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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 東海・東南海・南海地震の連動性評価研究プロジェクト

 近い将来に発生が危惧される南海トラフ巨大地震への備えとして、東海、東南海ならびに南海地震の連動性評価が重要です。本研究プロジェクトは平成20年~24年度に文部科学省の委託研究で実施されたものです。内容は南海トラフ巨大地震の連動性評価のため、サブテーマ1の調査観測分野とシミュレーション分野、サブテーマ2の防災分野で構成されています。サブテーマ1と2を統合したプロジェクトの全体概要を図1に示します。これらの各分野での成果を以下に述べます。

図1:東海・東南海・南海地震の連動性評価研究プロジェクトの全体構成

 南海トラフ巨大地震の連動性評価研究を推進するにあたり、震源域の地下構造や地震活動の把握は不可欠です。地下構造調査研究の成果として、図2に日向灘沖の地殻構造調査結果を示します。図2では、日向灘沖に存在する九州—パラオ海嶺の構造のイメージングが明瞭に示されています。また、海底地震観測により、日向灘沖の低周波地震の地震活動が明らかになりました。これら低周波地震活動と巨大地震発生との関係については、図3のシミュレーションで示唆されるように、巨大地震発生の切迫度が低い段階では浅部の低周波地震活動は低く、切迫度が高まった段階では浅部地震活動が活発になっています。この結果は今後の巨大地震の切迫度評価において重要なものと考えます。図4に南海トラフ震源域の既存の地下構造研究成果と併せたフィリピン海プレート上面の形状を示します。これらの調査観測研究成果をシミュレーション研究に活用します。

図2:日向灘沖の地下構造(提供:小平秀一/海洋研究開発機構)
   日向灘 −九州パラオ海嶺– 〜四国沖のフィリピン海プレートの構造変化


図3:巨大地震震源域の低周波地震シミュレーション (提供:有吉慶介/海洋研究開発機構)
    (左図) 固着期間…海溝型巨大地震震源域傍で浅部の低周波イベントが不活発
    (右図) 地震発生直前…浅部でも活発化 → 深部との類似性が高まる

図4:南海トラフ域のフィリピン海プレート上面の3次元表示
   朝鮮半島付近から南東方向を望む鳥瞰図
   (提供:仲西理子/海洋研究開発機構)

 本シミュレーション研究では地下構造調査研究と連携して、地殻活動評価、シミュレーション手法の開発や地震発生予測精度の向上を目指すものです。
 地殻活動評価では、過去の地殻活動を評価するため、津波堆積物調査を実施し、南海トラフ巨大地震の大津波履歴の評価を行いました。図5に陸域の湖沼で得られた津波履歴の成果を示します。この結果、1707年宝永地震、684年天武の地震さらには約2000年前に相当する時代での顕著な津波堆積物が発見されました。また、大分県佐伯市の龍神池で津波堆積物が確認されたことは、南海トラフ巨大地震震源域が西方の日向灘域に拡大する可能性を示唆する大きな成果となりました。
 巨大地震発生シナリオ研究ならびに予測精度向上研究については、地殻活動評価の結果や調査観測研究の成果、特に最新の地下構造モデルに基づいた巨大地震の再来シミュレーション(図6)や予測精度向上のためのデータ同化手法の開発を行いました。

図5:陸域における津波堆積物調査結果(提供:岡村眞/高知大学)

図6:巨大地震再来シミュレーション (提供:堀高峰・兵藤守/海洋研究開発機構)
このプレート形状ならびに沈み込み速度が南海トラフ巨大地震の基本的な再来過程を規定していると考えられている
①前回の巨大地震直後、②東南海地震の発生、③一日後の南海地震発生、
④巨大地震(M>8)間に発生する日向灘でのM7地震、⑤連動型超巨大地震の発生、⑥四国西端からの巨大地震発生

 防災課題については、地震被害想定のための表層地盤モデルのデータベース化、地震や津波シミュレーション(図7、8)による被害想定の高度化や将来の暴露人口を想定した復旧復興策の検討ならびに研究成果を防災減災に活用するため、行政、ライフライン企業が参加する地域研究会を実施し地域の防災・減災の課題に関する議論を行いました。

図7:地震波伝播シミュレーション
(提供:古村孝志・等々力賢/東大情報学環総合防災情報研究センター・前田拓人/東大地震研究所)

図8:高知市津波予測シミュレーション(提供:今村文彦/東北大学)

 本研究プロジェクト期間中に東日本大震災が発生し、津波履歴の再評価、大連動や大津波の発生システムの可能性評価の重要性が再認識されました。本研究プロジェクトにおいても事前研究として宮城県沖地震震源域において海底地震計、水圧計を展開し東北地方太平洋域地震前後の地殻変動を捉えていました。本研究プロジェクトでさまざまな成果が得られましたが、今後の南海トラフ巨大地震研究においても、海陸での津波履歴、大津波発生システムや南西諸島地震発生帯との関連研究ならびに研究成果の防災減災への貢献を視野に入れた研究課題が重要です。

金田 義行(かねだ・よしゆき)

(独)海洋研究開発機構 地震津波・防災研究プロジェクト プロジェクトリーダー。理学博士。 昭和54年東京大学理学系大学院地球物理専攻修士課程修了。現在の専門分野は構造地震学。 旧石油公団等を経て平成9年より現海洋研究開発機構でプレート挙動解析研究に従事、平成21年より現職。

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