平成13年11月14日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会


養老−桑名−四日市断層帯の評価


・平成17年1月12日 地震後経過率の記載に誤りがあったため修正しました。(赤字)



 養老−桑名−四日市断層帯は、養老山地の東縁に発達する活断層帯である。ここでは、平成9− 10年度に地質調査所(現:産業技術総合研究所)によって行われた詳細なボ−リング調査をはじめ、これまでこの断層帯に関して行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の諸特性を次のように評価した。

1 断層帯の位置及び形態

 養老−桑名−四日市断層帯は、岐阜県垂井町から三重県桑名市を経て四日市市まで、ほぼ養老山地と濃尾平野の境界及び養老山地の南に続く丘陵地の東縁に沿って延びる、長さ約 60kmの断層帯である。この断層帯は、宮代断層、養老・桑名断層及び四日市断層と、これらに付随する断層から構成され、断層の西側が東側に乗り上げる逆断層である。横ずれ成分は認められない(図1、2及び表1)。

2 断層帯の過去の活動

 養老−桑名−四日市断層帯は活動度の高い(A級)断層帯である。1回の活動によるずれの量が約6 m(上下成分)と推定されることから、過去にマグニチュード8程度の大地震を繰り返し発生させたと推定される(表1)。

この断層帯では、断層によるずれが地表では撓(たわ)みとしてのみあらわれているために、過去の活動の時期を調べることが難しい。この断層帯は、過去2千年間に2回活動したと推定される。最新の活動は 13世紀以後−16世紀以前、一つ前の活動は7世紀以後−11世紀以前であった可能性がある。過去約1万年間の平均活動間隔は1千4百−1千9百年であった可能性がある。しかし、最新と一つ前の活動の時間間隔はそれより有意に短かったらしい(表1)。

3 断層帯の将来の活動

 養老−桑名−四日市断層帯では、断層帯全体が一つの区間として活動し、マグニチュ−ド8程度の地震が発生すると推定される(表1)。その際、断層の近傍の地表面には撓みが生じて、西側が東側に対して相対的に約6 m高まると推定される。本断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりである。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる(注1、2)。

4 今後に向けて

 養老−桑名−四日市断層帯について、より一層信頼度の高い評価を行うためには、平均活動間隔や最新活動時期をさらに精度よく明らかにする必要がある。


表1 養老−桑名−四日市断層帯の特性

項  目 特  性   信頼度  
(注3)
根  拠
(注4)
1.断層帯の位置・形態
  (1) 養老−桑名−四日
市断層帯を構成する
断層
宮代断層
養老・桑名断層
 付随する副断層:多度断層、猪飼(いかい)
 断層、嘉例川(かれがわ)撓曲、垂坂(たる
 さか)断層
四日市断層
  文献2、3、9、10、11
(注4)に示された断層の
位置・形状から推定。
  (2) 断層帯の位置・
   形状等
地表における断層帯の位置・形状
 断層帯の位置
 (北端) 北緯35゜22'、東経136゜31'
 (屈曲点)北緯35°04'、東経136°41'
 (南端) 北緯34゜54'、東経136゜36'
 長さ     約  60km

地下における断層面の位置・形状
 長さ及び上端の位置 地表での長さ・位置と
           同じ。
 上端の深さ  0km
 一般走向  (北部)北北西−南南東
       (南部)南南西−北北東
 傾斜    地下約500mより浅いところで
        は約30°で西に傾斜。
 幅         約30−40km
















文献2、3、9、
10、11による。数値は図2
から計測。形状は図2を
参照。

長さは、北端、屈曲点及び
南端を折れ線で結んで計
測。
上端の深さが0kmである
ことから推定。



傾斜は地下約500mまで
の構造(文献4)から推定。
断層面の幅は、断層面の
傾斜を30゜、下端の深さを
地震発生層の下限として推定。
  (3) 断層のずれの向
   き
 西側隆起の逆断層

文献2、3、5、11等に示さ
れた変位地形、反射法弾
性波探査結果及びボ−リ
ング調査結
果による。

2.断層帯の過去の活動
  (1) 平均的な断層のずれ
   速度
 3−4m/千年(上下成分)

文献3、4、5、6、7、8による
  (2) 過去の活動時期 活動1(最新活動)  西暦13世紀以後
              −16世紀以前
活動2(一つ前の活動)西暦7世紀以後
              −11世紀以前



活動時期は文献
6、7、8、13記載の
資料より判断。

  (3) 1回のずれの量
   と平均活動間隔
1回のずれの量   5−7m(上下成分)

平均活動間隔    1千4百−1千9百年



文献6、7、8記載の
資料より判断(注5)。
  (4) 過去の活動区間
及び地震の規模
活動区間   断層帯全体で1区間

地震の規模  マグニチュード8程度



断層の位置関係・形状
などから推定。
活動区間の長さと、1回
のずれの量などから推定。
3.断層帯の将来の活動
  (1) 将来の活動区間
   及び活動時の地
   震の規模
活動区間   断層帯全体で1区間

地震の規模  マグニチュ−ド 8程度



断層の位置関係・形状
などから推定。
活動区間の長さと、1回
のずれの量などから推定。

表2 将来の地震発生確率等
項  目   将来の地震発生確率等  
(注6)
備  考

地震後経過率 (注7)

今後 30 年以内の地震発生確率
今後 50 年以内の地震発生確率
今後 100 年以内の地震発生確率
今後 300 年以内の地震発生確率

集積確率(注8)


0.2 − 0.6

ほぼ0% − 0.6%
ほぼ0% − 1%
ほぼ0% − 3%
0.00% − 20%

ほぼ0% − 1%
発生確率及び集積確率
は文献1による。


注1: 我が国の陸域及び沿岸域の主要な 98 の活断層帯のうち、 2001 年4月時点で調査結果が公表されているものについて、その資料を用いて今後 30 年間に地震が発生する確率を試算すると概ね以下のようになると推定される。
  98断層帯のうち約半数の断層帯:30年確率の最大値が0.1%未満
  98断層帯のうち約1/4の断層帯:30年確率の最大値が0.1%以上−3%未満
  98断層帯のうち約 1/4 の断層帯: 30 年確率の最大値が3 % 以上
(いずれも2001年4月時点での推定。確率の試算値に幅がある場合はその最大値を採用。)
この統計資料を踏まえ、地震調査委員会の活断層評価では、次のような相対的な評価を盛り込むこととしている。
今後30年間の地震発生確率(最大値)が3%以上の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる」
今後30年間の地震発生確率(最大値)が0.1%以上−3%未満の場合:
「本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる」
注2: 1995 年兵庫県南部地震、 1858 年飛越地震及び 1847 年善光寺地震の地震発生直前における 30 年確率及び集積確率 ( うち、 1995 年兵庫県南部地震と 1858 年飛越地震については「長期的な地震発生確率の評価手法について」(地震調査研究推進本部地震調査委員会, 2001 )による暫定値 ) は以下のとおりである。

地震名 地震を引き起こした活断層 地震発生直前の
30年確率 (%)
地震発生直前の
集積確率 (%)
断層の平均活動
間隔 (千年)
1995年兵庫県南部地震
(M7.3)
野島断層
(兵庫県)
0.4%−8% 2%−80% 約1.8−約3.0
1858年飛越地震
(M7.0−7.1)
跡津川断層
(岐阜県・富山県)
ほぼ0%−10% ほぼ0%−
90%より大
約1.9−約3.3
1847年善光寺地震
(M7.4)
長野盆地西縁断層帯
(長野県)
ほぼ0%−20% ほぼ0%−
90%より大
約0.8−約2.5

  「長期的な地震発生確率の評価手法について」に示されているように、地震発生確率は前回の地震後、十分長い時間が経過しても 100%とはならない。その最大値は平均活動間隔に依存し、平均活動間隔が長いほど最大値は小さくなる。平均活動間隔が1千年の場合は30年確率の最大値は220%程度、2千年の場合は10%程度である。
注3: 信頼度は、特性欄に記載されたデ−タの相対的な信頼性を表すもので、記号の意味は次のとおり。
 ◎:高い、○:中程度、△:低い
注4: 文献については、本文末尾に示す以下の文献。
  文献 1 :地震調査研究推進本部地震調査委員会( 2001 )
  文献 2 :活断層研究会編( 1991 )
  文献 3:岡田・東郷編(2000)
  文献4:太田・寒川(1984)
  文献5:須貝・杉山(1998)
  文献6:須貝ほか(1998)
  文献7:須貝ほか(1999a)
  文献8:須貝ほか(1999b)
  文献9:鈴木ほか(1996a)
  文献10:鈴木ほか(1996b )
  文献11:鈴木ほか(1996c)
  文献12:東郷ほか(1999)
  文献13:宇佐美(1996)
注5: 平均活動間隔は、約1万年前以後のずれの量を最新2回の平均のずれの量で割って活動回数を推定し、約1万年前以後の活動間隔の平均値として求めた。
注6: 評価時点はすべて 2001年1月1日現在。「ほぼ0%」は10 −3 %未満の確率値を示す。なお、計算に当たって用いた平均活動間隔と最新活動時期の信頼度は低い(△)ことに留意されたい。
注7: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると 1.0となる。今回の評価の数字のうち、0.2は414年(西暦2000年−西暦1586年)を1900年で割った値であり、0.6は800年を1400年で割った値。
注8: 前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率。

(説明)

1 養老−桑名−四日市断層帯に関するこれまでの主な調査研究

 養老−桑名−四日市断層帯のうち養老・桑名断層では、養老山地東縁に沿って北北西−南南東走向の断層地形が認められており、その南南東延長の桑名市付近では新しい時代の断層地形が知られていた(貝塚, 1950)。太田・寒川(1984)は、桑名市付近での変動地形調査により、養老・桑名断層の南部は活動度B級の活断層であるとした。また、彼らは四日市市西方の変動地形調査から、四日市断層を活動度B級の活断層とした。

 飯田(1980,1987)は、「養老断層・桑名断層」は、その南南東延長部に位置する伊勢湾断層とともに、濃尾平野南西部一帯に甚大な被害をもたらした1586年の天正地震の震源断層である可能性を指摘した。これを間接的に支持する証拠として、粟田・吉田(1991)は、桑名市付近での変動地形調査により、養老・桑名断層の南部では沖積面が10m以上変位していることを明らかにするとともに、その活動度がA級である可能性を示唆した。また、彼らは四日市市西方で沖積面の変位地形を調査した結果、縄文海進時以後における変位量が約5m以上であることから、四日市断層が活動度A級である可能性を示唆した。その後、養老・桑名断層の南部では、変位した沖積面の年代が2000年前前後であることが報告された(杉山ほか,1994;森ほか,1996)。

 須貝ほか(1998,1999a,b)は、群列ボ−リング調査とピット調査を行い、養老−桑名−四日市断層帯が最近2000年間に2回活動しており、それらの活動は1586年の天正地震と745年の天平地震に該当する可能性が高いことを明らかにした。さらに彼らは、1回の地震時の上下変位量が5mに達することから、マグニチュ−ド7.5程度の大地震を発生させる可能性が高いことを明らかにした。また、須貝ほか(1998)及び愛知県(2000)は、養老山地東麓の濃尾平野に伏在するとされた「大藪−津島線」と「大垣−今尾線」を横切る反射法弾性波探査を実施した。

2 養老−桑名−四日市断層の評価結果

2−1 断層帯の位置・形状

(1)養老−桑名−四日市断層帯を構成する断層

 養老−桑名−四日市断層帯は、ほぼ養老山地と濃尾平野の境界及び養老山地の南に続く丘陵地の東縁に沿って延びており、岐阜県垂井町から養老町、三重県桑名市を経て、四日市市西部に至る断層帯である(図1及び2)。この断層帯の位置・形態については、「都市圏活断層図」(鈴木ほか, 1996a,b,c)と「近畿の活断層」(岡田・東郷編,2000)、「新編日本の活断層」(活断層研究会,1991)、 及び杉山ほか(1994)とは良い一致を示す。

 この断層帯の主断層は、宮代断層、養老・桑名断層及び四日市断層と、これらに付随する断層から構成される(図2)。それらの断層は、松田( 1990)の基準にしたがって、一つの起震断層として扱う。断層帯全体の長さは約60kmである。この断層による変位(ずれ)(注9)は、地表では、最大幅約1kmの撓曲構造を形成している。

 宮代断層は、岐阜県垂井町付近に分布する北西−南東走向の長さ7 kmの断層である。この断層と2kmの間隔をおいて、長さ41kmの養老・桑名断層が、岐阜県養老町から三重県桑名市付近までは北西−南東に延び、そこから向きを変えて四日市市北部まで南北〜北東−南西方向に連続する。さらに、その南端付近から西へ約3kmの間隔をおいて、ほぼ南北走向に延びる長さ約11kmの四日市断層が分布している。

 養老・桑名断層に付随する副断層として、多度町から長さ2 kmの多度断層が分岐し、その南に長さ1.5kmの猪飼(いかい)断層及び長さ3.8kmの嘉例川(かれがわ)撓曲が南に延びる。養老・桑名断層の南端部の西側隆起部には、幅2kmにわたって、長さ2km程度の複数の断層が平行する断層群(桑名断層群)が分布する。また養老・桑名断層と四日市断層の間には、北西−南東走向の長さ2.5kmの垂坂(たるさか)断層が分布する(図2)。

 「養老断層」(養老・桑名断層の北部)の南方延長については、伊勢湾内の伊勢湾断層に続くという見解(桑原ほか, 1972)と、桑名−四日市方面へ連続するという見解(鈴木ほか,1996c)があるが、変位地形や地下の地質構造、平均変位速度の分布の連続性から、後者が支持される。

 なお、活断層研究会編(1991)によって伏在断層として図示された「大藪−津島線」と「大垣−今尾線」については、須貝・杉山(1998)及び愛知県(2000)が実施した反射法弾性波探査による反射断面を検討した結果(図3、4及び5)、断層の存在が認められなかったので、ここでは評価の対象としなかった。

(2)断層面の位置、形状

 地下の断層面の位置及び形状は、地表における断層の位置及び形状と地下の断層構造等から推定した。

 断層面の位置及び一般走向は、桑名市付近を境に、北部は北北西−南南東走向、南部は北北東−南南西走向となる二つの断層面で近似する。二つの断層面の長さは合計約 60kmである。

 断層面上端の深さは、断層による変位(注9)が地表に達していることから0 kmとする。断層面の傾斜は、反射法弾性波探査の結果(図3;須貝・杉山,1998)から、約500m以浅では約30゜で西に傾斜するものと推定する。断層面の深部形状については十分な資料がないが、断層面下端の深さを地震発生層の下限である15−20kmと推定し 、断層面の傾斜を30°として、断層面の幅を30−40kmと求めた。

(3)断層の変位の向き(ずれの向き) (注9)

 養老−桑名−四日市断層帯は、活断層研究会編(1991)、鈴木ほか(1996a,b,c)、須貝・杉山(1998)、岡田・東郷編(2000)に示された変位地形や地質構造からみて、西側が東側に乗り上げる逆断層と考えられる。横ずれ成分は知られていない。地表部では、副次的な逆断層として、主断層の西側に、断層面が東傾斜で、東側が西側に乗り上げる逆断層を伴うことがある。

2−2 断層帯の過去の活動

(1)平均変位速度(平均的な断層のずれの速度) (注9)

<養老・桑名断層>

 岐阜県南濃町における、養老・桑名断層を横断する反射法弾性波探査及び大深度ボ−リング調査の結果から、この断層による過去 90万年間の沈降速度は1.1m/千年と見積もられる(図3、須貝・杉山,1998,1999)。断層活動による養老山地の隆起も考慮して、養老・桑名断層の過去約90万年間の平均変位速度を、1.1m/千年以上と推定する。

 南濃町羽沢(はざわ)及び庭田では、群列ボ−リング調査と層序ピット調査の結果、ほぼ水平に堆積したと考えられる地層が断層運動によって変形しているとされている(図6、7;須貝ほか, 1999b)。このうち、羽沢では、約1万年前に堆積した砂層の頂面が撓曲構造を含む断層帯を境に上下に約35m、4千5百年前に堆積した泥層の頂面が上下に15m、1千6百年前に堆積した砂層が上下に10m変位していると推定できる(図6)。これらのことから、南濃町付近での養老・桑名断層の上下方向の平均変位速度はそれぞれ3.5m/千年、3.3m/千年、及び6.3m/千年と計算されるが、最後の値は平均を求める期間が短いため、実際より大きくなっている可能性がある。

 桑名市汰上(ゆりあげ)では、幅約1kmの撓曲帯での群列ボ−リング調査とピット調査により、 2千年前のマガキ化石床が上下に13m変位しており、また、この断層帯のうち断層近傍の幅約300mの範囲では、約1万年前の砂層の堆積頂面が上下に21m変位しているとされている(図9;須貝ほか,1999a)。これらのことから、桑名市汰上での養老・桑名断層の上下方向の平均変位速度はそれぞれ6.5m/千年、2.1m/千年以上と計算されるが、前者は平均を求める期間が短いため、実際より値が大きくなっている可能性がある。

 以上のデ−タから、養老・桑名断層の過去約1万年間の平均変位速度を、 3.3−3.5m/千年(上下方向)と推定する。

<四日市断層>

 四日市市大井出での層序ピット調査とボ−リング調査により、四日市断層では2千年前以後に6 mの上下変位が生じたことが明らかにされている(図11;須貝ほか,1998)。この変位から、四日市断層の上下方向の平均変位速度を3m/千年と求められるが、この値は平均を求める期間が短いので誤差は大きいと考えられる。

 なお、養老・桑名断層の副断層である多度断層、猪飼断層及び嘉例川撓曲については、平均変位速度、活動時期等に関するデ−タは得られていない。しかしながら、これらの副断層は、主断層である養老・桑名断層に近接して分布し、3断層合わせても長さ7 km程度であることから、以下ではこれらの副断層は主断層とともに活動するものとして評価した。また、桑名市付近の副断層群及び垂坂断層についても、ここでは同様に養老・桑名断層に含めて評価するものとした。

(2)活動時期

○地形地質的に認められた過去の活動

<養老・桑名断層>

 養老・桑名断層については、4地点で行われた詳細な群列ボ−リング調査及びピット調査など(須貝ほか. 1998,1999b;東郷ほか,1999)のデ−タから、過去2回の活動時期を以下のように判断する。

 南濃町庭田では、撓曲崖の幅200m区間において、群列ボ−リング調査とピット調査が行われている(須貝ほか,1999b)。ここでは、約4−5千年前以後にほぼ水平に堆積したと考えられる地層(須貝ほか,1999b)が撓曲により変位している(図7、8)。 このうち調査範囲の地下約1−5m以浅には、土石流堆積物(U4a層)を含むシルト層・泥炭層(U4b層;紀元前後から紀元後7−8世紀の年代を示す)と、その上位のシルト層・洪水氾濫堆積物・泥炭層(U5a、b、c層;9−11世紀から13世紀)が分布している。U4b層及びU5a、b、c層は、揖斐川などの氾濫原堆積物と推定され、現在の地形面との比較から、ほぼ水平に堆積した地層と推定される。

U5a、b、c層は、撓曲崖の中−下部にかけて概ね崖の地表面に沿って分布し(図7)、崖の中部において詳しく調査された範囲(図8)では3%の傾斜を示すことから、撓曲により変形していると推定できる。したがって、U5c層堆積後に最新の断層活動があったと推定され、その時期は、地層の放射性炭素同位体年代値の一部に下位層から再堆積した古い試料の年代値が含まれている可能性があることを考慮すると、13世紀以後であった可能性があると判断する(注10)。

U4b層は、撓曲崖の上部から下部にかけて概ね崖の地表面に沿って分布し(図7)、かつ崖の中部において詳しく調査された範囲(図8)では6−7%の傾斜を示している。上位のU5a、b、c層は撓曲崖の中−下部にのみ分布しており(図7)、撓曲崖に緩やかにアバットして堆積した地層と推定される。これらのことから、U4b層は、U5a、b、c層の堆積前にも変形を受けており、U4b層堆積後−U5a層堆積前に、一つ前の断層活動があったと推定される。その時期は、炭素同位体年代値に若返り(注11)はないものとみなし、一方でその一部に再堆積した古い試料の年代値が含まれている可能性を考慮して、7世紀以後−11世紀以前であった可能性があると判断する。

 桑名市汰上では、断層近傍の幅約300mの範囲において、詳細な群列ボ−リング調査とピット調査が行われている(図9,10;須貝ほか,1998b)。この調査範囲においては、約2千年前に堆積したマガキ化石床が上下に約7m変位しており、約2千年前以降に少なくとも1回以上の活動があったと推定される。なお、須貝ほか(1998b)は、12−13世紀の年代試料を産出する泥層(最上部泥層:TM層)が上下に3.5m変位していると推定して、約2千年前以降に2回の断層活動があったと推定している。しかし、隆起側にわずかに分布するTM層は、限られたボーリング調査から層相の対比によって区分されたものであり、直接に地層の連続性は確認されていない。したがって、ここではTM層が変形しているかどうか確認することは困難であると判断した。

 このほか南濃町志津において、東郷ほか(1999)は地層抜き取り調査を実施し、ほぼ水平に堆積したと考えられる地層の変形から、一つ前の活動は8−9世紀以後かつ11−12世紀以前であり、最新の活動は11−12世紀以後であったとしている。また南濃町羽沢では、4千5百年前の泥層が15m、1千6百年前の砂層が10mと異なった上下変位量を示すことから、4千5百年前−1千6百年前と1千6百年前以後に、それぞれ断層活動があったとされている(図6;須貝ほか,1999b)。これら2地点で報告されている断層の活動時期は、南濃町庭田で可能性が認められた最新及び一つ前の活動時期等と概ね調和的である。しかし、これらの地点では断層活動の時期を詳しく特定する調査結果が示されていないことから、ここでは調査結果を参考として示すにとどめる。

 以上のことから、地形地質的に認められた過去の活動として、養老・桑名断層の最新活動時期は 13世紀以後の可能性があり、一つ前の活動時期は7世紀以後−11世紀以前の間の可能性がある。

<四日市断層>

 四日市市大井出では、四日市断層が2千年前以後に活動したことが明らかにされている(図 11;須貝ほか,1998)。ここでは約2千年前以後に断層活動があったと推定されるが、その間の活動回数及び詳細な活動時期は不明である。

○ 先史時代・歴史時代の活動

 1586年の天正地震(マグニチュ−ド8.2(飯田,1980)もしくは7.8(宇佐美,1996))では、養老−桑名−四日市断層帯の周辺の濃尾平野から鈴鹿山脈西方にかけての広い地域で震度7に相当する被害が生じている(図12、飯田,1987)。この被害状況と、本断層帯の最新活動時期が13世紀以後の可能性があることから、1586年の天正地震が本断層帯の最新活動に該当するとの指摘もある(須貝ほか,1999b、飯田,1987)。しかし、この地震に関する史料が限られていることから、この地震と養老−桑名−四日市断層帯の関係については判断できない。

 養老−桑名−四日市断層帯の一つ前の活動時期は、7世紀以後− 11世紀以前であり、745年の天平地震(マグニチュ−ド7.9、震央は美濃国府の垂井付近(宇佐美, 1996))がこれに該当する可能性も指摘されている(須貝ほか,1998b)。しかし、この地震に関する史料はわずかしかなく、養老−桑名−四日市断層帯の活動との関係については判断できない。

 なお、この断層帯付近では、1586年の天正地震より後には、この断層帯から発生した可能性のある地震は記録されていないので、少なくとも最近約400年間はこの断層帯は活動しなかったと考えられる。

(3)1回の変位量(ずれの量)

<養老・桑名断層>

 南濃町庭田での撓曲構造の沈降側(東側)における地層の傾斜量は、最新の1回の断層活動で3 %、最新2回の活動で合計6−7%と推定され、1回の断層活動毎の地層の傾斜量はそれぞれ等しい。したがって、南濃町羽沢では、1千6百年前の地層面の上下変位量10mが最新2回の断層活動の累積結果であることから、ここでの上下変位量が、庭田での地層の傾動量と同じく1回の断層活動毎にそれぞれ等しいと推定して、1回の上下変位量を5mと計算した。

 桑名市汰上では、断層を含む変形帯で2千年前のマガキ化石床が上下に 13m変位しており(図10、須貝ほか,1999a)、それが2回分の変位量に相当することから、ここでの1回の断層活動による上下変位量は6−7mと推定できる。

 これらのことから、養老・桑名断層の1回の変位量を5−7 m(上下成分)と推定する。

(4)活動間隔

<養老・桑名断層>

 南濃町羽沢では、1回の変位量が5mと推定される。ここでは1万年前の地層面の上下変位量は約35mであることから、約1万年前以後ほぼ7回の活動があったことになる。最新活動時期を後述のように西暦1586年とすると、それを含めた7回の活動の平均活動間隔は1千4百−1千6百年と計算される。

 桑名市汰上では、断層近傍の幅約300mの範囲においては、最新2回の活動による上下変位量が7mである。このことから、この範囲での1回の変位量は3.5mと計算される。その範囲では、約1万年前の地層面の上下変位量が21mであることから(図9;須貝ほか,1998)、断層活動毎の変位量及び変位のパタ−ンを一定と仮定すると、約1万年前以後ほぼ6回の活動があったことになる。ここでは、最新活動時期を西暦1586年とすると、それを含めた6回の活動の平均活動間隔は1千6百−1千9百年と計算される。

 これらのことから、養老・桑名断層では1万年前以後における平均活動間隔は1千4百−1千9百年の可能性がある。

(5)活動区間及び地震規模

 養老・桑名断層では、断層が連続して分布している。また、宮代断層及び四日市断層は、いずれも養老・桑名断層のほぼ延長上に近接して分布し、養老・桑名断層と同じ変位のセンスをもつ。これらのことから、松田 (1990)の定義に従って、養老−桑名−四日市断層帯は、断層帯全体が一つの起震断層として同時に活動したと推定する。

養老−桑名−四日市断層帯は、断層帯全体(長さ約60km)が一つの区間として活動したと推定されることから、経験式(1)によると、発生した地震のマグニチュ−ドは7.8と求まる。また、1回の変位量が5−7m(上下成分)であったと推定されることから、経験式(2)によると地震のマグニチュ−ドは7.8−8.1と求まる。これらのことから、養老−桑名−四日市断層帯で発生した地震の規模はマグニチュ−ド8程度と推定する。

 用いた経験式は松田(1975,1990)に基づく次の式である。ここでLは1回の地震で活動する断層の長さ(km)、Dはその時の変位量(m)、Mはその時のマグニチュ−ドである。

  (1)M =(logL+2.9)/0.6

  (2)M =(logD+4.0)/0.6

 また、断層面の長さ(約60km)、幅(約30−40km)及び1回の変位量(上下成分5−7m)から、この断層帯で発生する地震の規模は、地震モ−メントがMo = 5.4×1020 − 1.3×1021Nmと求まり、これをモ−メントマグニチュ−ドに換算するとMw7.8−8.0となる。こここで用いた式は次の式(3)及び(4)( Kanamori,1977)である。ここでSは断層面の面積(S=LW)、Lは断層面の長さ、Wは断層面の幅である。Dは断層面上での平均くいちがい量で、地表付近における1回の上下変位量と断層面の傾斜(30°)から10−14mとした。また、μは剛性率であり上部地殻についての値(μ=3−4×1010 N/m)を用いた。

  (3)Mo = μDS

  (4)Mw = ( log Mo − 9.1 )/1.5

(6)測地観測結果

 明治以来の三角測量によれば、養老−桑名−四日市断層帯の分布する岐阜・三重県境周辺は、長期的、広域的に東西方向の縮みが観測されている。最近のGPS観測でも、この地域では西北西−東南東方向の縮みが観測されている。

(7)地震観測結果

 養老−桑名−四日市断層帯付近では、地震活動は活発で、この地震活動から推定される地震発生層の厚さは、約 15−20kmである。また、1998年4月22日にはM5.4の地震が発生し、この地震の初動から推定される発震機構は、ほぼ東西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。

2−3 断層帯の将来の活動

(1)活動区間と地震の規模

 養老−桑名−四日市断層帯は、断層帯全体(長さ約60km)が一つの区間として活動すると推定される。これにともなって発生する地震の規模はマグニチュ−ド8程度、変位量は上下成分が約6mと推定される。

(2)地震発生の可能性

 養老−桑名−四日市断層帯の平均活動間隔は、長期的にみれば1千4百−1千9百年の可能性があり、最新の活動時期が 13世紀以後−西暦1586年の天正地震以前であった可能性がある。この断層帯では、最新活動後、評価時点(2001年)までの経過時間は414−800年で、平均活動間隔の2−6割の時間が経過していることになる。また、信頼度の低い平均活動間隔と最新活動時期を用いた計算であることに留意する必要があるが、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2001)に示された手法(BPT分布モデル、α=0.24)によると、今後30年以内、50年以内、100年以内、300年以内の地震発生確率は、それぞれ、ほぼ0%−0.6%、ほぼ0%−1%、ほぼ0%−3%、0.00%−20%となる。また現在までの集積確率はほぼ0%−1%となる(表3)。なお、表3にはこれらの確率値の参考指標(地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会,1999)を示す。

2−4 今後に向けて

以上のように、養老−桑名−四日市断層帯の活動に関して質の高いデ−タが蓄積されつつある。その結果、この断層帯は過去に大規模な地震を繰り返し発生してきたことがわかった。しかし、この断層帯について、より一層信頼度の高い評価を行うためには、平均活動間隔や最新活動時期をさらに精度よく明らかにする必要がある。また、最新活動が西暦 1586年の天正地震であり、一つ前の活動が745年の天平地震であったとすると、その活動間隔は841年となり、この値は平均活動間隔(1千4百−1千9百年)に比べて4−6割程度と有意に短かったことになる。さらに、宮代断層及び四日市断層については、養老・桑名断層と同時に活動したのかどうか等を正確に検討する資料が不足している。今後、平均活動間隔とくにそのばらつきや、最新活動時期、1回の活動における活動区間および変位量等に関するより精度の高い資料を得る必要である。


注9: 「変位」を、1ページの本文及び 4−5ページの表1では、一般にわかりやすいように「ずれ」という言葉で表現している。ここでは専門用語である「変位」が本文や表1の「ずれ」に対応するものであることを示すため、両者を併記した。以下、文章の中では「変位」を用いる。なお、活断層の専門用語では、「変位」は切断を伴う「ずれの成分」と切断を伴わない「撓(たわ)みの成分」よりなる。
注10: 図7(20ページ)の横に添付した表にはU5c層から14−15世紀の年代値が得られていることが示されている。これを用いると最新活動の時期は14世紀以後となる。しかし、図7においてU5c層とU6層の境界が破線で示されているように、その両層の境界位置は必ずしも明確ではない可能性がある。このため、本評価ではこの年代値は採用せず、最新活動時期として下位のU5b層から得られた年代値を採用し、13世紀以後とした。
注11: 炭素同位体年代値の試料が地層に含まれた後などに汚染され、地層がで来た年代よりも新しい年代を示すこと。
注12: 10000年BPよりも新しい炭素同位体年代については、 Niklaus(1991)に基づいて暦年補正した値を用いた。西暦紀元以後の年代については暦年補正値のうち1σの推定幅の上限値もしくは下限値、また紀元以前の年代についてはcalibrated ageの年代値を用いた。

 

文 献

愛知県(2000):濃尾平野の地下構造調査.第1回堆積平野地下構造調査成果報告会予稿集,61−70.

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飯田汲事(1980):天正地震(1586)・明応地震(1498)の地震と津波災害について.自然災害試料解析,,170−182.

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宇佐美龍夫(1996):新編日本被害地震総覧.東京大学出版会,493p.


表3 将来の地震発生確率及び参考指標
項  目 将来の地震発生確率等 備   考
地震後経過率

今後30年以内の発生確率
今後50年以内の発生確率
今後100年以内の発生確率
今後300年以内の発生確率

集積確率
0.2 − 0.6

ほぼ0% − 0.6%
ほぼ0% − 1%
ほぼ0% − 3%
0.00% − 20%

ほぼ0% − 1%


発生確率及び集積確率は地
震調査研究推進本部地震調
査委員会(2001)参照。
指標(1) 経過年数
      比
指標(2)
指標(3)
指標(4)
指標(5)
−9百年 − −2百年
0.3 − 0.8
ほぼ0 − 0.2
ほぼ0% − 1%
ほぼ0 − 0.04
0.0005 − 0.0007
地震調査研究推進本部地
震調査委員会長期評価部
会 (1999) 参照。

注13: 評価時点はすべて 2001年1月1日現在。「ほぼ0%」は10 −3 %未満の確率値を、「ほぼ0」は10 −5 未満の数値を示す。
指標(1)経過時間: 当該活断層があることによって大地震発生の危険率(1年あたりに発生する回数)は、最新活動(地震発生)時期からの時間の経過とともに大きくなる(ここでは BPT分布モデルを適用した場合を考える)。一方、最新活動の時期が把握されていない場合には、大地震発生の危険率は、時間によらず一定と考えざるを得ない(ポアソン過程を適用した場合にあたる)。この指標は、BPT分布モデルによる危険率がポアソン過程を適用した場合の危険率を越えた後の経過年数である.マイナスの値は、前者が後者に達していないことを示す。後者の危険率は1千4百分の1(0.0007)回−1千9百分の1(0.0005)回であり、時間によらず一定である。前者は評価時点で10万分の1回以下(ほぼ0回)であり、時間とともに増加する。前者が後者の回数に達するには今後2百年−9百年を要することになる。
指標(1)比: 最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間をAとし、 BPT分布モデルによる危険率がポアソン過程とした場合のそれを越えるまでの時間をBとする。前者を後者で割った値(A/B)。
指標(2): BPT分布モデルによる場合と、ポアソン過程とした場合の、評価時点での危険率の比。
指標(3): 評価時点での集積確率(前回の地震発生から評価時点までに地震が発生しているはずの確率)。
指標(4): 評価時点以後30年以内の地震発生確率をBPT分布モデルでとりうる最大の確率の値で割った値。
指標(5): ポアソン過程を適用した場合の危険率(1年あたりの地震発生回数)。