パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する

  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 近代地震学の歩みを記録する~金森博雄先生と地震学~(林能成)

 地震についての知識の多くは、地震波形の解析からわかったものです。津波地震、アウターライズ地震、モーメントマグニチュードなど地震本部ニュースでよく目にする言葉もその例ですが、これらは全てカリフォルニア工科大学の金森博雄名誉教授によって発見・発明されたものです。
 金森先生の研究成果は地震学の根幹をなす重要なものばかりです。その成果は全てが論文になっているので、後世の人間も振り返って学ぶことができます。しかし、研究に関係した細かいことや時代背景などは論文には書かれていません。
 近年、政治や行政の世界などでは、正式記録には残らない当事者の記憶に注目した「オーラルヒストリー」が盛んにおこなわれています。アメリカでは科学者のオーラルヒストリーもなされています。そこで、近代地震学を構築した金森先生のオーラルヒストリーを残すべく2007年頃から繰り返しインタビューをお願いしてきました。

本の細部について内容を詰める金森博雄名誉教授と瀬川茂子さん(林能成撮影)

 金森先生の研究成果は地震防災の現場でも応用され、新聞で取り上げられることも多いです。朝日新聞の科学記者である瀬川茂子さんは最新の地震学の成果や限界について、詳しい記事をまとめてきました。しかし紙面の関係などで極端に単純化した文章になってしまう場合もあり、重要な情報がうまく伝えきれないこともありました。
 2012年の年末から、瀬川さんと私は金森先生のお話をもとにした地震学の本をつくる準備を進めてきました。数か月に一度、先生の来日の機会をつかまえて、確認や追加のインタビューも行いました。こうして完成した本が「巨大地震の科学と防災」(朝日新聞出版)です。地震学の研究史をなぞりながら、最新の地震学の成果を学べる本が完成したと思っています。
 原稿が完成した段階で、金森先生から「地震職人」という言葉が提案されました。超一流の職人的な波形解析技を磨いて「地震の物理」解明に挑んだ先生に敬意を表して、本の帯にこの「地震職人」が使われています。

林能成(はやし・よしなり)

関西大学社会安全学部准教授。1991年北海道大学理学部地球物理学科卒業。JR東海勤務を経て2001年東京大学大学院博士課程修了。名古屋大、静岡大などを経て現職。専門は地震学・地震防災。博士(理学)。動力車操縦者運転免許証(新幹線電気車)所持。

このページの上部へ戻る

スマートフォン版を表示中です。

PC版のウェブサイトを表示する

パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する