平成14年7月10日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会


新庄盆地断層帯の評価


・平成17年1月12日 経験式を用いた場合のマグニチュードの標記を変更しました。
              計算に誤りがあったため地震発生確率を修正しました。(赤字)

新庄盆地断層帯は、新庄盆地の東縁に位置する活断層帯である。ここでは、平成9−10年度に山形県によって行われた調査をはじめ、これまで行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した。

1 断層帯の位置および形態

新庄盆地断層帯は、山形県の新庄市から最上郡舟形町(ふながたまち)にかけて、概ね南北方向ないし北北東−南南西方向に延びている。本断層帯の長さは約11−23kmであるが、第四紀後期における活動性が確かめられている区間は約11kmである。その北方延長には、第四紀後期の活動性が不確かな部分があり、これを含めると全体の長さは約23kmとなる。本断層帯は、東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層である(図1、2及び表1)。

2 断層帯の過去の活動

新庄盆地断層帯は、0.5m/千年前後の平均的な上下方向のずれの速度を有している可能性がある。本断層帯では、過去の活動に関する資料が乏しく、具体的な活動履歴については明らかにされていない。既往の調査研究成果による直接的なデータではないが、本断層帯の長さをもとに経験則を用いると、1回の活動におけるずれの量は1−2m程度(上下成分)であった可能性がある。また、この1回のずれの量と平均的な上下方向のずれの速度に基づくと、平均的な活動間隔は2−4千年程度であった可能性がある(表1)。ただし、これらの値はいずれも信頼度が低い。

3 断層帯の将来の活動

新庄盆地断層帯では、断層帯全体が一つの活動区間として活動した場合、マグニチュード6.67.1程度の地震が発生する可能性がある(表1)。過去の活動が十分に明らかではなく、最新活動時期が特定できていないため最新活動後の経過率は不明であり、信頼度は低いが、将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりである。

本断層帯では、最新活動時期が十分に特定できていないことから、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めているが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる*1


*1 通常の活断層評価で用いている地震発生確率の計算手法は、最新活動時期が分からないと用いることが出来ない。このため、ここでは、地震の発生確率が時間的に不変と仮定した考え方により、平均活動間隔のみを用いて地震発生の長期確率を求めた(注1参照)。なお、グループ分けは、通常の手法を用いた場合の全国の主な活断層のグループ分け(注2参照)と同じしきい値(推定値)を使用して行なった。

4 今後に向けて

新庄盆地断層帯の将来の活動性を明確にするためには、最新活動時期、1回の活動におけるずれの量、活動間隔、活動区間などを明らかにする必要がある。

表1 新庄盆地断層帯の特性

項  目 特  性   信頼度  
(注3)
根  拠
(注4)
1.断層帯の位置・形態
  (1) 新庄盆地
断層帯を構成
する断層
長者原(ちょうじゃはら)断層、沖の原断
層など
  文献1、3、4、7、8、
10による。
  (2) 断層帯の位置・
   形状等
地表における断層帯の位置・形状
  断層帯の位置
 (北端)北緯38°44′−38°49′
     東経140°18′−140°23′
 (南端)北緯38°38′ 東経140°18′

 長さ 11−23km
 一般走向 NS−N20°E

 地下における断層面の位置・形状
  長さ及び上端の位置 地表での長さ・位
                置と同じ
 一般走向 NS−N20°E
 上端の深さ 0km
 傾斜 東傾斜
 幅  不明








文献7、8による。数値は、
図2から計測。形状は図2
を参照。断層帯の長さが
11−23kmなので、
断層帯の両端の位置、長さ
及び一般走向は左記の範囲
となる。
一般走向は断層帯の北端と
南端を直線で結んだ方向
(図2参照)。
上端の深さが0kmである
ことから推定。
一般走向は断層帯の北端と
南端を直線で結んだ方向
(図2参照)。傾斜方向は
文献1、5、6、8に示され
た変位地形、反射法弾性
波探査結果から推定。
地震発生層の下限の深さは
15km程度。
  (3) 断層のずれの向
   きと種類
 東側隆起の逆断層


文献1、3、7、8、10に
示された変位地形・地質
構造から推定。
2.断層帯の過去の活動
  (1) 平均的なずれの
   速度
 0.5m/千年前後(上下成分)

文献8、11による。
  (2) 過去の活動時期 活動時期 不明

19世紀初頭以降にこの断層帯から発生した
と考えられる被害地震は知られておらず、
最近約200年間は活動していないと考え
られる。




文献9による。

  (3) 1回のずれの量
   と平均活動間隔
1回のずれの量(撓みを含む)
         1−2m程度(上下成分)

平均活動間隔 2−4千年程度




1回のずれの量、平均活
動間隔は説明文2−2断
層帯の過去の活動を参照。
  (4) 過去の活動区間 活動区間 不明  
3.断層帯の将来の活動
  (1) 将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
活動区間 断層帯全体で1区間

マグニチュード 6.67.1程度





断層の長さから推定。

表2 新庄盆地断層帯の将来の地震発生確率(ポアソン過程を適用)

項  目   将来の地震発生確率  
備  考

今後 30 年以内の地震発生確率
今後 50 年以内の地震発生確率
今後 100 年以内の地震発生確率
今後 300 年以内の地震発生確率


0. − 
1   − 
   − 5%
   − 0%

地震発生確率は文献2による。

注1: 新庄盆地断層帯では、最新活動時期が特定できていないため、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)により地震発生の長期確率を求めることができない。地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、このような更新過程が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしていることから、ここでは、ポアソン過程を適用して新庄盆地断層帯の将来の地震発生確率を求めた。しかし、ポアソン過程を用いた場合、地震発生の確率はいつの時点でも同じ値となり、本来時間とともに変化する確率の「平均的なもの」になっていることに注意する必要がある。
注2: 我が国の陸域及び沿岸域の主要な98の活断層帯のうち、2001年4月時点で調査結果が公表されているものについて、その資料を用いて今後30年間に地震が発生する確率を試算すると概ね以下のようになると推定される。
98断層帯のうち約半数の断層帯:30年確率の最大値が0.1%未満
98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満
98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が3%以上
(いずれも2001年4月時点での推定.確率の試算値に幅がある場合はその最大値を採用.)
この統計資料を踏まえ、地震調査委員会の活断層評価では、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
注3: 1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震及び1847年善光寺地震の地震発生直前における30年確率及び集積確率(このうち、1995年兵庫県南部地震、1858年飛越地震については「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2001)による暫定値)は以下のとおりである。
地震名 活動した活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995年兵庫県南部地震
(M7.3)
野島断層
(兵庫県)
0.4%−8% 2%−80% 約1.8−約3.0
1858年飛越地震
(M7.0−7.1)
跡津川断層
(岐阜県・富山県)
ほぼ0%−10% ほぼ0%−
90%より大
約1.9−約3.3
1847年善光寺地震
(M7.4)
長野盆地西縁断層帯
(長野県)
ほぼ0%−20% ほぼ0%−
90%より大
約0.8−約2.5
「長期的な地震発生確率の評価手法について」に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が3千年の場合は30年確率の最大値は8%程度である。
注4: 信頼度は、特性欄に記載されたデ−タの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。 ◎:高い、○中程度、△:低い、▲:非常に低い
注5: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
文献1:池田ほか(2002)
文献2:地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)
文献3:活断層研究会(1991)
文献4:松田(1990)
文献5:佐藤ほか(1999)
文献6:佐藤・平田(2000)
文献7:澤ほか(2001)
文献8:鈴木(1988)
文献9:宇佐美(1996)
文献10:山形県(1998)
文献11:山形県(1999)


(説明)

1 新庄盆地断層帯に関するこれまでの主な調査研究

新庄盆地の活構造に関する研究は、村田(1941)、大塚(1942)、杉村(1952)、Taguchi(1962)、中川ほか(1971)、Kumaki(1983)、佐藤(1986a)、佐藤(1986b)、鈴木(1988)などによって行なわれてきた。これらの研究により、盆地内の段丘面は新第三紀層の褶曲構造と調和的に変形し、また、変位の累積が見られることから、段丘面の形成期間中も褶曲運動が継続していたことが明らかにされた。この地域の活断層の詳しい分布は、活断層研究会(1980,1991)、鈴木(1988)などによって示された。鈴木(1988)は、新庄盆地と山形盆地の活構造を比較して、これらにおける断層運動様式が異なることを明らかにし、これに基づいて両盆地の発達過程について考察した。

山形県(1998,1999)は、地形地質調査を行い、平均変位速度などについて検討した。本断層帯の地下構造について、佐藤ほか(1999)、佐藤・平田(2000)、池田ほか(2002)は、盆地東縁で行なった反射法弾性波探査結果に基づいて、この地域の地下構造とテクトニクスについて考察した。なお、本断層帯について大縮尺の空中写真を用いた再判読が行われ、その結果が都市圏活断層図「新庄」(澤ほか、2001)にまとめられている。また、「第四紀逆断層アトラス」(池田ほか,2002)に、新庄盆地とその南方の山形盆地に分布する活構造が示されている。

2 新庄盆地断層帯の評価結果について

2−1 断層帯の位置・形態

(1)新庄盆地断層帯を構成する断層

本断層帯は、新庄盆地とその東側の奥羽脊梁山脈との境界付近に位置する東上がりの断層である。

本断層帯を構成する断層の位置・形態は、活断層研究会(1980,1991)、鈴木(1988)、山形県(1998)、都市圏活断層図「新庄」(澤ほか,2001)、池田ほか(2002)などに示されている。これらでは、主要な断層分布についてほぼ共通した認識が示されている。ここでは、断層の位置及び名称は、都市圏活断層図「新庄」(澤ほか,2001)によった。

本断層帯は、山形県の新庄市から最上郡舟形町(ふながたまち)にかけて延びており、主として東側の沖の原断層と、西側の長者原(ちょうじゃはら)断層から構成される(図2)。ただし、澤ほか(2001)では、活断層研究会(1991)で扱われた経壇原(きょうだんばら)断層や新庄東山断層、舟形断層に当たるものが本断層帯付近に図示され、新庄東山断層と舟形断層は推定断層扱いとなっている。これらは相互の隔たりが2−3kmと近接し、変位の向きを同じくする断層であることから、松田(1990)の基準にしたがって、一つの起震断層を構成しているとみなすことにする。

本断層帯の西側に近接して分布する鮭川断層は、新庄盆地とその西側の出羽丘陵との境界付近に位置する西上がりの断層(図3)で、山形盆地断層帯(山形盆地とその西側の出羽丘陵付近に位置する西上がりの断層)と同系列のものと推定される。この断層は、本断層帯とは変位の向きが異なるので、評価の対象としないことにした。また、南方の山形盆地の東縁に分布する尾花沢(おばなざわ)−楯岡断層は、山形盆地と奥羽脊梁山脈との境界付近に位置する東上がりの断層(図3)で、本断層帯と同系列のものと推定されるが、本断層帯とは8km程度の隔たりがあることから、評価の対象としないことにした。

(2)断層帯の位置と形状

本断層帯全体の長さ及び一般走向は、図2に示された長者原断層の南端とその北側に続く新庄東山断層相当部の北端とを直線で結んで計測すると、それぞれ約23km、N20°Eとなる。新庄東山断層相当部については、鈴木(1988)により、更新統の山屋層上部層に変形を与えているとの指摘があるが、澤ほか(2001)では推定断層(地形的に活断層と特定できない断層)とされていて、最近は活動的でない可能性もあるので、本断層帯の北端の位置については不確かな点がある。第四紀後期において活動的であるとされる長者原断層部のみに限ると、その長さはほぼ半減して約11kmとなり、一般走向はNSとなる。このように、本断層帯の長さ及び一般走向については、今後の調査結果如何によって変わる可能性を含んでいる。

断層面上端の深さは、断層による変位が地表に達していることから0kmとした。

断層面の傾斜角及び深部形状については、それらを検討するための十分な資料はないが、変位地形(鈴木,1988)、反射法弾性波探査結果(佐藤ほか,1999;佐藤・平田,2000;池田ほか,2002)などから、東傾斜と判断される。断層面下端の深さは、地震発生層の下限である15km程度と推定される。 

(3)断層の変位の向き(ずれの向き)(注6)

本断層帯は、活断層研究会(1980,1991)、鈴木(1988)、山形県(1998)、澤ほか(2001)、池田ほか(2002)などに示された変位地形や地質構造から、東側を西側に対して相対的に隆起させていると考えられる。本断層帯は、断層の東側に撓曲や膨らみを伴うことがあるので、東側が西側に乗り上げる逆断層と考えられる。

2−2 断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的なずれの速度)(注6)

本断層帯の平均変位速度を見積もるための資料として、以下のものがある。

@ 小国川沿いに発達する低位段丘面(L1面及びL2面)は、並走する長者原断層と沖の原断層によって変位しており、鈴木(1988)によると、L1面の変位量は長者原断層で9m、沖の原断層で6m、L2面ではそれぞれの断層で2.5m、3mとされる(図4)。これらのことから、ここでの本断層帯によるL1面とL2面の上下変位量は少なくとも15m、5.5mとなり、L1面とL2面の形成年代を鈴木(1988)にしたがい約2−3万年前、約1万年前とすると、それぞれの地形面形成後の平均上下変位速度は0.5−0.75m/千年、0.55m/千年となる。
A 最上川沿いの舟形町堀内地区で、山形県(1999)は、長者原断層による低位段丘T面の変位を認め、その上下変位量が少なくとも16−23mに達していることを明らかにしている。山形県(1999)にしたがって、この面の形成年代を約5万年前と仮定すると、これ以後の平均上下変位速度は0.32−0.46m/千年となる。

以上のことから、本断層帯の平均上下変位速度を0.5m/千年前後とみることができる。しかし、@、Aいずれも、変位基準の形成年代に関し不確かさが伴われており、精度の高い値とはいえない。また、さらに比較的長く並走する舟形断層の活動性については、不明なため考慮されていないので、この点も留意する必要がある。

(2)活動時期

本断層帯の活動時期に関する資料として、以下のものがある。

@ 小国川沿いで、鈴木(1988)がその形成年代を約1万年前としたL2面を、長者原断層と沖の原断層が変位させている。
A 最上川沿いで、長者原断層によって約2m上下に変位している段丘面を、山形県(1999)は沖積面とみなして、完新世に断層活動があった可能性が高いとしている。また、これに隣接する低位段丘V面(構成物の一部は約2万1千年前の 14C年代を示す(注7))の変位量も2m程度で、それと差がないことから、この付近では、低位段丘V面形成後、沖積面と推定される段丘面形成前の間においては、断層活動がなかったとみなしている。

これらの資料は、ともに本断層帯が完新世に活動したことを示唆している。しかし、いずれにおいても、その発生時期を完新世に限定する明確な根拠は示されていない。また、それぞれが示す活動が同時、かつ、1回とみなせる根拠もない。

以上のことから、本断層帯の最新活動を含む最近の活動履歴については、資料不足のため特定することができない。


(3)1回の変位量(ずれの量)
(注6)

山形県(1999)は、最上川沿いで、長者原断層による沖積面と低位段丘V面の変位量がいずれも2m程度であることを理由に、この断層の1回の変位量(上下成分)を約2mとしている。しかし、この変位をもたらした断層活動は1回かどうか判断できないこと、また、この付近では断層が並走しており変位が分散している可能性もあることから、この値が1回の変位量を示すとは考えにくい。  

これまでの資料で、「1回の変位量」を言及したものはこれのみであり、本断層帯の1回の変位量を直接に示すデータはない。なお、1回の変位量について、断層の長さ(11−23km)から次の松田(1975)の経験式に基づいて算出すると、約0.9−1.8m(上下成分)と求まる。このことから、断層帯全体の1回の変位量は1−2m程度(上下成分)であった可能性がある。

LogL = 0.6 M − 2.9  (1)

LogD = 0.6 M − 4.0  (2)

ただし、Lは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Dは断層の変位量(m)、Mは地震のマグニュード。

(4)活動間隔

本断層帯の活動間隔を直接に示すデータはない。なお、平均活動間隔について、断層の長さから推定される1回の変位量(上下成分1−2m)と平均変位速度(上下成分0.5m/千年)から計算した値に基づくと、活動間隔は2−4千年程度であった可能性がある。

(5)活動区間

本断層帯の活動区間については、関係する資料が整っていないため、検討できない。

(6)先史時代・歴史時代の活動

山形県では、少なくとも19世紀初頭から地震の記録があるが、本断層帯から発生した被害地震の記述はない(宇佐美,1996)ので、最近約200年間はこの断層帯は活動していないと考えられる。

(7)測地観測結果

最近約100年間の測地観測結果によれば、新庄盆地断層周辺は歪の小さい領域に位置する。最近4年間のGPS観測結果によれば、この断層帯周辺では東西方向の縮みが見られる。

(8)地震観測結果  

新庄盆地断層帯付近における地震活動は全般的に低調である。最近の地震活動から、地震発生層の下限の深さは15km程度と推定される。

2−3 断層帯の将来の活動

(1)活動区間と活動時の地震の規模

本断層帯では、断層帯全体を一つの活動区間とした場合、上記の経験式(1)によると、本断層帯(長さ11−23km)から発生する地震の規模はマグニチュード6.6−7.1となる。これに基づくと、本断層帯で発生する地震の規模はマグニチュード6.67.1程度の可能性がある。

(2)地震発生の可能性 

本断層帯の平均活動間隔は、直接的なデータではないが2−4千年程度の可能性がある。しかし、最新活動時期が特定できていないため、上記のようなマグニチュード6.67.1程度の地震が発生する長期確率を更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)を用いて評価することができない。

地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)は、地震の発生確率を求めるに当たって、通常の活断層評価で用いている更新過程(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)が適用できない場合には、特殊な更新過程であるポアソン過程(地震の発生時期に規則性を考えないモデル)を適用せざるを得ないとしている。信頼度の低い平均活動間隔を用いた計算であることに十分留意する必要があるが、本断層帯では、平均活動間隔が2−4千年程度であることをもとに、ポアソン過程を適用して地震発生確率を求めると、今後30年以内の発生確率が0.%、今後50年以内の発生確率が1−%、今後100年以内の発生確率が−5%、今後300年以内の発生確率が0%となる。

2−4 今後に向けて

本断層帯では、第四紀後期の活動性が不確かな断層を含む上、活動履歴に関する資料が整っておらず、最新活動時期、1回の変位量、活動間隔、活動区間などが解明されていないため、将来の断層活動について十分な検討できない段階にある。これらの過去の活動履歴を明らかにするための基礎的なデータを豊富に集積する必要がある。

注6:

「変位」を、1頁の本文及び4、5頁の表1では、一般的にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは、専門用語である「変位」が、本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と、切断を伴わない「撓みの成分」よりなる。

注7: 年代値は、山形県(1999)が測定した炭素同位体年代値を、Kitagawa and van der Plicht(1998)のデータに基づいて暦年補正したもの。


文 献

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