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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 日本海溝海底地震津波観測網について2

 日本海溝海底地震津波観測網は、房総沖から北海道沖までの日本海溝沿いに海底地震計と海底津波計(海底水圧計)が一体となった観測装置を154地点に面的に配置します。観測データは、海底ケーブルを通じて陸上にリアルタイムに伝送され、日本海溝沿いの地震像の刷新と、即時的に地震情報と津波情報を出すための実測データとしての活用が期待されます。

 マグニチュード7〜7.5クラス以上の海溝型地震が発生した場合には、顕著な津波の発生が推定されます。精度の高い津波情報を即時的に出すためには、マグニチュード7〜7.5クラス程度の地震の震源域の拡がりの中に、1 点以上のリアルタイム観測点が必要です。また、津波が沿岸に到達するまでの短い時間の中で、津波高と到達時刻の予測をより精度の高いものに刻々と更新しつつ情報を発信するためには、津波波源と沿岸との間に複数点での実測データが必要です。このような視点から、海溝軸に直交する方向(およそ東西方向)では約30km間隔、海溝軸に沿う方向(およそ南北方向)では約50〜60km間隔という観測点配置の観測網を設計しました。アウターライズ地震注)の震源域を含む日本海溝沿いの広い海域をカバーするため、全体として154観測点が必要です(図1)。
 注)海溝軸の外側で発生する地震

 観測システムとしては、光ケーブルを海底に敷設して観測点を数珠つなぎにするインライン型の海底観測網です。従来も釜石沖などに紐状配置の観測網を構築するために使われてきたインライン型ですが、ここ10年で2次元配置の大規模観測網に使おうとする動きがでてきました。東京大学地震研究所はマグニチュード8クラスの地震の震源域をカバーする40観測点規模の高密度多点観測網のためのシステム開発を行い、新潟県の粟島から小規模システムを海底敷設して、日本海で最初となるリアルタイム観測を開始しています(図2、図3)。インライン型観測システムには短期間で観測網を作り上げることができるという大きな利点があります。その整備が緊急課題である日本海溝海底地震津波観測網に適した方式です。
 表1はシステムの主な仕様です。観測網の目的とこれからの長い運用を考え、想定される故障・事故などに対して強靱であるように、センサー、伝送方式、給電方式に充分な冗長性を確保した構成となっています。またタイプの異なる地震センサーを組み合わせることによって、従来のインライン型観測システムに比べてその観測帯域と計測範囲を拡大しています。海底ケーブルと観測装置は可能な限り海底に埋設敷設する予定です。観測装置の海底へのカップリングが良くなり、良好な観測品質が期待できます。

 図4は釜石沖の光ケーブル式海底地震津波観測システム(東京大学地震研究所)による東北地方太平洋沖地震の津波波形です。沖合の水深約1,500mの海底にあるTM1 は地震発生約13分後の15時頃に、宮城沖の海溝軸近くで発生して東北地方沿岸に甚大な被害をもたらしたパルス状大津波を記録しています。日本海溝海底地震津波観測網が沖合の多地点で実測する、この記録と同様な津波波形データは、開発が急務と考えられる津波即時予測のシステムに入力され、津波情報の高度化に貢献することが期待されます。また、図5は2008年茨城県沖の地震の余震分布を、自己浮上式海底地震計による観測から求めた結果と陸上観測の結果とを比較したものです。海底地震観測の結果からは、このM7.0の地震がプレート境界で発生した地震であることが一目瞭然です。このように海域で発生する地震の震源域直上に構築される日本海溝海底地震津波観測網は、陸上観測からは困難であったより正確な地震像を提出して地震調査研究を進展させるとともに、緊急地震速報の高度化への貢献が期待されます。

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