平成16年5月現在

今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧


地震調査委員会は、主要な活断層や海溝型地震(プレートの沈み込みに伴う地震)の活動間隔、次の地震の発生可能性〔場所、規模(マグニチュード)及び発生確率〕等を評価し、随時公表している。平成16年5月末日現在、主要98断層帯のうち55断層帯、海溝型地震のうち南海トラフの地震(東南海・南海地震)、三陸沖から房総沖にかけての地震(宮城県沖地震を含む)、千島海溝沿いの地震、日本海東縁部の地震、日向灘および南西諸島海溝周辺の地震について評価をまとめ公表している。


98断層帯と周辺海域の図

98断層帯のリスト

目次

1.活断層の長期評価の概要
2.海溝型地震の長期評価の概要
(参考) 1995年兵庫県南部地震発生直前における確率


1.活断層の長期評価の概要

(陸域の活断層から発生する地震の今後30,50,100年以内の地震発生確率等)

注1: 糸魚川−静岡構造線断層帯、神縄・国府津−松田断層帯及び富士川河口断層帯については、長期評価を発表した際には確率を示していなかった。
注2: 地震調査研究推進本部(1997)による全国の主要な98断層帯の区分では、糸魚川−静岡構造線断層帯は北部、中部、南部の3つに分けられている。牛伏寺断層は中部の一部であり、長期評価では「牛伏寺断層を含む区間」がどこまでか判断できないとしている。なお、最新活動時(1200年前)には、北部と中部が同時に活動した。
注3: 三浦半島断層群は主部と南部からなる。表には主部を構成する2つの断層帯の評価結果を示した。南部の評価の概要は以下のとおり。
 マグニチュード:6.0程度もしくはそれ以上、過去の活動が十分明らかではないため30年確率は不明
なお、主部を構成する衣笠・北武断層帯と武山断層帯が同時に活動する場合は、衣笠・北武断層帯が単独で活動する場合と同程度もしくはそれ以上の規模の地震が発生すると評価されている。その長期確率はそれぞれが単独で活動する場合の長期確率を超えることはないと評価されている。
注4: 櫛形山脈断層帯の地震発生確率の最大値は、平均活動間隔が3千年で最新の活動が6千6百年前の場合で、その時の地震規模はマグニチュード6.8程度である。今後30年以内の地震発生確率が3%以上となる場合の地震の規模はマグニチュード7.2程度以下である。マグニチュード7.5の場合、今後30年以内の地震発生確率は0.5%未満である。
注5:

伊那谷断層帯は、境界断層と前縁断層の2つに分かれて活動すると評価されており、上表にはそれぞれの数値を示した。しかし、これらは1つの断層帯として同時に活動する可能性もある。その場合はマグニチュード8.0程度の地震が発生し、その長期確率は、境界断層と前縁断層がそれぞれ単独で活動する場合の長期確率を超えることはないと評価されている。

注6: 布田川・日奈久断層帯は、将来、北東部、中部及び南西部の3区間に分かれて活動すると評価されている。上表には30年確率の最も高い中部区間の数値を示した。他の区間の評価の概要は以下のとおり。
 北東部 マグニチュード:7.2程度、30年確率:ほぼ0%。
 南西部 マグニチュード:7.2程度、過去の活動が十分明らかでないため30年確率は不明。
なお、中部と南西部は将来同時に活動する可能性も否定できず、この場合は、マグニチュード8.0程度で、その長期確率は不明であるが中部区間の発生確率より大きくなることはないと評価されている。
注7:

砺波平野断層帯は、東部と西部からなる。表にはそれぞれの評価結果を示した。呉羽山断層帯は富山平野に位置する断層帯であるが、最近になって従来の見解よりも規模が大きく、その一部が砺波平野断層帯東部と近接していることが示された。

注8:

中央構造線断層帯は、5つに分かれて活動すると評価されており、上表にはそれぞれの数値を示した。しかし、これらは1つの断層帯として同時に活動する可能性もある。その場合はマグニチュード8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生し、その長期確率は、5つの区間が個別に活動する長期確率を超えることはないと評価されている。

注9: 新庄盆地断層帯、青森湾西岸断層帯、長町-利府線断層帯、呉羽山断層帯、高山断層帯、増毛山地東縁断層帯、鈴鹿東縁断層帯及び那岐山断層帯は、最新活動の時期が特定できていないため、通常の活断層評価で用いている計算方法(地震の発生確率が時間とともに変動するモデル)ではなく、地震発生確率が時間的に不変とした考え方により長期確率を求めている。このことに注意を要する。
注10: 伊勢湾断層帯は、将来、断層帯主部北部、断層帯主部南部及び白子−野間断層の3つに分かれて活動すると評価されている。上表には30年確率の最も高い白子−野間断層の数値を示した。断層帯主部(北部及び南部)の評価の概要は以下のとおり。
 断層帯主部北部 マグニチュード:7.2程度、30年確率:ほぼ0%。
 断層帯主部南部 マグニチュード:6.8程度、30年確率:ほぼ0%−0.002%。
なお、断層帯主部の北部と南部が同時に活動する可能性もあるとされ、この場合は、マグニチュード7.5程度で、その長期確率はそれぞれが単独で活動する場合の発生確率を超えることはないと評価されている。
注11: 三方・花折断層帯は、三方断層帯と花折断層帯に分かれ、花折断層帯はさらに、北部、中部、南部に分かれると評価されている。このうち中部と南部が将来同時に活動する場合の地震発生確率が示された。北部ではマグニチュード7.2程度の地震が発生すると推定されるが、平均活動間隔が不明なため、地震発生確率等を求めることはできない。しかし、最新活動が1662年の地震である可能性があることから、近い将来の地震発生可能性は低いと考えられると注釈されている。中部と南部が別々に活動する場合、それぞれ、マグニチュード7.0程度、6.8程度の地震が発生すると推定されている。これらのうち、中部が単独で活動するとすれば、表に示された中南部が同時に活動する場合と同じ発生確率となる。しかし、この場合南部が単独で活動する場合の地震発生確率は不明である。
注12: 高山・大原断層帯は、国府断層帯、高山断層帯及び猪ノ鼻断層帯に分かれると評価されている。このうち国府断層帯と高山断層帯について将来の地震発生確率が示された。ただし、高山断層帯は、最新活動時期が明らかになっていないため、地震発生確率はポアソン過程を適用して求めている。また、猪ノ鼻断層帯は、最新活動時期、平均活動間隔とも不明であるので、断層帯全体を一つの活動区間と仮定した場合の長さ(約24km)より、活動時の地震の規模のみを求めた。具体的な猪ノ鼻断層帯の評価の概要は以下のとおり。
 マグニチュード:7.2程度、過去の活動が明らかではないため地震発生確率は不明
注13: 野坂・集福寺断層帯は、野坂断層帯及び集福寺断層に分かれると評価されている。このうち野坂断層帯について将来の地震発生確率が示された。また、集福寺断層は、最新活動時期、平均活動間隔とも不明であるので、断層全体を一つの活動区間と仮定した場合の長さ(約10km)より、活動時の地震の規模のみを求めた。具体的な集福寺断層の評価の概要は以下のとおり。
 マグニチュード:6.5程度、過去の活動が明らかではないため地震発生確率は不明
注14: 増毛山地東縁断層帯の評価にあたっては、沼田―砂川付近の断層帯も併せて評価している。沼田―砂川付近の断層帯は、池田ほか(2002)で初めてその存在が報告された断層帯であり、最新活動時期、平均活動間隔とも不明であるので、断層全体を一つの活動区間と仮定した場合の長さ(約38km)より、活動時の地震の規模のみを求めた。具体的な沼田―砂川付近の断層帯の評価の概要は以下のとおり。
 マグニチュード:7.5程度、過去の活動が明らかではないため地震発生確率は不明
注15: 菊川断層帯、五日市断層帯(五日市断層、己斐−広島西縁断層帯)、津軽山地西縁断層帯は、平均活動間隔が判明していないため、地震発生確率を求めることができない。
注16: 石狩低地東縁断層帯は、主部及び南部に分かれると評価されている。このうち断層帯主部について将来の地震発生確率が示された。また、断層帯南部は、最新活動時期、平均活動間隔とも不明であるので、断層全体を一つの活動区間と仮定した場合の長さ(23km以上)より、活動時の地震の規模のみを求めた。具体的な断層帯南部の評価の概要は以下のとおり。
 マグニチュード:7.2程度以上、過去の活動が明らかではないため地震発生確率は不明
注17: 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯は、柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部及び浦底−柳ヶ瀬山断層帯に分かれると評価されている。さらに、柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部は、過去の活動履歴から、北部・中部・南部の3区間に分かれると評価されている。このうち柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部北部について将来の地震発生確率が示された。その他の区間は、最新活動時期、平均活動間隔とも不明であるので、断層全体を一つの活動区間と仮定した場合の長さより、活動時の地震の規模のみを求めた。それらの区間の具体的な評価の概要は以下のとおり。
 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部中部  マグニチュード:6.7程度、平均活動間隔が判明していないため地震発生確率は不明
 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部南部  マグニチュード:7.5程度、平均活動間隔が判明していないため地震発生確率は不明
 浦底−柳ヶ瀬山断層帯       マグニチュード:7.2程度、過去の活動が明らかではないため地震発生確率は不明
注18: 津軽山地西縁断層帯は、北部及び南部に分かれると評価されている。注15でも述べたように、平均活動間隔が不明のため、地震発生確率は求めることができないが、最新活動時期が1766年であり、地震後経過年数が短いため、近い将来の地震発生確率はごく小さいと考えられる。なお、最新活動と考えられる地震の規模が断層帯の長さに比べて大きいため、発生する地震の規模は幅を持った値としている。
注19: 折爪断層は、将来の活動可能性を明確にするために必要な資料が十分得られていない。鮮新世の地層を大きく変位させているので、第四紀に活動した断層であることはほぼ確かであると考えられているが、第四紀後期に活動を繰り返していることを示す確かな証拠はこれまで発見されておらず、特に、北部の辰ノ口撓曲においては第四紀後期の活動性は衰えている可能性もある。このため、発生する可能性がある地震の規模についても、便宜的に最大値を記載しているものの、この値は断層全体が一つの区間として活動した場合の試算値に過ぎないことに注意する必要がある。
上記表中、「ほぼ0%」とあるのは、10−3%未満の確率値を表す。

2.海溝型地震の長期評価の概要

(海溝型地震の今後10,30,50年以内の地震発生確率)

+ 「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値
注1: 南海トラフの地震(東南海・南海地震)及び宮城県沖地震の発生確率等の基準日は2001年1月1日(ただし宮城県沖地震については注5を参照)、三陸沖から房総沖にかけての地震(宮城県沖をのぞく)の基準日は2002年1月1日、日本海東縁部の地震は2003年1月1日、千島海溝沿いの地震は2003年10月1日である。南海トラフの地震(東南海・南海地震)については、時間予測モデルを適用。三陸沖から房総沖の海溝寄りの地震、三陸沖北部の一回り規模の小さい地震、福島県沖の地震、茨城県沖の地震、千島海溝沿いのひとまわり規模の小さい地震および沈み込んだプレート内の地震、日本海東縁部の秋田県沖の地震、佐渡島北方沖の地震については、ポアソン過程を適用。 
注2: 時間予測モデルに基づいて推定。
注3: 千島海溝沿いの区分けした各領域でM8クラスのプレート間大地震が繰り返し発生するとし、それらの平均活動間隔はどの領域でもほぼ同程度と仮定した。そこで、各領域の平成15年(2003年)十勝沖地震以前の過去2回の地震発生間隔(十勝沖 108.9年、根室沖 79.2年、色丹島沖 76.2年、択捉島沖 45.1年)の違いをばらつきと見なし、それらの値の平均値77.4年が平均活動間隔を近似するものとした。
注4: 過去の地震のMとMwの差が大きいため、Mwも参考として示した。Mwは「モーメントマグニチュード」のことである。地震の規模を表すマグニチュード(M)は、観測点における地震波(地震動)の大きさ(揺れの大きさ)の分布を使って算出するのに対して、Mwは震源の物理的な規模を表す地震モーメントという量を使って算出するマグニチュードである。地震の震源域の規模を反映し、マグニチュードの頭打ち(地震が大きくてもマグニチュードはその割に大きくならない現象)を回避できるために、物理的な意味が明確な指標である。
注5: 宮城県沖地震の発生確率等の( )内の数値は、基準日を2003年6月1日としたときの値である。
注6: これらの領域については、地震発生の特性を明らかにするための十分な知見が得られていないことや、長大な設定領域において発生する場所を特定できないこと等により、対象となる地震の平均発生間隔などを評価しなかった。

(参考)1995年兵庫県南部地震発生直前における確率