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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 首都直下プロ7広域的情報共有と応援体制の確立

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)11月号)

 文部科学省科学技術試験研究委託事業「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」(2007年~2011年)サブプロジェクト3「広域的危機管理・減災体制構築に関する研究」の3−2「広域的情報共有と応援体制の確立」では、広域連携に必要不可欠な情報共有基盤として、事前から復旧・復興過程までの防災対策に活用可能な情報共有プラットフォームを構築した上で、広域連携による応援体制と広域的危機管理・減災対策の実現に向けた課題の抽出と、その解決策のまとめを目的に研究を実施しました。
 本稿では、東京大学生産技術研究所、東京大学情報理工学系研究科、山梨大学、産業技術総合研究所、総務省消防庁消防研究センターをプロジェクトメンバーに、サイバーコイン(株)と宇宙航空研究開発機構を協力メンバーとして行なった研究の概要といくつかの成果を紹介します。

 サブプロジェクト3−2「広域的情報共有と応援体制の確立」は、(1)広域連携体制の構築とその効果の検証、(2)広域連携のための情報コンテンツの構築、(3)情報システム連携の枠組みの構築、の3つから構成されます。(1)では、後述する(2),(3)の研究成果に基づいて、災害情報を共有して広域連携体制が構築できた場合の効果を分かりやすく示すとともに、そのような体制を構築するための技術的・制度的な課題の抽出と課題解決のためのルール作りを行いました。(2)では、効果的な災害対応において共有すべき情報コンテンツについて、災害対応別に情報テーブルにまとめました。(3)では、減災情報共有データベースのプロトタイプ〝DaRuMa (Database for Rescue−utilityManagement)″をベースに、必要とされる機能の拡張を図り情報共有環境を構築しました。

 自治体をはじめとして、防災関係機関は、組織ごとに、あるいは同じ組織内の部署ごとでも、既に異なった情報システムとデータベースを持ち、これらを利用しています。将来的には国際標準に準拠したものを目指すべきですが、現状は様々なものが乱立している状態で、これが災害関連情報の共有や活動の連携を阻害する大きな原因のひとつになっています。
 このようなバラバラのシステムの相互乗り入れには、図1の(a)のように全てのシステムが1対1対応する方法と、(b)のように全システムが中央のデータベースを介して相互乗り入れする方法があります。n 個の既存システム間をつなぐ相互乗り入れシステムの数は、nが4以上で(b)の方が少なくなり、n が大きいほど(b)が有利になります。そこで、本研究では(b)を採用して〝DaRuMa″を開発し、これを介して相互乗り入れするシステムを構築しました。ただし中央のDaRuMaを攻撃されるとシステム全体が大きな影響を受けるので、これを複数設置し安全性を高めています。
 ここでは紙面の制約から、情報共有の効果の分かりやすい事例として、地震後の緊急医療活動において、医療機関を含む防災関係機関が情報共有した場合の効果を、実証実験によって示した例を紹介します。図2はGoogle Map上に、火災の延焼シミュレーション結果を含む災害状況や医療機関の患者受け入れ情報を共有することで、救急車や患者搬送ヘリが、最適なルートで最適な医療機関に患者の搬送を可能としたものです。

 さらに図3と図4は、トリアージ結果を含む患者情報を、関係医療機関間、医療機関内、行政機関間で共有するシステムです。シンプルで安価なことと将来的な拡張性を重要視して開発したITトリアージシステム(TRACY、図3)を用いて、東海・東南海地震の被災地になる静岡県立総合病院(以下では総合病院)を中心とした広域トリアージ訓練に適用した結果です(図4)。図からもわかるように、病院内はもちろん、関連する複数の病院や行政機関の間で、そして応急救護所や津波により負傷した患者を総合病院にヘリコプターで搬送する津波被災現場(掛川市)、総合病院から患者が搬送される静岡ヘリポートなど、関連機関間で情報が共有され、従来は不可能であった効率的な対応が可能になることがわかります。さらに本システムは、平常時の利用によって、病院内の患者の位置や診療科ごとの患者数や患者別の診療時間などのリアルタイム評価と管理が可能になるので、平時の医療サービスの向上にも貢献できることがわかりました。
 本研究では、これ以外にも「救援物資の配送計画と調達」、「仮設住宅の建設や管理」などのシステムも構築しました。また、広域的情報共有に基づいた連携体制の構築に必要な災害情報の共有ルールについては、東日本大震災の災害対応の事例も含めて検討しました。

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)11月号)

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