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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 東日本大震災後の緊急地震速報の課題と対策(気象庁)

(1)広域での観測点障害(欠測)の発生
 「東北地方太平洋沖地震」の本震発生後、長時間の通信障害や停電が発生し、気象庁において地震計のデータを入手できなくなりました。これは、気象庁へとデータを送信する通信回線網の機能が停止したことと、地震観測点の予備電源が持ちこたえられなかったためで、東北地方を中心に緊急地震速報に利用する観測データが大幅に減少したことから、緊急地震速報の発表が遅れるなどの事態が生じました。

(2)不適切な内容の緊急地震速報の発表
 本震以後は、これまでに経験したことのない激しい余震活動が続きました。また、余震域以外でも平成23年3月12日03時59分頃の長野県北部の地震や同年3月15日22時31分頃の静岡県東部の地震(いずれも最大震度6強)が発生するなど広域にわたって地震が多発しました。そのような状況の中、緊急地震速報の発表処理の過程で、震源位置や規模推定を大きく誤り、強い揺れを観測した地域と警報の対象とした地域で、予想した震度と観測された震度が±2階級以上あるような不適切な内容の緊急地震速報を発表する事例がありました。

(1)地震観測点の機能強化
 長時間のデータ欠落を避けるため、電力供給が途絶えても72時間稼働する予備電源を導入しました。また、地上回線の障害時のバックアップのため、衛星回線を導入しました(図2)。

(2)緊急地震速報の計算プログラムの改修
 震災以後、不適切な内容の緊急地震速報の発表に至った主な原因は、緊急地震速報の計算プログラムが、活発な余震活動の中で同時に発生した複数の地震を、それぞれ別の地震として正しく区別した処理を行えなかったためです(図3参照)。このようにほぼ同時に複数の地震が発生すると、ひとつの地震として処理を行い、震源の推定を誤ってしまうことがあります。
 複数の地震を確実に区別して処理することは現在の技術や仕組みでは不可能ですが、処理を誤る回数を減らすことは可能であり、気象庁はこれまでに以下のような処理プログラムの改修を行いました。

 ①ひとつの地震と判定する観測点範囲の変更
 緊急地震速報の計算プログラムでは、従来、最初に地震波をとらえた観測点から半径350km以内の観測点(図4左)でとらえた観測データは、概ね同じ地震に属するものとしていました。しかし、震災後の地震発生状況を精査し、複数の地震を同一とみなす頻度を減らすため、この範囲を半径150km以内(図4右)に狭める変更を平成23年3月16日に実施しました。

 ②小規模地震の計算対象からの除外
 複数の地震を誤ってひとつの地震として処理する頻度を減らすために、緊急地震速報(予報)の発表対象とならないような小規模地震を計算の対象から外すプログラムの改修を平成23年8月11日に実施しました。
 この改修による改善効果の例を図5に示します。 平成23年4月12日に、福島県浜通りの地震(M2.8、震度1以上観測なし)と千葉県東方沖の地震(M6.3、最大震度5弱を観測)が同時に発生し、これらを同一の地震として処理した結果、地震の規模を大きく推定し、広範囲に緊急地震速報(警報)を発表しました。改修により、2つの地震を識別し、千葉県東方沖の地震について適切に緊急地震速報(警報)を発表できるようになりました。

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