平成12年5月10日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2000年4月の地震活動の評価


1 主な地震活動

北海道有珠山の火山活動に伴って、活発な地震活動があり、4月1日には震度5弱を観測した。 補足説明へ

2 各地方別の地震活動


(1) 北海道地方

○ 3月27日から、有珠山及びその近傍において、火山活動に関連する活発な地震活動が始まった。3月31日の噴火開始前から地震回数は減少し始め、4月1日には火山活動開始以来最大のM4.6の地震が発生し、震度5弱を観測した。4月4日以降、M3.0を超える地震は発生していない。火山活動に伴った地震活動の変化は有珠山の周辺10km程度以内に限られており、また、GPS観測の結果にも顕著な広域的な影響は見られていない。 補足説明へ

(2) 東北地方

○ 4月13日に、岩手県沖約50kmの深さ約40kmでM4.8の地震、4月26日に、三陸沖(岩手県沖約130km)でM5.2とM5.1の地震、4月30日には、さらに沖合(岩手県沖約180km)でM5.1の地震がそれぞれ発生した。これらの地震は、いずれも「1994年三陸はるか沖地震」M7.5の余震域で発生したものである。

○ 4月26日に、福島県会津地方の深さ約10kmでM4.3の地震が発生した。この付近では、1999年2月にもM4.0の地震が発生している。 補足説明へ

(3) 関東・中部地方

○ 4月7日に、新潟県上越地方の深さ約15kmでM4.1の地震が発生した。この周辺は従来から、M4.0以上の地震が発生している地域である。

○ 4月10日に、茨城県南西部の深さ約55kmでM4.6の地震が発生した。この地震は、フィリピン海プレートの沈み込みに伴うもので、その発震機構は、北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であり、この付近の過去の地震の発震機構と同様のものであった。

○ 静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、昨年の8月以来、平均的な活動レベルより低い状態が続いている。一方、東海地方のGPS観測の結果には従来の変化傾向から変わるものは見られていない。

○ 三重県中部では、昨年1月から深さ約10kmで活発な微小地震活動が始まり、その後活動が低下していた。本年2月頃から活動がやや活発化し、活動域が北側に広がり、その状態で継続している。 補足説明へ

(4) 近畿・中国・四国地方

○ 4月15日に、和歌山県南部の深さ約45kmでM4.8の地震が発生した。この地震は、フィリピン海プレート内で発生したものである。

○ 4月28日に、和歌山県北部の深さ約55kmでM4.2の地震が発生した。この地震は、フィリピン海プレート内で発生したものである。 補足説明へ

(5) 九州・沖縄地方

○ 4月2日に、宮崎県北部山沿い地方の深さ約150kmでM4.5のやや深発地震が発生した。この地震は、沈み込むフィリピン海プレートの先端付近で発生したもので、その発震機構は、プレートの沈み込む方向に張力軸を持つものであった。

○ 西表島付近で4月10日頃からM4.2を最大とする地震活動が発生した。この付近では、1992年にM5.2を最大とする地震活動が発生している。

○ 大分県中部(別府湾付近)の深さ約10kmで4月29日頃からM4.0を最大とする地震活動があった。この周辺では、1999年12月にM3.3を最大とする地震活動が発生している。 補足説明へ





2000年4月の地震活動の評価についての補足説明

平成12年5月10日
地震調査委員会

1 主な地震活動について

「北海道有珠山の火山活動に伴って、活発な地震活動があり、4月1日には震度5弱を観測した。」:
有珠山の火山活動に関連する地震活動で強い揺れを観測した。日本及びその周辺域では、M4.0以上の地震の発生は50回(3月は42回。昨年末までの30年間の平均は43回。)観測され、内M5.0以上の地震の発生は6回(3月は3回)で、M4.0以上の地震発生回数からみた今月の活動レベルは先月よりも若干多いものの、ほぼ平均的な活動レベルである。
なお、昨年2月以降の主な地震活動として次のものがあった。この内、新島・神津島近海(1999年3月14日に発生した領域)で、4月14日にM3クラスの地震が2回発生した(最大震度4)。

− 秋田県沿岸南部  1999年2月26日M5.1(深さ約20km)
− 新島・神津島近海1999年3月14日M4.7(深さ10km以浅)、
1999年3月28日M5.0(深さ20km以浅)
− 釧路支庁中南部1999年5月13日M6.4やや深発地震(深さ約100km)
− 和歌山県北部1999年8月21日M5.4(深さ約70km)
− 台湾1999年9月21日M7.7(米国地質調査所による。)
− 瀬戸内海中部1999年10月30日M4.5(深さ約15km)
− 熊本県熊本地方(深さ約10km)、福井県沖(深さ約15km)及び
   愛知県西部(深さ約50km)で1999年11月にM4を超える地震
− 北海道東方沖2000年1月28日M6.8(深さ約60km)
− 北海道胆振支庁(有珠山周辺)
2000年3月30日M4.3(深さ約10km以浅)を始めとする
火山活動に関連する地震活動

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2 各地方別の地震活動

(1) 北海道地方

「火山活動に伴った地震活動の変化は有珠山の周辺10km程度以内に限られており、また、GPS観測の結果にも顕著な広域的な影響は見られていない。」:
現在まで、有珠山から半径10km〜100kmの範囲の地震活動に変化は見られず、また有珠山から50km以遠の範囲のGPS観測結果に変化は見られていない。
また、4月1日に発生したM4.6の地震は地震活動域の南端で発生したもので、その発震機構は、北西?南東方向に圧力軸を持つものであった。

この他、北海道地方では、次のような地震活動があった。
−  4月4日から4月末までにかけて、釧路支庁(雌阿寒岳南方約10km)の深さ約15kmで、M3.5を最大とする地震活動があった。この付近の半径20km程度の範囲では、1995年〜1999年について見ると、M2クラスの地震が年に0〜6回発生している。
−  4月12日に、北海道松前沖(北海道南西沖)の深さ約15kmでM4.3の地震が発生した。この地震の震央の東側約10kmでは、1995年10月から1996年前半にかけて群発地震活動(最大M4.2)が発生している。
−  4月11日に、北海道北西沖の深さ50km以浅でM4.3の地震が発生した。
−  4月26日に、千島列島のウルップ島沖合でM5.0の地震が発生した。

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(2) 東北地方

「いずれも「1994年三陸はるか沖地震」M7.5の余震域で発生したものである。」:
「1994年三陸はるか沖地震」は、沈み込む太平洋プレートと陸側のプレートの境界で発生したものであり、発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。今回の4つの地震の発震機構もほぼ同様である。

「4月26日に、福島県会津地方の深さ約10kmでM4.3の地震が発生」:
発震機構は、北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、1999年2月のものと同様であった。

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(3) 関東・中部地方

「4月7日に、新潟県上越地方の深さ約15kmでM4.1の地震が発生」:
発震機構は、北西−南東の圧力軸を持つものである。なお、この地域は、新潟・長野県境付近であり、また信濃川断層帯の北部に位置する。
「この周辺は従来から、M4以上の地震が発生している地域」
当該震源から半径50km程度の範囲では最近70年余りの期間において、平均して年に1回程度M4.0を超える地震が発生している。

「静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、昨年の8月以来、平均的な活動レベルより低い状態が続いている。」:
静岡県中部のフィリピン海プレートの地震(M1.5以上)の発生頻度が、平均して1ヶ月に6回程度であったものが、1999年8月頃から1ヶ月に2〜4回と平均より少ない状態となり、3月も同様の状態が継続していた。4月に入ってから7回とやや増加したものの、最近20日間では3回であり、相変わらず少ない状態となっている。
(なお、本評価結果は、4月24日に開催された地震防災対策強化地域判定会委員打合会における見解(参考参照)と同様である。)
(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成12年4月24日気象庁地震火山部)
「 東海地域においては、地殻内および潜り込むスラブ内の地震活動は低調で、昨年来の駿河湾およびその西岸域の地震活動の低い状態は、なお依然として継続しています。
伊豆半島などの地震活動も昨年来の低い状態で推移しています。」
この他、関東・中部地方では次のような地震が発生した。
−  4月12日に、千葉県北東部の深さ約55kmでM4.1及び約50kmでM3.9の地震が発生した。これらの地震の発震機構は、東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、この付近の過去の地震の発震機構と同様であった。これらの地震は太平洋プレートの沈み込みに伴うものである。
−  4月14日に、新島・神津島近海でM3.3とM3.5の地震が発生した。
−  4月21日に、若狭湾の深さ約350kmでM5.7の深発地震が発生した。発震機構は張力軸の方向が南北の正断層型であった。この付近では、1996年1月にM5.3、1997年1月にM5.1の地震がそれぞれ発生している。
−  3月中旬に発生したM4クラスを含む新潟県中越地方の地震活動は、4月半ば以降収まっている。

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(4) 近畿・中国・四国地方

「4月15日に、和歌山県南部の深さ約45kmでM4.8の地震が発生」:
発震機構は、南北に張力軸を持つ正断層型であった。

「4月28日に、和歌山県北部の深さ約55kmでM4.2の地震が発生」:
発震機構は、北西−南東方向に圧力軸を持つ横ずれ型であった。

この他、近畿・中国・四国地方では、次の地震が発生した。
−  4月11日に紀伊水道の深さ約15kmでM4.0を最大とする地震活動があった。
−  4月13日に伊予灘の深さ約70kmでM4.0、4月30日に豊後水道の深さ約50kmでM4.0の地震がそれぞれ発生した。

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(5) 九州・沖縄地方

「大分県中部(別府湾付近)の深さ約10kmで4月29日頃からM4.0を最大とする地震活動があった。」:
当該地震を最大とした地震活動は、4月29日から5月初めまで継続している。この地域では、1999年12月にM3クラスを含む地震活動があったが、今回は、1999年12月の活動の発生域の北に接した所で発生した。

沖縄地方では、次のような地震が発生した。
−  4月26日に、東シナ海の深さ約140kmでM4.9のやや深発地震が発生した。

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(6) その他の地域

次のような地震が発生した。
−  4月22日に、父島の南約600kmの深さ約160kmでM5.4のやや深発地震が発生した。この場所は、3月28日に発生したM7.6の地震の震源とほぼ同じである。

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参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
  M6.0以上のもの。又は、M4.0以上(海域ではM5.0以上)の地震で、かつ、最大震度が3を超えるもの。

参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。