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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 災害に備える

(広報誌「地震本部ニュース」平成20年(2008年)12月号)




 海上保安庁では、防災に関しとるべき措置などを規定した「海上保安庁防災業務計画」等に基づき、災害に対し、常に迅速かつ的確に対応できるよう努めています。
 海上保安庁における対策は、平素からの準備と事案発生後の応急対策の実施の二つに大別できます。前者としては、応急対策の実施に当たる巡視船 艇・航空機の配備、海上保安部や航空基地等の陸上の事務所における24時間の当直体制、迅速かつ的確な対応のための関係機関等との情報伝達体制の確 保、各種計画の策定等があります。また、後者としては、各種計画等に基づき、保有する勢力等を用いて迅速かつ的確に被害の局限化に資する各種の措 置を講ずること等が挙げられます。
 本稿では、海上保安庁における自然災害への対応及び今後の取組みについてご紹介します。


 平成19年7月16日に震度6強を観測する「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震」が発生しました。海上保安庁では、灯台や岸壁の破損等があった場合船舶交通に影響するおそれがあることから、強い揺れが観測された地域の航行船舶等に対し航行警報により地震発生にかかる注意喚起を行いました。
また、巡視船艇・航空機により沿岸部における被害状況調査を実施するとともに、自治体からの要請に基づき、巡視船による給水作業(写真1)や航空機による急患輸送等の救援活動を実施しました。さらに、この地震による海底の変化を調査するため、測量船「天洋」による震源域周辺の海底地形調査を実施しました。
 また、平成20年においては、6月14日に岩手県と宮城県で震度6強を観測する「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」が、さらに7月24日には、岩手県中部〔岩手県沿岸北部〕において震度6弱を観測する地震が発生しました。海上保安庁では、これらの地震発生を受け、ただちに巡視船艇・航空機を出動させ沿岸部の被害状況を調査するとともに、航行警報を発出し航行船舶等に対して注意喚起を行いました。
特に、岩手・宮城内陸地震においては、自治体からの要請を受け、ヘリコプターにより、山間部等に取り残された153名の被災者の救助活動や救援物資の輸送等を行いました(写真2)。


1. 機動性の高い救助体制の構築
 海上保安庁では、機動性の高い救助体制を構築し、自然災害における人的被害の軽減を図るため、機動救難士の航空基地への配置を引き続き拡充します。また、机上訓練、実働訓練等を通じ、自然災害対応における関係機関との連携を強化します。
2. 地震の予測精度向上のための調査
海底の地形・地質に関する調査やプレート境界域における海底地殻変動観測を実施します。得られた情報は、地震調査研究推進本部等へ報告し、地震発生の予測精度向上に役立てていくとともに、津波防災情報への活用や各種防災図の作成のために活用していきます(図1)。
3. 港内における津波対策
 地震が発生し大きな津波の来襲が想定される場合、港内在舶船への甚大な被害の発生が懸念されます。津波は港ごとに地震発生から来襲までの時間が様々であり、津波の規模や船舶への影響等も港の形態、利用状況等によって異なります。このため、主要な港を中心に「船舶津波対策協議会」を設立し、海上保安庁が収集・整理した津波防災に関する情報を活用しながら必要な対策の充実を図ります。
4. 防災情報の整備
 離島や沿岸域において、地震や津波、火山噴火等自然災害時の住民避難や支援物資の搬入等を迅速に行うため、海底地形等の自然情報に加え、防災機関、医療機関、ヘリポートとして使用できる場所の位置や地域の人口等の社会情報等を収集し、これらの情報を記載した「沿岸防災情報図」(図2)を整備して地方自治体等の防災関係機関へ提供していきます。
5. 海域火山の監視
 現在も活動している31か所の海域火山について火山付近の地質構造やマグマの位置を把握するため測量船による海底地形、地質構造、海上重力等の調査や航空機による火山の活動状況の監視、磁気調査を引き続き行っていきます。また、船舶による調査は海底火山の爆発に巻き込まれるおそれがあり大変な危険を伴うことから、無人で調査を行える測量船「じんべい」(写真3)や特殊搭載艇「マンボウⅡ」を活用した調査を実施していきます。これらの監視や調査で収集したデータは航行船舶に提供されるほか、防災対策の基礎資料として活用していきます。
6. 業務継続計画の策定
 海上保安庁は、従来から海上保安庁防災業務計画等にもとづき、船艇・航空機を有する実動省庁として地震発生時における対応体制の整備を図ってきたところですが、平成20年4月、首都直下地震が発生した場合においても、海上保安庁に与えられた任務を継続的に遂行するための「海上保安庁業務継続計画」を策定しました。今後も、全管区において業務継続計画を順次策定し、更なる対応体制の強化に努めてまいります。


(広報誌「地震本部ニュース」平成20年(2008年)12月号)

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