高浜ほか(1980)、高浜・野崎 (1981)、笹神団体研究グループ(1980,1982)などによって次第に明らかとなった。この過程で本断層帯を東落ちの正断層とする見解も示された(高浜ほか,1980;笹神団体研究グループ,1980,1982)が、渡辺・宇根(1985)は、新たに断層露頭や変位地形に関する詳細な調査結果を示して、本断層帯が西上がりの逆断層であることを明らかにした。新潟平野東縁部には、重力異常の分布から、大規模な西落ちの正断層が存在すると推定されている(丸山ほか,1981)。渡辺・宇根(1985)は、本断層帯の活動をこのような既存の古い正断層面を利用して第四紀以降に始まったものとし、これには左横ずれ成分が伴われている可能性があることを指摘した。

 新潟県(1997,1998)は、本断層帯を対象として、反射法弾性波探査、ボーリング調査、トレンチ調査などを行い、その断層構造や平均変位速度、活動履歴などについて新たな知見を得た。粟田・小松原(1999)は、地下の断層形態と地表変位に基づいて、断層変位モデルの計算を行い、単位変位量などについて検討した。池田ほか(2002)は、越後平野東縁部の活断層を精査し、この地域に認められる西上がりの逆断層を中心とする活断層群を、新潟平野東縁断層帯として一括し、本断層帯をもその一部に含めて図示している。

 

2 月岡断層帯の評価結果について

2−1 断層帯の位置・形態

(1)月岡断層帯を構成する断層

 越後平野東縁の新潟県北蒲原郡豊浦町から中蒲原郡村松町にかけての地域では、丘陵とその東側の山地との間に、北北東−南南西方向に連続する凹地帯が発達する。本断層帯は、主としてこの凹地帯の西縁に位置する西上がりの断層である。

本断層帯を構成する断層の位置・形態は、活断層研究会(1980,1991)、渡辺・宇根(1985)、新潟県(1997,1998)、池田ほか(2002)、中田・今泉(2002)などに示されている。これらでは、主要な断層分布についてほぼ共通した認識が示されている。ここでは、断層の位置は池田ほか(2002)に、また、断層の名称は新潟県(1998)にそれぞれしたがった。

 本断層帯は笹神丘陵の東縁に位置する月岡断層、同丘陵西麓に認められる庵地(あんち)断層と、阿賀野川の南側に位置する村松断層などによって構成される(図2)。これらは、変位の向きを同じくする断層で、その隔たりも3km以内で近接していることから、松田(1990)の基準にしたがって、一つの起震断層を構成しているとみなすことにする。

 本断層帯北端部の北東側に位置する五十公野(いじみの)丘陵の東縁に沿って西上がりの活断層(五十公野丘陵東縁断層)の存在(図3)が推定されている(小松原・田中,1994)が、これについては、その長さが2km程度と短いうえ、活断層とする確実な証拠が未だない(活断層研究会,1991;新潟県,2001;池田ほか,2002)ことから、ここでは取り扱わないことにした。また、その東方に位置し、谷口・吾妻(1998)により加治川断層帯と呼ばれた活断層群(図3)についても、変位の向きが本断層帯とは異なっているので、同様に取り扱わないことにした。

 本断層帯の北方延長上に櫛形山脈断層帯が、また、同南半部の東方に沼越峠断層が分布する(図3)。これらについては、本断層帯と走向及び変位様式、変位の向きを同じくするが、ともに本断層帯との隔たりが7km程度あるいはそれ以上と大きいことから、以下の詳細な評価の対象としないことにした。

(2)断層帯の位置・形状

 本断層帯全体の長さ及び一般走向は、図2に示された月岡断層の北端と村松断層の南端を直線で結んで計測し、それぞれ約30km、N20°Eとした。月岡断層の北側には、加治川が形成しつつある現成の河成面が大きく広がっている。この地区では、変位地形が浸食されたり、埋積されているため検出できないとも考えられるので、本断層帯はさらに北北東方へのびている可能性が考えられる。本断層帯の北方延長に分布する櫛形山脈断層帯の一部がこの加治川沿いの若い沖積地の北縁付近まで追跡されていることを考慮すると、本断層帯と櫛形山脈断層帯の一部は連続している可能性も否定できない。すなわち、現状では、本断層帯の北端の位置は正確に把握できていないといえる。

断層面上端の深さは、断層による変位が地表に達していることから0kmとした。

 断層面の傾斜角については、月岡断層北部の月岡南地区で実施されたボーリング調査(新潟県,1997,1998;粟田・小松原,1999)と同断層中部を横断する反射法弾性波探査(図4;新潟県,1997)の結果に基づき、地表から深さ十数mまでは西傾斜25°程度、地下数十mから300m程度までは西傾斜50−60°と推定される。

断層面下端の深さは、地震発生層の下限を目安とすると、15km程度と推定される。断層面の傾斜を反射法弾性波探査結果から50−60°とすると、断層面の幅は15−20km程度となる。 

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注8)

 本断層帯は、活断層研究会(1980,1991)、渡辺・宇根(1985)、新潟県(1997,1998)、池田ほか(2002)などに示された変位地形や地質構造から、西側を東側に対して相対的に隆起させていると考えられる。上述のように断層面は西へ傾斜しているので、本断層帯は西側が東側に乗り上げる逆断層と考えられる。

 なお、本断層帯の変位に関しては、これを横切る河流の屈曲現象などに基づいて、左横ずれ成分が伴われている可能性が指摘されている(小泉,1971;渡辺・宇根,1985)。しかし、それに対応する横ずれを示す地質学的な証拠は見出されていない。また、識別される新期の変位地形の中に、それを積極的に裏づける横ずれ地形が認められないことから、横ずれ変位を伴う可能性は低いと判断し、ここではその存在を考慮しないことにした。 

2−2 断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注8)

本断層帯の平均変位速度を評価するための資料として、以下のものがある。

@ 新潟県(1997,1998)は、月岡断層付近に分布する地形面をT1面−T4面に分類してその分布高度を調べ、それぞれの分布高度に月岡断層線を境とした西上がりの食い違いが認められるとして、その高度不連続量と地形面の推定年代から平均変位速度を求めている。すなわち、地形面の上下の食い違い量を、 T1面については北蒲原郡笹神村羽黒付近で95−98m以上、T2面は北蒲原郡豊浦町岡屋敷付近などで37−56m以上、T3面、T4面はそれぞれ北蒲原郡笹神村大日付近などで33−36m、10.3mと見積もり、 T1面、T2面、T3面、T4面の形成年代を20−35万年前、15−20万年前、8−13万年前、2.4−2.5万年前として、0.27−0.49以上、0.19−0.37以上、0.25−0.45、0.41−0.43m/千年の平均上下変位速度値を導いている。
A 豊浦町の月岡南地区では、月岡断層によって崖錐性の扇状地面(E1面)が上下に3m程度もしくはそれ以上変位しており、この面の構成物直下の地層の14C年代が約7千6百年前を示すこと(図6;新潟県,1998)から、ここでは、E1面形成後の平均上下変位速度は0.39 m/千年以上となる。
B 月岡断層南部の安田町の野中地区では、笹神丘陵を開析して南西流する河谷が、月岡断層によって断たれて生じたと考えられる風隙地形(注9)が認められる。新潟県(1997)は、この風隙の谷底部とその東側に分布する低地を対象にしてボーリング調査を行い、月岡断層の上盤側に位置する風隙谷底面直下で姶良Tn火山灰を見出し、一方、下盤側の低地部では、それと同時代の地層が地下約4mに存在することを明らかにした。風隙谷底面構成層と低地面下に埋没する同年代の地層が、一連の堆積物であるとすると、これは、月岡断層を境にして約11m(新潟県,1997)上下に食い違っていることになる。姶良Tn火山灰の降下年代を約2万8千年前(注10)とすると、ここではこれ以降の平均上下変位速度として0.39m/千年が導かれる。
C 新潟県(1997)は、中蒲原郡村松町番坂付近で村松断層により扇状地性の地形面(M1面)が8.5−11.5m上下に変位しているとし、M1面を月岡断層付近に分布するT4面に対比して、0.34−0.48m/千年の平均上下変位速度値を求めている。

 以上のことから、ここでは、変位基準認定上未解決の問題点を含むが、合理的かつ詳細な調査の結果であるBに基づいて、本断層帯の平均上下変位速度を0.4m/千年程度とすることにした。@、AやCに関しては、変位基準の認定や変位量の見積もり、変位基準の年代推定の結果に不確かさが伴われており、Aについては、さらに変位基準の年代が若すぎるので、いずれも信頼度の高い資料とは言えないが、Bと調和的である。

(2)活動時期

 上述のように、月岡南地区では、笹神丘陵の東麓に発達する崖錐性扇状地面(E1面)が、月岡断層の活動で変位して東向きの撓曲崖をつくっている(図5)。ここでは、ボーリング調査によって、少なくとも約3万6千年前の14C年代を示す堆積物に衝上する西傾斜約25°の逆断層がこの撓曲崖に沿って存在することが確認されている(図6;新潟県,1997,1998;粟田・小松原,1999)。このE1面の南側に、これを開析して形成されたより新しい崖錐性扇状地面群が分布する。その中でもっとも低位のE5面は、断層推定位置を横切って分布するにもかかわらず、変位していないと見なせることから、E1面形成後、E5面形成前に本断層帯の活動があったと考えられる。その時期は、E1面構成層直下の地層とE5面上で掘削されたAトレンチの壁面に露出したE5面構成層が示す14C年代に基づくと、約7千6百年前以後、約9百年前以前となる。

 Aトレンチの北北東約180mの地点に掘削されたCトレンチでは、変位量が10cm程度と小さい東傾斜の逆断層群が露出し(図7)、このような副断層と推定される断層の一部が、約6千5百年前、約6千7百年前という14C年代を示す植物根跡を切断していたとの報告がある(新潟県1998)。このような観察事実は、 約6千5百年前以後に本断層帯の最新活動があったことを示している。

 以上のことから、ここではCトレンチでの知見も考慮して、本断層帯の最新活動時期は、約6千5百年前以後、約9百年前以前にあったと推定した。本断層帯では、さらに古い活動履歴に関する資料は見出されていない。

(3)1回の変位量(ずれの量)(注8)

 月岡南地区のE1面がつくる撓曲崖の前面では、地表下ごく浅い位置に同年代を示す堆積物が分布することから、現地表面はE1面の続きである可能性が高い。そこで、下盤側の地表面をE1面の続きと見なして、月岡断層の上下変位量を考慮すると、新潟県(1998)が示した3mの変位量は撓曲全体を捕捉していない可能性があることから、3m程度もしくはそれ以上と見積もることができる。ここで認められるE1面がつくる撓曲崖は、本断層帯で見出される変位地形の中でもっとも若いものにあたると思われる。そこで、これが本断層帯の最新活動で形成されたとすると、この付近では、その時、3m程度もしくはそれ以上の上下変位が生じたことになる。

 以上のことから、本断層帯の活動1回の上下変位量は3m程度もしくはそれ以上であった可能性があると判断した。

(4)活動間隔

 本断層帯では、上述のように最新活動に関する若干の資料はあるが、それ以前の活動履歴については全く明らかでない。したがって、個々の断層活動の時期に基づいて直接的に活動間隔を求めることができない。

 1回の変位量(上下成分3m以上)と平均変位速度(上下成分0.4m/千年)に基づき計算すると、平均活動間隔は7500年以上となる。

 以上のことから、本断層帯の平均活動間隔は7千5百年以上であった可能性があると判断した。

(5)活動区間

 本断層帯の活動区間については、関係する資料が整っていないため、検討できない。 

(6)先史時代・歴史時代の活動

 本断層帯周辺では、歴史時代の被害地震の記録や地震考古学上の知見は知られていない。1670年に新潟県中部の南蒲原郡付近に被害をもたらした地震の記録があるが、この断層帯から発生した可能性のある地震の記述はない(宇佐美,1996)。

(7)測地観測結果

月岡断層帯周辺における最近約100年間及び約10年間の三角・三辺測量の結果では、断層帯の西側で東西方向の縮み、南−北方向の伸びが見られる。3年間のGPS観測結果では、断層帯の西側で東西方向の縮みが見られる。

(8)地震観測結果  

月岡断層帯付近では、1995年4月1日に月岡断層の西方でマグニチュード5.5の地震が発生した。この地震の発震機構解は、西北西−東南東に圧力軸をもつ逆断層型であった。最近の地震活動から、地震発生深度の下限は15km程度と推定される。

2−3 断層帯の将来の活動

(1)活動区間と活動時の地震の規模

 本断層帯では、断層帯全体を一つの活動区間とした場合、経験式(松田,1975)により本断層帯(長さ30km)から発生する地震の規模はマグニチュード7.3となる。これに基づくと、本断層帯で発生する地震の規模はマグニチュード7.3程度の可能性がある。

 用いた経験式は次の式である(松田,1975)。

Log L = 0.6 M − 2.9  (1)

 ただし、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Mは地震のマグニチュード。

 このような地震が発生した場合、西側隆起で3m程度もしくはそれ以上の段差や撓みを伴う変位が生ずる可能性がある。

(2)地震発生の可能性

 本断層帯の平均活動間隔は7千5百年以上で、最新の活動時期は約6千5百年前以後、約9百年前以前であった可能性がある。この断層帯では、最新活動後、評価時点(2002年)までの経過時間は約9百−6千5百年で、平均活動間隔の0.1以下−0.9倍の時間が経過していることになる。最新活動時期の推定幅は広い範囲でしか得られておらず、また、平均活動間隔は信頼度が低いことに十分留意する必要があるが、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、ほぼ0%−1%、ほぼ0%−2%、ほぼ0%−3%、及びほぼ0%−10%となる。また、現在までの集積確率は、ほぼ0%−30%となる(表3)。本評価で得られた将来の地震発生確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる。表3にこれらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。

2−4 今後に向けて

 本断層帯の将来の活動性を明確にするためには、最新の活動時期、1回の変位量、及び活動間隔を精度良く求める必要がある。

 本断層帯の北端の位置は正確に把握できておらず、本断層帯の北方延長上には、走向、変位様式、変位の向きを同じくする櫛形山脈断層帯が存在するため、本断層帯はこれに連続する可能性も考えられる。将来はこれらの断層帯が同時に活動する可能性もあることから、これら両断層帯の連続性・連動性についても詳しく検討する必要がある。

注8: 「変位」を、1頁の本文及び4、5頁の表1では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは、専門用語である「変位」が、本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓みの成分」よりなる。
注9: 「風隙」とは、過去に河川が流れていたことを示す旧流路に認められる分水界のことをいう(町田ほか,1981)。
注10: 姶良Tn火山灰層の降下年代値は、日本第四紀学会第四紀露頭集編集委員会(1996)、小池・町田(2001)等から、25,000年BPとし、暦年補正して約2万8千年前とした。
注11: 10,000年BPよりも新しい炭素同位体年代については、Niklaus(1991)に基づいて暦年補正した値を用いた。また、10,000年BPより古い炭素同位体年代については、Kitagawa and van der Plicht(1998)のデータに基づいて暦年補正した値を用いた。



文 献

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辻村太郎(1942):「断層地形論考」.古今書院,347p.

宇佐美龍夫(1996):「新編日本被害地震総覧[増補改訂版416−1995]」.東京大学出版会,493p.

渡辺満久・宇根 寛(1985):新潟平野東縁の活断層と山地の隆起.地理学評論,58,536−547.

山下 昇(1970):柏崎−銚子線の提唱.星野通平・青木 斌編「島弧と海洋」.東海大学出版会,179−191.

 

表3 地震発生確率及び参考指標

 

注12: 評価時点はすべて2002年1月1日現在。「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を、「ほぼ0」は10−5未満の数値を示す。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
指標(1) 経過年数 :当該活断層があることによって大地震発生の危険率(1年間当たりに発生する回数)は最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(ここではBPT分布モデルを適用した場合を考える。)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合にあたる。)。この指標は、BPT分布モデルによる危険率が、ポアソン過程を適用した場合の危険率の値を超えた後の経過年数である。マイナスの値は、前者が後者に達していないことを示す。後者の危険率は1万分の1(0.0001)回以下であり、時間によらず一定である。前者は評価時点でほぼ0−3千3百分の1(0.0003)回以下であり、時間とともに増加する。ほぼ0であれば前者が後者の回数に達するには今後4千4百年以上を要するが、3千3百分の1であれば前者が後者の回数に達してから1千3百年が経過していることになる。
指標(1) :最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、BPT分布モデルによる危険率がポアソン過程とした場合のそれを超えるまでの時間をBとする。前者を後者で割った値(A/B)。
指標(2) :BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の評価時点での危険率の比。
指標(3) :評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標(4) :評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の確率の値で割った値。
指標(5) :ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年間あたりの地震発生回数)。