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平成28年(2016年)熊本地震の評価

(広報誌「地震本部ニュース」平成28年(2016年)夏号)

地震調査委員会 平成28年(2016年)熊本地震の評価

熊本県熊本地方で4月14日にM6.5の地震、その28時間後にM7.3の地震が発生し、熊本県で最大震度7の大きな揺れを観測しました。その後、熊本県熊本地方、阿蘇地方、大分県中部等で地震活動が活発になりました。この地震活動により、死者75人、住家全壊8,305棟などの被害が生じています(7月14日11時現在、総務省消防庁による)。地震発生を受け、地震調査委員会は4月15日と17 日に開催した臨時会(写真1)、及びその後の定例会(毎月開催)において、地震発生のメカニズム、活断層との関連、地震活動の見通しなどを評価しました。 本稿ではその評価文から一部を抜粋・要約して示します。

なお、 地震調査委員会では、熊本地震の評価に加えて、 関連する情報として地震調査委員長見解を発表しています。評価の全文と関連図表、地震調査委員長見解は、地震調査研究推進本部ホームページ(https://www.jishin.go.jp/)に掲載されています。

写真1 4月 15日に開催した地震調査委員会の臨時会(出典:文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/)

地震調査委員会による評価(一部を抜粋・要約)

5月13日地震調査委員会定例会における評価を黒色、6月9日の同評価を青色、7月11日の同評価を緑色で表記しています。

[ 地震活動の概要 ](図1)

4月14日21時26分に熊本県熊本地方の深さ約10kmでマグニチュード(M)6.5の地震が発生した。また、4月16日01時25分に同地方の深さ約 10kmでM7.3の地震が発生した。これらの地震により熊本県で最大震度7を観測し、被害を生じた。

一連の地震活動は熊本県熊本地方から大分県中部にわたる。熊本県熊本地方では、北東-南西方向に延びる長さ約50kmの領域で地震活動が活発である。また、熊本県阿蘇地方では4月16日のM5.8の地震により熊本県で最大震度6強を観測したほか、大分県中部では4月16日のM7.3の地震発生直後に別の地震が発生し、最大震度6弱を観測するなど、M7.3の地震発生直後から地震活動が 見られている。

一連の地震活動は、全体として減衰傾向が見られる。 熊本地方及び阿蘇地方では、減衰しつつも活動は継続している。大分県中部では、活動は低下した。(6月9日定例会での評価)

一連の地震活動は、全体として引き続き減衰傾向が見られる。熊本地方及び阿蘇地方では、減衰しつつも活動は継続しているが、4月19日を最後に、M5.0以上の地震、及び震度5強以上を観測する 地震はいずれも発生していない。大分県中部では、地震活動は5月以降低下した状態が続いている。(7月11日定例会での評価)

[ 地殻変動 ]

GNSS観測の結果によると、4月14日のM6.5の地震及び4月15日のM6.4の地震の発生に伴って、熊本県内の城南観測点が北北東方向に約20cm 移動するなどの地殻変動が、また、4月16日のM7.3の地震の発生に伴って、熊本県内の長陽観測点が南西方向に約98cm移動するなどの地殻変動が観測されている。陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が観測した合成開口レーダー画像の解析結果(図2)によると、熊本県熊本地方から阿蘇地方にかけて地殻変動の面的な広がりがみられ、布田川断層帯の布田川区間沿い及び日奈久断層帯の高野-白旗区間沿いに大きな変動がみられる。これらの地殻変動から、すべりを生じた震源断層の長さは約35kmであると推定される。

GNSS観測結果によると、4月16日のM7.3の地震発生後、一連の地震活動域を中心に余効変動が観測されている(6月9日定例会での評価)。一連の地震活動域を中心とした余効変動は引き続き観測されている(7月11日定例会での評価)。

[ 活断層との関係 ]

4月14日のM6.5の地震及び4月15日のM6.4の地震の震源域付近には日奈久断層帯が存在している。これらの地震は、その高野-白旗区間の活動によると考えられる。地震調査委員会は日奈久断層帯(高野-白旗区間)につて、活動時にM6.8程度の地震が発生する可能性があり、30年以内の地震発生確率は不明と評価していた。なお、日奈久断層帯(高野-白旗区間)を含む九州南部の区域では、M6.8以上の地震の発生確率は7-18%と評価していた。

4月16日のM7.3の地震の震源域付近には布田川断層帯が存在している。この地震は、主に布田川断層帯の布田川区間の活動によると考えられる。地震調査委員会は布田川断層帯(布田川区間)について、活動時にM7.0程度の地震が発生する可能性があり、30年以内の地震発生確率はほぼ0%~0.9%(やや高い)と評価していた。なお、布田川断層帯を含む九州中部の区域では、M6.8以上の地震の発生確率は18-27%と評価していた。

現地調査の結果によると、布田川断層帯の布田川区間沿いなどで長さ約28km、及び、日奈久断層帯の高野-白旗区間沿いで長さ約6kmにわたって地表地震断層が見つかっており、益城町堂園付近では最大約2.2mの右横ずれ変位が生じた(写真2)。一部の区間では、北側低下の正断層成分を伴う地表地震断層も見つかっている。

[ 地震活動の見通し ]

一連の地震活動は、全体として減衰傾向が見られるが、熊本県熊本地方及び阿蘇地方の活動は、減衰しつつも依然として活発である。大分県中部の活動は減衰している。

平成16年(2004年)新潟県中越地震(M6.8)や2011年の福島県浜通りの地震(M7.0)では、本震から1~2ヶ月後にもM5程度の余震が発生した。こうしたことから、今後も最低1ヶ月程度は、熊本県熊本地方及び阿蘇地方ではM5~6(最大震度6弱程度)、大分県中部では、M5程度(最大震度5強程度)の余震が発生するおそれがあり、引き続き十分注意が必要である。

九州地方では、1975年の熊本県阿蘇地方(M6.1)から大分県西部(M6.4)の地震活動や、1997年の鹿児島県薩摩地方の地震活動(M6.6、M6.4)のように、当初の活動域に近接する地域で2~3ヶ月の間をおいて、同程度の地震が発生したことがある。こうしたことから、熊本県から大分県にかけて、今後も最低2ヶ月程度は、震度6弱以上の揺れにみまわれることも否定できないことから注意が必要である。

現在の地震活動の減衰状況から、今後、熊本県熊本地方及び阿蘇地方でM6程度(最大震度6弱程度)の余震が発生する可能性は低下した。今後概ね1ヶ月程度、熊本県熊本地方及び阿蘇地方では M5程度(最大震度5強程度)の余震の発生に十分注 意が必要である。大分県中部では、現状程度の余震活動は当分の間続くが、M5程度(最大震度5強程度)の余震が発生する可能性は低下した。熊本県から大分県にかけて、今後も最低1ヶ月程度は、震度6弱以上の揺れに見舞われることも否定できないことから注意が必要である。(6月9日定例会での評価)

現在までの地震活動の減衰状況から、熊本県熊本 地方及び阿蘇地方では、現状程度の余震活動は当分の間続くが、これらの地域においても、M5程度(最大震度5強程度)の余震が発生する可能性は低下したと考えられる。(7月11日定例会での評価)

図1 地震活動の震央分布及び時間推移(7月11 日地震調査委員会気象庁提出資料) 図2 地殻変動観測結果及び震源断層モデル(5月13日地震調査委員会国土地理院提出資料) 写真2 益城町堂園付近における地表地震断層(5月13日地震調査委員会産業技術総合研究所提出資料)

(広報誌「地震本部ニュース」平成28年(2016年)夏号)

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